<第176臨時国会 2010年10月26日 総務委員会 2号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 冒頭に一言申し上げたいのが、この総務委員会の運営の問題であります。
 この一年間の総務委員会というのは異常な事態でございました。昨年の臨時国会でも、冒頭のこの大臣所信の質疑の場そのものがなかった。強行採決も行われた。ことしの通常国会においても、放送法と郵政改革法案が連続して強行採決が行われた。こういう異常な運営は決して行わないということを委員長並びに与党の皆さんに改めて申し上げるものであります。
 あわせて、委員長の職におかれましては、総務大臣から委員長につかれたわけであります。そのような人事はあり得ることだと思いますけれども、総務大臣が提出された法案をそのまま委員長の職で担当する、そういう法案が合計七本もあるわけですね。こういった前例というのは私は承知をしておりません。そういう点でも、みずから出した法案を委員会で審議をする、その職に当たる委員長として、また委員長自身がおっしゃった公正、公平円満な運営ということについて、ぜひとも留意していただいての対応を改めてお願いをするものであります。
 早速質問させていただきます。
 きょう私がお聞きしたいのは、いわゆる通達行政という言葉に象徴されるような地方に対する国の方針の押しつけ、この是正を求めるという立場から質問をいたします。
 片山大臣は、国会の場や、あるいは政府のさまざまな審議機関などにおいても発言をされておられます。そういう中で、例えば二〇〇七年九月十八日の地方分権改革推進委員会におけるヒアリングで、以下のように述べておられます。
 第一次分権改革での最大のポイントは機関委任事務の廃止。しかし、現実はどうか。通達行政だらけである。何も変わっていない。助言というが、中身は通達。この分野で一番行儀が悪いのは総務省。本来、率先してモデルを示すべきであるのに、一番悪いモデルを示していると述べておられます。
 そこでまず、前置きといいますか、お聞きしたいのが、国が一律に地方を縛る仕組みとなっていたいわゆる通達行政というのは、総務省に限らず、国としてきっぱりと断ち切るべきだと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○片山国務大臣 通達行政はきっぱり断ち切るべきだ、こうおっしゃいましたが、そのとおりなんですが、通達行政はもう終わっているんです、法制的には。
 二〇〇〇年から地方分権改革推進一括法が施行されまして、それ以前は、さっきおっしゃった機関委任事務というのが厳としてありましたので、機関委任事務というのは、釈迦に説法ですけれども、国と自治体との間、自治体の長との間に上下関係がありましたから、まるで上司と部下との間柄のように通達があり得ました、拘束力もありました。それが、国と地方自治体とは対等の立場になったのが二〇〇〇年の四月からでありまして、この時点で上下関係はなくなりましたので、基本的には、法律には縛られる、国法には従わなきゃいけないけれども、紙切れでありますとか電話でありますとか、そういうものには拘束されないということになりましたから、その時点で通達行政は終わっております。
 ところが、従来と似たような文書が流れてくるというのが現実でありましたので、先ほど、私が分権推進委員会で申し上げましたようなことになっているわけであります。ただ、これはもともとが無効でありますので、受け取り手の方に実は主眼がありまして、私などは、受け取り手として必要なものはアドバイスとして受け入れましたけれども、そうでないものは無視したり反論したりしておりました。専ら受け手の方の対応が重要ではないかと思います。

○塩川委員 受け取り手の対応が重要なのはもちろんそのとおりですけれども、しかし、そもそも総務省の方がいわゆる通達行政と言われるような、従来と似たような形での文書を出してくる、それが結果として金科玉条のように扱われるという事態にもつながっているという点では、まず総務省の方の自制が求められているわけです。
 その関係で申し上げたいのが、地方税の使い道に国が口を出すようなことをやっていた。その例として運輸事業振興助成交付金のことをお話しして、質問したいと思います。
 二〇一〇年四月一日付で、総務副大臣から各都道府県知事あての「運輸事業振興助成交付金について」という通知が出されているわけですけれども、それに関して片山大臣が、当時、週刊ダイヤモンドで紹介をしておられます。
 その週刊ダイヤモンドの記事を読み上げますと、「内容を要約すれば、各都道府県に入ってくる軽油引取税の税収の一定割合の額を、運輸事業振興助成交付金という名の下に各都道府県にあるトラック協会などに交付せよというものである。」「そもそも都道府県が徴収する軽油引取税の税収の一部を誰それに交付せよなどと、総務省が指示あるいは要請することなどもってのほかである。地方税である軽油引取税の税収を何に使うかは、各都道府県が決めることであって、総務省が決めることではない。」このように述べているわけです。
 ですから、国は、このような助言という形で自治体に対して地方税の使い道を指示するようなことは決してやってはいけないことだ。しかし現に行われている。このことについてはどのように受けとめておられますか。

○片山国務大臣 この通知といいますか、お手紙が出ていることは事実でありまして、これをどういうふうにとらまえるかということでありますけれども、さっき申しましたように、通達行政というのはそもそももうなくなっておりますので、指示だとか拘束だとかということはありません。ですから、法的に整理をすれば助言ということになるんだろうと思います。助言でありますから、受け取った方がそれをなるほどと思って従うか、それとも無視するか、それはもう勝手であります。
 実は、これは昭和五十年代からこの仕組みがありまして、それがそのまま続いているんだろうと思いますけれども、二〇〇〇年の四月という先ほど申しました時期を境に、それまでは一定の有効性はあったと思います。ところが、それ以後は拘束力はありませんので、自治体の方の自由な判断によればいいということであります。現に、私が知事をやっておりましたときにそういう通知が来ましたけれども、それとは違った予算編成をやりました。それで何の問題もありませんでした。
 ですから、もっと自治体の皆さんが、助言は助言として、どういうふうに自分で自主的に処理するかということを考えていただければと思います。

○塩川委員 これは週刊ダイヤモンドの記事を紹介しましたけれども、同趣旨のことは五月十八日の行政刷新会議の場でも述べておられます。
 片山氏は、国は通達で自治体に対して金の使い道を指示することはやってはいけないんですと言っているんです。そういう指示を出すような文書を出しているというわけですよ。ですから、こういう文書は撤回をするということでよろしいんですよね。

○片山国務大臣 私が大臣になりましたので、自今、そういう紛らわしいものは出すつもりはありません。
 過去出したものはどうかといいますと、これは法的に整理すれば、さっきから申し上げておりますように助言でありましたから、助言というのは、ちょっと例が悪いですけれども、ネクタイの趣味が悪いですよとかそのたぐいの話ですから、それを、過去言ったものを撤回するということは理論的にはあり得ないんだろうと思います。

○塩川委員 いや、現状で交付金の扱いについては、地方税の一定割合について数値を掛けてその額を交付してくださいよという要請になっているわけですよ。そういうことそのものは、もう今後やらないということでよろしいわけですか。

○片山国務大臣 私は、助言というのはこれからもあると思います。純粋な助言というのはあると思いますけれども、拘束力を持つかのごとき錯覚に落ち込むような、そういうものはやるつもりはありません、私自身については。
 過去のものについては、これは助言というふうに整理するしかありませんので、助言の撤回というのはないんだろうと思います。助言は、聞くか聞かないかは自由でありますから。

○塩川委員 この行政刷新会議のやりとりというのは、もともと片山さんがこういう発言をして、それを受けて、当時原口大臣も答えているわけですよ。
 もともと、こういう通知というのはやるべきじゃないということを、一貫してこれまでも片山さん自身もおっしゃっておられたわけですよね。ですから、それを受けて原口大臣の方も、この五月十八日の行政刷新会議の場で、新政権においても結局はこういう通知が出てしまった、「これは党からの要請で、私が消したのが復活したんです。あのときに片山議員に言われて、もともとこういうものを全部なくしなさいと、通達、党の方が官邸やいろんなところに持ち込んで、これだけは激変緩和で残せということで出ておるわけでございます。」こんな言いわけといいますか、説明をしておられるわけですよね。
 それは、片山さんがそのように、こういうことはやってはいけないんだと言ったことに対して、原口大臣が、いや、党の事情で出すことになってしまったんですという説明をしているわけですよ。こういうことについて、過去の話ではなくて、やはりやってはいけないことをやってしまったという事情についてきちんと検証する必要があるんじゃないですか。ですから、片山大臣がこの行政刷新会議の場で、「党から言われてもやっていいことといけないことがあるんです。」というふうに言って、「通達で自治体に対して金の使い道を指示するということはやってはいけないんです。」と繰り返して言っているわけですから、こういう立場で検証したらどうですか。このような経緯について国民の前に明らかにすべきだ。
 いわゆる通達行政の実態も精査をして必要な是正を行う、みずからの言明に沿ってやっていただきたいんですが、いかがですか。

○片山国務大臣 自治体を拘束するようなことはやってはいけません。拘束するのは法律だけであります。ですから、そもそも、拘束をするという意思で仮に出したとしてもそれは無効になるわけです。
 ですから、今出されているものは、そうではないというふうに観念するしかないのであります。ならば、どういうふうな整理になるかというと、それは技術的な助言ということになるわけです。そうすると、それには拘束力もありません、従う義務もない。自治体の方で判断をされるということであります。そこから導き出されるのは、そういう過去の助言について撤回するとかということは多分なじまないだろうと思います。
 ただ、二〇〇〇年以来、どんな通知が助言として出ているのかというのは、私もそれは関心があります。ですから、今度私の新しい職責として、悉皆調査というのはちょっとなじみませんけれども、折に触れて各省がどんなものを出しているのかということを点検して、紛らわしいものについては注意を与えていくということはしたいと思います。思いますが、しょせん、どんなものが出ても法律に書いてないものは助言ですから、そういうふうに自治体には、ぜひこの際、割り切っていただきたいと思います。

○塩川委員 ですから、そういう通知を出すぐらい、それこそ助言でやるべき話であって、今言ったように、地方税の使い道について国が口を挟むようなやり方はおかしい、それはまさにそのとおりであって、そういう立場で総点検を、国のいわゆる技術的助言、通知類について、総務省に限らずしっかりやってもらう。今お話ししたように、必要な検証などはぜひやっていただきたいと思っております。
 その上で、このような国の方針を地方に押しつけるやり方というのが、地方行革の押しつけという形でもあらわれているわけです。
 冒頭紹介した二〇〇七年九月十八日の地方分権改革推進委員会でのヒアリングでは、片山さんは、通達行政で一番行儀が悪いのは総務省、本来、率先してモデルを示すべきであるのに、一番悪いモデルを示している、一番の悪例は集中改革プランの作成通知、こういうふうに述べて、総務省が悪い例を出しているというふうに具体的に言っているわけですから、そういう立場で総務省の必要な是正をやっていただきたいと思っているわけです。
 その上で、では、なぜ集中改革プランが一番の悪例かということについては、大臣は、一律主義、画一的、このようにして地方団体に施策を押しつけると大変大きな弊害を生むということをこのときにも述べておられたわけですね。それは当然の指摘だと思います。
 その関係で、地方行革の押しつけの事例として、技能労務職員の削減問題を私は取り上げたいんです。
 今、技能労務職員、清掃職員や学校用務員や学校給食員を初めとして、十五万人の方がいらっしゃいます。それぞれの業務で公務の特殊性を踏まえた仕事に当たられておるわけですけれども、行革の新方針や行革推進法、骨太二〇〇六などを踏まえて行われた二十一年度地方財政の運営についてという事務次官通知に、定員管理関係の記述があります。
 その中では、骨太二〇〇六を踏まえたような定員純減を求めるというのとあわせて、新地方行革指針に基づき、「事務・事業全般にわたり総点検を実施するなど、民間委託等を推進されたい。なお、技能労務職の採用に当たっては、真に正規職員でなければ対応できないものであるか等について十分検討されたい。」と、この事務次官名での文書に書かれています。幾つもの職種がある中で、技能労務職員だけを具体的に例示をして、正規採用について十分検討しろということを求めているわけです。
 そこでお尋ねしたいのが、全国の自治体に対し、いわば画一的に技能労務職員の正規職員採用についてはよく考えろ、こんなことを言うのはおかしいんだと思うんですが、いかがですか。

○片山国務大臣 そのときに、その文書を発出した人がそういう助言をしたんだろうと思います。それには、その人が感じている自治体の人事管理の実態というものがあったんだろうと思います。あくまでもこれも助言でありますから、拘束力はないと思います。
 ちなみに、私はそういう助言に従ったわけでは決してありませんけれども、自分で知事をやっておりまして、やはりいろいろ気がつくことがありました。
 その一つは、技能労務職員の給与というものが、県庁職員の中で比較をするとそんなに高いとは思いませんけれども、同種の民間企業の従業者に比べると非常に高い、それから国家公務員の同一職種の人に比べても相当高いという認識がありまして、これは議会でも相当議論になりまして、二十数%の単価の削減をやりました。労働協約が結べない状態が数年間続きましたけれども、そういうことをやりました。
 それから定数も減らしました。それは国に言われたからでは毛頭なくて、鳥取県の実情を見て、ふさわしい人数よりも多かったものですから、やはりそれなりに減らしました。
 行革というのはそういうふうに、私がやったことが一番いいと申し上げるつもりはありませんけれども、国からやいやい言われてやることではなくて、自分のところで仕事の量とか、それから給与でいえば、民間とかその他の同種の人と比べてどうかということを自主的に考えてやるべきことで、国が一律にやれというものではないと思います。

○塩川委員 一律にやれと言うべきものではないということなんですが、この技能労務職員については一律の、正規採用の抑制についてよく考えろという画一的な対応をしているわけですから。
 では、改めて聞きますが、この技能労務職員の正規採用については国が物を言う話ではなくて、各自治体の判断で行うのは当然のことだと思いますけれども、いかがですか。

○片山国務大臣 職員の採用でありますから、これは自治事務の最たるものであります。自治体がみずからの判断で決めることであります。
 ただ、国としてずっと自治体を鳥瞰図的に見た場合に、どうもこれは非常に無駄が多いとか、傾向としてこの分野に無駄が多いというようなことがあった場合には、それについて何らかの助言をするということはこれからもあるだろうと思いますけれども、しかし、何度も言いますけれども、それはあくまでも助言でありまして、あくまでも、それを受け取った自治体側は主体的、自主的に考えればいいということであります。

○塩川委員 この技能労務職員の扱いの問題について、総務省からある県に対して、技能労務職員である自動車運転手や用務員は淘汰されていく職だ、ここまで言っているという話を聞いているわけですよ。これは技術的助言という形で行われているんですけれども、これは余りにも行き過ぎなんじゃないのか。
 こういう実態について、どのように受けとめておられますか。

○片山国務大臣 どういうやりとりがあったのかわかりませんし、真偽のほどはよくわかりませんけれども、あくまでも、その必要性に応じてそれぞれの自治体が判断すべきものでありまして、淘汰されるべきものとか、雇うべきものでないということを言うことはないと思います。

○塩川委員 いや、実態はそうなっているわけですから。こういった技能労務職員は淘汰されていく職などということを自治体に押しつけるべきじゃない。こういった地方行革の押しつけの実態についても、きちんと調査して是正をすべきだと思います。
 こういう技能労務職員の正規採用の抑制というのは民間委託の推進と一体で行われているわけですよね。これは行革推進法で枠がはまっている。行革推進法の五十五条で、地方公務員の人員等の削減について掲げられているわけですけれども、その中に民間委託の推進もあるわけです。人員の削減について言えば、これは二十二年の四月一日までで、一応時限措置で区切りがありますけれども、民間委託の推進という五十五条の四項というのは今も生きているわけですよ。これとセットになって、結果として技能労務職員の正規採用抑制とか、淘汰されていく職とか、こういうことを総務省の方が言っているわけですから、こういったあり方そのものを大もとから是正することが必要だ。
 私は、行革推進法そのものも廃止が必要だと思いますし、こういった押しつけを決してやらないということについて、改めてこのことを強く求めたいと思うんですが、一言、大臣に伺いたいと思います。

○片山国務大臣 私の経験からいいますと、技能労務職員を民間委託に出せ、これは総務省も言っていたと思いますし、各自治体でもそういう方針をとったところが多いんです。
 それはなぜか。なぜ、技能労務職員だけをそういうふうに目くじらを立てて民間委託とか採用抑制をやれと言ったか、そういう動きがあったかといいますと、さっき私が率直に申し上げましたけれども、国家公務員の同種の職種に比べて、鳥取県の技能労務職員の給与が非常に高かったです。地域の民間企業の同種の職種、従業員に比べても高かったです。そこが例えばリーズナブルな賃金体系になりますと、何も民間委託に出す必要はないんです。それが、いろいろな事情で給与の単価を下げられない。それならば安い民間の方へ出してしまおう、こういうことになってしまうんですね。鳥取県の場合には単価を二三%か四%下げまして、したがって民間委託に出さなくても、リーズナブルな給与体系でもって職員として勤めてもらえるということにしたわけです。今はどうしているかわかりませんけれども、私が知事をしていたときはそういうことなんです。
 ですから、それは管理者の側の問題だけではなくて、やはり労働者側といいますか、組合の皆さんも考えるべきところがあると私は率直に思います。

○塩川委員 給与体系の問題については、技能労務職員の特殊性や地域の実態を踏まえて決定されるべきものだ、一律のものではない。あわせて、この間、実際の民間委託というのが、現場では偽装請負などの違法行為にもつながっているわけですから、そういった違法行為をまかり通らせるような民間委託の推進をやってきたことそのものの総括が必要だということも申し上げなければなりません。
 地域主権改革は、地方行革押しつけの自公政権の地方分権改革を継承しているものだと言わざるを得ない。地方行革押しつけの大もとにある構造改革路線こそ転換すべきだということを申し上げて、質問を終わります。