<第174通常国会 2010年05月25日 総務委員会 21号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 郵政改革法案について質問をいたします。
 五年前の郵政民営化法案のときにも特別委員会で私は質疑しましたし、原口大臣とも当時、そういう中での論戦を一緒に行ったものでございます。
 五年前の郵政民営化法というのが、郵便やあるいは金融のユニバーサルサービスを損なう、国民サービスを後退させるものであって、結果として、アメリカや財界の要求にこたえた形で国民共有の財産を食い物にする、こういう点で大反対をいたしました。この五年間がもたらしたものは、まさにそのとおりだ。そういう点でも、この郵政民営化にストップをかけるという点で、私ども立場を同じくするものであります。その上で、今後の制度設計をどうしていくのか、この点が今度の法案で問われてきているところでございます。
 私たちは、郵便とともに金融のユニバーサルサービスをしっかりと保障していく、そのためにも持続可能な経営形態をしっかりと確立していく、この立場でこの法案についてただしていきたいと思っております。
 そういう点でも、五年前に大いに議論した点では、小泉首相と一国会で五回も論戦を行いましたし、時間をかけて質疑も行いました。亀井大臣や原口大臣の御意見をしっかりと受けたいと思っていますし、大いにこういう議論を積み重ねていくその第一歩として、きょう質問をさせていただきたいと思っております。
 最初に亀井大臣に伺いたいのは、金融のユニバーサルサービスの確保の問題でございます。義務づけということで掲げておられるわけですが、この金融のユニバーサルサービスを確保する仕組みはどのようなものになっているのか、その点についてお答えいただけますか。

○亀井国務大臣 ユニバーサルサービスを具体的に実施していく組織、機関、これは具体的には郵便局がそれを担っていくという形になると思いますけれども、それの業務に、ゆうちょ、かんぽの業務を業務委託していくという形の中で日本郵政株式会社がその責任を果たしていく、そういう形になってまいると思います。
 このユニバーサルサービスをどう担保していくかということでありますけれども、私は何度も申し上げますが、すべてこれを機械化して、コンピューター化してそれをやっていくといいましても、これは人を相手にする仕事でありまして、じいちゃんばあちゃんからいろいろな方々、その地域に住んでおられる方々を相手にサービスをしていくわけでありますから、私は、やはりこの日本郵政の職員がそういうことをきっちりとやっていける、そういう仕事のやり方をしなければならない、このように考えております。
 そういう観点からも、職場のモラール、職員のモラールが極めて大事だということから、本人が希望しておられる場合、業務の形態からいって正社員が適当な場合は、非正社員を正社員にする。これは御党も同じように主張されておる点でありますので、共通する点でもあろうかと思いますけれども、私どももそのように考えておる。ただ機械的に、組織的に、形だけやればうまくいくというものではない、このように思っております。

○塩川委員 組織は人の問題ですから、非正規の正規化という点で、この具体化の実現のために、大臣としても大いに奮闘いただきたいと思っております。
 その上で、実際、その金融のユニバーサルサービスを確保する仕組みという制度設計の話として、今大臣は、業務委託契約という形でお話しになりました。もちろん義務がかかっているのは日本郵政会社ですから、でも実際に金融サービスを提供するゆうちょ、かんぽには、民間の金融会社となると、その義務はかかっていないということであった場合に、業務委託契約を通じて、どうやってそれが担保されるのか、その点についてお尋ねしたいんですが。

○大塚副大臣 御懸念のような、論理的な懸念はあろうかと思います。したがって、法律の中には、関連銀行、関連保険会社という考え方を持ち込ませていただいておりまして、これは改革法の第八章六十四条以降と第九章の六十七条以降に規定をしております。
 この関連銀行、関連保険会社をなぜ日本郵政株式会社が持つかといえば、日本郵政株式会社は、金融と郵便の基本的なユニバーサルサービスを顧客に提供するために、そうした関連銀行、関連保険会社を持つことができるというたてつけになっておりますので、もし今御質問のような、現実にはなかなかあり得ないと思いますが、ゆうちょ銀行とかんぽ生命がしっかりその責務を果たせないということになれば、他の先と委託契約を結ぶということも論理的にはあり得るということであります。
 したがって、法的にはどのように担保されているかと問われれば、今申し上げました第八章と第九章によって担保されているということになります。

○塩川委員 株式保有の三分の一超、これによって、いわば拒否権を発することができるということで担保されるという趣旨です。
 実際に、業務委託契約の場合で、これは郵政改革素案の資料のところにも、資料の六として「出資比率による経営関与のあり方」、今大塚副大臣が御説明になった出資比率に応じての関与のあり方についての表があります。そこで、「(金融二社の定款に「郵便局を通じた金融サービスの提供」を記載し、当該定款により金融ユニバーサルサービスを実現しようとする場合に必要な株式保有割合等)」ということで、三分の一超であれば拒否権を発動できますよ、定款について、何か重大なことを書きかえるということであればストップをかけられますよという旨のことが述べられているわけであります。ですから、三分の一超の株式を保有すれば、「経営上重要な事項に係る決議を単独で阻止可能」という仕組みとなっているわけです。
 ですから、金融二社の定款によって金融のユニバーサルサービスを確保する仕組みとなっている。その三分の一超の株式保有によって、定款変更を阻止することと相まって担保がされているということになるわけであります。
 そこで質問ですけれども、私は、そういう意味でも、そうなると定款がどうなるのかということに当然関心がいくわけであります。金融のユニバーサルサービスを実現する場合には、この資料の六の書きぶりでは、「郵便局を通じた金融サービスの提供」と書いてあるんですけれども、例えばここについて、郵便局と単に書くんじゃなくて、すべての郵便局を通じた金融サービスの提供とか、提供すべき金融サービスについても具体的に列挙して、提供すべき金融サービスを掲げるとか、そういった措置も必要なんだと思うんですけれども、その点についてはどうでしょうか。

○大塚副大臣 的確な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。
 午前中の他の委員の方の御質問にもありましたが、簡易郵便局においては、現状ではフルセットでの金融と郵便のサービスを行っていないところもございます。そういった先に、保険業務をやっていない簡易郵便局にいきなりそれができるかというと、なかなか難しい面もございます。したがって、すべてというふうに記述することはなかなか難しいところではございますが、しかし、日本郵政株式会社全体に、全国あまねく公平にサービスを提供する義務が課されておりますので、そうした現状を前提としつつ、今の法的責務を果たせるように、これから経営をしっかり行っていくということだというふうに理解をしております。

○塩川委員 定款の書きぶりについては今の段階できちんと示せないということでありましょう。そういうお話でありました。
 繰り返しますけれども、今回の法案では、ユニバーサルサービスの確保の仕組みというのは、この金融二社の定款と、その変更を単独で阻止することができる株式保有ということで担保しているわけです。しかし一方で、この金融二社というのは、銀行法上、保険業法上の民間会社となっているわけで、経営の自由を縛られず、その一方で、親会社のユニバーサルサービス義務を保障するサービス提供を求められているという矛盾の中に置かれるわけです。これが両立する定款が可能なのかどうかということがまさに検証されなければいけないと思うわけです。
 そういう点でも、私は、しっかりとした定款、民間会社としての営利追求と、ユニバーサルサービス義務を保障するサービス提供を求められている、これを両立する定款がどういうものなのかということについて、まずは委員会に出していただいて、たたき台として議論していただきたい。それについて、ぜひお出しいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○亀井国務大臣 それは、極めて定款が重要であると思いますけれども、私どもといたしましては、委員も御指摘のように、そうしたユニバーサルサービスをきちっと遂行できる、そのためにはどうあるべきか、一方では民間企業としてどうきちっと利益を上げていけるか、そういうことについて、やはり両方を満足するようなことのできる、それを可能にする定款でなければならないと私どもは考えておりますので、委員御指摘のように、そういう視点で定款というのは決めてまいりたい、このように思っておるわけです。

○塩川委員 そういう趣旨の提案となっているかどうかというのを検証する上でも、ぜひその案というのを委員会にお出しいただきたい。
 ぜひ、理事会でお取り計らいいただきたいと思います。

○近藤委員長 理事会で諮らせていただきます。

○塩川委員 金融のユニバーサルサービスを保障する上で、親会社、日本郵政会社にその義務をかけるわけですけれども、本来、わかりやすくするのであれば金融二社にかければいいわけですよね。金融二社に義務づけをかければいいということが明瞭だと思うんですけれども、そうしなかった理由は何なのかについて簡単に御説明いただけますか。

○亀井国務大臣 それは、やはりトータルとして責任を負う、そういうものがなければならない、そのように考えておるわけでありますので、この法案のようにいたしたわけであります。

○塩川委員 いや、それは余り個別の説明にはなっておりませんけれども、なぜ書けなかったんですか。

○大塚副大臣 ユニバーサルサービスという言葉は固有名詞のように使われておりますけれども、実は一般名詞でございますので、この場合のユニバーサルサービスとは、明治三年以来、郵便事業と金融の基本的な事業がセットになったユニバーサルサービスを国民の皆さんに提供しているという形で今日まで来ているわけでございます。
 したがって、今大臣が申し上げましたように、これをばらばらに、例えば日本郵政株式会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命というふうに責務を課した場合、個々の業務についての責務は負えても、トータルとしてだれがその責務を負っているかという主体が不明確になりますことから、親会社である日本郵政株式会社にその責務を課す法律体系といたしまして、そして、日本郵政株式会社自身は固有の金融業務を行う権能を持っておりませんので、関係の深いゆうちょ銀行とかんぽ生命の代理店業務を行えるという形にして、実態的に一体となった責任の主体を明確にした次第でございます。

○塩川委員 亀井大臣は、本会議の答弁で、「限度額の引き上げについては、御承知のように、民間金融機関は青天井であります。その中で、山の中まで、島までユニバーサルサービスをお願いする以上は、一千万の限度額で手足を縛ってやれというのはむちゃだ、私は、このように考えて、二千万に上げる措置をとったわけでございます。」と答弁されておられます。金融二社については、銀行法上、保険業法上の民間会社でありますから、法律上、ユニバーサルサービス義務づけということにはなっていないわけですけれども、義務が課せられているのは日本郵政会社になるわけです。
 そうすると、例えば大塚副大臣のケーススタディーを拝見していても、ユニバーサルサービスのコストを負担するのは、今回の法律案では日本郵政グループと説明されているんですけれども、ユニバーサルサービスのコストを負担するのはこの義務づけのある日本郵政会社ということなんですか。

○大塚副大臣 一義的にはそういうことになります。もっとも、今後の株式の保有比率の推移等にもよりますが、この子会社が連結対象である間は、結果として、連結決算が行われる中で、間接的にゆうちょ銀行とかんぽ生命も負担をするという構造にはなると思います。ただ、繰り返しになりますが、一義的には、そのコストを負担するのは日本郵政株式会社であるわけであります。
 そして、そのコストについては、先ほど西委員の御質問にもありましたが、国の負っている責務を日本郵政株式会社に課すわけですから、国がさらに本源的にコストを負担するべきだという議論もありましたが、これまでの経緯もありますので、日本郵政株式会社自身が負っていくという法の構造にさせていただいた次第でございます。

○塩川委員 郵政公社時代まで、税金の投入もそもそもなかったわけですから、そういうことでやってきたわけであります。そういう点で、今お話しのように、一義的にはそういうことになるということでした。
 その上で、金融のユニバーサルサービスのコストは幾らになるということでお考えになっておられるんでしょうか。

○大塚副大臣 これは、先ほども申し上げましたが、明確に定義をすることがなかなか難しいということで、私自身が担当副大臣として一つのケーススタディーをお示ししたわけでございます。
 もしお手元に資料があれば御確認をいただきたいと思うんですが、今、金融のユニバーサルサービスというふうにおっしゃいましたので、過疎地域の金融業務という定義で計算を仮にしてみると、平成十五年度までに過疎地域の郵便局の平均費用とか平均収入というデータがございましたので、そこから算出をしました平均赤字額に過疎地域という定義の中に該当する店舗数を乗じますと、その金額が四百六十四億円になったという次第でございます。

○塩川委員 今のように、大塚副大臣のケーススタディーで、ユニバーサルサービスコストについての試算を行っておられます。ここで、事業別に見た郵便局のコスト、及び当該コストに地域性を勘案した整理では、金融のみの場合に、ケース1は九千五百五十億円、ケース2の場合は七百二十億円、ケース3は三百九十億円となっております。
 その上で、ユニバーサルサービスのコストについて、一義的には日本郵政会社が負担をするけれども、金融二社についても、間接的に負担もという話も今ございました。
 私は、こうしたコストを民間金融二社が、民間会社としてそれは受け入れられないということもあり得る話だと思っておりまして、負担を拒否する権利というのは当然あると思いますが、そういう点では、例えば手数料の額をどうするかといった点でも、当然意見の相違というのが出るかもしれない。
 そういった日本郵政会社と金融二社の間で意見の一致がない、対立が生まれるといった場合に、これをどういうふうに調整するということになるんでしょうか。

○大塚副大臣 大変本質に迫る御質問をいただいていると思っております。したがって、だからこそ今回の改革が必要であり、そして先ほどの御質問にありましたように、定款が重要になってくるわけでございます。
 民間企業と一口に申しましても、それぞれの企業がどういうことを目的にした経営を行うのかというのは、それぞれの企業の判断でございます。その判断は、株主の意思にもかかわりますが、株主総会を経て決められる定款によって規定される部分がございます。
 もし、ゆうちょ銀行とかんぽ生命が、この郵政改革の後の郵政事業に参画をすることによって、このユニバーサルサービスを担保するための業務を行うことが民間企業としての自分たちの経営の目的だというふうに定款等に定められる場合には、今委員の御懸念のようなことはなくなるわけであります。
 ただその一方で、民間企業でありますので、いや、もうそういうことには参画したくない、独自の意思で経営を行っていきたいということになった場合には、ゆうちょ銀行とかんぽ生命が日本郵政グループから離脱する可能性があるわけであります。だからこそ、百三十年、四十年続いてきた郵政事業が、徐々に自由な郵政事業として発展していくこのプロセスにおいて、平成二十九年までにその株式を完全売却するということは拙速に過ぎるという判断のもとで、当面の間は三分の一超の株を持つことによって、重要な経営の決定事項についての拒否権を持つ、つまり定款の変更権も持つという形にいたしました。
 そのことによって、例えば、仮定の話でございますが、今お話にありましたような、ゆうちょ銀行とかんぽ生命が、もう郵政事業というユニバーサルサービスには参加したくないというようなことを早々に形にするというようなことは、政府として、あるいは日本郵政株式会社として阻止できるような経営構造にさせていただいた次第でございます。

○塩川委員 先ほど、定款の変更権と……。定款の変更の拒否権でいいですか。

○大塚副大臣 正確に申し上げますと、会社法上は、経営上重要な事項に係る決議を単独で阻止可能ということでございますので、この決議等が、定款変更との関係等においても優位な効果を持つというふうに理解をしております。

○塩川委員 ですから、そういう点でも定款案がどんなものかなというのは大変関心があるわけで、今言ったように、そういうことが一番の担保になっているわけですから、私はしっかりお示しいただきたい。それなしには、本当に確保されたと私としては認めがたいということを申し上げておきます。
 それで、ドイツにおきましても、現にこういった対立というのはあったわけですね。ドイツ・ポストとポストバンクが郵便局の手数料をめぐって対立したということになっているわけですけれども、この点についての事情はもちろん御承知だと思うんですが、これはどういうふうに決着したんでしょうか。

○長谷川大臣政務官 最終的に、ドイツの場合には、分離されました郵便貯金銀行が郵便局への委託を全部取りやめたという形になったわけでございます。

○塩川委員 ドイツ・ポストがポストバンクを一〇〇%子会社にするということだったんじゃありませんか。

○長谷川大臣政務官 正確に申し上げますと、ドイツ・ポストから独立をした郵便貯金銀行、ポストバンクが郵便局への委託を全部取りやめるという話になりまして、その株を全部ドイツ・ポストが買い戻した、こういうことでございます。

○塩川委員 一〇〇%の子会社にした。もちろん、郵貯の規模が違いますから、単純にこれをスライドさせる話ではありませんけれども、しかし、これが歴史的な一つの事実としてあるんだという点はしっかりと見なければいけない。
 そういう点で、五年前の郵政民営化法と今回の法案の違いですけれども、今回の法案では、誕生する新日本郵政株式会社は、株式会社で、政府の株式保有割合は三分の一超となっています。これは小泉民営化法と同じ。ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、銀行法、保険業法上の民間会社であり、この点でも小泉民営化法と同じ。
 違いは、小泉民営化法では、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を、日本郵政株式会社が一たんは全株式を処分するという仕組みであったのに対して、今回の法案は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の三分の一超を日本郵政株式会社が保有し続けるということだけでありまして、その点では小泉民営化というのが、彼らの立場でいえば、筋を通して完全民営化を目指したわけですけれども、今回の場合は、民営化ではあるけれども、不完全民営化といいますか、そういうスタンスのものだなと受けとめております。
 しかし、金融二社は、利潤追求の民間会社とすることには変わりがないわけであります。そもそも、金融二社をなぜ民間会社とする必要があるのかという議論なんですが、その点はいかがですか。

○大塚副大臣 その点は、政府・与党内でも随分いろいろな議論がございました。固有名詞を出して恐縮でございますが、当委員会の筆頭理事の福田先生などは、公社的な存在の方が、やはりユニバーサルサービスを国民の皆さんに責任を持って提供する上では適しているのではないかという御意見もありました。
 しかしその一方で、やはり今のゆうちょ銀行、かんぽ生命の業務の内容が余りにも限定的になっておりますことから、これをより自由な形で発展をさせていく、そして他の金融機関との業務提携等も念頭に置きつつ、地域の経済や国民経済全体に寄与し得るような展開を想定いたしますと、特別法のもとに置くよりも業法のもとに置いて、他の民間金融機関と同じ競争条件のもとで、行く行くはしっかりと新しい業務に取り組めるようにした方がいいであろうという判断のもとで、子会社については業法のもとに置くという法案とさせていただきました。

○塩川委員 新規業務にもどんどん参入していく、そういう同じ競争条件でやっていくということで、機動的に対応するということであります。
 小泉郵政民営化では、郵政事業はじり貧だから、それで民営化をして、新規事業、新規業務を行うことでじり貧から抜け出す必要性が強調されていた。この辺は議論されたわけですけれども、この点については今の政府も同じ認識なんでしょうか。

○大塚副大臣 基本的には同じでございます。
 じり貧という表現が適切かどうかは微妙なところでございますが、やはり郵政事業というのは、特に金融二社については徐々に、規模もその内容も、やや発展性に欠ける方向に来ていたということは事実だというふうに思っております。
 ただその一方で、小泉総理のもとでの民営化においては、きょう柿澤委員からも御指摘がありました、当時の骨格経営試算という、クレジットがだれの者かはよくわかりませんけれども、その骨格経営試算によると、民営化をするとその傾向が劇的に改善するという説明であったわけでありますが、現実にはそうではなく、むしろ、それまでのトレンド以上に資金量も減り、そしてガバナンスについても脆弱な状態になってきておりますので、今回、私どもの改革は、それを改善する方向で内容を検討し、提示をさせていただきました。
 したがって、御質問の内容に戻りますと、徐々に脆弱になっていた日本郵政グループの経営を強化し、発展させる方向を念頭に置いているという意味においては、そのとおりでございます。

○塩川委員 このじり貧論、じり貧という認識は基本的には同じという話で、先ほど骨格経営試算の話を出されましたけれども、竹中大臣がじり貧論の根拠としてさんざん使ったのが骨格経営試算だったわけですね。その点は大塚副大臣なども指摘をされておられたわけですけれども、この骨格経営試算で、郵政事業がこのままでは行き詰まると描き出して、民営化による新規業務で大幅な利益が得られる、民営化をバラ色になると正当化するための試算という指摘だったわけです。
 そうした政策誘導のための試算であっても、これは五年前に我が党も議論をしましたように、郵政公社が存続した場合において、郵政公社が赤字に陥ることなく存続するシミュレーションも成り立つということを佐々木憲昭議員などが指摘をしたわけであります。ですから、新規事業を可能とするための民営化の必要性が証明できなかったということにもなるわけです。
 そこで、この大塚副大臣のケーススタディーについてなんですが、シミュレーションの一つとして、ゆうちょ銀行にとって一番不利な条件のもとで、ゆうちょ銀行の収益が出されていると思うんです。ゆうちょ銀行の損益に関するケーススタディーにおいて、一番不利な条件のもとでの収益見込みについてどのような試算を出されているのか、お答えください。

○大塚副大臣 これは先ほども申し上げましたが、どなたでも後々検証可能な、客観的なデータしか使っておりませんので、今御指摘の点について、もし私の資料をお持ちであれば十ページのところをごらんいただきますと、ゆうちょ銀行については、「過去二年間の金利状況を前提条件として、仮に五年間で貯金残高が一千億円増加すれば、五年後の資金運用収支は約九億円増加する」、こういう計算をしているわけであります。
 その一方で、残高については、私が提示申し上げたケーススタディーで、ミゼラブルな方で申し上げれば、今後五年間で他の金融機関も含めた金融全体の個人預貯金残高全体が変化しない場合で、郵貯だけが減少して他の金融機関が増加するという前提に立てば、十・三兆円減少するわけでありますので、一千億円で九億円ということになりますとその約百倍になりますので、九百億円の減益になるという計算になります。

○塩川委員 そういうシミュレーションで、この資料の十二にありますけれども、預金が十・三兆円減少する場合に、経常利益では四千百三十一億円という数字、これはそのとおりですね。

○大塚副大臣 確認でございますが、それはかんぽ生命の場合でございますか、十二ページと申しますと。(塩川委員「資料の十二」と呼ぶ)資料編の方でございますか。(塩川委員「ええ、ケーススタディーの方で、右から二つの」と呼ぶ)失礼いたしました。
 資料の十二、おっしゃるとおりでございます。

○塩川委員 竹中大臣の骨格経営試算でも、このケーススタディーの場合でも、いわば新規業務なしのスタイルでも郵貯事業が一定の収益が確保されることになっているわけです。ですから、必ずしもじり貧ではない。
 この間でいえば、もともと生田さんのころは、多過ぎる、危ないから減らせという方針だったわけですし、西川さんのころというのはあれだけの混乱ですから、実際、伸ばそうと思っても、結果的には減少せざるを得なかったというのが実態であるわけですよ。
 そういう点で、私は、新規業務をやらなければサステーナブルではない、持続可能とならないという試算をしっかり示していただきたいんです。大臣が、新規業務とか限度額引き上げと言うわけですけれども、では、本当に新規業務をやらなければ持続可能にはならないという試算をしっかり示していただきたいと思うんですが、いかがですか。

○大塚副大臣 これもまた、二〇〇五年を経験させていただいた立場からすると大変興味深く、本質的な御質問をいただいたと思うんです。
 竹中さんが当時、骨格経営試算でお示しになったのは、今塩川委員がおっしゃったのと多分同様のロジックで、したがって新規業務をやればこういうふうになるというふうに、いろいろな新規業務を想定されたわけであります。
 例えば、郵便については、国際展開をすれば二百億円の収益が上がる、業務の効率化で三百億円。貯金については、融資等運用を行うと三千二百億円の収益が上がる。そして保険については、短期間のうちに三〇%が第三分野になって、五十億円になる等々。
 こういう想定を置いた結果、結局、それまでのトレンドでありますと、二〇一六年度には四千二百八十三億円のグループ全体の利益に低下していくところを、その新規業務で六千五十億円を付加して、二〇一六年度にはグループ全体で一兆三百三十三億円の利益を上げるという試算を、だれのクレジットかわかりませんが、御提示をされて議論したことは委員も御記憶にあると思います。
 したがって、この新規業務をどのように想定するかというのは非常に難しいわけでありまして、政府がこのような新規業務を想定するといってもし提示をした場合には、では、それは一体、政府としていつ認可をするのか、いつその業務を認めるのか、そういうことまですべて予定調和のように示した上でないと、結局、骨格経営試算と同じようなことになるので、大変難しい御提案だというふうに思っております。

○塩川委員 そうしますと、なぜ新規業務をやらなければいけないのかという論拠を示さないままになってしまうんじゃないのかということであります。
 もともと、新規業務をやってくれというのは国民や利用者の要望ではなくて、日本郵政から出されているものですから、日本郵政自身は株式会社として、利潤なりもうけを上げるということについては、当然、その筋での要求は何でも行ってくる。それが正しいかどうか検証するというのが政府の姿勢であり、我々の果たすべき役割だと思っております。その点について、きちっとした検証もないままに進めていいのかということが問われてくるわけです。
 金融二社を民間とするのであれば、ゆうちょ銀行を、政府出資、全国ネットワーク、三事業一体から切り離して、形式上イコールフッティングを確保した小泉郵政民営化法というのがいわば正しいというか、整合的というか、その筋でいえばそういうふうになるのかもしれません。しかし、小泉郵政民営化がもたらしたのは、金融のユニバーサルサービスの義務を廃止して地域から郵便局を奪っていく、こういった中身だったわけですから、国民が審判を下したのだと。
 であれば、今回の法案は、金融のユニバーサルサービス確保の展望が本当に見えてくるのか。郵政グループに政府出資、全国ネットワーク、三事業一体という特権を認めて、中小金融機関とか、国民にとっても地域経済にとっても利益がなく、郵政グループだけが得をするような、そういう法案となっているのではないか。この点についてのしっかりとした検証が問われているということを申し上げておくものであります。
 時間の関係で、最後に、郵政の非正規の問題について、ぜひ亀井大臣にお伺いしたいと思っています。
 今や郵政グループは、二十万人を超える日本最大の非正規雇用を抱える事業体となっており、貧困と格差を拡大した小泉構造改革の象徴でもあります。郵政民営化の見直しでは、当然、郵政グループの非正規雇用の見直し、正規化が不可欠の課題です。
 郵政グループが、五月七日に、期間雇用社員の正社員への登用について発表しました。正社員登用に応募できる者は、勤続三年以上、月給制契約社員は勤続二年以上で、週所定労働時間が三十時間以上の六十歳未満の期間雇用社員とするとされています。
 我が党の大門実紀史参議院議員が、三月十二日の参議院予算委員会で、三年以上の契約を繰り返している非正規雇用の社員が十二万一千七十人いるという事実を示して、正社員化を求めました。亀井大臣は「議員のおっしゃるとおりにいたします。」と答弁をされて、これは非正規の皆様を大いに励ますものであったわけであります。こういった利潤追求のあり方を転換していくという点でも重要な答弁だったと受けとめております。
 しかし、郵政グループの方針は、三年以上働いているという非正規の人十二万人を正社員化の対象としているんでしょうか。

○亀井国務大臣 今、十一月時点で六万五千人程度の方々に正社員になっていただく、そうした方向での検討をしておりますけれども、十万人近くの人が正規社員を望んでおられる、また、業務の中身においても正社員として働いてもらうことが適当だというのは大体その程度になるのではないかという、まだ正確ではありませんが、雇用の実態について、そういう診断を齋藤社長はしておるわけであります。
 その基準でありますけれども、現在、まだきちっとしたものをつくっておるわけではございませんけれども、私が内々に聞いておりますところでは、大門議員からも非常に具体的な御提起もいただき、また委員からもそういう御提起をいただいておる、そういう状況も我々はきちっと承知をしておりまして、日本郵政が今具体的な中身を詰めておる最中でありますけれども、大根を切るみたいにぴしっと仕分けをしてしまうということはしないで、ある程度弾力的にそのあたりは運用したい、このように考えておりますので、一応、六月の中旬ぐらいをめどに具体的なものをつくり、従業員に対して提示をする準備を今しております。
 相当弾力的な運用をいたす予定にしております。

○塩川委員 その点で、最後に一問伺って終わりにしたいんですが、正社員化の対象が実際には半分になった。例えば週三十時間未満で働いている方も多いんですけれども、その対象として、今、日本郵政が考えていると言っているのがそうで、今大臣がおっしゃるように、大根を切るようにすぱっとやるんじゃなくて、弾力的にやってもらいたいという線で、大いに頑張っていただきたいと思っておるわけです。
 そういった週三十時間未満という方も、要するに、郵便局の方から三十時間以内にしてくれと言われて実際に働かされているわけで、皆さんもやはりしっかり働きたいし、正規化を願っている。そういう方も含めて、ぜひ対象としてお願いしたい。
 その上で、私はそういう意味でも、非正規が拡大するという背景は、大きく言えば、構造改革路線のもとで労働分野の規制緩和が行われたことが非正規を拡大させたわけであります。そういう意味では、郵政においても同じことが行われている。
 郵政事業、郵便事業において、信書便法などについての見直しを通じて規制緩和が行われて新規の事業者が参入をする、クリームスキミング、いいとこ取りがある中で、結果として郵便事業の採算が落ちていく。そういうもとで、郵便局で働く方の多くが非正規に変わってしまう。また、同じように宅配事業者でも、実際に働いている方は皆さん非正規ですから、こういう不当な競争のもとで、いずれにしても非正規が拡大するという結果しかもたらさなかったんじゃないのか。こういう点についての見直しこそ必要なんじゃないのか。
 郵政改革という見直しを行うのであれば、こういう郵便事業における規制緩和を見直すことで、郵便のユニバーサルサービスも保障するし、労働者の非正規の正規化を求めていく、こういう転換こそ行うべきだということについて、亀井大臣、原口大臣、ぜひ一言ずつお願いします。

○亀井国務大臣 日本郵政、これは日本最大の企業でもあるわけであります、また世界最大の企業でもあろうかと思います。これの雇用形態をノーマルなものにしていくことが、今日本を覆っている、人間の犠牲の上に立って、とにかく利益を上げていくのが当たり前だという、今の形態を変えていくまさにその先兵になってもらいたい、このように私は考えております。
 なお、先ほどの三十時間というのは今変えさせておりますので、それは、さらに弾力的にやるような予定にしております。

○原口国務大臣 塩川委員の御指摘は、大事な御指摘だと思っています。
 特に、やはり人間らしい働き方、これが基本です。非正規社員が会社員の大きな割合を占める背景には、郵便市場の規制緩和のほかに、非信書送達分野での競争や経済の停滞、行き過ぎた効率性の追求、効率性といいながらも、さっき申し上げたように物すごく非効率で、一部の人たちだけが得をする、こんなことはあってはならないというふうに考えておりまして、亀井大臣とともに、働く人たちを大事にする郵政、これは人間がやる企業でございますので、人間らしい働き方が基本であるべきだ、このように考えています。

○塩川委員 郵政民営化の見直し、郵政改革を行うというのであれば、郵便市場の規制緩和路線も見直すべきなのだ。この点について訴え、こういう審議こそ必要でありますので、質疑終局、採決などをきょうやるようなことは断じて認められない。来週以降もしっかりとした審議を行うことを強く求めて、質問を終わります。