<第174通常国会 2010年05月21日 総務委員会 19号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 五人の参考人の皆様には、それぞれのお立場から貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。
 電波監理審議会の権限強化の問題や、また、NHK会長が経営委員会の構成員となり議決権を持つ、この問題については同僚委員からそれぞれ質問もあり、皆さんのお立場を伺わせていただきました。これは、この法案の入り口のような話でありまして、実際の、本体の方で少しお聞かせいただきたいんですけれども、お尋ねしたいのは、いわゆるハード、ソフト分離の問題のところでございます。
 最初に、広瀬参考人にお尋ねをいたします。
 このハード、ソフト分離の問題につきましては、放送局への監督権限を持つ総務大臣が、放送番組の編集を行う事業者を直接審査、認定することになるのは、行政による放送の自由への介入の余地を生むのではないのか、こういう懸念の声が上がっているわけですけれども、これは、研究会の報告が出されたとき、二〇〇七年の段階で民放連としても意見を出されておられます。
 そこにおきましては、これまでの「電波法に基づく放送局免許は施設免許であり、番組内容に対する行政の直接的な審査・関与を防ぐことで、放送の自由を制度的かつ厳格に保障してきた」、このように指摘をして、この「法体系をレイヤー型に転換することには」「番組内容に行政が直接的に介在することを認めるものであり、反対である。」と述べておられたわけであります。
 実際に法案が出されました。この法案を受けて、広瀬参考人のこの問題についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○広瀬参考人 放送法の一条と三条で、表現の自由、放送番組編集の自由ということが保障されております。これは放送法本法の一番基本的なところです。一方、電波法七十六条で、電波法というのはいわばハード面に対するいろいろな規制、安全措置というようなことが中心になるわけですけれども、その電波法の方で、いきなり放送事業の免許の停止、一時的停止だとか、期間を決めた停止だとか、そういうのができる。そこに三条の二違反も入ってくるような読み方になってしまった。そこに私たちは危惧を表明してきたわけでございます。
 今回、その部分は大きな変化がないまま書かれておりますけれども、我々の解釈は、そういう規定はあるものの、これは、立法の際に、最後の最後になって電波法に挿入したものであって、これまで当局側から、放送法の三条の二関係に係るもので放送事業の免許停止をすることはあり得ない、法制上もなかなか難しいんだという説明を受けてまいりました。
 今回、確かに大きな改正の時期だから、その点についても何らかの、もっとわかりやすい、だれが読んでも三条の二違反で免許の停止はそう簡単にはできないわという、そこを求めたい気持ちはあったんですけれども、また大変な時間もかかるしということもあって、当面は、これまでの経緯を踏まえて認めてきたということでございます。
    〔委員長退席、黄川田委員長代理着席〕

○塩川委員 今までの施設免許、電波法上の免許に当たりましても、実際には、番組準則に沿うような中身について、免許の段階でさまざまな資料の提出というのは現行も求められてきた。私は、それ自身が、それでいいのかという問題があると思っております。
 それが、今回は放送事業者という形で、直接、放送の編集を行う事業者に対しての認定ということになると、いわばむき出しの形で出ることになるんじゃないのか。ですから、民放連の皆さんにとってみれば、ハード、ソフト一致、免許も電波法の免許でいいという改正があればそれでよしということではなくて、認定を受ける新規の参入者、そういう事業者にとって懸念があるという問題は残されているんじゃないかなと思うんですが、その点でのお考えはいかがでしょうか。

○広瀬参考人 極めてありがたい御指摘でございますけれども、私たちの主たる関心事は、ハード、ソフトの一体といいますか、一体も認める、分離もよし、そういうところに大きな結論が出たということで、この改正をウエルカムということになりました。
 ハードの方とソフトの方の審査が別々になって、今度はソフトの分野が厳しくなるんじゃないかという点については、私たちはそういうことはないものと考えております。大臣の答弁でそこを聞いたという経緯はまだございませんけれども、それは、これまでどおりというふうに受けとめております。

○塩川委員 わかりました。私自身は、その点での懸念を持っておるわけでございます。
 続きまして、この点につきまして、日隅参考人と山本参考人にもお伺いしたいと思っているんですけれども、ハード、ソフト分離に置かれる中で、放送局への監督権限を持つ総務大臣が、放送番組の編集を行う事業者を直接審査、認定するということになるのは、行政による放送の自由への介入の余地を生むのではないのかという懸念をやはりぬぐえないと私は思いますが、日隅参考人のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○日隅参考人 その点については、まさに御指摘のとおりだというふうに考えます。
 民放労連の方も、その点につきましてたしか意見を出していたかと思うんですけれども、番組の内容等に直接影響を与え得る制度になり得るのではないかというふうに思っております。
 以上です。

○塩川委員 山本参考人に伺います。
 冒頭の意見陳述で、百七十四条の話もございました。私は、ハード、ソフト分離の問題とも兼ね合わせて、放送番組の編集を行う事業者を直接審査、認定する立場にある総務大臣が業務停止命令をできる権限を持つということが、放送の自由を侵害することにもつながるのではないのか。今回の認定制度の持つ問題点、あわせて、この業務停止命令との関係について、お考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

○山本参考人 お答えいたします。
 百七十四条は、現在の電気通信役務利用放送法などと同じような形で書かれておりますけれども、このような放送の業務の停止などということに関しましては、やはり具体的に限定をして、どういう場合ならば業務停止になるのかということははっきりさせていただきたいというふうに考えております。
 以上でございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 続いて、放送の定義の問題について、日隅参考人と山本参考人にお伺いをいたします。
 放送法の第二条で、「「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信をいう。」という形で、「無線」から「電気」通信という形に変わるわけであります。
 その際に、インターネットコンテンツが放送の対象となるのかどうかということが随分ネット上でも話題となっておりましたし、大臣は繰り返し、そんなことはないんだということでありますけれども、法文上で見た限り、どういう違いがあるのかというのがなかなかよくわからない。
 当委員会での議論におきましても、では、こういうインターネット上の動画サイト、ニコニコ動画とかあるいはユーチューブとか、こういうのとどう違うんだという話をすると、ユーチューブやニコニコ動画などは、画面を開いたからその動画をすぐ見られるものじゃない、ボタンを押さなければ、その求めに応じてでなければできないんだという説明なんですけれども、ボタンを押すという点でいいますと、テレビもボタンを押すのは同じなので、そういう点でも、もう少しきちっとした説明がないと納得が得られないというのが多くの皆さんの声ではないかなと思っておるわけです。
 ですから、これで本当にそういうことが言えるのかということについて私は若干心配をしておりまして、日隅参考人、山本参考人、それぞれお考えがございましたらお聞かせいただけないでしょうか。

○日隅参考人 今、放送の定義の話なんですけれども、連休前に、あるインターネットの番組の中で私自身が、インターネットも含まれるのではないかという趣旨の発言をしたこともありまして、私自身、あの法文を読んで、「直接」という部分についてどのように理解するのか、その法文上だけの解釈では、インターネットのコンテンツが除外されているということが必ずしも明確にはなっていないのだと思います。
 もちろん、これまでそのような運用がされてきているし、実際に今後もインターネットは含まないということで運用されるんだろうというふうには思うんですけれども、やはり法律というものは条文の解釈が客観的に明らかになるようにしていただかなければならないというふうに考えておりますので、もう一工夫して、その点がはっきりわかるようにしていただければ、私みたいに間違える者が出なくて済むし、変な憶測を生むこともなかったのではないかと思っております。

○山本参考人 お答えいたします。
 日隅参考人の御意見でほぼ尽くされていると私は思いますけれども、放送法上、「公衆によつて直接受信されることを目的とする」という部分と、ここは電気通信事業法が引いてありますので、先ほどのような説明では、IPTVなども含めまして、はっきりするのかしないのか、どうもいま一つわかりかねているところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 次に、番組基準の問題について、広瀬参考人にお伺いしたいんです。
 今回の法改正の部分で、番組調和原則について、時間、種別などについての公表ということもございます。この問題について、民放連としてどのように受けとめておられるのか。法律においてそもそも規定するべきものなのかどうなのか、こういう点についての疑念も持っておるわけですけれども、広瀬参考人、また民放連としてのお考えがございましたらお聞かせください。

○広瀬参考人 基幹放送の場合に、総合編成というのが条件になっております。
 総合編成とは何かということを一言で言うならば、報道もドラマもバラエティーもスポーツも教育、教養も、バランスのとれたものにしてもらいたいということだろうと思うんです。では、どの番組がそのうちのどれに入るのか、せめてそれは世間にも公表して、なるほど総合的な編成になっているなというような同意を得るようにしたいというのが今回の公表を求めるゆえんじゃないかと思います。
 といいますのも、例えばショッピング番組の位置づけが大変問題になってきまして、あのショッピング番組というのはCMそのものじゃないのか、つまり広告そのものじゃないかというのと、いやいや、そうじゃなくて、重要な生活情報を含めたものもあるので、一概に広告とは言えませんというような議論をしてまいりました。
 何をどの分野に入れるかというのは放送局が自主的に決めておりますけれども、今回、それが外にもちゃんと、きちんと公表されることによって、一体これが教養番組に入るのかどうかとか大いに議論されれば、それはそれで我々の総合編成の役に立つだろうというふうに思っております。
 ただ、教養番組が何%なければならないとか、報道は何%だ、バラエティーは何%以下だというような規制は一切我々は受けるべきじゃありませんし、課すべきでもないというふうに考えております。

○塩川委員 やはり何よりも真ん中に置かれなければいけないのは視聴者・国民の利益でございますから、視聴者・国民から見てどうなのかという点で、事業者として、その点についての自己規律、何よりも公表、公開するという原則そのものは必要だと思っておるわけです。
 そういう点についてのお考えと、あわせて、NHKとしてこの問題をどういうふうに考えるのか、福地会長と広瀬参考人に。

○黄川田委員長代理 広瀬参考人、前段の部分を御答弁いただけますか。(広瀬参考人「済みません、どの点でしょう」と呼ぶ)

○塩川委員 自主基準を設けるですとか、そういう点のお考えはどうでしょうか。

○広瀬参考人 民放連の中にも放送基準審議会というのがありまして、この問題を議論しておりますけれども、やはり基本的には各放送局の自主的な判断で、ショッピング番組をどういうふうに位置づけるかというのは、各放送局によりまして、ショッピング番組そのものの内容にも大きな差があるものですから、全体的に規制を設けるということはできないだろうというふうに思っております。

○福地参考人 放送番組の種目別の公表については、現在、新しい免許を取得するときにやっているというふうなことなんですが、この規制強化自体に反対するものではありませんけれども、この頻度がふえるということは、現場にはかなりの負担がかかってきます。その辺については御配慮をいただきたいというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 最後に、日隅参考人にお尋ねしたいのが、先ほど裁判のお話もございましたけれども、NHKとの関係での裁判を通じて、政治家の関与の問題ということについてのお話もございました。当委員会でも、「ETV二〇〇一」の問題についても随分議論になったわけであります。
 そういう点でも、やはり政治家が大臣として治める独任制の行政機関が放送行政を担うのではなくて、独立した行政委員会が担うという方向だと思うんですけれども、そういう点について、ヨーロッパのお話もございました。大きな流れになっているところだと思うんですが、そういう点で、今の段階における鳩山政権、原口大臣の対応方についてどのように受けとめておられるのか、お聞かせいただけないでしょうか。

○日隅参考人 その点について、民主党が中心となってだと思いますけれども、先ほど述べましたフォーラムの方で検討をされているというふうに聞いております。ですので、そこで十分な議論をされるのであればいいのだろうと思うんです。
 ただ、今回出てきた法案とそのフォーラムの中での議論との関係というのが少し見えにくいんだと思います。大臣は、それは関係ないんだ、別途きちんとフォーラムの中で検討していくんだというふうに言われてはいるんですけれども、では、なぜこれだけ批判のあるものについて強引に押し切ろうとされているのかということについては、少しわからないところがあります。

○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。