<第174通常国会 2010年05月13日 総務委員会 16号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 放送法に関連して質問をいたします。
 事前にお願いしていた項目、順番を若干変えまして、最初に、民主党の政策集、インデックス二〇〇九にあります通信・放送委員会の設置に関連してお尋ねしたいと思います。
 このインデックスでは、通信・放送委員会の設置について、「通信・放送行政を総務省から切り離し、独立性の高い独立行政委員会として通信・放送委員会を設置し、通信・放送行政を移します。これにより、国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消するとともに、放送に対する国の恣意的な介入を排除します。」このように掲げられております。当然の内容だと考えます。
 この内容について質問いたしますが、まず最初に、ここで掲げています通信・放送委員会設置の目的は何かといえば、うたわれておりますように、「国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消する」、ここにあると思うんですが、この立場に変わりはないか、この点についてまずお聞かせください。

○原口国務大臣 塩川委員とも放送法の修正案をつくらせていただきましたが、日本版FCCの設置は、まさにインデックスにあるとおり、「放送に対する国の恣意的な介入を排除」するなどの目的で掲げられたものでございます。
 ただちょっと、FCCと言うと、アメリカにFCCというのがありますから、そこの強大な権力と間違えられるという懸念もあって、今は私はそのFCCと混同されないように、日本版FCCという言葉は避けて、言論の自由を守るとりでという言葉を使っていますけれども、今委員がおっしゃることに変わりはございません。

○塩川委員 「国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消する」という立場を確認いたしました。
 そうであれば、大臣を長とする独任制の行政機関、日本でいえば総務省が放送事業者を監督するということを改めることになると思うんですが、それでよろしいでしょうか。

○原口国務大臣 今、まさにそれが私たち民主党の立場ですけれども、今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム、昨年の十二月からお願いをいたしまして、言論の自由を守るとりでを初めとする国民の権利保障等のあり方について、ヒアリングを行って、幅広い観点から検討を行っていただいているところです。
 そこで、今までのICT政策に欠けていたものは、国民のコミュニケーションにおける権利の保障、先ほども大口委員にお話をしましたけれども、安全な環境の中で国民が情報を選択できる権利だというふうに思っておりまして、そこに先ほどお話しのような国家権力の介入とか、あるいは政党性の強いバイアスなんというのがかかってはならない、このように考えています。

○塩川委員 今のお話をお聞きしますと、放送でいえば、総務省から放送局への監督権限を切り離した独立行政委員会を設置するというのは民主党の立場ではあるけれども、今後どうするかについては幅広い観点から検討していくということですね。確認で。

○原口国務大臣 日本版FCCといってインデックスに掲げたものは、できるだけ独立性の高いものを目指しているわけでございまして、その方向といったことに含めて、これは言論や表現や報道の自由にかかわるものでございますから、幅広い立場、民主党の立場だけではなくて幅広い立場から御議論をいただいているということで御理解ください。

○塩川委員 そうしますと、インデックスでうたっています通信・放送委員会、ですから括弧の中の話はもう私の方も言いません。この通信・放送委員会というのは、例えば大臣のブログでおっしゃっておられる「権力からの介入を防ぐための「放送・報道の自由」の砦」、あるいはフォーラムでも「ICT分野における報道・表現の自由を守る「砦」」と言っている、このとりでというものと、インデックス二〇〇九で言う通信・放送委員会というのは同じものなのか違うものなのか、その点、お答えいただけますか。

○原口国務大臣 同じものであります。
 ただ、表現がFCCという言葉になっていましたから、これは逆に、今の放送や表現の自由にかかわる人からいうと、総務省があってもう一個、二重の規制機関になるのではないかというようなおそれも表明されまして、私たちは、そういうものではない、逆に言うと、言論の自由を守るために行政を監視するものであるということを申し上げているところでございます。

○塩川委員 いや、そこが、おっしゃっておられるところがよくわからないんですけれども。
 世界の流れを見ましても、例えばOECD三十カ国の中で、電波、放送行政に関する独立の規制機関を設けるというのが流れとなっているわけで、二十六カ国ぐらいに上るでしょうか。そういう点では、日本でいえば、独任制の行政機関である、政治家が大臣となっているような総務省が放送行政を所管する、放送局に対する監督権限を持っている、こういうあり方は改めなくちゃいかぬ、つまり、総務省から放送局への監督権限を切り離して独立した行政委員会を設けるんだということと私は受けとめているわけですけれども、今のお話ですと、総務省の放送局への監督権限はそのままで、しかし、その総務省に対しての監視機関をつくるというふうに受けとめられるんですが、この関係の相違について御説明いただけますか。

○原口国務大臣 なるほど、何でわからないと言われたかがわかりました。
 つまり、例えばアメリカのFCCを見てみると、FCCの委員というのは共和、民主の比率によって変わっているんですね。この間もワシントンでお話をしてきました。そういうコミッション制がいいのか、それとも、もっと言うと、その中間的に、今ある総務省の権限について、最終のゴールはコミッション制なんだけれども、そこに行く中途に、総務行政を総括し、そして大臣が持っている権限、今おっしゃった属人的な権限についてさまざまなチェック機関を持つのがいいのか、幾つかの道筋があるんだと思います。
 そういったことをICTのタスクフォーラムでも御議論いただいているというふうに御認識をいただいて、私が先回りしてこっちがいい、あっちがいいと言う、今その状況にないということも、ぜひ御理解をいただければと思います。

○塩川委員 関係者の意見を広く聞きながら制度設計ということは当然のことだと思います。
 そうしますと、要は、総選挙で掲げた公約の一環でありますから、例えばこの四年間、つまり次の任期の総選挙の、この四年の間でやるとかやらないとか、いつどのような形で行うのか、その辺についての工程表みたいなものはお持ちなんでしょうか。

○原口国務大臣 まず骨格が出てまいりますので、その骨格を見た上で、私は一年ぐらい御議論いただいて慎重に、それから、これは憲法の学者の方々や、いわゆる言論、報道、基本的な人権を保障するという方々の意見を広く集めたいと思っていまして、いささかも拙速にここを進める気はありません。インデックスということですから、私たちからいうと四年間でこれをやりますということですけれども、その方向を示せれば、まず第一段階ができたのかなと思います。その上で工程表という形になってくるのかなと思います。
 現段階は、まずは広く、表現、放送、報道の自由にかかわることについて、それに携わる皆様も含めて御意見をいただいているところでございます。

○塩川委員 そういう点では、広く意見を聞き、また慎重に進めていくということは当然のことであります。同時に、この方向性ということにつきましては、なぜ、この検討ということを含めて法案として盛り込まなかったのか。
 例えば、今回の放送法でも附則の部分で、マスメディア集中排除原則のあり方について、クロスメディア所有規制のあり方を含めて「検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」と盛り込んでいるわけですね。これもインデックスに入っている中身であるわけです。
 であるならば、通信・放送委員会の設置についても、検討するということを盛り込んでいてしかるべきだと思うんですが、それを外している理由は、何か特段にお考えのところがおありなんですか。

○原口国務大臣 これは要するに組織形態全体の話ですから、先ほど三条委員会、八条委員会、どういう独立性。今委員がおっしゃっているのは、まさにそのクロスオーナーシップとかマス排原則というのは、表現、報道の自由、多様性、多元性、地域性を保障する、これはもう、それをノーという話はないことですね。
 ただ、組織のあり方については、やはりそれぞれの主体について、まだこっちがいい、あっちがいいというのは出ていないんですよ。ですから、そこで意図的に外したのではなくて、むしろ万機公論を巻き起こして、そしてその中で決めていくことだということで、今回は、逆にそれを入れている方が私はちょっと厳しいんじゃないかなというふうに考えています。
 意図的に外したものではございません。

○塩川委員 こう言いますのも、今回の放送法の場合に、先ほどの質疑にもありました、電波監理審議会における建議を初めとした機能強化の話があるわけであります。つまり、現状というのが、今やりとりをしましたように、「国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾」の中にあるという点では認識が一致をしているということであったわけですから、そういったときに、今回の電波監理審議会の機能強化についての懸念の声というのもやはり無視できないと率直に思っております。
 電波監理審議会については、毎日新聞や朝日新聞でも取り上げておりますし、民放の社長、経営者の立場からの発言もあるわけであります。電監審の機能強化が国の介入の隠れみのになるのではないかとか、番組内容まで介入のおそれという記事を載せているわけであります。
 そういう中でも、具体例として、二〇〇六年、菅総務大臣が北朝鮮による拉致問題を短波ラジオ国際放送で重点的に扱うようNHKに命じる際、電波監理審議会に諮問した。即日、適当との答申が出され、菅大臣は命令に踏み切った。具体的な内容を盛り込んだ初めての命令だった。そういう点でも、電波監理審議会が総務省の権限行使の別働隊としての役割を果たすことになるのではないのかという問題があるわけです。
 今言ったように、実際に放送局の監督権限を総務省が持っているときにこういうことが行われるわけで、ここで質問しようと思っていますのは、冒頭確認しましたように、「国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾」の中にある現行制度のもとで、総務省に置かれている電波監理審議会の機能強化を図ることは、国による放送事業者への監督体制の強化につながるものではありませんか。

○内藤副大臣 私からお答えをさせていただきます。
 委員御指摘の御懸念は、全く当たらないと思います。
 さきに大口委員が、大臣がかわっても放送行政がゆがめられることがないようにという御指摘をいただきましたが、まさにそれにこたえるのがこの電監審による建議だと思っております。
 というのは、今の現状では、これが問題なのか、いや、問題じゃないのかを決めるのが、実は放送行政を所管する総務省の長である総務大臣なんです。他方、我々は電監審にそれをゆだねようと。
 電監審というのは御案内のように、国会同意人事によって決められた、つまり第三者なんです。第三者の観点で放送行政を、その高い識見に基づき問題提起をしていただこう、こういう仕組みに変えたのが今回の法改正だと御理解をいただきたいと思います。
 以上です。

○塩川委員 かつて、通信・放送委員会の設置についての法案が総務委員会に出されました。その場の議論の中でも、民主党の議員から、電波監理審議会というのは非常に貧弱なんだという指摘があって、何かといえば、電波監理審議会の事務局がどこかといえば総務省じゃないか、そういう意味ではお手盛りのものにならざるを得ないでしょうと。そういう意味では、第三者といっても事務局が総務省丸抱えの電波監理審議会が、総務省から独立した組織と言えるのかということそのものが問われているということを言わざるを得ません。
 この問題では、総務省から放送の規制機能を切り離して独立の規制機関をつくらない限り、こういう電波監理審議会の機能強化というのは、やはり国の放送への介入を強めるものになるんじゃないのかという懸念は消えないわけです。
 実際の法改正の中身を見ましても、現行であれば、これまでの電監審の仕事の多くのものというのは、項目は多岐にわたりますけれども、それぞれ個別の事案について列挙しているものであります。それが今回の改正では、放送法の目的規定をそのまま調査審議、建議できる事項としているわけで、いわば丸ごとできるという趣旨になっているわけで、隠れみのとか、あるいは別働隊とかいう懸念が消えないということを言わざるを得ない。
 そういう点でも、この百八十条の規定は削除すべきだ。そのことを指摘をして、時間が参りましたので、終わります。