<第176臨時国会 2010年11月16日 総務委員会 5号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 地方交付税法に関連して質問をいたします。
 防災対策や地域経済振興策、雇用対策、住民生活を支える福祉、医療支援など、今、地方自治体が行うべき取り組みは数多くあり、そのための財政需要も大変大きなものがあります。
 例えば防災対策でありますが、奄美豪雨災害も大きな被害を与えるものでありました。この奄美豪雨災害では、通信手段が寸断されて、孤立集落の被害状況の把握に時間がかかった、このことが大きな問題となりました。
 我が党の奄美市議団から実情を伝えてもらったものをここで御紹介したいと思います。
 奄美ではすべての通信手段がだめになった。今回の豪雨災害では通信網の途絶被害が特にひどかった。二十一年度予算で学校や公民館への光通信も完備した、しかし、いずれも結局、がけ崩れで電柱や塔が倒壊したり、つぶれたりすると使えなかった。防災行政無線もあったが、これも塔が倒されると使えず、携帯も同様に基地局がだめだと使えない、もちろん固定電話も通じず、集落が孤立した。孤立集落の数がどのくらいかといったものではなく、とにかく、住用、笠利初めすべての集落が孤立したというのが島民の認識だ。三日から四日、長いところで一週間ほど全く連絡が途絶えてしまった。笠利では、ほぼ三日間、集落との連絡が途絶えたが、奄美空港の向かい側、約五十キロ離れた喜界島の電波塔から奄美空港の電波塔に電波が届き、それで奄美の連絡本部に連絡がとれたというのが、唯一連絡できた事例ということです。
 市としても、災害時の通信手段の確保の問題が大きな課題だという認識になっている。市長も衛星通信が活用できればという認識になっているが、問題は自治体負担が大きいこと。衛星携帯電話は、奄美はこれまで全く配備がなかった。このようなことでありました。
 二〇〇五年八月、各地で孤立集落が発生した新潟県中越地震を踏まえて、孤立集落対策の提言がまとめられました。この提言では、孤立集落と外部との通信の確保について、市町村、集落において多様な通信手段を確保しておくことが大切であるとしております。
 そこで、内閣府の防災担当、阿久津政務官にお尋ねしますが、この孤立集落の通信手段の確保についての教訓が全く生かされていなかったのではないのか、この点についての認識をお聞かせください。

○阿久津大臣政務官 私も、今、塩川委員の方から御指摘のありましたとおり、今回の孤立集落の対策において、多くの課題が残されていることが確認されたのではないかというふうに考えております。
 平成十六年の新潟中越地震では、道路が寸断されただけではなくて、固定電話回線の不通及び携帯電話の基地局の停波などによって通信が途絶え、六十一カ所ですか、孤立集落が発生するなどの課題が見られました。
 先ほど御指摘いただいたように、学識者等から成る検討会を設置して、その後、孤立集落対策等に、通信の確保をするようにという御指摘をいただいていたんですけれども、平成二十一年度に内閣府において孤立集落に関するアンケート調査を実施しましたところ、全国的には通信手段の確保対策の進捗は低い状況でありました。
 今回の奄美地方の大雨災害においても孤立集落が発生し、住民の安否や住宅の被害情報の収集に大きな障害が生じたことから、今後、総務省を初め関係省庁との連携のもと、国と地方が一体となって、通信の確保等の孤立集落対策に適切に取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。

○塩川委員 現地を視察された松本防災担当大臣も、孤立集落の通信手段の確保については新潟県中越地震の教訓が生かされていない、このように述べているところであります。
 いわば、すべての通信手段が途絶をした、基地局など地上の固定施設があるものは全部だめになった。そうなりますと、衛星での通信の重要性。ですから、集落単位に衛星携帯電話を配備しようということを多様な通信手段の一つとして掲げているわけですけれども、衛星携帯電話の重要性にかんがみて、この衛星携帯電話に対する財政措置というのはどうなっているんでしょうか、お尋ねします。

○阿久津大臣政務官 衛星携帯電話の配備のための国庫補助制度については、現在のところ、特にないものと認識しています。
 一方で、近年の災害における孤立集落の課題を踏まえて、内閣府では、平成二十三年度概算要求の特別枠において、防災拠点形成総合支援事業として、衛星携帯電話の配備を含む孤立集落対策等に関する予算を要求しております。
 今回の奄美の大雨災害においては、通信の途絶が改めて課題として認識されました。何とか年末までの予算編成過程において、この要求の実現に努力してまいりたいと考えております。

○塩川委員 現在、奄美の問題なんかでクローズアップをされた通信の途絶、その際に必要な衛星携帯電話についての財政措置が特にないということで、今後の予算措置についてもわずかなものですから、これでは実際の、二万近いと言われるような孤立集落に対する対策にはならないという状況であります。
 そこで大臣にお尋ねしますが、奄美豪雨災害の教訓を生かすためにも、衛星携帯電話の設置などの多様な通信手段の確保を初めとした防災対策の強化が全国で必要であります。そのための財政措置こそ今必要だと考えますが、大臣の御見解をお聞かせください。

○片山国務大臣 これは先ほど内閣府の方から御答弁がありましたので、よく御検討をいただければと思います。
 その際に、有効であることはそうだろうと思います。ただ、そのためのコストとの兼ね合いをどう考えるかということが重要になるんだろうと思います。コストのことを考えなければ、いいことはもうどんどんやっていきましょうということで済むんですけれども、かなり多額のコストがかかるといったときに、これは設置のときも維持管理もそうですけれども、それをどうするのかというのはなかなか容易ではない、容易に結論は出ないんだろうと思います。よく検討することが必要だろうと思います。
 今回の教訓ということでありますけれども、これも私もいろいろ伺っておりまして、例えば、先ほども議員からお話がありましたけれども、大雨の影響で通信施設が水没してしまうとか、通信ケーブルが断線してしまうとか、それから一部では市町村の防災行政無線が通じなくなるとか、そういうことがありました。そういうことがないようにするということがまずベーシックなところで必要なのではないか、それが一つの教訓ではないかと私は思います。その上で、さらに、おっしゃったような御提案のことが必要かどうかというのを別途検討するということがこれからの課題ではないかと思います。

○塩川委員 コストの話をされましたけれども、やはりこの教訓を踏まえて、必要な通信手段の確保のための財政措置の必要性ということが改めて強調されることにもつながるものであります。私どもは、そのためにも地方交付税の増額が必要だと考えております。
 もう一点、地方の取り組みとして、地域経済振興のためにさまざまな取り組みを行っております。その一つに、住宅リフォームの助成制度というものがあります。
 例えば、岩手県の宮古市では、今年度一年間ということで、経済対策として住宅リフォームの助成制度を創設し、総工費二十万円以上の住宅リフォームに対して一律十万円の補助という、シンプルかつインパクトのある制度をつくりました。
 この制度がことしの四月からスタートしたわけですけれども、全世帯の一割が申請するほど活用されております。建設業者では平均四十五万円の受注も来る、産業連関表による波及効果は、三億五千万円の予算措置に対し、十六億円の経済効果となっているとのことであります。
 そこで大臣にお尋ねしますが、疲弊した地域経済振興のため、その地方独自の経済対策実施のための財源確保もしっかりと必要だと考えますが、いかがでしょうか。

○片山国務大臣 これは、おっしゃるとおりだと思います。これを分類しますと単独事業といいますけれども、自治体が単独事業を講ずることによって地域の経済問題でありますとか雇用問題、そういうものに対応していくということは、私は必要だろうと思います。
 そのために、例えば二十二年度でいいますと、地方財政計画で地域活性化・雇用等臨時特例費というものを約一兆円ほど計上しているところでありまして、同額の交付税がそれに応じて配分されているということであります。
 例えば議員がおっしゃったような、地域の特性に応じた振興策というものをきめ細かくという御趣旨かもしれませんけれども、そもそも交付税というのは、全国、普遍的な財政需要をとらまえて、それを客観的に計上するということになっているものですから、なかなか自治体独自の個性の強い取り組みというのは、個別に交付税で算定するということはできません。しかし、さっき申し上げたような一般的な地域振興のための経費というものが、ある程度というかかなり用意されておりますので、その中から工夫をして使っていただければと思います。
 私も、知事をやっておりましたときに似たようなことをやりました。例えば、県産材を使って住宅をつくったりリフォームをしたりすると、それに対して助成金を出すなんということをやったんです、これも単独事業ですけれども。そういうものは、観念的に言いますと、今私が申し上げたような交付税の算定された経費の中から使っているということだろうと思いますので、そういう取り組みをぜひやっていただければと思います。

○塩川委員 宮古の市長も、何か補助金で枠のはまるものよりも、一般財源として確保してもらった方がよっぽど創意工夫ができるんだと。そういう点でも、地方交付税の増額というのが地方の実情に即した取り組みにつながると考えております。
 実際、宮古市では、例えばスナックにツケがあった畳屋さんがそのスナックのツケを全部一度に払ってくれたと、スナックのママが大歓迎していたのがこういう制度だったということなんかも含めて、本当に地域のニーズにかみ合った取り組みというのを大いに花開かせるという点でも、頑張りどきではないかと思っています。
 その点で、今回三千億円の地方交付税の措置ですけれども、私は、これでは地方が必要とする財政需要にこたえるものにならないと考えます。大臣にお尋ねしますが、なぜ三千億円なんでしょうか。

○片山国務大臣 これは先ほど来申し上げておりますように、今回の補正対応での交付税の措置ということであります。補正全体のことを見ますと、地方自治体が実施する事業に着目すると、地方費が大体六千億円程度ということであります。その財源としては、例えば起債というのもありますし、国費としての活性化交付金もありますし、それから交付税もあります。したがって、そういう組み合わせの中で自治体がこれから事業を実施していくだろうということで、三千億円程度あれば、今回の国の補正を円滑に実施することは可能であろうということであります。
 残余のものをどうするのかということは、これも先ほど来申し上げておりますとおり、来年度の財政がちょっとでも、多少なりとも健全化すれば、そういう思いもあって、来年度の財源ということも念頭に置いた上での今回の決定であります。

○塩川委員 それだけではよくわからない。なぜ、四千億や五千億じゃなくて三千億なのかということなんですが、改めてお聞きします。

○片山国務大臣 それは、特に何かの算式を当てはめて三千億円が出たということではありません。六千億円ということを念頭に置いて、全体のバランス、他の財源とのバランスを考えたということが一つあります。
 それからもう一つ、先ほど申し上げませんでしたけれども、今年度の税収見通しというものを考えた場合に、もしこれが年度当初に判明していれば、それは判明しませんけれども、もし判明していたとすれば、恐らく三千億円程度が交付税として加算されていただろうということも今回の決定の背景にはございました。

○塩川委員 要するに、約六千億の地方負担が発生する補正予算の見合いで、地方負担分を国、地方の折半ルールでやるんだと。それで、国が負担をする地域経済活性化交付金と、あと地方の固有の財源である地方交付税、六千億円についてそれぞれ三千億、三千億、交付金は若干他の党の要求で上積みをされて三千五百億円にはなりましたけれども、基本は折半ルールで三千億というのが先にありきというのが実態であります。
 三千億ではやはり、補正予算に基づく事業にとどまらない、地域独自での振興策や雇用対策や生活困窮者に対する支援策、福祉、医療支援など、住民生活を支えるための地方独自の財政需要にこたえることにはなりません。
 先ほど大臣が来年の財源のことも含めてのお話をされましたけれども、しかし、一兆円翌年度に繰り越すのも重大です。来年度の財源不足の圧縮のために、地方固有の財源である交付税を充てることは認められない。
 私どもは、財源不足に対応するのであれば、交付税法六条の三第二項に基づく交付税の法定率の引き上げこそ行うべきで、折半ルールを前提にした法定率引き上げではだめだ、地方交付税に対する国の財政責任を投げ捨てることは許されないということを申し述べます。
 大臣の方で一言、もしありましたら。

○片山国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、法定率の引き上げというのは、これは理想であります。私も、それに向かってこれからの交付税のあり方というのは検討し、かつ論じていきたいと思っておりますが、差し当たって、今、言ったからすぐ法定率が引き上がるものでもありません。やはり、そのプロセスというものはよく考えておかなければいけないだろうと思います。

○塩川委員 終わります。