<第175臨時国会 2010年09月10日 国土交通委員会 2号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、アスベスト混入の再生砕石の問題について質問をいたします。
 この間、再生砕石へのアスベスト混入の問題が大きく取り上げられてきております。再生砕石というのは、御案内のとおり、建物の解体工事などで発生をするコンクリート塊、これは、破砕をして路盤材などとして使用するリサイクル材のことであります。
 この間、市民団体の浦和青年の家跡地利用を考える会が首都圏の駐車場や道路工事現場など百三十三カ所を調査し、そのうち分析に回した四十六カ所すべてでアスベストを検出いたしました。東京新聞を初めとして大きく報道されたところであります。いわば、有害物質を含むリサイクル材が流通をしていたことになります。
 そこで、まず確認で質問いたしますが、アスベスト含有の建材が混入をした砕石というものはそもそも販売、使用することができないと思いますが、お願いします。

○伊藤政府参考人 先生御指摘の石綿等の非飛散性のアスベストの取り扱いでございますけれども、これは、廃棄物処理法上、そもそも破砕すること自体が禁止をされているわけでございます。また、他の廃棄物と区分して収集、運搬、積みかえ、保管を行うことなども決められているということでございます。
 したがいまして、再生砕石の中にアスベストが混入するということは、廃棄物処理法の規定を遵守していただければそういうことはあり得ないと思いますし、したがいまして、そういうものが販売されるということもあってはならないものだ、こういうふうに考えております。

○塩川委員 アスベスト混入の再生砕石というのが販売されることがあってはならないということは、当然のことであります。
 ですから、それが現実にはリサイクル品として販売、使用されていたということであるわけですから、極めて重大であるわけで、大臣にその点でお尋ねしたいんですが、国としては、リサイクル率の引き上げなどもずっとこの間行ってきたわけであります。国としてリサイクルを促進しながら、そのリサイクル品に有害物質が混入してきた、このことについて大臣はどのように認識しておられるのか、この点をお尋ねいたします。

○前原国務大臣 塩川委員にお答えをいたします。
 国土交通省といたしましても、循環型社会の形成に向けて、建設リサイクル法等によりまして、建設工事に係る資材の再資源化を推進してまいりました。
 しかし、今回、再資源化された再生材に、建設リサイクル法、廃棄物処理法等に基づき適切に分別処理されるべき石綿含有廃棄物が混入していた事例が確認をされたことは、極めて遺憾でございます。

○塩川委員 この間、市民団体の指摘を受けて現場調査を行った埼玉県もアスベスト混入の再生砕石の存在を認めておりますし、神奈川県が実施をした廃棄物処理業者への立入検査でもアスベスト建材の混入が確認をされております。これまでも、さいたま市あるいは和歌山県で同様の事例があり、全国的な広がりのある問題であって、これは軽視することがあってはならないということは当然のことであります。
 そこでお尋ねしますが、この問題について、昨日、国交省と環境省、厚生労働省の三省が発表いたしました再生砕石に混入するアスベスト対策においてどのような調査を行う予定でいるのか、この点についてお答えください。

○大森政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のように、昨日付で都道府県・政令市あてに、解体工事現場等のパトロール、必要に応じた立入検査の実施、及びその結果の報告を求めたところであります。このパトロールなどを通じまして、実態把握をきちっと行ってまいりたいと思っております。
 特に本年、この九月、十月には、御指摘の石綿含有建材の分別解体等につきまして重点的に確認をし、報告をお願いしているところでございます。

○伊藤政府参考人 環境省といたしましては、今、国土交通省からお話がありました解体現場に対する対応ということで、関係団体あてに通知を出してきちっと周知徹底を図るということに加えまして、破砕施設に対する対応と一般環境における対応を行っておるところでございます。
 破砕施設につきましては、そもそも、廃棄物処理法上、アスベストを含んだ廃棄物を受け入れること、そしてまたそれを破砕することは禁止されておりますので、そういったことがきちっとなされているのかどうかといったことを、都道府県を通じまして立入検査をお願いし、その結果については報告をいただきたいということで、昨日通知をしたところでございます。
 また、一般環境における対応といたしましては、環境省では、一部の破砕施設及びアスベストが混入した再生砕石の使用場所などを対象に、アスベストに係る大気環境モニタリングを実施することとしているところでございます。

○塩川委員 今回のアスベスト対策は、解体現場と破砕施設と実際の一般環境における対応がそれぞれ書かれているわけですけれども、率直に言って、部分的な対応ではないかと言わざるを得ません。
 もともと、建設リサイクル法におけるリサイクル率の向上などの検討を行っていた社会資本整備審議会及び中央環境審議会の両専門委員会が平成二十年十二月に取りまとめた報告書の中におきましても「特定建設資材の再資源化に支障を来す有害物質等の存在」ということを指摘しておりまして、吹きつけ石綿やPCBなどとあわせて、この石綿含有建材の問題も取り上げているわけです。ここでは、「特定建設資材廃棄物に付着・混入した場合、特定建設資材の適正な再資源化を阻害するとともに、有害物質の種類や濃度等によっては、現場作業者や周辺住民の健康に多大なる影響を与えるおそれがあるという課題がある。」と指摘をしているわけです。
 ですから、当初からこういった課題があるということは承知をしていたわけであります。それが現実のものとなったということであるわけで、私、再生砕石の使用場所を対象にしたようなしっかりとした調査を改めて行う必要があるんじゃないのかと。
 つまり、今回のアスベスト対策におきましては、解体現場の方にはパトロールの実施を権限のある都道府県・政令市に依頼するということですし、あと、破砕施設についても、やはり都道府県・政令市にあてて立入検査などをぜひ行ってくださいということを要請するということですし、一般環境については、現在、環境省とすれば、一部わずかな地点の大気環境のモニタリングの実施を行っているわけですけれども、それを若干ふやして調べましょうという程度であるわけです。
 実際には、この再生砕石というのは全国で大きく使用されている。もちろん、路盤材などになっているのは、上にアスファルトを敷けば表に出るという状況ではありませんが、現状は、更地にしたところに再生砕石を入れて駐車場などで利用している場所というのは全国にたくさんあるわけですね。そういうところから、少なくないアスベスト含有建材を含む再生砕石が確認をされているわけです。
 そういった駐車場などを含めた再生砕石の使用場所を対象にしたアスベスト混入の有無に関する実態調査というのを全国的にしっかり行う必要があるんじゃないのか。まずは現況をしっかり把握する必要がある。このことを行うべきだと思いますが、この点についてはいかがですか。

○鷺坂政府参考人 お答えいたしたいと思います。
 アスベスト含有建材の混入の有無についての調査ということでございますが、複数の専門家によりますと、アスベストが混入した再生砕石、そういったものが敷かれた駐車場等について、その利用者とか周辺住民のアスベスト暴露による健康の影響、健康リスクは極めて低い、こういうふうに考えられるところでございまして、現時点では、その混入の有無についての悉皆調査といったものは予定しておりません。
 しかしながら、住民の不安の声も事実あるわけでございますので、私どもといたしましては、関係自治体と連携をとりながら、必要な現場での大気環境測定といったことをさせていただきまして、健康リスクを引き起こすほどのアスベストの飛散が起こっていない、こういったことを確認することとしておりまして、住民の不安解消といったものに努めてまいりたい、このように考えております。

○塩川委員 健康リスクが極めて低いという話をされましたけれども、今回の再生砕石の中でも、人体への有害性が極めて高い青石綿なども検出をされておりますし、もともと、健康被害が二十年とか三十年後に起こるという、静かな時限爆弾と言われているのがこのアスベストの健康被害であるわけです。ですから、そういう点で、こういうアスベストと隣り合わせで暮らすということについての不安が非常に大きいというのが市民の声であるわけです。
 ですから、私は、そこをしっかりと受けとめて対応しなければいけないと。つまり、市民の不安がるようなリサイクル品を国が推進しているというようなことであっては、これはやはり大もとが問われてくる話になってくるわけです。
 大気環境のモニタリングの話がありましたけれども、では、それは何カ所ぐらいやる予定なんでしょうか。それはそれとしてしっかりやってもらうとしても、まずは、このアスベスト含有の建材を含む再生砕石というのがあるのかないのかという調査は、これはこれでしっかりやる必要があるんじゃないのか。
 以上二点について、改めていかがですか。

○鷺坂政府参考人 アスベストの大気環境のモニタリングにつきましては、今、数字で何点ということでは持ち合わせは、持ち合わせというか、これからのことでございますので申し上げることはできませんけれども、いずれにしましても、住民の不安の声が上がるようなところにつきましては、関係自治体と連携を図りながらきちっとモニタリングをいたしまして、そういった不安解消に努めてまいりたい。
 御案内と思いますが、既に例えば川崎市の駐車場あるいは埼玉県等がそういったモニタリング、大気環境の測定の結果を公表しておりまして、その結果は、いずれもリッター当たり一本未満のアスベスト濃度であると。大気汚染防止法上では、これは製造工場の敷地境界基準ではございますけれども、リッター当たり十本というのがございまして、これに比べても十分低い数字であるというふうに承知をしております。
 あと、混入の有無の調査ということにつきましては、我々といたしましては、大気環境の方のモニタリングをしっかりやるということで対応していきたいと考えております。

○塩川委員 市民生活と隣り合わせの駐車場などにアスベスト混入の再生砕石が使われていたということを許容するようなことがあっていいのか。こんなことを放置していると、リサイクル品そのものの信頼性が問われてくるんじゃないでしょうか。
 大臣、この点で、調査で一点お聞きしたいんですけれども、市民団体の行いました分析の中でも、例えば、さいたま市内にあります国土交通省の荒川上流西浦和事務所が管轄をしています鴨川排水機場前の管理道路、国交省の管理の道路のところでも、このアスベスト混入の再生砕石、アスベスト混入の建材が、スレート片が確認をされているんですよね。こういったことについて、まず足元からしっかり調査したらどうかと思うんですが、大臣いかがですか。

○前原国務大臣 御指摘の点については、私も詳しくは知りませんので、しっかりと調査をさせていただきたいと思います。

○塩川委員 まず、大前提となる、こういうアスベスト混入の建材があるのかどうなのか、そういった実態調査をしっかりやっていただきたいというのを重ねて申し上げるものであります。
 それで、そもそも、石綿含有の建材そのものの廃棄がこれから大きくふえていくということが想定されているわけであります。その点でお答えいただきたいんですが、アスベスト含有建材の廃棄物の排出量はどのような規模になろうとしているのか、この点について教えてください。

○伊藤政府参考人 社団法人日本石綿協会の調査結果によりますと、非飛散性アスベスト廃棄物の国内ストック量は四千万トン程度と考えられているところでございます。
 また、年間排出量につきましては、今後、百二十万トン程度で推移した後に徐々に増加して、ピークを迎える二〇二〇年ごろには百七十万トン程度になるものと予測されているところでございます。

○塩川委員 今お答えいただきましたように、アスベスト含有建材の廃棄物の量はこれから増加をする、二〇二〇年までずっとこの十年間ふえ続ける。その後、漸減をしていくわけですけれども、それでもかなり将来にわたってアスベスト含有建材の廃棄が進むということになります。
 ですから、こういう意味では、結果としてリサイクル品も増加をするということにもなるわけですから、私は、大臣、そもそもリサイクル品として、商品として販売、流通、使用されるというものに有害物質があってはならないわけですから、リサイクル品の品質を保証する仕組みそのものをしっかりとつくる必要があるんじゃないかと思うんですが、この点いかがですか。

○前原国務大臣 その点については委員御指摘のとおりでございまして、再生砕石の品質確保のために、現在、アスベスト等の有害物質が混入することがないよう、解体時には建設リサイクル法によりコンクリート塊等の分別解体が義務づけられておりまして、また、処理時には、廃棄物処理法により、石綿含有産業廃棄物が他の廃棄物とまざらないような措置を講ずることが義務づけられております。
 再生砕石へのアスベスト混入を防ぐには、法令遵守の徹底を図ることが重要と認識しておりまして、今回、再生砕石に石綿含有産業廃棄物が混入している事案が確認された状況に対応して、国土交通省、環境省及び厚生労働省の三省において、昨日付で、関係団体に対し改めて法令遵守の徹底を依頼するとともに、都道府県等に対して、関係事業者への周知徹底と解体工事現場のパトロール及び破砕施設への立入検査を行うことを依頼いたしました。また、アスベストが混入した再生砕石の使用場所等の大気環境モニタリングを実施することといたしました。
 まずはこれらの対策の徹底を図りまして、その結果を踏まえ、さらなる対策の必要性があれば、関係省庁と協議してまいりたいと考えております。

○塩川委員 いわば川上の解体工事の現場やあるいは破砕施設について法律に基づいたしっかりとした対応を求めていくということは当然のことでありまして、これはこれとしてしっかりやっていただいた上で、やはりリサイクル品そのものの品質がきちっと保証されるということなしには活用も進まないということにもなりますので、さらなる対応という点でも、この点、ぜひお願いしたいと思っております。
 その上で、こういった再生砕石にアスベストが混入する背景には、やはり解体工事の際の分別処理にかかるコストの問題がある。いわば解体工事現場を含めた建設産業における重層下請構造の中で適正なコストが払われていないのではないのかという懸念というのがあるわけであります。
 ですから、さまざま話を聞くところでも、そもそも解体工事というのは新規工事受注のためのサービスとして受けとめられていて、コストやあるいは工期などで不当な扱いを受けることがあるという実情なども聞いておりますし、現場の声では、解体費用が圧縮されて久しい。近畿のある解体業者は、見積もりも木造解体は坪単価三万円で出していたが、今は二万三千円ぐらいになっているというような話なんかもたくさん紹介をされているわけです。
 そこで、大臣に伺いたいのが、こういった解体工事現場の実態ですね、アスベスト処理の適正なコストが確保されないような、特に下請の現状についてどのように認識しておられるのか、この点についてお答えいただけますか。

○前原国務大臣 一般論で申し上げますと、解体工事を含めました建設工事においては、適正な請負金額で契約が行われるべきではありますけれども、近年の厳しい受注環境のもとでは、委員が御指摘をされたように、下請企業へのしわ寄せが起こりやすい現状であるという認識を持っております。

○塩川委員 下請へのしわ寄せが起こりやすい環境にあるというのがお話としてございました。
 実際に、事業者の声についても、平米当たりの単価がかつての三分の一以下に引き下げられている、その上、大手ハウスメーカーからの仕事でも廃棄物を処理する段階では下請業者にその処理費用が渡らないことが多い、それでも現場で出た廃棄物は時間をかけて分別しなければならない、こういった声なども出されているわけです。
 国交省として、このアスベスト除去を伴う解体工事のコストの実態、コストがどのぐらいなのか、こういった調査、実態の把握というのは行われているんでしょうか。

○大森政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘の解体工事のコストの推移でございますが、国土交通省としては詳細に把握をしておりません。
 ただし、代表的な取引価格の実勢を調査しております財団法人建設物価調査会発行の「建設物価」という冊子によりますと、近年、先生御指摘のように、解体工事に係る工事費は総じて下落傾向にあるものと考えられます。
 例えば、東京地区のRCの躯体解体の標準施工単価でございますけれども、立米当たり、五年前の平成十七年九月では九千五百円であったものが、本年のこの九月では九千二百円になっているというような事実もございます。

○塩川委員 現場に行けば、下請、孫請になればなるほど単価がたたかれるという状況というのが結果として違法な事態につながりかねないという状況もつくり出しているわけですから、こういった解体工事に当たっての適正なコストを保障するような仕組みづくりが必要なんじゃないのかと思うわけですね。
 例えば、元請業者が必要経費を払わない場合はペナルティーを科すとか、下請まで確実に費用が渡るような契約の義務づけとか、ハウスメーカーの場合などでもハウスメーカーの責任できちっとした処分をする者を定めるとか、解体業者の仕事に見合ったコストを保障することが必要だと思うんですが、大臣として、解体工事に当たっての適正なコストを保障するルールづくり、この点についてぜひ踏み込んだ対応をお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○前原国務大臣 委員御指摘の点は大変重要なポイントでございます。
 建設業法の第十九条の三に「不当に低い請負代金の禁止」というのがございます。「注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。」こういう法律があるわけですね。ですから、法律がある以上は、これをどう遵守してもらうかということが極めて大事であります。
 契約は当事者間で決まるものでありますけれども、我々国土交通省においては、各地方整備局に設置した駆け込みホットライン、こういったものに寄せられた状況に基づいて、今のように、法律違反、不当に低い請負金額の疑いがある契約については立入検査を実施する等の対応を今までも図ってまいりました。
 今後とも、都道府県と緊密な連携を図りながら、解体工事を含む建設工事について適正な請負価格での契約が行われるように、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 また、今回の都道府県等に依頼をした解体工事現場のパトロール、破砕施設への立入検査の結果等を踏まえ、必要があれば、さらなる対策について関係省庁等と協議してまいりたいと考えております。

○塩川委員 建設業法に基づく対応、ことしの通常国会で成立した改正廃棄物処理法におきましても、廃棄物処理に当たっての元請責任というのを明らかにするということが盛り込まれたわけであります。そういう点では、国交省や環境省、さらには厚生労働省と連携した取り組み、縦割りでない総合的な対策というのをぜひ大いに進めていただきたいと思っておりますし、今回の対策にとどまらず、踏み込んだ対応策をぜひ求めて、質問を終わります。
 ありがとうございました。