<第177通常国会 2011年04月13日 内閣委員会 5号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 福島第一原発の事故を受けて、今、原子力政策のあり方が根本から問われております。国の原子力政策の基本方針を策定する原子力委員会も、四月五日の会合で、安全確保の取り組みに対する信頼を根本的に揺るがすものとして極めて重く深刻に受けとめているとして、原子力政策大綱改定の検討を中断することを決定したとのことであります。
 菅総理も、先月三十一日の我が党の志位委員長の申し入れに対して、今後の原子力の利用について根本的に安全性の議論が必要だと表明をし、原発の新増設計画については、白紙というか、見直しも含めて検討したいと述べておられました。我が党は、これまでの安全軽視の原子力政策の根本的転換を求めてきましたが、まさに今日の政治の最大の課題の一つとなっていると言えます。
 あわせて、原発事故の背景を明らかにしていくことも求められます。その点でも、いわゆる政官業、政官財の癒着構造の問題が問われます。
 きょうの委員会では、癒着構造の一つとして、経産省と東京電力、電力業界との癒着構造について政府の認識を問いたいと思います。
 まず、今国会でも何度も取り上げられてきました、経産省の前資源エネルギー庁長官の石田徹氏の東京電力への再就職問題であります。
 エネルギー政策、原発政策を所管する経済産業省の資源エネルギー庁長官が所管される電力業界に再就職するということはどこから見ても典型的な天下りだと思いますが、官房長官の認識はいかがでしょうか。

○枝野国務大臣 何度か申し上げてまいりましたとおり、法律上の天下りに当たるか、あるいは、この間、天下り規制として、するべきこととして問題にされてきたいわゆるあっせんによる天下りに当たるかということで、それには当たらないということを御答弁してまいりました。
 しかしながら、まさに今回のような事故が発生をし、それに対して国民の皆さんからさまざまな目で見られているということの中で、資源エネルギー庁と東京電力の間について国民の皆さんから広く疑義を持たれているのは、私は当然のことだというふうに思いますし、まさにそのことについては、天下りをした、天下りとされることをした当事者においても東京電力においても、しっかりとこの事態を受けとめていただかなければならないと思っております。

○塩川委員 エネ庁、電力会社間、こういう関係について疑義が持たれるのは当然だという話でありますけれども、あっせんには当たらないという話でありますが、やはり、そもそも癒着の問題というのが問われているわけであります。
 資料を配付いたしましたけれども、そもそも、ことしの二月四日の予算委員会で枝野長官は、この石田氏の天下りの経緯について、「例えば、よく言われている指定ポストのような形で、特定の官庁からあるポジションに順番に同じような人たちが行ってというような経緯でも必ずしもない」と答弁をしておられます。そこで、電力各社の天下りの実態について調べてみたわけですが、配付資料の一枚目をごらんいただきたい。「経産省(通産省)から東京電力への「再就職」の経過」であります。
 特徴というのは、左端の石原武夫氏から石田氏まで、五人の経産省、通産省出身の方が東京電力にいわば再就職、天下りをしておられます。最初の天下りと思われる石原武夫氏は通産省の次官だったわけですが、この石原氏は官僚時代に、原子力局をつくれと主張し、原子力行政のまとめ役と言われていたと当時の新聞でも報道されております。その後は、石田氏まで、資源エネルギー庁の長官または次長の経験者がそれぞれ東京電力に天下っている。さらに、東電の中でも、顧問から始まって最後は副社長まで上り詰めているわけであります。
 そこでお尋ねしますが、こういった資源エネルギー庁の幹部経験者が東電の副社長ポストについている、これを世間では指定ポスト、指定席と言うんじゃありませんか。

○枝野国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。
 率直に申し上げまして、一般的に、独立行政法人等で問題にされてきた指定ポストについては、当該ポスト、ある方がかわるとすぐにまた同じような肩書、経歴の役所のOBの方がつかれるという意味で、連続的に当該ポストにいわゆる天下りと称される人がついているということを想定しておりまして、私もこの件について報告を受けましたときに、副社長をやっている人、経験している人がいるけれども、決して、そのポストが指定されて、資源エネルギー庁等のOBが副社長ポストを常に占めているわけではない、今回は顧問であるという報告を受けました。
 今回、塩川委員からこうした非常に詳細な過去の状況について分析をいただきまして、こうした状況であっても、私は社会的にはいわゆる指定ポストという評価をせざるを得ないというふうに思っておりますし、前回御質問いただいた段階でこうしたことについて把握をできなかったことの不明を恥じたいというふうに思っております。

○塩川委員 この点では、東京電力だけではありません。電力会社すべてでこういう事態が行われていた。
 配付資料の二枚目をごらんいただきたい。これは、北海道電力から沖縄電力まで、各電力会社に対して経産省、通産省からの再就職のリストであります。
 それぞれ全部で四十五人の天下りになっているわけですけれども、ごらんいただいてわかりますように、各電力会社において、切れ目なく通産省、経産省からの天下りが行われておりますし、天下った官僚の方は、基本的に顧問から常務となり、最終的には副社長まで上り詰めているわけであります。これは最終ポストとして副社長しか書いておりませんけれども、経緯とすると、電力会社内部でそのような昇進を経て副社長にたどり着いているということであります。
 今回の福島の原発事故で東京電力がクローズアップされておりますけれども、この天下りの癒着構造というのは東電だけではなくて、電力業界全体を覆っている問題なんだと。
 ですから、こういった石田前資源エネルギー庁長官の天下りを認めるということが、所管する官庁から所管する業界への天下りをいわば公認したものになっているということが問われてくるわけで、この間、予算委員会でも言われていましたように、経産省から電力業界に行くということを容認するということになれば、国交省からゼネコン業界、あるいは厚労省から製薬メーカーへの天下りを容認することにもつながってくるわけです。
 ですから、天下りのあっせんではなくて、所管する官庁から所管する業界への天下りそのものを禁止すべきなんだ。それがやはり、今回のような癒着が問われる、疑義が問われているときに行うべき教訓ではありませんか。

○枝野国務大臣 一般的に、あっせん等でない形で関係する業界に再就職をされるということについてどうするべきであるのかということまでは申し上げられませんが、少なくとも原子力発電、原子力の安全ということについては、万が一の事態が起こったときの影響が大きいということが今回改めて裏づけられたものでありまして、その点に関して、それを指導監督する行政の側と指導監督を受ける側との間にいささかも癒着を生じているというような国民的な疑義があっては許されるものではないというふうに私は思っております。
 法律上こうしたことを今後やめさせることができるかどうか、法律上できないとすれば、それ以外の方法でどうしたらやめさせることができるかどうか、しっかりと検討してまいりたいと思っております。

○塩川委員 その点でぜひ、こういった経産省、通産省から電力会社への再就職、天下りの現状について、私はこういう資料を出しましたが、政府としても改めて調査をし、国会に対してしかるべく報告をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

○枝野国務大臣 政府としてしっかりと調査をさせていただいて、しっかりと報告させていただきます。
 と同時に、まさに先ほどの東京電力の時系列による表のような視点や問題意識等について、ぜひ塩川委員の御知見等についてもサジェスチョンをいただいて、効果的な調査になるように御指導いただければとお願い申し上げます。

○塩川委員 資源エネルギー庁というのは、経産省においてエネルギー政策を担当する、いわば原発の推進を担当する部署になります。
 ことし一月、東京電力の顧問に天下った石田前長官の経歴を見ますと、資源エネルギー庁、幾つも重ねて昇進をしていかれているわけですけれども、そういった中では、例えば一九八九年に資源エネルギー庁の原子力広報推進企画官という役職も務めている。いわば、この間大問題となっている原子力に係る安全神話、これに携わるような、そういう人物でもあったということであります。
 この石田氏が資源エネルギー庁長官の時代に取りまとめたのが、昨年六月のエネルギー基本計画であります。温暖化対策の中心に再生可能エネルギーを置くのではなくて原発を据えたというのが一番の特徴のエネルギー基本計画だったわけであります。このエネルギー基本計画の中では、二〇三〇年までに少なくとも十四基以上の原子力発電所の新増設を行う、また設備利用率、原発の設備の利用率を約九〇%を目指すとしています。
 石田氏は、昨年、長官としてみずから取りまとめたエネルギー基本計画について、日刊工業新聞のインタビューで、「国民世論では、まだ原子力より再生可能エネルギーを期待する声の方が強いかも知れない。再生可能エネルギーは最大限導入に努める必要はあるが、客観的には現状では不安定でコストも高い。温暖化対策を進める上で原子力を抜きには考えられない」と述べているように、国民が願う再生可能エネルギーを推進するのではなくて、原発の新増設を推進してきた人物の一人でもあったわけであります。
 原発の新増設とそれから原発の設備の利用率の向上というのは、東電を初めとした電力業界の要求どおりであるわけです。このエネルギー基本計画見直しに向けてのパブリックコメントで、電力会社の業界団体である電気事業連合会、電事連は、原子力は、エネルギー安全保障の確保と地球温暖化問題の一体的な解決を図る上での切り札である、原子力の新増設と設備利用率の向上を目指して、国による積極的な取り組みも不可欠と要求をしております。
 このように、電力業界の要求にこたえた人物が、原発推進政策といういわば手土産を持って電力会社に天下っていく、こういった天下りというのがこの間の日本のエネルギー政策をゆがめてきたのではないのか。この点についての認識と、この問題についての検証が必要だと考えますが、官房長官のお考えをぜひお聞かせください。

○枝野国務大臣 ゆがめてきたかどうかということについては、端的にお答えをすることはなかなか難しいんだろうというふうに思います。
 しかしながら、多くの国民の皆さんから、ゆがめてきたであろうという疑いを持たれることは間違いないというふうに思っておりますし、また、原子力というものの性格、万が一の場合の影響の大きさということを考えたときには、国民の皆さんからそうした疑義を持たれること自体が許されないことだというふうに私は思っております。

○塩川委員 ですから、今回のような天下りを容認することになれば、官僚が天下り先に気に入られるような政策を実施することになってしまう、業界サイドの政策が行われることで国民の利益が侵害されることになる、こういうことが問われるわけで、こういった政治をゆがめる政官業の癒着をきっぱりと断ち切るためにも、天下りの禁止が必要であるわけです。
 我が党は、福島の原発事故の教訓からも、政官業の癒着構造を断ち切るために、天下りそのものの厳格な禁止を強く求め、質問を終わります。