<第177通常国会 2011年03月08日 総務委員会 3号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 公害財特法による国の財政支援は、不十分ではあるものの、公害防止計画策定地域の環境改善に役割を果たしてまいりました。環境基本法の趣旨からも、公害対策の推進に国が第一義的責任を負い、地方公共団体の公害対策に必要な財政支援を行うことは当然の責務であります。現在も、大気汚染や水質汚濁、土壌汚染等の公害被害は解決されておらず、十年間の期間延長は必要だと考えます。
 この公害財特法は、環境基本法十七条に基づき、国の財政上の特例措置を講じるものとなっておりますが、今、環境基本法の公害防止計画制度に対する国の責任のあり方が問われる動きがあります。先ほど西委員からの御質問にもありましたが、昨年六月に閣議決定をいたしました地域主権戦略大綱では、「義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大の具体的措置(第二次見直し)」において、環境基本法の計画等の策定及びその手続の見直しが掲げられています。「関係都道府県の公害防止計画の作成に係る規定は、廃止、「できる」規定化又は努力義務化する。」と地域主権戦略大綱において書かれております。
 片山大臣にお尋ねします。この見直し規定について、どのような法改正を考えておられるのか、その点についてお答えください。

○片山国務大臣 これは、私、地域主権改革担当でありますので、現在法案をまとめておりますけれども、いわゆる義務づけ、枠づけの見直しということで、これは先ほども議論になりましたけれども、昨年六月に閣議決定されました地域主権戦略大綱において、関係都道府県の公害防止計画の作成義務を廃止する、これは全くつくらないということではなくて、作成できるというふうに、自治体の自主性を尊重するという意味での改正であります。
 それから、公害防止計画の策定に当たっての環境大臣への同意を要する協議の対象を限定する。これは、財政上の特例措置の対象となるものに限定する。
 こういう内容が閣議決定されておりまして、その法案の取りまとめを行っているところであります。

○塩川委員 この環境大臣による策定指示を改めて、作成することができる旨の規定とする、自治体の自主性を尊重するというお話でした。
 そこで、重ねてお尋ねをしますが、国が公害防止計画の策定を指示しても、都道府県の判断で公害防止計画を作成しなくてもよいということにもなるということでよろしいですか。

○片山国務大臣 これは、この法律での指示という仕組みが、現行はありますのがなくなりますので、そもそも指示ではない。国の関与というのはいろいろなことが考えられますけれども、少なくとも指示というのはなくなると思います。その他、一般的な関与として、助言とかそういうものは適宜やることはできると思います。

○塩川委員 指示がなくなる。あるのは、いわゆる一般的な技術的助言だというお話であります。
 そこで、環境省、近藤副大臣にお尋ねいたします。
 環境基本法の十七条一項二号の「人口及び産業の急速な集中その他の事情により公害が著しくなるおそれがあり、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難になると認められる地域」のように、新たに公害防止計画の策定を指示しなければならないような状況が生まれたときに、都道府県が作成しなくてもいいというようなことになれば、公害防止の目的を達成できなくなる懸念が生まれるわけで、これは公害対策に対する国の責務を後退させるものになりはしませんか。

○近藤副大臣 塩川委員にも御質問いただきまして、ありがとうございます。きょうは環境委員会で一問も答弁がないんですけれども、総務委員会でこうして質問いただき、ありがたいという思いであります。
 今回、御承知のとおり、国が一方的に決めるのではなくて、より身近なところで、地域で防止計画をつくっていく、これは趣旨としましては、きちっとした公害対策をしていくということであるというふうに理解しています。
 ただ、塩川委員の御指摘の懸念、こういうこともあると思いますけれども、国としては、やはり公害防止に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施していく責務は引き続き果たしていく、こういう必要があるというふうに理解し、責務を果たしていかなくてはならない、こういうふうに考えておるわけであります。
 計画の同意を適切に行うこと、また、公害財特法に基づく財政特例が適切に実施されるように図る、こういう中で、基準の達成、維持に向け必要な公害防止施策を積極的に講じていく、こういう中で責務を果たしてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 今後、公害被害が著しくなるようなおそれがある、そういう場合について、この地域では公害防止計画を策定する必要があるということについて指示がなくなるということになると、自主的な判断にお任せということでは、私は、やはり国としての公害防止に当たっての責任を果たすことができなくなるんじゃないのかと思うんですが、ちょっと重ねてですけれども、お答えいただけますか。

○加藤政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど、西先生の御質問にもお答えいたしました。先生御指摘のように、場合によっては、地域主権というのは大事な話で、これはこれでやっていかなきゃならないというふうに思っておりますが、ただ先ほど御答弁申し上げましたように、環境省がやはりリーダーシップを発揮していかなきゃならないようなことも出てくると思います。
 先ほど私がお答えしたような、閉鎖性水域における水質汚染といったような複数都道府県にまたがるような場合、やはり環境省がリーダーシップをとっていかなきゃいけないと思っております。そういう場合につきましては、関係都道府県に対して公害防止計画の策定を要請するというふうな形で適切に対処したいというふうに考えてございます。

○塩川委員 要請するという場合でも、それは技術的な助言ですから。本来、国としての財政措置も担保した公害防止計画の策定の指示ということが行われてこそ、公害防止に当たってのしっかりとした担保が行われるということが本来の趣旨だと考えます。そういう点でも、国における責任の後退ということは明らかであります。
 環境基本法の前身である公害対策基本法において、「国は、地方公共団体が公害の防止に関する施策を講ずるために要する費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めなければならない。」と規定されたことを踏まえて、公害対策の推進に関する国の財政責任を明らかにするため公害財特法が制定されたわけで、今回、この公害防止計画の作成を自治体任せにするということは、公害対策推進に当たっての国の財政措置についての責任も後退させることになる。公害対策の施策推進に当たっての国の責任を後退させるような環境基本法の改正は行うべきではないということを申し上げておくものであります。
 続いて、公害問題や環境汚染に関連して、重大な健康被害問題について取り上げたいと思います。
 二〇〇三年の三月に、茨城県神栖市において、有機砒素化合物に汚染された井戸水を飲んで数百人の方が環境被害を訴えている問題であります。
 井戸水を飲んでいた住民の方、被害者の方は、当時、手足のしびれや震え、歩行困難、頭痛などの症状に見舞われました。今でも神経障害やだるさ、集中力の低下を訴えております。とりわけ、当時、乳幼児、学齢期だった子供たちに深刻な影響を残しておりまして、井戸水を使ったミルクを飲んでいた子供が原因不明の脳性麻痺と診断をされ、発達障害、多動性障害が今でも認められるという重大な健康被害を招いているわけであります。
 環境副大臣はこの問題について以前から取り組んでこられたと承知をしております。民主党の中で、この神栖の毒ガス被害対策のワーキングチームなどについてもかかわってこられたと承知をしております。そこで、近藤副大臣にお尋ねをします。
 この有機砒素化合物、ジフェニルアルシン酸は、旧日本軍が製造していた赤剤という毒ガスを製造する際に利用されるものであり、環境省も「DPAA ジフェニルアルシン酸による健康影響について」というこのパンフレットでも書いておりますけれども、「検出されたヒ素は、通常自然界には存在しない、旧日本軍の化学兵器に使用された物質の原料物質でもあるジフェニルアルシン酸であることが判明しました。」ということであります。
 こういう事実については、そのとおりということでよろしいですね。

○近藤副大臣 御指摘をいただきました、発見された物質、ジフェニルアルシン酸でありますけれども、化学兵器の原材料として使われていた、ほかにはつくられていたという事実がない中で、今御指摘をいただいたパンフレットでも指摘をさせていただいておる旧軍由来のものである、こういうふうに考えておるところでございます。

○塩川委員 旧軍由来の有害物質ということで、国のいわば製造者責任というのは明らかであります。
 そこで、重ねてお尋ねをしますが、こういった旧日本軍が製造した有害物質による被害回復あるいは被害解明に対して、国がしっかりとした責任を持つことは当然だと考えますが、その点についてお答えいただけますか。

○近藤副大臣 この問題につきましては、当初、この事件が起き、調査されてきた経過の中で、地下水汚染のジフェニルアルシン酸については、これを含むコンクリート塊を何者かが不法投棄した、こういうことになっております。そういう意味で、汚染による被害の直接の責任は当該投棄者にあるということだと思います。
 ただ一方で、私は、国というものは、やはり国民の生活を守っていく、健康を守っていくという果たしていくべき責任がある、こういうふうに考えております。そういう観点から、この問題にはしっかり取り組んでいかなくてはならないというふうに考えております。

○塩川委員 不法投棄ではないのかという話でありました。
 私も、この二〇〇三年当時から現地にも何度も足を運んで、旧軍の関与の問題について調査を行ったり、実際にコンクリート塊が出てきて、その後、地下水についての浄化の措置などを環境省として行っているというのも承知をしております。
 ただし、旧日本軍が生産して保有をしていた。本来であれば、その背景を含めて、しっかりとした管理責任というのが国にあるのではないのか、この点が問われているわけです。こういったいわゆる赤剤と言われる毒ガス兵器について、この旧日本軍の保有とか廃棄などの管理状況がどうなっていたかということについて、そもそもしっかりと把握をしておられたのか、このことが問われていると思うんですが、その点、いかがでしょうか。

○近藤副大臣 塩川委員も御指摘になられました、この事件が発生をし、明らかになった時点で、私も現地に足を運ばせていただきました。そして、コンクリート塊が出てきた。それはどこに由来するものか、こういうことであります。
 当初は、何者かが不法投棄したのか、その辺がはっきりしなかったわけでありますが、ある意味で、何者かが不法投棄をしたということははっきりしてきたということであります。ただ、では本来、それは国とのかかわりということでいうとどうなのかということについては、今も調査というようなものが続いているところだというふうに思っております。
 ただ、先ほども申し上げましたように、ジフェニルアルシン酸というものは、旧日本軍が由来で民間に製造させてきたということがあるということでありますし、そういう意味で、私は、これに対する責任というものは、国としてしっかりとした調査をしていかなくてはならないというふうに思っております。

○塩川委員 しっかり調査しなければいけないというお話でありました。
 大量の毒ガスを生産、保有したのに、その廃棄、遺棄の状況がしっかりと把握されていないという現状そのものが問題であるわけです。毒ガス兵器の原料物質に対する国の管理責任も問われているところで、この健康被害については、国は責任逃れをしてはいけないということを重ねて申し上げておくものであります。
 そこで、こういった健康被害について、二〇〇三年六月に閣議了解をされた健康被害に係る緊急措置事業については、五年間の緊急措置だったものをさらに三年間延長して被害者の健康被害に対応してきましたけれども、その期限がことし六月となっています。
 私は、健康被害が続く限り政府の支援を継続する、こういう基本姿勢を明確にすべきだ、つまり、年限を切らない恒久的な支援措置を行うべきだ、このことを強く求めるものですが、その点についての副大臣のお答えをいただきたい。

○近藤副大臣 塩川委員の御指摘は、大変に重要な指摘だというふうに私は思っております。
 一部新聞でも報道をされましたが、被害者の方、青塚さん、また馬場さん、関係の方、当事者といいましょうか、お子さんにも、琉時君、また希叶さん、あと馬場紗耶香さん、三人のお子さんにもお目にかかりまして、大変に苦しまれている状況、御家族が大変だというお話を聞かせていただきましたし、先ほどもお話をさせていただきましたように、この事件が公になったときに私も現地に参りまして、当時まだ生まれたばかりだったというふうに記憶をしておりますが、琉時君にも会ったということであります。
 そういう意味で、私は、本当に御家族の方を思うと、これからの将来を思う親の気持ちというものをしっかりと先般受けとめさせていただいたということであります。
 すぐに、そういう恒久的なという言い方は申し上げられませんけれども、私は、いわゆる閣議了解をさせていただいた、被害者の方たちの健康不安の解消をしていく、あるいは、調査事業という言い方は私は必ずしもふさわしいというふうに思いませんけれども、関連で調査事業を続けていく。こういう事業の趣旨を踏まえれば、本当に関係の皆さんの不安を解消していくために、きちっとこの対応は継続していかなくてはならないというふうに思っております。

○塩川委員 昨年四月に、近藤昭一議員を含め複数の議員の方が、当時の小沢鋭仁環境大臣に申し入れをされておられる。その要請の第一の項目というのが、今私も取り上げました、年限を切らない恒久的な支援を行うこと。その点では近藤副大臣も同じ思いだと思っておるわけです。それを具体化していくという点で、ぜひ取り組みをお願いしたい。
 あわせて、最後に、この緊急措置事業では小児支援体制整備事業を実施していますけれども、サポートに当たっての関係機関の連携にとどまるような事業であります。当事者の子供さんの健康被害の問題は大変重大でありますし、それを支える御家族の方の負担も大変大きなものがある。ですから、そういった方々に対してしっかりとした、直接給付を含めた支援措置というのが必要だ、こういう事業の強化拡充が必要だ。この点について最後にお答えをいただきたい。

○近藤副大臣 ありがとうございます。
 この問題につきましては、私も、今御指摘がありましたように、かつて小沢当時環境大臣に要請をした、こういう立場であります。
 子供たちの支援。先ほど申し上げたように、子供たち、またお父さん、お母さんに改めて会って、直接状況を聞かせていただきました。事業につきましては、まだ具体的にどうということは申し上げられませんけれども、私は、子供たちの支援、またそこにかかわる親たちの支援ということはしっかりとしていかなくてはならない、こういうふうに考えておりますし、そういうふうな方向で進めたいというふうに思っております。

○塩川委員 被害者の方々には何の落ち度もないわけで、旧日本軍由来の、こういう毒ガスの原料物質についての健康被害については、国がしっかりと責任をとる、このことを強く求めて、質問を終わります。