<第177通常国会 2011年04月05日 総務委員会 8号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 東日本大震災、福島原発事故に関して質問いたします。
 政府は一日の閣議で、東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島、茨城などの七県と被災市町村に対し、普通交付税を繰り上げ交付すると決定いたしました。
 この点で注意が必要なのは、宮城県女川町と福島県大熊町は、原発立地交付金もある関係で不交付団体であることから、普通交付税の前倒しの対象にはなっておりません。しかし、宮城県女川町は大津波の直撃を受け、町はほぼ壊滅し、役場も破壊され、女川町体育館の一部で業務を行わざるを得ないなど、被災者支援や復旧復興のために多額の経費を要する状況となっております。また、福島県大熊町は原発二十キロ圏内に係る自治体であり、住民には避難指示が出され、役場機能も移転するなど、想定外の財政需要が発生するおそれがあります。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、不交付団体を初め大震災で被災をした自治体に対し、特別交付税を含め、今後、どのような地方財政措置を行うことを考えているのかお聞きします。

○片山国務大臣 災害復旧のためのこれまでの補助制度は不交付団体であっても交付されますので、それによって地元負担をできるだけ少なくするということに努めたいと思います。
 それから、交付税でいいますと、不交付団体には普通交付税は行かないわけでありまして、これはやむを得ないと思います。今後の状況によって、不交付であった条件といいますか、そういうものが大きく変われば、これが不交付から交付に変わるということはあり得るとは思いますが、算定をしても不交付であれば普通交付税は交付されない、これは制度を適用する以上はやむを得ないと思います。
 ただ、特別交付税につきましては、一般的には、特別交付税の財政需要が生じて特別交付税が交付されるということが計算されても、不交付団体の場合には超過財源といいますか、財源超過額と相殺をされますので、全部またはほとんど行かないということになるんですが、災害の項目だけは、これは特定項目と呼んでいるんですけれども、不交付団体であってもその分はちゃんと交付するという制度になっておりますので、御指摘の女川でありますとか大熊町でありますとか、ここについても、差し当たって四月八日で考えているんですけれども、特別交付税の随時交付というのが先般の地方交付税法の改正で制度改正になりまして行えるようになりましたので、第一回目の適用として、この随時交付をしたいと考えておりまして、その対象になり得ると思います。

○塩川委員 特別交付税の措置をぜひお願いしたいということと、それにとどまらず、特別の復興の交付金ですとか各種補助金の抜本的拡充など、自治体への十分な財政措置を講ずることを求めていくものであります。
 次に、原発事故被害者に対する補償、賠償に関してお尋ねをいたします。
 原発事故による避難者の方は二十万人以上に及びます。まさに着のみ着のままで避難した住民の方は、いつ戻れるかも知れない不安の中にあります。当座の生活資金さえままならない状況です。さらに就労、就業の場も失ったままでは暮らしが成り立ちません。埼玉労働局が、双葉町など、福島県からさいたまスーパーアリーナに避難した被災者を対象にアンケートを実施したそうですが、三分の一の方が勤務先を失っているということでございました。
 そこで、笹木文科副大臣にお尋ねいたしますが、原子力損害賠償法は、原発事故によって生じた損害は原子力事業者が賠償責任を負うこととしております。東電から被害者に対して賠償金はいつ支払われるのかお聞きいたします。

○笹木副大臣 お答えします。
 今お話があったように、原子力の損害の賠償ということでは、事業者に無過失無限の賠償責任を課すということになっています。
 それで、一番大事なのは、被災者が早くその補償を受けられることだと思っていますので、原子力損害賠償の紛争審査会を早く立ち上げて、そこで基準を示していくこと、これが一番肝心だと思っています。それはもうそんなに何日もかからずに、その基準を設定するための審査会を立ち上げる。文部科学省としては、その準備を今急いでいるところです。
 賠償がいつ支払われるか。これは、事業者である東京電力が具体的に賠償の請求を受けて、それに対応して行っていくということですから、文部科学省として、いつということは答えられませんが、それが早く行われるためには審査会を早く立ち上げるということだと思います。

○塩川委員 いつ支払われるのかということについては、お答えがございませんでした。
 副大臣がお話しされましたように、まずは原子力損害賠償紛争審査会を立ち上げる。それは政令で定めるということがまず必要ですし、その先に、原子力損害の範囲等の判定指針を作成する、これを踏まえて被害者と東電の間で話し合ってくれという話になるのが今回の法律のスキームであるわけです。
 そうすると、要するに、まだ審査会も設置をされていないし、指針の作成もどれだけ時間がかかるのかよくわからない、その先は民民でやってくれということになりますと、どんどん賠償金の支払いが先延ばしされるというか、先の見通しも立たないような状況にあるということを言わざるを得ません。これでは不安を感じる方が多く出るのは当然でもありますし、被害者の方に余りにも冷たい対応だと言わざるを得ません。
 ジェー・シー・オー事故のときには、まずは事業者による仮払いが行われました。あのときは、九九年の九月三十日に事故が発生し、年末にかかる費用もあるということで、十二月三十日に事業者による仮払いの振り込みが行われたということであります。それでも遅いという声があったわけで、補償金の確定は半年後の二〇〇〇年三月末でありました。
 今回、ジェー・シー・オーの事故などとは比較にならないような大事故となっていますので、補償、賠償金についても大きな規模が見込まれる、だからこそ時間がかかるということにはならない。個々の被害者の方にしてみれば、まさに自分の暮らしをどうしていくのかということが問われているわけですから。
 そういう点でも、きょうの読売でも報道がありますように、東電として、避難した住民や農産物の被害を受けた農家に対して、損害賠償額が確定する前に仮払金を支払う方針を固めたことが、四日、明らかになったと報道しているわけですが、この報道は事実なんでしょうか。仮払いを含めて、被害者に対する賠償金の支払いを一刻も早く行うために、国としてどのように取り組むのかについて改めてお尋ねいたします。

○笹木副大臣 今委員のお話にありました仮払いですが、これは基本的に、仮払いも東京電力が行うということになりますから、仮払いを含めた東京電力の判断ということではありますが、そうしたことが迅速に行われることは悪いことじゃないというか望ましいことだと思いますし、政府としても、そういうことが迅速に行われるように取り組みを考えていきたいと思っています。
 報道については、これはこちらに来る三、四十分前ですが、東京電力の方はそうしたことを発表したことはないというふうに、その時点では言っております。

○塩川委員 ですから、民民でという話ではなくて、とにかくこういった事態の中で、長期避難も見込まれるような事態にあるわけですから、被害者の方にしっかりと補償する、賠償するということについて、事業者にきちんと責務を果たさせるということを国としてしっかりやっていただきたい。
 その点では、まずは、いつという点での時期の問題がありますし、当然のことながら休業補償だけではなくて、風評被害などは農水産物だけではなくて工業製品にも及んでいるわけですから、そういった風評被害を含めて、範囲についてもはっきりと示していく。東電と国の責任で、原発事故被害者に対する補償と生活支援をしっかりと行う、このことを改めて強く求めておくものであります。
 今の件について、片山大臣に一言。
 原発事故に伴う避難者の方が二十万人以上にも及ぶ、その生活を考えたときに、当座の資金も必要だ、賠償金の支払いも含めて、そういった生活資金を確保するということについて政府として特段の対応が必要だと思いますが、この点についての大臣のお考えをお聞かせください。

○片山国務大臣 被災者の皆さんに対して、当座の生活資金というのは大変重要な事柄でありますので、必要な資金の供与が急がれるべきだと私も考えております。
 けさも、閣議後の閣僚懇談会がありまして、その点も含めて、これは原発災害関連だけではなくて津波被害も含めて、被災者の皆さんの当座の資金の確保について、私からも急ぐべき旨発言をしたところでございます。

○塩川委員 次に、地盤の液状化による被害についてお尋ねいたします。
 今回の大震災で、各地で地盤の液状化による家屋損壊が生じております。
 地盤工学の学会、地盤工学会による首都圏の現地調査では、千葉県浦安市や千葉市美浜区、花見川区、東京都江東区新木場、横浜市金沢区金沢八景、茨城県潮来市とひたちなか市などで液状化を確認したということが報じられておりますし、私の現地調査でも、茨城県の大洗町や鉾田市、神栖市あるいは埼玉県の久喜市などでも液状化の被害を確認しております。浦安市の場合は、市域の四分の三が液状化をし、一万棟が被害認定の調査対象となっているということであります。
 お話をお聞きしても、家が傾いている、この傾きを直すだけでも、ジャッキアップだけでも五百万円はかかるとか、地下にある配管の補修などを行えば一千万円を超えるような費用がかかると言われているわけであります。
 そこで、内閣府にお尋ねをいたしますが、今回の大震災の液状化による被害実態はどのように把握をしておられるのか、お尋ねいたします。

○長谷川政府参考人 お答えいたします。
 今回の大震災における地盤の液状化による住宅の被害でございますけれども、御案内のとおり、まだ各地方公共団体におきまして調査中でございまして、その詳細が明らかになっているというわけではございません。
 そのような中で、私どもといたしましては、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県から、それぞれ地盤の液状化により住宅が傾斜する等の被害が生じておるということをお聞きしているところでございます。

○塩川委員 この液状化の被害認定とのかかわりで、罹災証明書発行の基準となる住家の被害認定について何点かお尋ねをいたします。
 罹災証明書は、被災者生活再建支援制度を初めとする各種の被災者生活支援制度において、適用の判断材料となっております。そのため、住家の被害認定は被災者生活支援において重要な要件となっているわけであります。
 この液状化による家屋の地盤被害に対する被害認定がどのようになっているのか、そのスキームについてお尋ねしたいのと、あわせて、過去、液状化による全壊などの被害認定の事例と件数がどのようになっているのかについてお尋ねをいたします。

○長谷川政府参考人 ただいまの地盤の液状化に関する被害認定の方法でございますけれども、そもそも地盤につきましては、住宅の主要構成要素でございます屋根、壁、それから基礎に当たるものではございませんので、地盤に何らかの被害があるということをもって直ちに住宅の被害があるということになるものではございません。
 他方で、地盤の液状化が原因となりまして住宅の主要な構成要素に損傷が生じているかどうかという観点から、一つといたしまして、外観による判定として、地盤の液状化等により基礎の一部が全部破壊されているかどうかという調査、二つ目といたしまして、傾斜による判定として、住宅の四隅の傾斜を計測いたしまして一定以上であるかどうかの調査、三つ目といたしまして、部位による判定として、基礎等の損傷を把握し、これを含めまして住宅全体の損傷割合を算定するという調査、これらをすることによりまして住宅の被害の程度を判定するという仕組みになってございます。
 それから、過去の地盤の液状化による事例でございますけれども、私どもといたしまして網羅的に調査をしたということではございません。ごくわずかでございますが、地盤の液状化が原因となって全壊と判定された事例といたしましては、具体的に、中越地震の際に、地盤の液状化により住宅が二十分の一以上傾斜した例などが数件あったというふうにお聞きしております。

○塩川委員 いろいろな被害認定のスキームについての御説明がありました。ただ、過去、液状化による全壊等の被害認定の事例と件数というのはほとんどないということが実態であります。
 そういう意味では、今回は広範囲に及んでいるという点でも、ここに着目した、被害認定の実態に見合ったような要件緩和や、あるいは新たな制度の創設も含めて検討すべきときにあると思います。この被害認定の事例としてお話しになりました、例えば、地盤の液状化により基礎のいずれかの辺が全部破壊をするとか、あるいは外壁または柱の傾斜が二十分の一以上という事例は、実際に当てはめてみてもほとんどないということになるわけですね。
 しかし、例えば浦安市の方などのお話でも、二十分の一というのは、一メートルに対して五センチずれているということですからかなりの傾きですけれども、実際には、例えば四十分の一ぐらいの傾きであっても寝ることすらできないような状況になるわけですね。家の中で酔っているような雰囲気にならざるを得ないのが家の傾きの問題ですから、とても住める状況にないという被災者の声がございます。
 ですから、そういう点でも、液状化に係る住家の被害認定について、認定要件の緩和を含めた見直しをする必要があるんじゃないのか。実態に即した対応を今行ってもらいたい。内閣府としての考えを聞かせてください。

○長谷川政府参考人 ただいまお尋ねの点でございますけれども、地盤の液状化が原因となって住宅の各部位に損傷が生じ、全壊と判定された事例というのは、先ほど申し上げましたようにそう多くないというふうに推定されますけれども、ただ、そのことをもちまして直ちに被害認定の要件を勘案する必要があるかどうかということになるものではないと考えております。
 他方で、地盤の被害でございますけれども、これは二年前でございますが、平成二十一年に調査、判定の方法につきまして改定を行っておりまして、地盤の被害につきましても、液状化に限らず、地盤被害の実態に合うようにその要件を改定したところでございまして、現時点におきましては、さらなる改定の必要があるというふうには必ずしも考えていないというところでございます。

○塩川委員 それぞれの自治体が調査をする中で、なかなか現場と合わないような事例というのは聞いているわけですけれども、基本は、住み続けることができない状態ならば、それはもう全壊ということなんですよね。そういう観点で対応することこそ必要です。
 その点で重ねてお尋ねしますけれども、地域の被災状況を踏まえ、被災者支援の立場で行う各自治体の被害認定をしっかりと尊重するということで対応していただきたいと思いますが、改めて、いかがでしょうか。

○長谷川政府参考人 お尋ねにつきましては、地盤ではございませんが、今回の津波の被害等につきましては、例えば、なるべく迅速かつ簡便に調査ができるようにというようなことも含めて、いろいろとお話を申し上げているところでございます。そういった意味で、地盤等につきましても、いろいろ御相談があれば適切に乗っていきたいというふうに思います。

○塩川委員 液状化による住家の被害認定の要件緩和をぜひ行ってもらうのと同時に、被災者生活再建支援法の抜本改正も必要ですし、また、地盤被害そのものに対する支援策が現状は全くないというのも問題であるわけで、そういった支援策の具体化を改めて求めて、質問を終わります。