<第175臨時国会 2010年08月03日 内閣委員会 1号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 政権交代以降、内閣官房報償費、いわゆる官房機密費の問題について取り上げてまいりました。新任の仙谷官房長官にもこの官房機密費の問題について伺いたいと思っております。
 この間、野中広務元官房長官や、あるいは鈴木宗男元官房副長官などの証言が大きくマスコミでも取り上げられているところでございます。
 それとの関係でまずお聞きしたいんですが、鈴木宗男衆議院議員が、先日のTBSの番組におきまして、一九九八年の沖縄の県知事選挙での官房機密費の使用について証言をしておられます。小渕内閣の官房副長官の時代に沖縄知事選挙の稲嶺陣営支援のために官房機密費を三億円使ったと聞いていると証言をしておられます。
 まず最初にお聞きしますが、そもそも、この内閣官房報償費、官房機密費を選挙に使うということ自身が許されることではない、違法なことだと思いますけれども、まず仙谷長官の認識を伺います。

○仙谷国務大臣 私は、鈴木宗男議員がそのようなことを伝聞の伝聞のような格好で言われたというのは耳に挟んでおりますけれども、そういう私どもが確認できない事実を前提にしてお話しすることは差し控えたいと思います。

○塩川委員 そもそも、官房報償費の使途として、選挙に充てること自身がどうなのかということについての認識はいかがですか。

○仙谷国務大臣 官房報償費というのが存在が許されるとすれば、その点についてもお答えをしないということになろうかと思います。

○塩川委員 従来の自公政権時代以来の答弁と同じなわけですけれども。
 この問題がかつて、二〇〇一年に報道されたときに、我が党の赤嶺政賢衆議院議員を初めとして、沖縄選出の四人の国会議員が声明を出しました。その中でも、国民の血税が一候補者の選挙資金に投入されていたとすれば民主主義への冒涜であるとして、その疑惑を否定する根拠を県民や国民に説明する責任があると強調したけれども、まさにそのとおりだと思います。この件につきましては、二〇〇一年当時も、毎日新聞やあるいは琉球新報が、官房機密費として一億円以上が支出をされたという政府関係者の証言を紹介しているところであります。
 こういった経緯のある沖縄県知事選挙における、官房機密費が使われたという件について、改めて調査をしようという考えはございませんか。

○仙谷国務大臣 さっき塩川議員が証言という言葉を使われました。証言というのは、私にとっては裁判所で宣誓をした上で行う供述が証言という言葉でありまして、テレビカメラの前でもし何かおっしゃったとしても、それは証言でも何でもございません。そしてまた、そのことを前提にして何らかの認識を組み立てるということもできないと思います。

○塩川委員 鈴木議員の話で、この三億円という額について、官邸にいた人と確認したとこの番組でも話をしておられます。当時のマスコミ報道でも、沖縄問題を担当していた政府関係者が知事選の最中とその後に官邸から報償費が稲嶺選対に注がれたと聞いた、間違いない、稲嶺選対のごく限られた人は知っていると語ったと報じられています。これは二〇〇一年のころの話ですけれども。
 そのときに、国会におきましてもこの問題が取り上げられまして、当時、小泉内閣のときの福田官房長官が、その質問を踏まえて調査を約束しているわけです。
 ですから、その当時でさえ調査ということがあるわけですから、政権がかわって、襟を正してと、もともとこの官房機密費についての透明化を求めておられた民主党の仙谷長官であるわけですから、そういう点でも、改めてこの問題について調査をする、小泉内閣の福田長官が調べたような、結果はどうだったかは別にしてみても、調査をすることというのはなぜできないんですか。

○仙谷国務大臣 当時の福田官房長官は、調査をされて、どういう調査結果が出てきたんでしょうか。

○塩川委員 質問をしているのは私であります。
 不適切な使用は見当たらなかったという答弁でありますけれども、それはそのときのそういう判断でありました。
 しかし、改めて、政権がかわって、こういう問題についてクローズアップをされてきているときですから、仙谷長官として、前の政権とは違ってしっかりと調査をするということは言えるんじゃありませんか。

○仙谷国務大臣 官房長官のところには調査する手だてはありません。

○塩川委員 二〇〇一年の当時の福田長官も、結果とすれば不適切な使用は見つからなかったということであっても、関係者の話を聞いたということはしたわけですから、今の鈴木宗男議員の話にもありましたように、官邸にいた人と確認をしたという話でもありますから、そのことを含めてやるべきことはやれるはずだ。そういうことも行わないということ自身に、情報公開に当たっての民主党の姿勢が厳しく問われてくるんじゃないでしょうか。
 この問題というのは、別の重大な疑惑にもつながっているわけです。この三億円の出所というのが、いわば、外務省にあります報償費、外務省機密費の官邸上納分ではないのかという問題であります。
 もともと、この三億円という金額自身も大変大きいものですが、官房長官取り扱いの官房機密費というのは年間十二億円であります。大体、歴代見ても、ほとんど使い切っているわけですけれども。そういった中で、三億円の額がまとまって出ること自身にも、官房機密費の枠ではなくて、九八年当時、実際に行われていた外務省からの機密費の上納分だった可能性というのはあるわけです。
 外務省機密費の上納分が機密費として沖縄の知事選挙に投入されているとしたら、そういう意味では二重に不正な資金によって、もともと上納そのものが財政法違反に問われてくるわけですし、民意をゆがめる形で、国民の公金、税金が特定の選挙の陣営につぎ込まれるということ自身許されないという点でも、こういった疑惑について、この問題については、この一年間での官房機密費と外務省機密費をめぐる質疑の中で、外務省においての調査ということは行われたわけですけれども、官邸においての調査ということは行われてこなかったわけですから、こういう疑念、疑惑が生まれているときに、官邸としてこの外務省機密費の上納問題についてしっかりと調査をする、官邸自身が調査をするということも今改めて行うべきときじゃないでしょうか。

○仙谷国務大臣 多分、松尾元外務省要人外国訪問支援室長による公金横領事件というのがあって、外務省の報償費が総理大臣官邸の外交用務に使われていたとか使われていないとかという話があったように私も記憶いたしますけれども、そのことも含めて、調査をする、調査と簡単におっしゃるけれども、調査をする手だては全くありません。

○塩川委員 関係者に事情聴取するということもしないんですか。

○仙谷国務大臣 だれが関係者であるか、私にはわかりません。

○塩川委員 この間お話の出ているような、例えば野中元官房長官や鈴木宗男元官房副長官も含めて、こういう関係についていわば証言をされている方についてしっかりとお聞きするというのはどうですか。

○仙谷国務大臣 おっしゃるように、沖縄の関係で野中元官房長官が何かおっしゃっているんですか。私それは全然存じ上げません。
 私が目にしたのは、何かジャーナリストにお金が渡ったとか渡らないとかというのは雑誌で、週刊誌か何かでちょっと拝見をいたしましたけれども、沖縄関連でどうのこうのと、直接自分を行為者としてお話しされているようなことは、そういう間接性のところでもありませんし、さっき申し上げたように、その種のものを前提にして調査をするという手だてもなければ、私はそういう性質のものではないというふうに考えております。

○塩川委員 手だてがないというか、する気がないということなんだと思いますが、この官房機密費の使途の問題については、何も過去の話ではなくて、民主党政権交代以降の対応の問題でも問われてくることじゃないでしょうか。
 沖縄では繰り返し選挙において官房機密費が使われているのではないかという疑惑というのは今も指摘をされておりますし、国会でも追及されてきているわけです。国会で取り上げた議員の中には、民主党の沖縄県連の責任者だった喜納昌吉前参議院議員も含まれているわけであります。
 喜納議員が紹介しているのが、六月一日の参議院の外交防衛委員会では、沖縄では名護市長選挙や石垣市長選挙で自民党支持候補の選挙対策に官房機密費が使われたといううわさがあるんですね、普天間基地移設先の候補地として挙げられたうるま市や徳之島の議員を官邸に呼ぶための経費として使われたとか、徳之島の議員を銀座で飲食させるために使われたとか、さまざまなそういううわさが飛び交っているという話も実際に委員会で取り上げているわけです。
 沖縄では、この九月に統一地方選挙が戦われる、また十一月には知事選挙が行われるわけです。喜納前議員は、選挙に限らず、普天間での地元工作費として官房機密費が使われている疑惑も指摘をしているわけです。
 地元紙の琉球新報は、米軍普天間飛行場の移設候補地としてうるま市の勝連半島沖埋め立て案が検討されている件で、同市議会議員四人が二十一日夜、平野官房長官と都内のホテルで面談していたことが二十四日までにわかった、関係者によると、平野氏からは同案の受け入れについて他の市議を説得するように依頼があったという、基地を受け入れた場合の地元への経済振興策や漁業補償などについても話題に上がった、市議の渡航、滞在にかかる費用は平野氏が持ったと報じているわけです。
 こういった、うるま市議の上京費用ですとか滞在費に官房機密費を使ったのではないのかという指摘が出されているわけですし、身内の民主党の議員からもこの問題についての指摘がある。この一年間において普天間移設にかかわって官房機密費を使用していた、こういう問題についてもしっかりと国民に理解されるような説明が必要ではありませんか。

○仙谷国務大臣 先ほどから、うわさがあると言っているというお話でございました。うわさをもとにして先ほどから、菅内閣の官邸にはその種の調査機能はもともとありませんので、もしおっしゃるようなことをやれと言われるのであれば、そういう仕組みそのものから構築しないとできないということになろうかと思います。
 軽々に、塩川さんがおっしゃるようなことを調査するなどということが、できもしないことを言うということは、私はむしろ言ってはならないと思っているからこう申し上げておるのであります。

○塩川委員 税金の使い道について国民が厳しい目を向けているときに、まさにその大きな疑念の対象となっている官房機密費についてきちんとした説明責任を果たすことなしに国民に対する不信を取り除くことはできないということは改めて申し上げておきます。
 こういった、うるま市議の上京費用ですとか滞在費用、そういうものを官房機密費で支払った場合には、当然、その領収書とか請求書を官房長官が預かって、事務官がその支払いの手続を行う。そういう場合には、記録そのものが支払決定書と内閣官房報償費の出納管理簿に記録をされる。これは、官房長官が既にお決めになっておられる内閣官房報償費の取扱要領、この中にも実際の支払いについての記録を残すということがあるわけですね。
 こういった官房機密費の記録についての保存期間が五年間だとなっているわけですけれども、もともと透明化を図る、機密費についての情報公開を図るという立場であるならば、これらの官房機密費に係る記録の保存期間を、五年というのではなくて、いわば無期限として、そして将来、この記録について情報公開の対象とすべきだ。五年で保存期間が終わるのではなくて、しっかりとその先まで無期限で延ばして、そして情報公開の対象とする、これこそ必要だと思いますが、官房長官、いかがですか。

○仙谷国務大臣 菅内閣といたしましては、鳩山内閣に引き続いて、内閣官房報償費の取扱責任者である内閣官房長官が責任を持ってこれを執行する。その使途等を検証しているところでございまして、官房報償費の透明性の確保を図る方策については、その中で検討することといたしたいと存じます。

○塩川委員 一年間かけて検証するという鳩山内閣の方針を引き継ぐという話ですけれども、平野長官が一〇年度の四、五月に受け取った機密費が三億円になるわけですけれども、それが何に使われたのかがわからなければ検証ができないわけです。
 仙谷長官として、平野長官時代に、四、五月、三億円の支出が行われたこの機密費について、何にどれだけ使ったのかということを、その記録は引き継いでおられるんですか。

○仙谷国務大臣 これから検証をすべきだと考えておりますけれども、今塩川議員がおっしゃったような件については全く引き継ぎは受けておりません。

○塩川委員 そもそも、取扱要領で定めているような支払決定書ですとか出納管理簿、これについても引き継ぎをされていないということですか。

○仙谷国務大臣 取扱要領等は引き継ぎを受けております。

○塩川委員 取扱要領はそれぞれ官房長官が自分が就任したときにつくっているんでしょうけれども、そもそも、記録として残すと取扱要領で定めているわけですけれども、それそのものを引き継いでいないということなんですか。

○仙谷国務大臣 現時点では引き継いでおりません。

○塩川委員 もともと、前の政権のとき、麻生内閣の河村官房長官から平野長官が引き継いだときに、金庫の中には全くありませんでした、残額についてゼロだったということを答弁しておられますけれども、平野長官から引き継いだときに、金庫の中、残額は幾らだったか、お答えいただけますか。

○仙谷国務大臣 菅内閣の発足は政権を担う政党がかわるという政権交代でもありませんし、報償費の具体の執行にかかわることでもございますので、お答えを差し控えたいと存じます。

○塩川委員 従来の、前の政権と同じ答弁であるわけです。
 記録そのものがあるものについて引き継ぎされているかどうかの認識がないということ自身が極めて重大で、その中でも、官房長官の取り扱いで記録も残さなくていいという政策推進費というものについて、まさにどうなっているかわからないと。一年間かけて検証しようというのに、四、五月分についてわからなければ、一年間かけて検証そのものができないじゃないですか。
 ですから、みずからの政策推進費についても、きちんと記録を残して、将来公開をするということを含めて、対応についてお答えいただけますか。

○仙谷国務大臣 先ほども申し上げましたように、官房報償費の性格に即して、私なりに執行を適正に行ってまいりたいと思っております。

○塩川委員 最後に一問。
 二〇一〇年度の一年間をかけて検証するという立場は変わりないということでいいですね。

○仙谷国務大臣 私が官房長官を引き受けまして、一年ぐらいの時間をいただければと思っております。

○塩川委員 そんなことを言いますと、一年足らずでかわっているばかりの官房長官だったら、一切、検証そのものができなくなる。
 その点でも、鳩山内閣は二〇一〇年度で検証するということで平野長官はおっしゃっておられたんですから、その立場を引き継ぐというのは最低限の話でもあるわけで、そのことを含めて、平野長官時代の記録もしっかりと記録に残すし、保存もするし、将来情報公開をしていく。それなしに、この県知事選挙の問題についての、こういったお金の使い方についての疑念も晴れることもありませんし、そもそも機密費の使用記録も残さないということでは国民の疑念も晴れない、一掃されないということを最後に申し上げて、質問を終わります。