<第177通常国会 2011年02月18日 予算委員会 14号>



○塩川委員 本日は、四人の参考人の皆様から貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。
 最初に、井手参考人から御質問させていただきます。
 冒頭のお話の中でも、一括交付金化の点について、今後の課題ということで、交付金化に名をかりた予算削減とならないことということでの懸念のお話をしておられました。
 これは、例えば七十一兆円の大枠を決めた財政運営戦略の際にも、要するにある意味では国と地方と大枠を決めるという中で、地方財政どうなるのかという懸念の声があったわけですね。この財政運営戦略でも、「地方財政の安定的な運営」という部分に、「国は、地方財政の自主的かつ安定的な運営に配慮し、その自律性を損ない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」と。これは、地方財政法の二条をそのまま引用するような形で、国の地方財政への責任をきちんと置いたものであります。
 そういう点で、こういうのを踏まえて、一括交付金化が、ここでも述べているような、地方財政法二条の趣旨に反するようなものになりはしないのか、そういう懸念について一点お聞きしたいのと、今後、再来年度以降で市町村への一括交付金化が進められます。そういったときに、どうやってそういった、削られるようなことになりはしないかとチェックしていくのか、そういうことについてのお考えがあれば、ぜひお聞かせいただけないでしょうか。

○井手参考人 ありがとうございます。
 一応、地方の財政を考える上で最も重要な視点は、一般財源主義ではないかと思います。そういう観点から申し上げますと、今回の地方財政対策の中では、別枠加算でありますとか、あるいは二十二年度からの繰越金等々で一般財源としては確保されております。このように考えれば、一応総額としては今年度はとりあえず確保されている。それは、先ほどお話があったように、交付金自体の額は多少減ることはあったとしても、地方財政対策全体で見ればうまくフォローされているわけです。問題は、こうした措置がこれ以降続くのか続かないのかということではないかと思います。
 先ほどの二つ目の質問に関連してまいりますが、結局は、きょうのいろいろな議論のすべてに関連することでありますが、限られた財源の中でパイの奪い合いをすれば、どこかにその問題のしわ寄せが来ることは明確なわけです。そういう観点からは、全体のパイをふやすという議論を他方でやりながら、そして、どこにどのような資金を配分するのかということを議論するのが大切ではないかと思います。そうしなければ、七十一兆円の枠というのは大変な問題を地方財政に与えるのではないかというふうに考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、根本参考人にお尋ねいたします。
 先ほど、公契約条例のお話がございました。その点についてお尋ねしたいんですが、私どもも、国に公契約法を求め、また地方自治体でも公契約条例の実現ということで働きかけをしたところで、全国最初に公契約条例を制定した野田市ということが大きく知られるところでございました。
 私も、昨年の国会で原口大臣に、この野田市の条例の前文を引用いたしまして、国としてどうするのかという問いをいたしました。その際に、原口大臣の答弁は、国、地方広く検討して考えていきたい、こういう答弁にとどまったわけですけれども、この点で、根本参考人に、国に公契約法の整備を求めるということは、市長会でも訴えておられましたし、何よりもこの条例の前文にも書いておられた。国に整備を求めるというその趣旨について、ぜひこの機会にお聞かせいただけないでしょうか。

○根本参考人 公契約条例の中で私どもが定めております単価というのを申し上げたいと思います。
 この単価というのが、これは公共工事の場合でございますが、二省単価の八割というものを使っております。二省単価自体が、この八割というのがどうしても出さざるを得ない数字になりました。
 何かといいますと、これは、平均的な労働者についての賃金としては幾らになるかということを言ったときには、二省単価の数字を使えなかったという話があります。最低賃金を我々は決めましたので、平均的な単価が二省単価であって、我々が決めたのは最低賃金を決めておりますので、どうしても二省単価を決められない。そうなりますと、適正な単価というのは、やはり国の方である程度オーソライズしたような単価を決めてもらいませんと、我々が二省単価の八割と決めてしまうと、次の年にはそれが負のスパイラルになってしまうということがありますので、我々としては、できたらこれはやはり国で決めていただかないといけない、そんなふうに考えております。
 ただ、もう一つ申し上げたいのは、今度は、公共の現場で働きます業務委託等で、もしくは指定管理等で働いている人の皆様方の賃金という形になったときには、この話については最賃法との議論を相当しっかりやらなくちゃいけないという話になろうかと思っております。なかなか国の方でそこら辺をできるかどうかわからないと私は思っておりますので、この部分については、やはり地方で積み上げていく実績の中で国が法律をつくっていただければありがたいと思っております。
 公共工事については、もう法案も幾つかの党がまとめたという形ででき上がっているということも聞いておるわけでございますので、ぜひともそこら辺を法律としてまとめていただければありがたい。いろいろな御意見はあろうかと思いますが、お願いしたいというふうに思っております。

○塩川委員 今お話がありましたように、国のレベルでも、特に参議院の方で、公契約にかかわっては公共事業報酬確保法案というのが、一時出そうという話があったんですが、少し頓挫しておりまして、そういう点でも国側の努力というのを政府に対してもあわせて求めていきたいと思っております。
 その関連で、同じ地方自治体の長として、倉田参考人とそれから露木参考人についても、この公契約条例、また国に公契約法の整備を求める、この点についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○倉田参考人 この公契約というのは大変難しい問題でありまして、特に現下のように経済が極めて不況下にありますと、我々でも入札を一般競争入札といたしますと、すべて最低価格、くじ引きで決まるということが常になってきております。それできちっとした工事をしていただければいいんですが、下請、孫請の問題あるいは工事の中身の問題等々、かえって頭を痛める問題がございますので、一定のルールを各自治体においても構築する必要性があるのかなと思っております。
 そういった意味では、国がまず範を示していただければありがたい、このように思っております。

○露木参考人 私の小さな町議会ですが、町議会でも同じような質問を受けております。
 それで、野田市が先駆的な事例をやられておりますが、同じ神奈川県でも川崎市さんが取り組んでおられますので、そこの先進的な事例をまず調査させてもらうというところを現段階の姿勢にさせていただいております。小さな町でどのレベルで設定するのかというようなことは、逆に権限とかが移ってきても非常に難しい問題もありますので、やはり政令市あたりの規模でどういう対応をされるのかというのを今既に調査を始めているところであります。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 官製ワーキングプアをつくっていいのか、そういう問題意識がそもそもの出発点でございました。
 その関連で、今、片山大臣が指定管理者制度の運用改善の通知を年末に出しました。その中で片山大臣は、記者会見でも、指定管理者制度をコストカットのツールとして使ってきた嫌いがある、公共図書館とか、まして学校図書館なんかは指定管理になじまない、このように述べておられます。
 こういう片山大臣のコメントについて、自治体の長のお三方はどのように受けとめておられるのか。私自身は、指定管理者制度の抜本的な見直しが必要だと考えておりますが、その点についての御見解をお聞かせいただけないでしょうか。

○倉田参考人 指定管理者制度については、池田市は早くから取り組んでいる先進市の一つだと思っております。もとよりコストカットのツールではなくて、まさに新しい公共の見本的な形で、民間のお力をおかりしながら行政運営をする、そのパートナーとして指定管理事業を使わせていただいております。
 そういった意味では、私は、図書館についても指定管理事業に合致すると思っております。単に人事異動の中で、図書館行政に十分熟知をしていない職員を配置することもあり得るわけであります。それよりも、図書館協議会等々で活躍をされている民間の、それだけの力があった団体があれば、そこにお渡しをしてお任せをした方がいいのかなと。ただ、残念ながら池田では、まだそういう団体が育っておりませんので、直営でさせていただいているということでございます。

○露木参考人 指定管理者がなじむかどうかという問題は、当該地域における、今、倉田市長がおっしゃられたように、NPOの成長のぐあいとかそういったものをきめ細かに判断しながら考えていけばいい課題でありまして、総務大臣が一律的に、文化行政、図書館行政に熱い思いを持っていらっしゃるということはよくわかりますけれども、いいとか悪いとかと言うのは言い過ぎだ、こういうふうに思っています。

○根本参考人 私自身、指定管理の話については、うちでも当然やっておりますが、ただ、ここで考えなくちゃいけないのは、例えて言えば、公民館というような話があります。公民館というのは、学習効率からいけば指定管理にした方が効率がいい。ただ、学習必要という言葉からいえば、どうしても、これは行政がかかわり、本来はもうけ仕事にはなりませんよというような仕事でありながら、これは公民館学習として必要だというものはやっていかなくちゃいけない。そういうものを判断できるという形になると、なかなか効率性を求められてしまう指定管理者では難しいという話があろうかと思っております。
 そういう意味においては、私自身は、大臣がおっしゃっているような話としての指定管理の問題点というのが当然あるわけでございますので、そこら辺はしっかりこれから議論していただかなくちゃいけないというふうに思っております。
 例えて言いますと、私どもは、では指定管理の運営でどうしているかということでございますが、私どもは、公契約条例の直接の適用対象ではございませんが、この指定管理のときの募集要項の中で条件をつけてしまっておりまして、同じような形での最低賃金をセットし、その最低賃金を外すような話であるならば、それは失格要件にしてしまうというような形でやっております。
 そんな形で、余りそこで官製ワーキングプアをつくっていくような形はつくりたくないというふうに思ってそんな形でやっておりますが、一つ非常に悩ましいのは、その業務に精通した市民のNPO法人があったときに、そういうところに指定管理をしてはいかぬよという話。当然安く上がりますよと出てくるわけでして、そのときに、その皆さん方、ボランティア的に経費を安く上げますといったときに、果たしてこの人たちを官製ワーキングプアという概念に入れてしまってアウトにしてしまっていいのかどうか。これが今、ちょっと私ども、我々が条例の施行をするに当たって悩みとして考えておるところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 官製ワーキングプアをつくらないという点では、国と地方と、それぞれ努力を求めたいと思っております。
 地方自治全般ということでありますので、露木参考人に、講演の中でのお話、雑誌で拝見したんですけれども、二元代表制への問題、議会の役割の評価のことについてのお話がございました。「地域が地域の方向を自主的に決めていこうという場合に、議会は不可欠」「行政自身が住民の声を聞くことはいうまでもなく、議会が行政と違う立場から住民の声を町政に反映させようと努力する、こういう議会を抜きに地方分権・地域主権の時代はあり得ない」「特に小規模自治体では、議会を活性化する方向性で二元代表制をしっかりさせていくのが望ましい」「いまパフォーマンス型の手法で一気に議会を変えてしまおうということと、それが市民受けしてしまうという現象が散見されることを危惧していますが、これは勘違いではないでしょうか。」とおっしゃっておられます。
 今の幾つかの大きな地方団体において、そういう首長の姿勢についていろいろな意見もあるところですが、改めてその点についてのお考えをお聞かせいただけますか。

○露木参考人 その読み上げられた内容は、どこで書いた話でしたかな……(塩川委員「小さくても輝く自治体フォーラム」と呼ぶ)はい、承知しました。
 確かに、私の方の町議会が非常に議会改革に熱心でありまして、通年議会とか議会基本条例とか等々、さまざまな取り組みをされている。そういったことを踏まえて、議会の活動を評価したい。それは、地域主権時代になって、地域のことは地域のことで決める時代になれば、首長が一人の目玉二つでやるよりは、議会が全体の目をレベルアップして、そちらの方がどちらかというと主導権をとって、そして自治体を運営していく方が、私は、時代に合った改革の方向だと基礎自治体においては思っておりますので、そういう形で申し述べました。
 今、例えば名古屋市とか、あるいは大阪府もそうであるかもしれませんけれども、そこはそこの地域のやり方で、府民あるいは市民の大多数がそういう方向でいいよというのは、その地域の言ってみれば判断であるわけです。恐らく、これから先、神奈川県は神奈川県、あるいは愛知県、大阪府、いろいろなやり方でいろいろな提案があって、言ってみれば群雄割拠みたいな時代になってきて、どういうやり方が一番地域主権の時代にそぐうのかということの、いい意味の競争が始まる、こういうふうに思っております。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございました。