<第176臨時国会 2010年11月16日 総務委員会 5号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 給与法改正案について質問をいたします。
 片山大臣にお尋ねします。
 大臣は、この給与法改正案の質疑を通じて、人件費削減のために、次期通常国会に給与法改正案を提出するべく検討を進めていると答弁しておられます。次期通常国会に給与法を出すんだという御答弁ですけれども、そこでお尋ねしたいんですが、もし給与法改正案を出すということであれば、それは今年度分の給与を削減するための法案を出すという考えなのか、その点をまずお聞かせください。

○片山国務大臣 もし塩川議員のおっしゃったようなことを具体化するとすれば、さかのぼって不利益を職員に与えることになりますから、それはできないと思います。

○塩川委員 そうしますと、実際に出す時期というのは、いつということを想定しておられるんですか。

○片山国務大臣 それは、かねて申し上げているとおり、次期通常国会ということでありますから、おのずからしりは決まるわけです。ただ、最終でいいかというと、先ほど来も議論があったと思いますけれども、これは通らなきゃいけませんので、十分熟議ができる、そういう時間的余裕を見て、おのずから具体的なころ合いといいますかデッドラインというのは決まってくるだろうと思っております。

○塩川委員 次期通常国会に提出するということであれば、通例八月に行われます人事院勧告の前に給与法改正案を提出するということにはなりますね。

○片山国務大臣 それはそうなると思います。

○塩川委員 人事院勧告制度が定着をした一九六〇年以降、国において給与法改正案を人事院勧告の前に提出したということはあるんでしょうか。

○江利川政府特別補佐人 勧告を出しましてから内閣において処理をするということでございますので、今までは勧告を受けて対応しているというふうに承知をしております。

○塩川委員 ですから、過去、人事院勧告前に給与法改正案を提出したということは一度もございません。そういう点でも、給与法改正案を出すということは、来年の人勧を縛るものとなる、人勧尊重どころか、人勧に枠をはめるようなことになる、こういうやり方というのは認められない、こういう全く異常なやり方だと言わざるを得ませんが、大臣のお考えをお聞かせください。

○片山国務大臣 これは年度で区分しますと、次期通常国会でありますから、具体的に物事が動いていくのは多分来年度、四月以降になると思います、いろいろな議論が始まったり具体化しますのは。
 ただ、これは経緯からいいますと、今回の人事院の勧告の処理に当たって、第一段階として完全実施をします。ただし、それのみに終わらないで、さらに人件費の削減ということを考えながら必要な法案を次期通常国会に出すということでありますから、物事の経緯からいいますと、実は今年度のものと一体になるということだと観念すべきだと思います。
 ただし、さっき言いましたように、仮に削減するということになった場合に、どの年度の給与からとなりますと、不利益遡及できませんので、具体的には二十三年度からということになりますけれども、物事の経緯からいうと二十二年度の一連の作業だろうと思っております。

○塩川委員 労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告に枠をはめるようなものになる給与法の改正案の提出ということは、結局は引き下げありきのやり方をまかり通らせることになるんじゃありませんか。労働基本権を制約したまま労働者側の理解を得るということ自身が成り立たないのではありませんか。

○片山国務大臣 それは、過去、国も人事院勧告と違った給与の取り扱い方を法律で決めているという事例はあります。また、自治体においても、私も経験がありますけれども、人事委員会の勧告とは違った形で条例で決めたことがあります。給与法定主義でありますから、そういうおっしゃったような事態が生じる可能性はあるだろうと思います。

○塩川委員 一九八〇年代の前半における値切ったという話につきましても、勧告を踏まえてそれを値切るという措置であったわけであります。ですから、今回はそうではないということですよね。人勧の出る前に枠をはめるようなことをするということは前例のないことではありませんか。そういうことをやること自身が異常事態だ、認められないと考えますが、大臣、いかがですか。

○片山国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回閣議決定をした次期通常国会で法案を出すというものは、物事の経緯からいいますと、二十二年度分と一連のものだと思います。今おっしゃった五十七年のときとの違いは、五十七年は、人勧が出て、それを実施する前に、値切ったという表現がいいのかどうかわかりませんけれども、違った取り扱いをしたということでありますが、今回、私が申し上げているようなといいますか、閣議決定のとおりに進んだとすれば、二十二年度の人勧を値切らないでそのまま実施したけれども、おくれて値切る、こういう事態が発生する可能性があるということだと思います。

○塩川委員 職員団体の理解を得る、組合側の理解を得る、このようなことをおっしゃいますけれども、人件費二割削減という大方針があるもとでは、結局は、理解を得られなくても引き下げを行うという結論しか出てこないんじゃありませんか。

○片山国務大臣 二割というのは、何も単価だけで二割というわけではありませんので、いろいろな組み合わせの二割でありますから、そういう前提で労働側、職員団体側の理解もできるだけ得ていきたいと思っているところであります。

○塩川委員 もともと過去値切ったこと自身も、労働基本権制約のもとでの代償措置としての人事院勧告そのものをないがしろにするという点でも極めて重大でありますし、そういう点でも、今回それを上回るような措置を行うと言っている点は、極めて重大であります。
 もともとこの総人件費二割削減がいつ出てきたかといえば、二〇〇五年の総選挙のときであります。そのときに、一方の自民党側は郵政民営化を掲げました。他方の民主党がマニフェストに掲げたのが、国家公務員総人件費の二割削減であります。要は、構造改革路線の競い合いの中で出されてきたのが総人件費の二割削減で、今の状況を見ても、この構造改革路線の競い合いに未来はないということは言わざるを得ません。
 総人件費二割削減をそもそも何のためにやるのか。大臣はどのように受けとめておられますか。

○片山国務大臣 一つは、一般論としての行政のスリム化、小さな政府ということがありましょうし、何よりも、現下のこんな厳しい財政事情、国家財政のことを考えますと本当に安穏としていられない、こういう状態の中で、人件費をやはり考えざるを得ないということだと思います。

○塩川委員 もともと、現下の財政状況という点でいって、借金をつくったのは何かといえば、過去の大型開発の乱発と、また、大企業や高額所得者への減税ばかり行って、国民の懐を温めることを経済対策として行ってこなかった歴代政権の失政が生み出したものであります。高級官僚が責任をとるのは当然でありますけれども、この十年余りで二割近く年間給与が減少している出先職員など一般労働者にしわ寄せするというのは筋違いだと言わざるを得ません。
 四月の国家公務員法改正案の本会議質問におきまして、民主党議員が、公務員の総人件費二割カット、議員は議員定数削減で血を流し、お金持ちにも身を削っていただく、それでもお金が足らなければ消費税増税だと述べておりました。消費税増税の地ならし、露払いとしての総人件費二割削減は撤回をすべきだ、このことを述べて、質問を終わります。