<第174通常国会 2010年05月20日 総務委員会 18号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、NHKの経営委員会に会長が加わるという件について質問をいたします。
 改正案の十五条では、「経営委員会は、委員十二人及び会長をもつて組織する。」とされております。これは、今回の六十年ぶりの大改正に当たりまして、通信・放送の総合的な法体系に関する研究会を初めとしていろいろ議論があったわけですが、今回のこの件について議論した形跡が見られない、そういう点でも非常に唐突な改正でございます。
 ですから、最初に伺いますけれども、なぜ今回これを盛り込んだのか、NHK会長を経営委員会の構成メンバーにするとした理由は何なのかについてお答えください。

○原口国務大臣 この間、幾度もガバナンスについての御議論がございました。先ほどお答えしましたけれども、現行法では、極論すれば、執行部の意見を全く聞かないまま経営委員会が経営方針の決定等を行うことも可能な制度となっています。
 国際化、情報化、そしてさまざまな多様化が進む中で、NHKの会長に求められる能力や責任というのはますます大きくなっています。その中で、例えば、あなたはCOOですけれどもどうぞ来てくださいということで世界的な人材が本当に来るでしょうか。しっかりとしたCEOという形で、私たちは、NHKが公共放送としてガバナンスを保ち、ガバナンスをしっかり強固にし、コンプライアンスをしっかりと担保する、これが国会の中でも御議論されてきたことではないでしょうか。
 その観点から、今回、会長は経営委員会に出席し、意見を述べる旨の規定はございますけれども、会長が経営委員会に常時出席できることが保障されているものではございませんで、実際的な業務執行の観点から見ても、適切かつ迅速にNHKの公共的な役割がしっかり発揮されることを企図するということで、ここに条文を入れたものでございます。

○塩川委員 この間、さまざまなガバナンスの議論があった、会長の言うことを聞かなくても意思決定ができる仕組み、この点を改めるんだという趣旨ということで受けとめました。
 もともと、そのガバナンスの議論ということで、当委員会でも原口大臣が答弁をされた中に、国会審議においてもこういうことが随分議論されたんだ、そういう例示として経営委員会と執行部との関係が敵対的、いびつとなっていると、こういう現状を正す上でも経営委員会の一員としてNHK会長が加わることが必要なんだというお話だったわけです。
 では、具体的に、国会で議論になった、この経営委員会と執行部のいびつな関係は、どういうことをきっかけに起こったのかということです。なぜ、いびつな、敵対的な関係となってしまったのか。それはどこにあったわけですか。

○原口国務大臣 それは国会の中で御議論されていたことで、私が、いびつで、敵対的な関係がどうこうと言ったことではないというのは前の答弁でしっかりと述べております。
 それは、経営委員会と、これは国会同意人事でございます、会長という形が、一定の緊張関係を持って切磋琢磨するというのは極めて大事なことであるというふうに思います。
 その上で、なぜそのようになったか、総務大臣の立場から、具体的な、どの事案に対して、何をもってそのように言うか、その原因まで答えるだけの知見を持ち合わせておりません。

○塩川委員 この経営委員会と執行部との関係が敵対的、いびつとなっているということについて委員会での議論があった、そういうことを例示されて、大臣は、ガバナンスの議論があった、そういう点で今回の改正になっているというお話をされているわけです。
 なぜ敵対的、いびつな関係となったのか、国会審議で問題となった点が何かといえば、例の古森経営委員長時代の一〇%の受信料還元問題のときで、執行部の経営計画案を経営委員会が修正議決した、その事例を前提として問題となったということになっているわけですね。そのとき、これはもう原口大臣も当時のことはよく御承知だと思いますけれども、安倍内閣の肝いりで経営委員長含みで経営委員に任命されたとも言われた古森氏が、当時の菅大臣が受信料値下げを主張したことも受けて、監視機関としての経営委員会の役割を踏み越えてごり押しした結果生まれた、いびつな、敵対的な関係だったわけであります。
 ですから、私は、こういった経営委員会と執行部との敵対的、いびつな関係を生み出したのは、当時の安倍内閣の政治的意向を反映した特異な経営人事そのものだった、ここが問われたんだと思うんですけれども、その点、大臣の認識はいかがですか。

○原口国務大臣 塩川委員にぜひ御理解いただきたいんですが、この総務大臣の立場でない、前は、ちょうど今大野筆頭が座っておられるところに座っていたときに一緒に御議論をしていたときは、もっと自由な立場で言えたわけですけれども、総務大臣が、さまざまな認可だ何だというものを持っているその総務大臣が、安倍内閣のときの云々ということまで言うのは控えなければいけないというふうに私は思います。
 また、これは、そのときにそういう御議論を国会でされていて、そして、NHKのガバナンス問題あるいは機構の問題についてさまざまな方が御提案をなさいましたねと。全然議論がなかった、突然としてNHKの会長の権能や責任問題について出てきたという御議論がございましたから、そうではございません、ここにもこれだけ議事録を持っていますけれども、たくさんの御議論があったということの例示だというふうに理解をいただければありがたいと思います。

○塩川委員 いや、ガバナンスの問題が問われたというのは、まさに古森経営委員長のときのやり方の話でありまして、まさにそこが焦点なんですよ。こういう点でいえば、公共放送であるNHKの経営委員会には、政府に対する独立性、自主性というのが保障されなければならないわけです。
 ですから、内藤副大臣も、野党時代に質疑の中でおっしゃっておられたのが、「経営委員の任命を通じて政府のNHKへの影響力が増大する懸念」があるんだ、これは当然の指摘であったわけで、まさに経営委員の任命に当たって、政府の自制こそ求められていたにもかかわらず、かつての自公政権のもとで、経営委員の人事に当たって特定の意図を持ち込むようなやり方というのがいびつな関係をつくったわけですから、今回改める上でも行うべきなのは、政府によるNHKへの介入ということを見直すことであって、経営委員会の仕組みをいじることではないと言わざるを得ません。
 その上でお尋ねしたいのが、そもそも経営委員会は、視聴者・国民の代表としてNHKの業務の執行を監督する立場にあります。ですから、本来、NHK執行部を監督する立場にある経営委員会において、監督される側のNHKの会長が構成員となって議決権を持つということは、この経営委員会の監督、監視機能を弱めることになるのではないのか。この点についてお答えいただけますか。

○内藤副大臣 決して経営委員会の監督、監視機能を弱めるものではないと思います。
 なぜかといえば、NHK会長も確かに経営委員会の一員として加わるわけでございますが、ただ、NHK執行部のことに関する議案に関しての議決権は与えてはおりません。そしてまた、やはり執行部を預かる会長と経営委員との真摯な緊張感ある議論、これを経てこそ適切な経営方針を打ち出すことができるものと考えております。

○塩川委員 相互に緊張感を保つべきということであれば、組織的にもきちんと区分をする、そういうことで経営委員会とNHK執行部の緊張感が保たれるんだということこそやるべきことであって、この監督と執行を混在とか一体化させるというのは、本来の趣旨から外れると言わざるを得ません。
 そもそも、経営委員会というのが合議制の議決機関であって、合議体として英知を結集する意思決定機関となっているわけであります。そういう点では、非常勤中心の経営委員会の中に常勤のNHK会長が出席をし、議決権を持つということは、合議体としての経営委員会の意思決定をゆがめるものともなりかねない、こういう懸念もあるんだということを強く訴えておくものであります。
 会長を構成員として経営委員会の意思決定の権限を持たせるというのが、会長に強力な権限を与えることにもなり、経営委員会の形骸化と執行部中心主義、弊害が生まれ拡大することになる、こういう重大な疑念が晴れないということを申し上げて、もし一言ありましたら。

○近藤委員長 原口総務大臣、簡潔にお願いします。

○原口国務大臣 組織のガバナンスとして、合議体である監督機関に監督される者が含まれることは決して特別じゃありません。委員のロジックでいうと、例えば、委員会設置会社というのは成り立ちませんね。日本銀行もそうです。あるいは日本中央競馬会といったものもそうでありまして、私たちは、ガバナンスをしっかりときかすためにやっているわけでございまして、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

○近藤委員長 内藤総務副大臣、簡潔に。

○内藤副大臣 はい、簡潔に。
 そもそも合議体とはどういうものかといえば、いろいろな立場、いろいろな考え方の人が集まって議論をして、正しい方向を導くというものでございます。その中に現場を預かる執行部の責任者が加わるのは、私は当然だと思っております。

○塩川委員 NHKは、そもそも国民・視聴者の代表として経営委員会が置かれているわけですから、そういう監視、監督機能に監視される人間が加わるのはおかしい。委員会設置会社のような営利企業とは違いますし、JRAにしてみても、これはそもそもJRA法の中に、監督する権限が農水大臣にあるとはっきりうたわれているんですよ。こういう点でもNHKというのは根本的に違うということを申し上げ、こういうことについての見直しが必要だということを申し上げて、終わります。