<第175臨時国会 2010年08月03日 総務委員会 1号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 皆さんの御配慮で、質疑順序について変更させていただきました。ありがとうございます。
 私の方からは、きょうは停波まで一年となりました地デジへの移行の問題、アナログ停波の問題について質問をいたします。
 アナログ停波まで一年足らずとなったわけですが、アナログのテレビは視聴できたのに地デジのテレビは見られなくなるという新たな難視世帯、これが実際には数十万世帯も生まれることを前提にしたのが今回のアナログ停波の計画であるわけで、この点からも見直しが必要だということを私は訴えてまいりました。受信側の準備の問題でいいましたら、やはり経済的な理由でデジタル化対応が困難な世帯の問題ですとか、ビル陰難視のデジタル化対応について関係者の協議が調わない問題など、とてもあと一年足らずでの地デジ対応は困難だと私は思います。
 視聴者の多額の地デジ負担というのは大変大きなもので、全国消費者協会の調査などでも、地デジ対応のために幾ら費用がかかりましたかという問いに対して、平均して二十七万円という額が出てくるわけです。
 そこでお尋ねしますが、政府としてさまざまな支援策を行っております。低所得者への支援策も行っておりますが、受信機器の購入等の支援の対象となっているNHKの受信料全額免除世帯の中で、生活保護世帯が何世帯ということで予算措置をされておられるのか。また、厚労省がここで発表いたしました平成十九年の国民生活基礎調査特別集計による推計に基づく最低生活費未満の世帯、いわば生活保護相当以下の世帯の方がどのぐらいあるのか。
 こういう数字について、この間、総務省の方でも答申などを含めて出されておりますので、お答えいただけますでしょうか。

○内藤副大臣 お答えをさせていただきます。
 NHK受信料全額免除世帯は全部で二百七十万世帯あるわけなんですが、そのうち、生活保護世帯は百三十万世帯となっております。
 そしてまた、次にお尋ねの、厚労省の調査によってどういう実際の数字が出ているかということでございますが、生活保護世帯を除いた生活保護基準未満の世帯は、まず一つ目の仮定として所得のみを考慮した場合は、二百三十一万から五百九十七万世帯という幅のある数字となっております。そして、所得のみならず資産をも考慮した場合は、約十四万から二百二十九万世帯となっております。
 以上でございます。

○塩川委員 情報通信審議会の七月の答申の中で、この厚労省の推計で、最低生活費未満の世帯は五百九十七万世帯というようなお話がございました。このときの被保護世帯数が百八万ですから、いわば捕捉率と言われるような数字の考え方でいえば、実際の生活保護の世帯というのは対象となる方の一五・三%ぐらいじゃないのか。極めて少ない割合。四百万世帯以上の方々が、政府の支援の対象にならないような低所得の世帯ということでもあるわけであります。
 実際には、こういう世帯がたくさんあることに加えて、先ほど言ったようなビル陰共聴についての実際の関係者の調整がおくれて、政府の支援措置も予定どおり進まずに、さらに先送りするようなことにもなりかねないような状況があるわけです。
 ですから、そこで原口大臣に伺いますけれども、来年の七月の時点で、こういったアナログの停波によってテレビが視聴できなくなる世帯が出ない、生じないというふうに大臣はお考えなんでしょうか。
    〔委員長退席、黄川田委員長代理着席〕

○原口国務大臣 塩川委員にお答えします。
 今、大事な御指摘をいただいたと思います。現実に捕捉をされている生活保護世帯が、私たちは新政権になって貧困率という数字も出させていただきました。本当に正しいマッチしたものなのか、この精査はしなければいけません。
 それから今おっしゃるように、まだ各省の施設でも、この間、閣僚懇でも私の方から数字を出させていただきましたが、中央省庁でさえまだ未整備のところもございます。これを十二月までに、すべて各省はめどをつける、公的施設については計画も全部立てるというふうにしています。
 今委員が御指摘の民間施設についても、一つ一つの都道府県ごと、あるいは市町村ごと、この間、石川県で完全停波を実現しましたけれども、各自治体にもお願いをし、御指摘のような事態が生じないように、連携をしてデジタル化推進の運動の輪を広げてまいりたい、このように考えています。

○塩川委員 テレビ難民が生じないと考えているのかということについての直接のお答えがなかった。そういう点では、テレビ難民が生まれることを否定できないということでもあると思います。
 先ほど言った石川県の珠洲市の事例というのはまさに総がかりでやった結果ですから、それと同じ規模で今できているのかといえば、そうはなっていないわけですから、そういう現状を踏まえて対応しなければいけないわけですし、テレビが視聴できない人を放置してはならない、そういう点でも、あまねく義務のないアメリカにおいても二回にわたって延期をしたわけですから、日本はあまねく義務がかかっているわけですから、アナログの停波の時点でテレビが視聴できなくなるような世帯を残すことというのは絶対に許されないわけであります。
 ですから、私は、アナログの停波は延長すべきだということをずっと申し上げてきたわけですが、アナログの停波の延期をすることによって、まさにテレビの視聴者にとって何か迷惑というのは生じるんでしょうか。

○内藤副大臣 私からお答えをさせていただきます。
 改めて言うまでもなく、今、放送局はアナログとデジタルのサイマル放送をやっているわけなんですが、御存じのように、今アナログの送信機は新たには製造しておりませんし、また取りかえ用の部品もつくってはおりません。ということで、放送局の方々に言わせれば、だましだまし今アナログの機器をもたせているというところでございます。それが仮に延期となったら、当然のことながら、放送途中に故障する可能性も出てくる。そういった不安定な状態でアナログ放送を視聴者の方々に提供しなきゃいけないということがあるわけでございます。ですから、総務省としても、絶対にこの七月二十四日に完全実施するんだという、その決意で取り組んでいるところでございます。
 そして、もう一つだけお答えをさせていただくならば、この完全実施が済んだ後、アナログの空き地帯を使って国民に有益なサービスを提供しようと考えております。その一つの例を申し上げさせていただくならば、新たなラジオでございます。
 御存じのように、今、ラジオは特に東京だとかなどの都市部においてはほとんど聞こえない状態でございます。しかし、ラジオというのは国民の方々に災害情報等を適時的確にお伝えする大変身近な機器であるのですが、それが特に都会においては機能していない、これはゆゆしき問題であるということで、デジタルラジオ、V―LOWという言い方をさせていただいておりますが、そういったものを私のもとで、研究会で議論をさせていただいておりますが、空き地帯を使ってデジタルラジオ、つまり、V―LOWでもって国民の皆様に災害情報等を適時的確にお伝えする、このサービスの展開がおくれてしまうということも懸念をされるということを申し上げさせていただきたいと思います。

○塩川委員 お尋ねしたのは、アナログの停波を延期することで、テレビの視聴者の方が何か困ることがあるんですかということなんです。だって、地デジに対応できない方は、アナログのままだったら見られなくなる、そういう方に対してアナログ停波を延長するという措置をとることがテレビ視聴者にとって困ることなんですかというお尋ねなんですが。
    〔黄川田委員長代理退席、委員長着席〕

○内藤副大臣 それは私が最初にお答えしたものでございまして、今、アナログの機器、送信機器についてはつくっておりませんし、その取りかえ用の部品についてもつくっておりません。つまり、かなり耐用年数を過ぎた中で使い続けなきゃいけないという状態が続く。これを延長するとなると、ますます故障が発生する可能性が高くなる。これは、アナログテレビを受信する方にとっては大変大きな不利益であると考えております。
 以上です。

○塩川委員 それは放送事業者の都合なんですよ。テレビの視聴者の皆さんにとってアナログの停波そのものが、地デジに対応できていない方にしてみれば、テレビが見られなくなるというテレビ難民の問題ですから、そこが問われているわけです。
 そこで、その放送事業者の話ですけれども、今、アナログの設備が対応できなくなるという話がありましたけれども、その点については、そもそもサイマル放送をすることによって経費がかかる、事業者側のコストの問題について、三月の質疑の際に、原口大臣からも延期ができない理由として述べられたことの一つでありました。
 このアナログ停波の延期による放送事業者のコストの問題についてお聞きしたいんですが、放送事業者あるいは総務省の試算として、このアナログ停波の延期による放送事業者のコストについて、そういう試算があるのかどうか、あるとすれば幾らなのかをお答えください。

○内藤副大臣 お答えをいたします。
 NHKについては、福地会長が過去の会見においてこのようにおっしゃっております。仮に一年間延期をしたとした場合、六十億円程度負担増になるということをおっしゃっております。
 その他の民放五局については明言しておりませんし、また、そもそも延長することを考えていないから試算もしていないということでございますが、恐らく、決して少なくない額の負担が一年間継続されることになるだろうと思料しております。

○塩川委員 三月二十五日の質疑の際に、私がアナログ停波の延期ができない理由は何かということについて質問した際に、原口大臣は、「それは幾つかございます。サイマル放送による放送事業者の負担増、アナログ放送用機材の維持、運用が困難であること、国民生活に必要な新サービスの早期開始、節減した電波の利用、あるいは期限を決めて関係者が連携して取り組むことが重要、このように考えています。」という話ですが、先ほどのデジタルラジオの問題もそうですけれども、そもそもアナログのテレビが見られなくなってしまう、つまり、今まで見られたテレビが見られなくなるということ自身が国民にとって大きなマイナスであるわけですから、その一方で新たな国民に対するサービスが提供されるよといっても、これは納得の得られる話ではない。
 その上で、延期ができない理由としての放送事業者のお話をされたわけですけれども、内藤副大臣がおっしゃった、アナログの設備が対応できないという話は、それはもう停波ということを前提にしているからメーカーの方が何の準備もしないという話であって、延期をするということでしっかりと対応することをメーカーに求めればいいわけなんです。そういう方針を政府が出すかどうかということが問われているんじゃないですか。
 NHKに六十億円の中身の話を聞きましたけれども、それは、だましだまし使う、アナログの設備を使い続けるということを含めて、かかる経費として六十億円と見ているわけですよ。ですから、その意味では、放送事業者のコストの問題ということが延期ができない理由となっているわけですから、そこの問題についてしっかりと考えるべきじゃないかということであります。
 そもそも、放送事業者のコストを挙げて延期ができない理由としているんですけれども、今のお話のように、民放でどれだけかかるかということも調べていないじゃないですか。それで何で放送事業者のコストが大きいという話になるんでしょうか。NHKにすれば、受信料全体の収入の一%にもならない金額が六十億円です。民放についても、民間の研究者の方のお話でも、NHK、民放合わせて二百億円ぐらいで、民放の売り上げにすれば一%程度じゃないかということが言われています。もともとNHKが今の経営計画をつくるときに、アナログ停波に伴うリスクの試算をしているわけですね。受信料収入がどれだけ落ち込むのかという数字として、百九十五億円の減収というリスク要素があるということを言っているわけです。アナログ停波によって見られなくなる人が受信料を払わなくなる。
 ですから、一方で六十億円のコストがかかる。他方では、受信料の減収が起こるのは百九十五億円だ。差し引きしたってアナログ停波を延期することの方が、放送事業者、NHKにとってもかえってプラスとなる話であるし、また民放についても、視聴者が減れば広告収入が大幅に落ち込むことにもなるわけですから、そういうことを考えても、私は今のあり方について見直すことが必要だということを申し上げておくものです。
 今、内藤副大臣がおっしゃった中で、跡地利用の話もありましたけれども、実際にその跡地利用として、節減した電波の利用、つまり、跡地利用の話で実際に利益を得る事業者がだれなのか。それは携帯電話やあるいはITSなどの事業者であるわけです、携帯電話事業者や自動車メーカーにとって大きなメリットを得るということですから。
 最後に大臣に伺いますけれども、テレビ難民を生み出しかねないようなときに、そういった跡地利用で携帯の事業者やあるいは自動車メーカーなどの都合を優先するような、利益を優先するようなあり方は決して許されない、国と事業者の都合を優先して国民に負担を押しつける、テレビ難民を生み出すようなことは決して行うべきじゃない、そのことについて強く申し上げておきますが、いかがでしょうか。

○原口国務大臣 これは、長い計画の間進められてきたデジタル化だと、まずこれを御認識いただきたいと思います、それは前政権であっても。
 そして、NHKで四千億、民放で一兆円ぐらいの投資をして、そして雇用効果でも十七万人を超える雇用といったものでこのデジタル化を進めているということを前提に、今おっしゃった地デジへの完全移行に向けた、円滑な放送を行うための必要な支援策を実施しておりまして、私たちは、この施策に対する費用は、周波数の効率的な利用につながり、無線局全体の受益となることから、電波利用料を充てているところでございます。
 オークションについても、今さまざまなところで議論をしていただいています。限りある公の資源である電波をどのように使っていくのか、それはだれが負担するのか、公平、公正性が求められるということは委員がおっしゃるとおりであるというふうに考えています。

○塩川委員 放送事業者やあるいは跡地利用の事業者の都合を優先して、結果としてテレビ難民を生み出すようなことは決してあってはならない、アナログの停波の延期について真剣に考えるべきだ。具体化を強く求めて、質問を終わります。