<第176臨時国会 2010年11月25日 総務委員会 6号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 放送法等に関連して質問をいたします。
 最初に、放送の定義をめぐって質問をいたします。
 放送法の改正案第二条では、「「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信をいう。」とありますが、この規定について、五月の当委員会の参考人質疑でも疑問の声が出されました。
 例えば、日隅参考人は、私自身、あの法文を読んで、「直接」という部分についてどのように理解するのか、その法文上だけの解釈では、インターネットのコンテンツが除外されているということが必ずしも明確になっていないのだと思うと述べ、また、山本参考人は、求めに応じてといった説明では、IPTVなども含めて、はっきりするのかしないのか、いま一つわかりかねるという専門家からの問題が指摘をされております。
 そこで、具体例でお尋ねいたしますが、二〇〇一年に電気通信役務利用放送法案が議論されたときに、インターネット放送の一種と考え得るIPマルチキャストについて政府答弁がありました。
 当時の小坂副大臣が、IPマルチキャスト放送のように、多数に同時発信できるような、放送に類似した、概念的にも似通ったものがインターネットで提供されるような、非常に広範に行われるような状況が出てきたときには、そういった状況を見て、これに対して直ちに放送と同様の規制をかけるかどうかというのは慎重に考えていかなければならないが、何らかの規制というものが必要なのかどうか、慎重に見守っていかなければならないと答弁をしています。つまり、この時点では、IPマルチキャスト放送は放送と位置づけていなかったわけであります。
 そこでお尋ねしますが、このIPマルチキャスト放送を放送として位置づけたのは、いつ、どのような理由で行われたのか、この点についてお答えください。
    〔委員長退席、福田(昭)委員長代理着席〕

○平岡副大臣 お答えいたします。
 今委員が平成十三年の役務利用放送法の審議の引用をされましたけれども、その法策定の時点においては、IPマルチキャストを用いたサービスがどのように展開されるかが明確でなかったということでございますけれども、この法律の成立後、具体的な申請について検討をしたところ、役務利用放送法上の放送の定義に該当し、技術基準も満たすものとして総務大臣より登録がなされたところでございます。

○塩川委員 電気通信役務利用放送法の放送の定義に該当するという話でしたけれども、どのような理由をもって、根拠をもって該当するとされたんでしょうか。

○平岡副大臣 放送については、先ほど来から御議論がありますように、今回の放送法の改正によって、放送の定義がほかのいろいろな関連する放送法のものとあわせて定義をされたということでございますけれども、あくまでも、「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信」ということであります。
 先ほども議論がありましたけれども、インターネットの関係でいえば、あくまでも、受信する人が送信者に対して直接配信することを要求して、それにこたえて送信者の方から受信者の方に行くということについては放送に該当しない、そういう考え方をこれまでの答弁の中でも明らかにさせていただいたところでございます。
 ところで、IPマルチキャストについては、送信者は不特定多数の者に対して送信するものなのかどうか、あるいは、送信者は、受信者からの要求に応じて情報がその都度送信されるものではなく、同じ情報を多数の相手に届けるために同時かつ一斉に送信するものなのかに基づいて判断をさせていただいております。
 IPマルチキャスト方式を用いた映像配信については、送信者が不特定の受信者に向けて同時かつ一斉に送信を行うものであるということで、電気通信役務利用放送に該当するものとして、放送として位置づけているところでございます。

○塩川委員 お話にありましたように、放送の定義との関係でいえば、公衆、直接受信、それから送信というキーワードがあるという話は、以前、内藤副大臣もお答えになっているわけですけれども、その場合、重ねて伺いますが、この直接受信というところがよくわからないわけです。
 要求に応じてというお話をされましたけれども、インターネット放送でも、例えば当委員会もインターネットの国会中継が行われております。つまり、これは不特定多数、公衆に向けて行われておりますし、一斉同報で行われていますから、そういう点でいえば、送信という点でも多くの人に同じ時間に送られている、そういう類似性が非常にあるわけですね。
 そういう点で、以前は放送とは定義されていないIPマルチキャスト放送と、一斉同報のインターネット放送の違いというのは、直接受信という点についてはどう違うのかお答えいただきたいんです。

○平岡副大臣 先ほどもちょっとお話し申し上げましたけれども、受信者の方で送信者に対して直接アクセスして、そして送信者が受信者を確認して出していく、普通のインターネット放送と言われるものはそういう仕組みになっているということなので、そういう意味において、それは公衆に対して直接受信されることを目的とする電気通信の送信には当たらないというふうに考えております。
 ただ、IPマルチキャストについて言えば、送信者の方からとにかく一斉に同時にばっと送って、受信者の方は、ある意味では、流れてくるのをストップされているところを解除するだけで、送信者に対して直接要求するという仕組みにはなっていないというふうに技術的に私も理解をしております。
 そういう意味で、先ほど御指摘があったようなインターネット放送とこのIPマルチキャストについては違いがあるというふうに考えております。

○塩川委員 参考人の方からのお話にもあったように、要求に応じて、求めに応じてという説明では、このIPTVなども含めて、はっきりするのかしないのかいま一つわかりかねるという、誤解を生むような規定ぶりになっているという点が私は極めて重大だと思います。
 放送という形で一定の規制がかかるようなものに当たるのか当たらないのかについて、いわば不分明な状態が残されているということが現状であるわけです。こういった放送と通信を区分する明確な規定というのが法文上明定されているのでしょうか。

○平岡副大臣 これまでの放送に関する法律の中で放送というものを定義してきたわけでありまして、今回の放送法における定義というのは、そうしたものを集約してつくられたものであって、これまで法律で運用されてきたものをふやすものでも減らすものでもないという位置づけになっております。
 そういう今までの積み重ねというものがあった上での定義ということでございまして、この定義を使うことで問題は生じないというふうに思っていますし、逆に、いろいろな技術革新がある中で、細かく定義するということ自体がなかなか技術的にも難しいし、いろいろな技術の進展ということに対応していけないということもあります。
 ですから、先ほど来から申し上げている基本的な考え方、「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信の送信」というものが、これまでどのように解釈され、どのように運用されてきたかという事実関係をしっかりと踏まえて、今回の定義で我々としては必要にして十分であるというふうに考えているところであります。

○塩川委員 通信の一部である放送に該当するのかどうかについて、法文上の規定はない。技術の進展によって解釈が変わるということでも困りますから、私は、規制のかかる放送に当たるかどうかについて、明確な法文上の規定が必要だということを重ねて申し上げるものであります。
 続けて、ハード、ソフト分離の関係での問題についてお尋ねいたします。
 放送局への監督権限を持つ総務大臣が放送番組の編集を行う事業者を直接審査、認定することになるのは、行政の恣意的な介入の余地を生むのではないかという懸念の声があります。放送番組の編集を行う事業者を直接審査、認定する立場にある総務大臣が業務停止命令ができる権限を持つということは、放送の自由を侵害する懸念が生ずる、こういう声もあります。
 そこでお尋ねしますが、この業務停止命令に関して、どういう場合に業務停止になるのか、その点についてはどのように定めがあるのでしょうか。

○平岡副大臣 委員のお尋ねは、放送法を改正した後の新放送法のことかと思いますけれども、百七十四条で、「総務大臣は、放送事業者(特定地上基幹放送事業者を除く。)がこの法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したときは、三月以内の期間を定めて、放送の業務の停止を命ずることができる。」という規定であろうかというふうに思います。
 電波法についても、七十六条で、「総務大臣は、免許人等がこの法律、放送法若しくはこれらの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、三箇月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じ、若しくは第二十七条の十八第一項の登録の全部若しくは一部の効力を停止し、又は期間を定めて運用許容時間、周波数若しくは空中線電力を制限することができる。」という規定のことだと承知しております。

○塩川委員 この法律の規定に違反した放送が行われたことが明らかな場合、そういう前提の中で、幾つか条件づけはありますけれども、しかし、その入り口のところがこの法律の規定に違反するという点で非常に広くとれるわけで、どういう場合なら業務停止となるのかつまびらかではありません。そういう点でも、放送の自由を侵害する懸念はぬぐえないということを指摘するものであります。
 その点でも、今回の法案においては、マスメディア集中排除原則に係る違反についての免許取り消し権限の付与を含めて、総務大臣の権限強化が図られているものとなっております。私は、そういう中だからこそ、今こそ政府から独立した第三者委員会、放送に関する独立行政委員会の設置こそ必要だと考えます。
 民主党の政策集インデックス二〇〇九でも通信・放送委員会の設置を掲げております。この公約というのは、いつ、どのように実行されるのか、改めてお尋ねいたします。

○平岡副大臣 御指摘の通信・放送委員会、放送に係る独立行政委員会に関してでありますけれども、御案内のとおり、総務省では昨年の十二月から、ICT分野において、言論の自由を守るとりでを初めとする国民の権利保障等のあり方について検討することを目的として、ICT権利保障フォーラム、正確には、今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラムを開催して検討していただいているところでございます。
 この中で、行政による対応として、第三者的な監視組織の必要性を含めた御議論をいただいているところでございますけれども、これまでの議論の中では、一部に独立行政委員会の設置を必要とする意見もございましたが、新たな組織、機関の設立について否定的な意見も多数出されているということであります。むしろ逆に、こういう組織をつくることがかえって表現の自由を制約するような、放送の自由を制約するようなことになりはしないかといったような議論もあったというふうに承知しております。
 このフォーラムについては、近く何らかの取りまとめが行われるということを期待しておりますけれども、我々としては、最終的な報告も踏まえて判断をしていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 フォーラムの議論を見ても今言った両案があるような状況でありまして、民主党が掲げている公約の実行という方向に必ずしもなっていない。私は、この方向そのものは正しい方向だ、しかしながら現実は、この公約の実施が棚上げをされたままになっているということであります。もともと、国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消するということが出発点であるわけですから、こういう立場での改正こそ、放送法の議論にあって必要だということを申し上げます。
 政治家の大臣を長とする独任制の行政機関が放送事業者の監督を行うべきではない、だからこそ独立した規制委員会が必要だ、そういう議論が今回の法改正において取り上げられていないということ自身が、私は大きな問題だと言わざるを得ません。
 最後に、地デジ関連で質問いたします。
 高テレ法の事業者支援延長ということについては必要な措置だと考えます。一方で、視聴者、住民の皆さんの対応がこのままで大丈夫なのかという問題があります。
 そこで、具体例として沖縄の問題についてお尋ねしたいんですが、私、九月に調査にも行きました。全国でも一番普及がおくれている。この九月末での全国でのアンケート調査が発表されましたけれども、沖縄県は七八・九%と全国一低い。全国平均に対して九・〇ポイントの差がある。大きなおくれが解消されないままとなっております。
 そこで、わかれば教えていただきたいんですが、特に、一番地デジの電波が届くのがおくれた先島ですね、宮古島や石垣あるいは竹富町の世帯普及率がどうなっているのかについて調査はあるんでしょうか。

○田中政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生お尋ねの、沖縄における地域ごとの浸透度の調査結果ということでございますけれども、実は昨日、速報版として発表させていただきましたデータでございますが、これは全国ベースと県別までの分析に現時点ではとどまっております。
 沖縄県につきましては、おっしゃるように普及が特におくれていることにかんがみまして、サンプル数もふやして、また、今塩川先生がおっしゃいました本島、石垣島、宮古島、それから竹富町を含むその他島嶼といった四つの地域ごとでデータを収集したところでございますが、その点につきましては、今、集計分析中でございまして、いましばらくお時間の猶予を賜りたいと存じます。十二月の中旬ごろを目指して発表、公表させていただきたいと考えております。
 以上でございます。

○塩川委員 ことし三月の調査では、例えば石垣では四四%、宮古島では四一・五%と極めて低いという実態であるわけであります。それが解消されているのか、していないのかというのが問われるわけで、私、石垣市や竹富町役場にお話を伺いに行ったときに、例えば竹富町の役場でも、住民の皆さんがどれだけ地デジに対応しているかという調査自身がないんですよ。また、国がやっていますNHK受信料全額免除世帯への支援策について、では何世帯が利用しているんですかということについて、この九月下旬の時点ではゼロというのが役場の把握の実態なんです。
 ですから、そういう意味でも事態は極めて深刻なんですよ。もともと沖縄というのは所得が低いという問題もあります。電波が届くのも遅かったということもあります。観光地でホテルや旅館はたくさんあるけれども、そういうホテル、旅館の地デジ対応についても全く把握がされていないという、幾つもの困難さが重なっているのがこの沖縄の実情でもあります。そういうときに、全国一律に停波の方だけお願いします、こういう話が通るのかということであります。
 そこで、最後に、二つ大臣にお尋ねしたいんですが、この沖縄の問題に関連して、一つはやはり特別な支援策が必要だ。例えば、沖縄の民放の事業者の方からは、珠洲市と同じような、全世帯のチューナー支援なんかも含めた特別対策を沖縄でやる必要があるのじゃないのかという声がありました。そういう支援策についてと、私は、沖縄については別個に、停波を延期するということだって考えるべきなんじゃないのか、そういう事態に至っているのが今の現状ではないのか。こういうことについて、ぜひとも検討、具体化をしていただきたい。この点についてぜひ伺いたいと思っております。

○片山国務大臣 沖縄の現状については先ほど来やりとりがありましたけれども、沖縄県では他県よりも熱心に、独自の施策で支援をしていただいたりしております。そういう沖縄県の取り組みともよく連携をとりながら、できるだけ全国平均との格差が縮まるような、そういう取り組みをしていきたいと思っております。
 全国レベルでいいますと、昨日公表しましたけれども、九割の大台に乗りました。さらに、エコポイントの仕組みの問題もありまして、今ちょうどその駆け込みといいますか、そういうことで一層これが進んでいると思います。
 そういう中で、特定の地域がおくれたままということはあってはならないことでありますから、ぜひ、この沖縄の問題についても、重点的に私どもの方も取り組んでいきたいと思います。

○塩川委員 沖縄での特別な対策を求めると同時に、全国レベルでも低所得者支援について、市町村民税非課税世帯への支援策というのはアンテナがつかないわけですよ。こういう支援で本当に大丈夫なのか、この点をやはりクリアしていくという改善が必要ですし、また、ビル陰共聴についてのおくれというのも実態が深刻なわけですから、こういうことを考えても、テレビ難民が生まれないようにするためには、私は、来年七月のアナログ停波そのものを延期すべきだ、そういう電波法の改正こそ必要だ、このことを申し上げて、質問を終わります。