<第177通常国会 2011年03月25日 内閣委員会 4号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 まず最初に、東日本大震災の被災に遭われた方々に、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げるものであります。被災者の方の生活再建のために全力を尽くすことを改めて申し上げます。
 今回の法案は、地方自治体が地域の実情に即した事業または事務をより的確に実施できるようにすることを目的として、内閣府の所掌事務の規定を改正するものであります。地域の実情に耳を傾けることが必要で、今でいえば東日本大震災、また福島原発事故でそのことが問われているときではないでしょうか。
 まず、その関連で、福島原発事故によって、震災、地震や津波を含め多くの住民の方が避難をし、結果として町村役場が移転を迫られる事態が生まれております。
 最初に経産省にお尋ねしますが、この福島原発事故に伴い町村役場を移転した自治体はどこか、また、それぞれどこに役場機能を移転させたのか、その点について、まずお答えください。

○中西政府参考人 お答えいたします。
 今般の原子力災害に伴いまして、避難を行うということで災害対策本部を町外に移転し、実質的には役場機能を移転したのが八町村ございます。例えば、皆様も御案内のとおり、双葉町はさいたまスーパーアリーナ、大熊町は県内の田村市の体育館にそれぞれ移転してございます。

○塩川委員 八町村。七町村は福島県内でありますが、双葉町は埼玉県に移転をする、さいたま市のスーパーアリーナで。これは四月から予約が入っているそうで、そのままいられないということで、実際には、その後、加須市の方に移転をするということになっているわけであります。
 重ねて経産省の方にお尋ねしますが、この役場の機能の移転、災害対策本部の移転というのは、要するに、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策本部長つまり総理の二十キロ圏内の避難指示、三十キロ圏内の屋内退避指示によって生じたものとなっている、そのように思いますが、御答弁をお願いします。

○中西政府参考人 お答えいたします。
 ただいまの委員の御指摘のとおり、原子力災害特別措置法の指示に伴いまして、今般、このような役所の移転が結果的に行われたというふうに認識してございます。

○塩川委員 大臣にお尋ねします。
 こういった一時避難ということではない、要するに、先の見通しが立たないような住民の避難とともに役場機能の移転も伴わざるを得ないということは想定をされていなかったわけであります。そういう点でも、自治体の苦労はいかばかりかと思うわけですが、この点についての大臣の御認識をお聞かせいただけないでしょうか。

○片山国務大臣 本当にこれは大変なことでありまして、今回の津波被害で役場機能をほとんど喪失したという自治体もありますけれども、一方では、こういう原発関連で、原発によって役場を移転せざるを得ないところが出たということで、本当に大変なことだと心を痛めております。
 実は、この役場の移転に関連して一番私が心配しておりますのは双葉町でありまして、これは八町村のうちの一つでありますけれども、県外に移転をされているわけです。県内でありますと、まだ福島県のケアといいますか、目が届く範囲内でありますけれども、県外でありますと、そこがなかなかおぼつかないと言うと失礼かもしれませんけれども、目が行き届かなくなるということもありまして、一番心配しております。
 この双葉町の現状についてよく把握をして、国としてできる限りのサポートをしたいと今考えているところでありまして、実はきょう現地に総務省の課長を派遣しておりまして、実情を聞き取っているところであります。

○塩川委員 今お話しのように、実際に心配されるような状況があります。
 原発事故による移転自治体に対して二十キロ圏内の避難指示、三十キロ圏内の屋内退避指示を行った国の責任を持った対応が問われているわけで、きょう官房長官が記者会見でも説明しておりましたが、二十キロから三十キロの屋内退避の地域についても自主避難を促すと。屋内退避と指示しておきながら自主避難を促すという点で、非常にちぐはぐな対応で、住民の皆さんの対応というのは本当に深刻な状況だろうと推察されます。
 そうしますと、その三十キロ圏内には南相馬市の市役所の庁舎もありますから、これは役所の機能が十分果たされるのか、こういう問題が当然新たに浮かび上がってくるわけであります。八町村に加えて、南相馬市の事態というのもどうなっていくのか、これはやはりしっかりと実態をつかまなければならないと考えています。
 移転自治体にはさまざまな課題が持ち上がっておりまして、人手が足りない、そもそもパソコンが足りないとかいうこともあります。
 例えば、三月二十三日付の日経の夕刊に、二本松市の支所に臨時役場を置いた浪江町の話が取り上げられておりました。人口約二万人のほとんどが町外に避難をした、二本松市内などに町が設けた避難所に二千八百人が身を寄せている、職員は泊まり込みで避難所への物資配達、避難者の健康管理、住民の安否確認などに追われている、罹災証明書の発行や介護保険、年金などの問い合わせがふえてくる、必要なデータが手元になく答えられないとか、財務会計システムを置いてきたので現金支出ができず今はすべてツケ払いだ、こういう事態で、住民データのバックアップを取り寄せようとしているけれども、業者も震災で混乱し順調に進んでいないという報道でありました。
 その点で、大臣にお尋ねします。
 今、双葉町については課長を派遣して実態を把握しようという話でございました。その他の町村も含めまして、このような丸ごと移転の自治体及びその住民のニーズをどのように把握しようと考えておられるのか、その点についてお聞かせください。

○片山国務大臣 これは、既に市町村行政機能サポート窓口というのを総務省につくりまして、こういう原発で移転されていろいろな問題に遭遇している自治体の相談を個別に受けて支援をしたり助言をしたりするという機能を今もうつくっております。もちろん、これは原発以外の被災市町村からの照会も受け付けるということでありますけれども、原発関連の市町村も特に念頭に置いております。
 それから、先ほどは双葉町のことを申し上げましたが、既にもう該当の自治体の首長さんに政務三役から電話を差し上げて実情を伺ったり困難なことを聞き取ったりもしておりますし、これからも、移転をしているところを中心に、総務省として、よく連絡を密にして、課題を吸い上げて、国としてしなければいけない必要なことを迅速に行うようにしたいと考えております。

○塩川委員 小野町に役場機能を移した広野町なども、町民の方は各地に分散して避難をされておられる。ですから、福島県内の小野町に役場機能を移転しているけれども、住民の方は例えば埼玉県の三郷市などを初めとした各地に分散しての避難という状況ですから、町民と連絡をとること自身に大きな苦労を伴うという事態であります。
 その上に、被災地においては、自分のふるさとの再建、復旧復興のために力を尽くしていきたい、こういうことで努力が始まろうとしているところですけれども、しかしながら、この原発の事故に当たりましては、いつ戻れるかという見通しが見えてこない。ですから、戻りたいけれどもいつなのか、こういう点についてはっきりとした見通しがない中での、展望が持てない中での状況に置かれているということにやはりしっかりと心を寄せることが必要だと思っております。
 そういう点でも、原発神話を振りまいてきた国の責任は重大で、将来展望が見えない移転自治体と避難住民の要望にしっかりこたえていくという点での努力をお願いしたい。
 そういう意味で、この間の自治体の丸ごと移転ということでいいますと、例えば三宅村の例などがございます。全島避難した三宅村の集団移転の教訓というのはしっかり踏まえる必要がある。二〇〇〇年九月から二〇〇五年二月までの四年五カ月の避難生活で、東京都内の二十三区、二十五市、二町、二村に避難、さらに、全国、東京都外の十六県に広域の分散の避難をしたというのが実態でありました。コミュニティーを維持したり、生活資金の確保や仕事の確保など、幾つも課題があります。
 実際、その人口を見ますと、全島避難前には、二〇〇〇年の一月では三千八百四十五人だったものが、全島避難が解除をされて戻られた、その後の二〇〇七年の一月の時点では二千九百人であります。つまり、千人も人口が減少した。この事実は大変重いものであります。
 今回の移転自治体の多くは原発の城下町でもあり、仕事の場でもあったということを考えても、どう再建をしていくのか、やはりそういう将来展望も含めて考えていかなければいけない。地方財政上の困難もあるでしょうし、住民の仕事がないという問題もあるでしょうし、放射性物質の汚染をどうしていくのかという問題もあります。
 こういった移転自治体の行政上の要望や意見に国としてどうしっかりこたえていくのか、このことが問われていると思うんですが、その点についてのお考えをお聞かせください。

○片山国務大臣 このたびの新しい事態にきちっと対応していく体制をつくらなければいけないと私は思っております。
 当面、役場の問題については、これは事柄の性格上、総務省で対応しておりますけれども、それに限定されるものではありません。したがって、政府全体としてこの問題に対応していく、その中で、総務省として、やることはかなり多いと思いますけれども、全力を挙げて支えていきたいと考えております。

○塩川委員 想定外の財政需要も当然発生することと思います。三宅村の場合にも、特別交付税のかさ上げの措置などが行われたり、ちょうど国勢調査の期間に丸ごと移転ということもあって、人口そのものが村そのものにはその時点でゼロだったとかという、そのカウントの仕方についても特例を行ったりとかいう措置もあったそうです。
 今回の災害に当たっても、いろいろな地方財政措置のことが言われております。そういう中には、地方に対して一括交付金的なお金で使い勝手のいいようにとか、そういうことなども報道はされているわけですけれども、こういった想定外の財政需要も発生するような移転自治体に対してしっかりとした地方財政措置が求められると思うんですが、この点についての大臣のお考えなどがありましたら、お聞かせいただけますか。

○片山国務大臣 支援措置といった場合に、財政的に何がしかの仕組みを設けるということももちろん考えられますけれども、今、差し当たって念頭に置いておりますのは、例えば福祉の分野でも、災害救助法というのは住所地で救助することを前提にしております。しかも、市町村が健在で被災者を救助するということを前提にした仕組みであります。役場機能が失われたり、役場機能が分散といいますか移転をせざるを得ないようなときに住民の皆さんが域外に分散をしているというようなときに災害救助法の適用はどうなるのかとか、地元負担はどうなるのかとか、介護保険はどうなるのかとか、実は全く新しい問題が提起されております。
 そういうことを早く解決しなければいけないということで、昨日の事務次官を集めた会議でも私の方から関係府省の次官に要請したところでありますが、そういう問題から含めて、一体どういうニーズがこれから起こってくるのかということを、全貌を把握しなければいけないと思っております。
 その上で、地元の福島県、それから、当面双葉町は埼玉県でありますけれども、埼玉県の御協力も得ながら、住民の皆さんのための役場機能というものができるだけ円滑に運営されるような、そういうサポートをしていくということがこれからの課題だと思っております。

○塩川委員 あの双葉町の場合にも、さいたまスーパーアリーナから加須市の旧騎西高校の跡地に移ると。自分たちの学校を開きたいと思ったけれどもそのスペースがどうもとれそうもないということなども町長さんはおっしゃっておられたということも聞いております。そういう点で、文科省など関係府省のしっかりとした連携のもとで対応することが必要だ。
 そういうことを考えますと、東日本大震災の生活再建や復旧復興のために、公共事業の執行も見直して、大企業、大金持ち減税や米軍への思いやり予算をやめるなど、全体的に予算を組み替えることこそやるべきことであって、被災自治体にとって使い勝手のいい地方財政措置を行うということが求められている。住民福祉の基幹である地方自治体の機能確保が住民生活を支える一番の力だと思います。国として全力を挙げていただきたい、このことを求めて、質問を終わります。