<第174通常国会 2010年05月31日 本会議 33号>



○塩川鉄也君  私は、日本共産党を代表して、郵政改革関連三法案に対して、反対の討論を行います。(拍手)
 郵政民営化は、小泉構造改革の本丸とされ、二〇〇五年の国会では百時間を超える審議が行われました。その見直しを掲げる法案を、わずか六時間、一日で審議を打ち切ったことは重大です。
 近藤昭一総務委員長自身、地方公聴会、合同審査、参考人質疑についての与野党協議を求めていたにもかかわらず、放送法案に続けて、一週間に二度の採決強行に及んだことは、言論の府である国会の自殺行為と言わなければなりません。断固抗議するものであります。
 反対の第一の理由は、小泉内閣の郵政民営化法によって廃止された、金融のユニバーサルサービス、郵貯、簡保の全国一律サービス義務を回復し、保障するものになっていないことです。
 法案では、郵政持ち株会社、郵便事業会社と郵便局会社を統合した新日本郵政株式会社に金融の全国一律を課すとしていますが、新日本郵政株式会社も、郵便局に金融サービスを提供するゆうちょ銀行もかんぽ生命も、利潤追求の株式会社であります。しかも、ゆうちょ銀行、かんぽ生命は、銀行法、保険業法上の民間会社であり、全国一律サービスの義務づけを株式会社に義務づける制度設計には、根本的な矛盾があります。
 加えて、新日本郵政株式会社が保有する金融二社の株式は三分の一超にすぎず、全国一律サービス義務に基づく経営方針を金融二社に徹底することもできません。これでは、金融のユニバーサルサービスの保障を求める国民の声にこたえられず、民営化の見直しの名に値しないと断ぜざるを得ません。
 第二の理由は、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額の引き上げ、新規事業の拡大で、地域金融、地域経済に混乱を及ぼす懸念があることです。
 大塚副大臣が二月に発表した郵政改革素案においても、「民間金融機関、とりわけ中小地域金融機関にとって、政府出資、全国ネットワーク、三事業一体で資金規模の大きい日本郵政グループが「経営上の潜在的脅威」であることは理解できる。」と述べていたのであります。法案が成立し、限度額が引き上げられ、新規業務が拡大すれば、郵政グループは、中小地域金融機関の潜在的脅威から現実的脅威に転換し、地域金融、地域経済の大きな波乱要因となることは避けられません。
 金融二社には、国民の求める全国一律サービス義務を免除する一方、政府出資など民間にはない有利な条件のもとで金融業務を解禁しようというのが今回の法案であります。小泉郵政民営化が、金融二社の全株式を売却することでアメリカと財界の要望にこたえたものなら、今回の法案は、郵政グループの利益拡大のためにその一部を手直ししただけの、国民不在の見直し法案であります。だからこそ、民主党の小沢幹事長は、郵政グループが抱える票をねらった選挙対策とさえ巷間言われているこの法案の成立を指示し、与党は問答無用の採決強行を行ったのであります。
 私は、昨年の郵政民営化凍結法案に対する本会議質問で、見直しの基本方向として、金融のユニバーサルサービスの義務づけ、一社体制、公的事業体の三点を提起しました。
 これに加えて、郵便の規制緩和に対する見直しも急務であります。小泉内閣のもとで進められた郵便市場の規制緩和によって、もうかる都市部へのメール便のいいとこ取り参入が進み、郵便市場は、限界を超えたコスト競争にさらされたのであります。この結果、郵便事業と民間宅配事業者の双方に非正規雇用が拡大し、郵政グループは、二十万人を超える日本最大の非正規雇用を抱える事業体となったのであります。まさに、貧困と格差を拡大した小泉構造改革の象徴であります。
 郵便のユニバーサルサービスの維持、非正規雇用から正社員化への転換のためにも郵便市場の規制緩和の見直しが不可欠ですが、今回の法案には、この視点が全く欠落しています。
 日本共産党は、郵政グループの利益のための見直しではなく、国民のための見直しを求めて奮闘することを表明し、反対の討論を終わります。(拍手)