<第174通常国会 2010年05月13日 本会議 28号>



○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、田中けいしゅう内閣委員長解任決議案に賛成の討論を行います。(拍手)
 田中けいしゅう委員長は、与野党合意がないまま、みずから質疑終局を発議し、採決を強行しました。委員会の公平公正な運営を放棄し、法案の十分かつ慎重な審査に尽くすべき任務を投げ捨てたことは、極めて重大であります。
 第一に、今回の国家公務員法改正によって、幹部職員人事の仕組みが、政治家による人事への恣意的な介入を常態化させ、憲法が規定する全体の奉仕者としての公務員制度を変質させる重大な疑義があるにもかかわらず、その質疑に必要な資料が委員会に提出をされないまま質疑を打ち切ったことであります。
 法案には、幹部職員の任用の前提となる標準職務遂行能力を審査する適格性審査を政治家である内閣官房長官が直接行う上に、その公正性、透明性をチェックする第三者機関の規定もありません。その上、事務次官、局長、部長という職制上の段階を同一とみなすことで、その段階ごとに定められていた三つの標準職務遂行能力も一つになり、人事評価の基準がさらに抽象的になります。一層の恣意的評価が可能となるだけでなく、降格人事も同一の職制の横異動、転任とみなすことで、恣意的人事の歯どめである国公法の身分保障の原則も空洞化されています。
 法案は、この適格性審査の具体的な内容について政令にゆだねております。幹部人事が公正中立に行われるかどうかはこの法案の核心ですが、それを明らかにすべき政令案の骨子が委員会に提出をされないまま質疑を打ち切ったのは重大であります。
 適格性審査を合格した幹部候補から任用する際の基準となる官職についての適性にも客観的な基準はなく、幹部職員の任用に当たっては、その全過程に政権党の恣意的人事を可能とする仕組みとなっており、法案は、情実人事や政治の恣意性から国家公務員の中立性、公正性を守る国公法の成績主義と身分保障の根本原則を大もとから空洞化させるものと指摘しなければなりません。
 第二に、法案は、天下り規制を原則禁止から原則容認へと後退をさせた〇七年改悪国公法と並びの規定を自衛隊法にも持ち込むものとなっているにもかかわらず、この自衛隊法を所管する防衛大臣による説明も委員会として聴取しないまま質疑を打ち切ったことであります。
 天下りに関して、原則禁止から原則自由へと大改悪を行った〇七年の国公法改悪に対し、当時の民主党は、天下りの禁止期間を二年から五年に延長し、OBによる現役への働きかけなどを禁止する行為規制期間も、政府案の二年間に対し十年間とするなど、規制強化の対案を提出していました。
 今では、その立場を完全に投げ捨てただけでなく、事もあろうか、防衛施設庁事件、航空自衛隊の官製談合事件など、汚職、腐敗事件が相次ぎ、この間、みずから再就職あっせんを自粛するなど、いわば謹慎中の身である防衛省・自衛隊の天下りを解禁し、防衛省による自衛隊の一部幹部の天下りあっせんすら容認をし、その行為規制の監視さえ防衛省内の身内の機関にするというのが法案の内容であります。
 しかも、これは自公政権時代から防衛官僚によって準備をされていたものであります。政治主導を実現するための法案に官僚主導の法案が紛れ込んでいった理由をこそ委員会として解明をすべきであります。
 第三に、昨日の委員会で、私の質問に仙谷大臣は、地方支分部局の再編に当たって、国家公務員のリストラもあり得ると発言したことも重大であります。
 原口総務大臣は、これまで、再三、生首を切ることはできないと発言をしており、関係大臣の答弁が食い違っております。この点についても委員会としての解明がなされないままであります。
 以上、与野党の合意もなく、委員会として法案審議に必要な資料の提出、関係大臣の出席がなされないまま審議を打ち切った委員長は、二重に国民の信頼を裏切ったものであり、解任は当然であります。このことを強調し、私の賛成討論を終わります。(拍手)