<第177通常国会 2011年03月24日 総務委員会 6号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 東日本大震災などで被災された方々に、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。
 NHK予算案の審議に当たりまして、まず、被災者に対するNHK受信料の免除措置についてお尋ねをいたします。
 今回の免除措置について、災害対策基本法に基づく避難の勧告、指示または退去命令を継続して一カ月以上受けている方についても対象となっております。原子力災害対策特別措置法に基づく避難指示の対象となる原発災害の避難者及び自主避難の方も免除されるのか、この点をお尋ねしたい。あわせて、免除対象なのに口座引き落としが行われてしまうようなことがないのか、その点も添えてお答えをいただきたいと思います。

○松本参考人 今回、避難勧告等ということでありますけれども、福島の原発の避難勧告等につきましても、災害対策基本法に基づくものでありますので、これを一カ月以上にわたり受けた場合については災害免除の対象とさせていただくということであります。
 また、自主的に避難されている方につきましては、災害免除の対象とはならないということなのですけれども、一カ月のすべてにわたりやむを得ず避難されている方につきましては、自宅が空き家状態になっていて、受信機が明らかに放送の受信を目的としない状態になっているというような場合について、当該月については受信料はいただかない、こういうことになると思います。
 また、今回の大震災はこれまでに類のない大規模な災害でありますので、請求や手続などの運用に当たりましては、被害が甚大と想定される地域につきましては、口座等への受信料の請求を一たん延期するなど、柔軟に対応してまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 NHKの受信料の免除については、被災者の実情に合わせて判断基準の必要な見直しをぜひやっていただきたい。
 あわせて、NHKの受信料全額免除世帯には、地デジ対応の支援を国が行うことになっています。ですから、そういう点では、地デジテレビの設置も含めて、国としてテレビが視聴できるような環境を整えるべきだ、この点を強く求めておくものであります。
 次に、アナログ放送の終了、デジタル化に伴う問題点について何点かお尋ねをしたい。
 一つは、新たな難視対策によるケーブルテレビへの移行に伴う視聴者の負担軽減策についてお尋ねをいたします。
 新たな難視は、今までアナログ放送は届いていたのに、デジタル放送が届かないという地域になります。対策手法としてケーブルテレビに加入するというのも入るわけですが、そうしますと、毎月毎月のケーブルテレビの利用料金が発生をいたします。NHKは、この新たな難視の場合、ケーブルテレビ加入の際には初期費用についての負担は行います。しかしながら、毎月毎月発生する利用料金について、何らかの負担軽減策というのはありません。
 実際に調べてみましたら、新たな難視地域で、ケーブルテレビで対応するという地域で月額の利用料金は幾らか。新潟県のある地域では月額二千七百三十円、山梨県のある地域では月額三千百五十円、こういう負担が発生する地域が現にあるわけですね。
 NHKの受信料負担でも、地上契約千三百四十五円、衛星契約であれば二千二百九十円です。新たな難視で、つまりNHKの放送などが届かない、いわば送信者側の都合で受信者側がケーブルテレビに入らざるを得ない。それなのに、毎月毎月三千円の負担、NHK受信料、衛星を加えれば毎月五千円もの負担を強いられる。こういうことが放置されていいんだろうか。
 これはNHKとして何らかの負担軽減策を考えるべきじゃないのかと考えますが、いかがでしょうか。

○永井参考人 お答え申し上げます。
 地元の皆さんが御要望で新たな難視の対策手法としてケーブルテレビを選択した場合には、御指摘のとおりに、NHKからも助成金を出して、ケーブルで受信していただくというふうにしています。
 このとき、月額料金が高額な場合でございますけれども、地デジを低廉に提供していただけるようにケーブル事業者に対しては国が働きかけをするということを聞いておりますので、そのようにお願いしたいというふうに思っております。

○塩川委員 会長に重ねてお尋ねしますけれども、例えば、中継局を打たない、NHKの共聴施設をつくっている地域、NHK共聴ですね、その場合については、毎月毎月の維持管理費について、大体、全国平均的に千円だと聞いています。そのうちの半分はNHKが持っているというわけです。そういう点では、NHK共聴施設においては、毎月毎月の維持管理費の負担を軽減しようという点でのNHKの取り組みをやっているわけですよ。
 中継局も建てない、NHKの共聴施設もつくらない、ケーブルテレビ会社にお任せというのに対して、毎月毎月発生する利用料金に高額な負担を押しつけたままでいいのか。地方でいえば、毎月毎月の現金収入が月に三万、四万円、国民年金だけという高齢者世帯だってあるわけですから、そういった月に三万、四万の方に受信料を含めて五千円もの負担を強いる、これが皆様のNHKなのか。
 こういう点でも、新たな難視地域におけるケーブル加入世帯に対応した利用料の負担軽減策をしっかりとるべきじゃないか。この点についてお尋ねします。

○松本参考人 ケーブル料金が高くて、NHKだけでよいから視聴したいという要望で地元が一致するような場合、この地域は、NHK助成の対象外とはなりますが、NHK単独で置局するケースというものも出ております。
 今後も、地元の意向を踏まえ対応していきたいというふうに思います。

○塩川委員 要するに、民放を見たいからケーブルテレビ加入なので、NHKとしてはそういう希望に沿ってやっているだけなんだという話なんですけれども、NHK共聴でも民放も一緒に見られるような仕組みで、千円の負担のうち五百円をNHKが負担し、残りの五百円を視聴者が負担するというのは、それは民放分の負担という趣旨なんですよ。そういうことを含めて、本当に実態に合わせて対応することが必要だ。
 その点で、総務省としてこういう事態をどうするのかについて、一点お聞かせいただけますか。

○平岡副大臣 お答えいたします。
 新たな難視の対策については、ケーブルテレビ加入対策を含めいろいろな対策を講じているということでありますし、ケーブルテレビについては、今委員から御指摘があったように、国あるいはNHKの方からも初期費用の負担をしているということでございます。
 視聴料についても、できる限り利用しやすい料金で提供することが必要であるというふうに我々としても考えておりまして、既に、文書によりまして、ケーブルテレビ事業者等に対しまして協力要請を三回にわたってやってきているところでございます。
 現在のところ、先ほど委員から御指摘あったような地域も残っていることは事実でございますけれども、地デジのみの再送信を提供するケーブルテレビ事業者については三百六十社ほどありまして、そのうち六割強が千円以下の利用料になっているというような、成果といいますか、要請した結果としての実情になっております。
 いずれにしても、総務省としても、引き続き、ケーブルテレビの利用料金が低廉となるようにこれからも要請をしてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 実際に高い料金のところは、地方で経営も大変なところなんですよ。そういうところでしっかりと引き下げられるような仕組みを国として、NHKとしてしっかり行うことによって、テレビが見られないような世帯をなくす、高額な負担はなくしていく、そのために全力を挙げてもらいたい。
 もう一点地デジ関係でお聞きしたいのが、離島の話であります。
 長崎県の五島列島の五島市、中心の福江島からさらに離れた二次離島の久賀島という地域があります。ここは、現状でも放送を一時無線に転換して送信するものですから、天候が悪いとき、台風のとき、こういうときにはテレビの中に雨が降るような、画像が乱れるわけですね。そういう地域が現に残されています。
 これまで中継局があったところを、NHKは民放とともにケーブルで対応すると移行を決めたところであります。現状の無線設備のままでは、天候不良で放送に影響が出る。デジタルになった場合でも、デジタルであれば障害が出ると真っ黒になっちゃう、一層見えなくなるということも予測されるわけで、電波がまともに届かない、放送の品質が保証されない、こういう事態に対してNHKとしてはどのような対策をとる考えなのかをお答えください。

○永井参考人 お答えいたします。
 御指摘の長崎県五島市の久賀島、ここには二つの事業者があると聞いております。その一つの事業者で、今のような、無線で飛ばしているところがあるというふうに聞いております。地元の皆さんとお話し合いの結果、ケーブルで地上デジタル放送を受信していただくということになっていると承知しております。
 テレビをケーブルで再送信する際の品質については、基本的にはケーブルテレビ事業者が確保するものというふうに考えていますが、我々も必要に応じて技術的な面で協力は行っていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 大臣にお尋ねしたいんですが、この久賀島は、現状でも台風になると本当にテレビの映りが悪くなるという地域であります。そういう点で、災害時のライフラインでもあるこの地上波テレビ放送が十分保証されるのか、このことが問われているわけです。
 ぜひ、こういう問題について、関係者のいろいろな経緯もあってこうなっているわけですけれども、そのことを含んだ上で、やはり住民の方、視聴者の方は、ちゃんとテレビが見えるようにしてほしいというその一点なわけですから、そういう点で、さらなる努力をして、しっかりと品質が保証された放送が行われるために総務省として全力を挙げていただきたいと思うんですが、大臣のお答えをいただきたい。

○片山国務大臣 議員もおっしゃったように、地元でもいろいろな事情があるように聞いておりますけれども、ぜひ、地元の自治体とケーブルテレビの事業者とがよく協調して、住民の皆さんに品質のいい放送が送れるような、そういう体制を整えていただくように総務省としても少し働きかけをしてみたいと思います。

○塩川委員 永井さんもぜひ現場に行っていただいて、住民の方から話もよく聞いていただくことをNHKには強く求めておくものであります。
 最後に、地デジ完全移行、アナログ放送終了についてお尋ねします。
 今回の震災で多くの視聴者の方が被災しておられます。大きな費用負担が発生するようなデジタル化を強いるときではないと考えております。特に被害の大きかった東北の三県は、いずれも世帯普及率が低い地域であります。全国平均が九五%に対して、福島が九三・九%、岩手が九三・三%、宮城が九〇・七%です。またこの三県は、海岸線が入り組んでいるものですから、地上波が届きにくい地域にもなっています。ですから、結果として、衛星放送、セーフティーネット対応になっている地域にも含まれるということであります。
 つまり、津波被災を受けているような、地震の被害を受けているような地域で、衛星放送対応で、地元の放送を見ることができない。ですから、そういう地域には宮城の気仙沼とか岩手の宮古や大船渡なども含まれているわけであります。肝心の地元の災害情報が流れないような地域が残されているのが、この三陸などを初めとした沿岸部になっているという状況であります。
 私は、こういう事態も含めて、全国的にも、低所得者の方、高齢者世帯の方、あるいはビル陰難視の地域を含めて、アナログ放送を停波する環境にない。テレビ難民を出しかねない状況がありますから、七月のアナログ停波は延期すべきだと考えます。少なくとも全国一律にアナログ放送の停止をすることは見直したらどうか、このように考えますが、大臣、お答えをいただきたい。

○平岡副大臣 お答えいたします。
 先ほども同じような御指摘があったわけでございまして、私たちとしても、今回の東北地方太平洋沖地震の影響については大変憂慮しているところでありますけれども、七月二十四日の完全デジタル化に向けてこれまで一生懸命取り組んできたわけでございまして、方針としてはぜひこれを達成していきたいということでございますけれども、委員御指摘の影響等については、これからも引き続き状況を見きわめてまいりたい、このように考えているところでございます。

○塩川委員 状況を見きわめた上で無理だと判断したときには適切に延期する措置を強く求めて、質問を終わります。