<第177通常国会 2011年04月27日 内閣委員会 9号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今の遠山委員、それから平井委員も取り上げました総合特区法案における規制の特例措置である通訳案内士法の特例について、私も質問をいたします。
 最初に国土交通省にお尋ねしますが、通訳案内士制度の意義についてどのように認識をしておられるのか、まずお答えください。

○武藤政府参考人 現行の通訳案内士制度の意義についてでございますが、訪日外国人旅行者に対する接遇の向上を図り、国際観光の振興に寄与することを目的といたしまして、昭和二十四年に創設された制度でございます。
 この制度におきましては、外国人に対して外国語で有料で旅行に関する案内を業として行う場合に、通訳案内士試験に合格する必要があることとされております。この通訳案内士試験については、外国語それから日本地理、日本歴史、産業、経済、政治及び文化といった一般常識を問う筆記試験を行い、そして、その筆記試験に合格した者に課される口述試験で構成をされているところでございます。
 現在、この試験に合格をして資格を取得した通訳案内士は、平成二十二年四月一日現在で約一万四千五百五十九人というふうになっております。

○塩川委員 なぜこういう制度があるのかという意義がいまひとつちょっと見えてこないんですが、せっかく小泉大臣政務官においでいただいていますから、この制度の意義について政務官の方からも一言いただきたいんです。
 例えば、通訳案内士制度のあり方に関する最終報告というのを国交省の方でもことし三月に取りまとめをしておりますけれども、訪日外国人旅行者受け入れ推進のためには、「日本での滞在が旅行者にとって満足できるものであることが重要である。」「旅行先の観光ガイドが印象形成に与える影響は大きい。」「旅行者にとっては、ガイドの口から語られる日本が日本であり、ガイドと過ごした時間が日本での思い出そのものとして映る」ということを述べておられるわけです。
 そういう点では、日本そのものを理解してもらう、そういった際に、まずは訪日の外国の旅行者の方々が受ける印象というのは、ガイドの方、通訳案内士の方々のそういう点での意義が大変大きいと思うんですが、小泉政務官、いかがでしょうか。

○小泉大臣政務官 塩川先生の御質問にお答えさせていただきます。
 先生おっしゃる、これまで通訳案内士は、外国人旅行者の受け入れに当たりまして大変重要な役割を果たしてきたと認識しており、その重要性は今後も変わることはないと考えているところであります。
 ただ、その一方で、最近、御案内のように、中国、韓国などの近隣アジア諸国からの観光客が大変大きく増加していること、そしてまた地方への外国人の旅行者が増加しておりまして、観光立国の推進のためには、こういった大きな環境変化にも積極的に対応していかなければならない事態になっているわけであります。
 このため、現在制度として確立しております通訳案内士制度を補完する形で今回の特区ガイド制度を設けるわけでありまして、この点、資質の確保にも留意しながら、各地域の要求にこたえていけるように導入をさせていただくこととしております。
 今後、この通訳案内士制度と今般導入されます特区ガイドの両方をいわゆる車の両輪として育成することによって、観光立国の推進に努めてまいりたいと思っております。

○塩川委員 アジアからの旅行者の方が中国、韓国を初めとしてふえている、地方への旅行者の方もふえている、そういう意味でもこの通訳案内士の方の役割というのは非常に重要になってきている、そういう中で、補完するものとして特区ガイド制度というのを今回創設するというお話ですけれども、具体的にこの特区に関連して地方団体からの提案が示されているわけですが、いただいた資料などを見ましても、この通訳案内士法の規制緩和を使う特区提案では、和歌山ですとか福岡ですとか、また新潟などが挙げられております。
 例えば、和歌山県の提案は、和歌山県世界遺産総合特区というプロジェクトで通訳案内士以外の通訳ガイドのガイド業務の創設を求めております。その解説を読むと、「現在では国家資格である通訳案内士認定者以外が有償でガイド業務を行うことができない」とあるが、今政務官もおっしゃっておられましたけれども、現行通訳案内士の制度がある、補完して特区ガイドの制度を設けるというんですけれども、既にもう一個あるんじゃないんですか。つまり、通訳案内士以外に、この間、有償でガイド業務をできる地域限定通訳案内士という制度がありますよね。

○小泉大臣政務官 先生御指摘のように、そういった制度はあるわけでありますが、やはり歴史や文化、そういったものをしっかりと、間違いなく観光者にお伝えいただくためにも、しっかりとした研修制度を設けた上で、特区ガイドをもう一度設けることとさせていただいた次第であります。

○塩川委員 特区ガイドは研修という話ですけれども、では、地域限定通訳案内士はどういうことをもって資格取得とするのかということです。
 例えば、新潟県の北東アジアとの交流人口の拡大というプロジェクトでも、「ガイドの多くは個々の地域を活動の場としており、全国的な幅広い知識や技能を持つ現行の通訳案内士制度を補完し、個々の地域のことに詳しい通訳ガイドを増加させることが急務である。」とあります。
 ですから、和歌山の場合であれ新潟の場合であれ、全国的な幅広い地域じゃなくて、個々の地域に詳しい通訳案内士を育成するのが地域限定通訳案内士という制度であるわけです。
 この地域限定通訳案内士という制度は、どのように質を担保しているんですか。

○武藤政府参考人 先生御指摘の地域限定通訳案内士の制度につきましては、平成十八年に制度が創設されたものでございます。これは、今御指摘のように、地域ごとに、外国人旅行者の誘致に熱心に取り組もうという地域が従来の通訳案内士制度では十分に確保できない、こういうことから導入をしたものでございます。
 現在、この地域限定通訳案内士につきましては、特定の都道府県の区域に限って通訳案内業務をできるということでありますので、通訳案内士と同様の試験を課しておりますけれども、例えば地理ですとか、あるいは歴史ですとか、そういった部分については当該都道府県の区域内に限定をした試験で担保している、こういうことでございます。

○塩川委員 今の答弁にありましたように、地域限定通訳案内士というのは、試験をもってその質を担保しているんですよ。つまり、全国展開の可能な通訳案内士の方と同じ試験なんだけれども、しかし、地理とか歴史についてはその地域、各都道府県単位で行うというだけのことであって、そういう点では、活動のエリアはその都道府県域であるとしても、語学も含めて、日本の歴史や文化などの知見も踏まえて、試験によってその資質、品質が担保されているというのが地域限定通訳案内士の制度なんですよね。
 こういうものがあるにもかかわらず特区ガイドを設けると。特区ガイドの質はどういうふうに保証するんですかといったら、試験じゃなくて研修だったわけでしょう。これで本当の意味でガイドとしての役割が果たせるんですか。どうですか。

○小泉大臣政務官 その点につきましては、特区を指定した各自治体に、その地域特有の歴史、文化、伝統等をしっかりと研修していただく形をとってその資質を担保するように考えている次第であります。

○塩川委員 研修の中身もいろいろあるでしょう。しっかりとした研修をするかもしれないけれども、研修をした上で試験をしてその質を担保するならまだしも、それはないわけですよね。
 では、研修が、この試験、つまり地域限定通訳案内士制度の試験よりも質を保証すると言えるんですか。

○小泉大臣政務官 先ほど、冒頭申し上げましたように、増加をしております。特に英語の通訳案内士が大体六割以上でありまして、中国語、韓国語につきましては一六%しか現在おりません。そういった意味で、どうしても現在の制度では対応できないほどの需要もございますので、その点につきまして、しっかりとそういった方たちを補完するために、現在の制度を補完するためにどうしても必要であるということで、今回導入をさせていただく次第であります。

○塩川委員 ですから、中国、韓国の方がたくさんいらっしゃれば当然ニーズが高まるわけですから、通訳案内士になろうとする人も当然ふえるというのが本来の仕組みなんでしょう。さらに、それだけではなくて、地域限定の制度も設けることによって、その地域地域で、都道府県単位でそういった地域限定通訳案内士というのをつくろうと思えばつくれるんですよ。
 ですから、別に特区がなくても、既存の制度によって通訳案内士をその地域につくることはできるんです。何で研修なんという格好で、質が担保されないような仕組みをわざわざ設けるんですか。

○小泉大臣政務官 先ほど、冒頭申し上げましたように、今後の観光立国の推進に向けて、やはりガイドのすそ野を広げていく必要性があることと、ただ、先生御指摘のように、一定以上の資質を担保するということは必要であると考えておりますので、その点、研修をしっかりとすることで対応してまいりたいと思っております。

○塩川委員 聞きますけれども、中国語の通訳案内士の方は、つまり、中国からたくさんの観光客の方がいらっしゃっているから数が少ないということですよね。そうすると、そういう方々は忙しくて忙しくてもう対応ができないという実態にあるということなんですか。そういう調査をやったことはありますか。

○武藤政府参考人 お答えをいたします。
 地域限定通訳案内士も、実は制度を導入してから試験を四年にわたってやっておりますが、現時点で、地域限定の場合は二百五十人の登録にとどまっているという現状がございます。
 一方で、中国、韓国からの外国人旅行者に対しましてもできるだけ丁寧な案内業務ができることが望ましいと考えておりますけれども、そういった通訳案内士の方々とのマッチングがなかなかうまくいっていないという実態はあるという認識はしております。

○塩川委員 マッチングがうまくいっていない。つまり、中国語の通訳案内士の方がいても、その人が忙しくて忙しくてもう手が回らないという状況ではないということですね。

○武藤政府参考人 まず、そもそも絶対数の不足ということからなかなかマッチングがうまくいっていないという実態でございます。

○塩川委員 では、もう一回聞きますけれども、中国語の通訳案内士の方は忙しくてもうこれ以上仕事を受けることができないという状況なのか、そういった実態調査をしているんですか。

○武藤政府参考人 さまざまな職業につきながらこのガイドの資格を持っている方もおられまして、一概に、今忙しくて受けられない、そういう状況にあるわけではないというふうに聞いております。

○荒井委員長 いや、調査をしているか、していないかということを聞いているんだよ。

○武藤政府参考人 全般的な調査はしておりません。データはありません。

○塩川委員 調査もしていないんですよ。中国語の通訳案内士の方が本当に忙しくて忙しくて手が回らない、だから補完する制度が必要だという状況だということは確認もしていないんですよ。
 現状でいえば、実際には、中国語の通訳案内士の方でも必ずしも仕事が全部あるという状況にないということを聞いています。なぜそうかという問題があるわけであります。
 ここで、先ほど遠山委員も紹介されておられた福岡県の福岡・アジア国際戦略特区の提案で、通訳案内士法に関して規制の特例措置を求めておりますが、ここではどのような内容、提案理由となっているのかについてお示しいただけますか。

○武藤政府参考人 お答えをいたします。
 昨年七月から九月にかけまして、内閣官房が、総合特区制度の設計に先立ち、地域からアイデア募集を行ったものというふうに承知をしております。
 内容につきましては、県内の外国人留学生などがクルーズ客の日帰り観光などにおいて観光ガイドができる新たな制度を創設するということで、国が実施する研修を受講すれば県内での限定的な通訳案内士の資格を有することができるという提案と承知しております。

○塩川委員 つまり、福岡県の特区の提案というのは、外国人留学生にガイドをやってもらおうということなんですね。
 では、外国人留学生という場合、どの国の留学生を想定しているのがこの福岡の提案なんでしょうか。

○武藤政府参考人 一つには、フェリーで大量にお越しいただける韓国人、それから、中国人のお客さんも最近ふえておりますので、こういったところを念頭に置いているというふうに承知をしております。

○塩川委員 この福岡県の提案では、この措置が必要となる取り組み、事業ということで挙げているのが、「中国などからのクルーズ客船の寄港促進」とありますが、そのとおりですね。

○武藤政府参考人 そのとおりでございます。クルーズ客の日帰り観光などにおいて観光ガイドができる新たな制度を創設するということでございます。(塩川委員「中国」と呼ぶ)ここの記載については中国とは書いておりませんが、ただ、この地域が中国のクルーズ客の誘致に努めているという現状はございます。

○塩川委員 内閣府のホームページからとったものですけれども、「中国などからのクルーズ客船の寄港促進」と。確かに今、九州はふえているわけですね、福岡の博多などにクルーズ客船で中国からの方がたくさんいらっしゃる。それは福岡だけではなくて、長崎ですとか熊本ですとか、沖縄なんかにもいらっしゃっている方が多いということは承知をしております。そういう状況の中で、こういった特区提案としては、外国人留学生、それも中国からということになれば中国人留学生ということになるわけであります。
 それで、この中国人留学生、外国人留学生がガイドとなると。現行でいえば、通訳案内士の方々が、厳しい語学の試験もあり、日本の歴史や文化など、あるいは一般常識を含めて広い知識を持って、その試験の資格を持って仕事をされておられるわけですけれども、中国人留学生の方にそれを代替してもらう、補完をしてもらうということになるわけであります。しかし、留学生というのは、在留資格を見ましても、就労ではないわけですね。あくまでもアルバイトの範囲内であって、週二十八時間以内でしたか、そういう枠もそもそもありますよね。
 今言ったように、本来、国家資格であるような高い知見が求められ、試験を伴ってその資格の品質を保証している現行の制度に対して、外国人留学生を観光ガイドとして充てるという特区提案では、本当の意味で日本の姿を知ってもらうことにならないんじゃないんですか、どうですか。

○小泉大臣政務官 先ほどから申し上げておりますように、かなりの観光客が今増大している中で、そしてますます観光立国推進をするために、現行の制度だけでは対応できないということを想定もしながら、しっかりとそれを補完するために今回の制度を設けることとさせていただいておりまして、その内容の担保につきましては、やはり研修制度を徹底的に高めることによってその資質を確保することで対応していくことを考えている次第でございます。

○塩川委員 とても担保できると思えません。
 つけ加えて指摘をしますけれども、手元にありますのが、JTB九州のクルーズ船用ガイド募集についての御案内というチラシなんですね。ここには、中国人留学生の皆様へとあるんです。つまり、中国のクルーズ船用のガイドを中国人留学生に向けて募集するという御案内のチラシなんですよ。業務内容は何かといったら、観光バスのガイディング、食事、買い物箇所などにおけるあっせん。つまり、観光ガイドの資格、そういうものをやるということを既にJTB九州が募集まで行っているんですよ。
 こういうことは当然御存じですよね。

○武藤政府参考人 JTB九州のそういった活動についても聞いたことはございます。

○塩川委員 こういったJTB九州の活動について、運輸局としては、国交省としてはどのように対応されたんですか。

○武藤政府参考人 通訳案内士法が規制をしているのは、有償での、業としてのガイド行為でございますので、そういったものに抵触をするという認識は現在しておりません。

○塩川委員 平成二十二年三月二十五日付で九州運輸局が出されたニュースリリースがありますけれども、ここには、JTB九州が行ったクルーズ船用ガイド募集についてということで、JTB九州は、平成二十一年、中国人留学生を対象にクルーズ船用ガイド募集として、クルーズ客として訪れる中国人観光客に対する添乗員を募集しましたが、その業務内容に観光バスのガイディングが含まれていたこと、本年も、つまり昨年ですね、宮崎市において同様の募集を行ったことが明らかになりましたと指摘をしております。
 それを踏まえて、どのような措置をとったんですか。

○武藤政府参考人 申しわけありませんが、現在その記録については承知をしておりません。

○塩川委員 ここでは、九州運輸局では、JTB九州に対して、このような募集を行うことは通訳案内士法違反の行為につながるおそれがあることから厳に慎まれたい。また、このようなことが二度と起こらないよう再発防止を徹底されたい旨口頭で厳重注意を行いましたので御報告いたしますという中身なんですよ。つまり、こういう違法に当たるような行為が行われているということに対して厳重注意を行っているわけですね。
 こういった現状がある中での法改正ということについては、思うところはございませんか。

○小泉大臣政務官 先ほどから申し上げておりますように、現在の体制では十分な対応ができないということから、制度の不備を補完するために今回の制度を設けさせていただいております。
 そしてまた、その資質の担保等につきましては、もし誤ったガイド等をすれば、特区制度を設けております地方自治体にとりましても、次回以降観光客が来ていただけない等の不利益がございますので、その意味では、特区を設けた地方自治体がしっかりと研修をすることによって担保していただくように考えているところであります。

○塩川委員 現行の中国語の通訳案内士の方が忙しくて忙しくてしようがないという状況じゃないんですよ。実際にはこういった行為がまかり通っていて、要するに安かろうの話になってきているわけですよ。だからこそ、本来、資格をしっかり取ったとしても仕事が来ないからふえないという状況にもなっているわけで、これが悪循環をつくっているんじゃないですか。結局は、JTBのような大手旅行会社が安く人を使いたいと。
 こういった通訳案内士では、当然、それなりに適正な報酬を求めるのは当たり前のことであって、それに見合うような効果があるわけですよね。そうではなくて、外国人留学生を安く使いたいというのがそもそもの動機というのがこの背景にあるということじゃありませんか。

○武藤政府参考人 さまざまなタイプのガイドが外国から来るお客様に対応できるような体制をつくっていきたいというふうに今考えているところでございます。

○塩川委員 答えていないわけですが、ですから、結局は、今回の法改正というのは、大手の旅行会社が安く人を使いたいということが出てくる、そのことを求める規制緩和にしかなっていないというのが実態だとやはり言わざるを得ません。こういうことでは本当の意味で日本の魅力を外国の方に知っていただけないということであるわけで、私は、そういう点でも、こんな規制緩和は行うべきではないと強く申し上げるものであります。
 ですから、実際に補完するといっても、名称そのもので、特区ガイドとなるんでしょうか、英語や中国語の表記がどうなるのかわかりませんけれども、外国の方から見たらわからないわけですよ。区別もつかないわけでしょう。そういうときに、外国人留学生も担うような形でのそういったガイドが日本を学ぶものになっているということで本当の意味での日本の理解につながるのか。私は、そうはならないと言わざるを得ないということを強く述べておくものであります。
 最後に政務官にお尋ねしますけれども、総合特区の案内士の制度を導入すれば、結果として、高いスキルによる現行の通訳案内士の制度が成り立たなくなる、これは本当の意味での観光立国とはならない。観光の哲学を欠いたような安易な規制緩和というのは、観光立国の足元を掘り崩すことになるんじゃないのか。改めて。

○小泉大臣政務官 やはり、現行の制度と今回導入をさせていただきます特区ガイドを車の両輪として今後外国人の方を受け入れる体制を整備していくということでありまして、今回の制度とともに観光立国の推進には資するものと考えている次第でございます。

○塩川委員 全くそうはならないだろうということを強く指摘しておきます。
 残りの時間で大臣にお尋ねしますが、総合特区法案における規制の特例措置の一つとして、自治体事務に関して政省令で規定をする事項の条例委任の特例を設けているわけでありますけれども、この条例委任の特例の制度はどのような中身かということについて、簡単で結構ですから、御説明いただけますか。

○片山国務大臣 例えば、構造改革特区との対比でいいますと、構造改革特区は、申請があって指定したところについては特例をなくすということでありましたけれども、規制を緩和するときにそれだけでいいのかという疑問を私はかねがね持っておりました。
 そういうことがあってもいいことは確かでありますけれども、それ以外に、今まで国が規制の内容を決めていたのを、今度は地域が責任を持って、地域単位でみずからにふさわしい規制を構築していくということ、そういうタイプの規制の緩和とか特例があってもいいのではないかという発想がありまして、今回の、政省令で規定しているものを取っ払うんじゃなくて、自治体が条例でもって独自の規制をしいていく、自治体が責任を持つ、そこに一番のポイントがあるだろうと思います。

○塩川委員 これは地域主権改革法案の議論とも重なる部分でありますけれども、名前は変わったそうでありますが、いわゆる地域主権改革法案では、国の義務づけ・枠づけの事項の条例委任を措置しております。条例委任に当たっては、従うべき基準、標準、また参酌すべき基準を定めているわけですけれども。
 お尋ねしますが、今回の法案に基づくと、国が省令で従うべき基準を定めている事務がありますね。つまり、従うべき基準ということを省令で定めているわけですけれども、そういったら、その省令を条例に置きかえる、省令で従うべき基準と定めている事務について条例で定めることができるという中身ということでよろしいですか。

○片山国務大臣 今回の法律が通りましたときに、例えば、政省令で定めているものを条例で定めるといったときに、その定め方について、政省令で定めるところにより条例で定めるということになっておりますけれども、全く選択の余地のない内容で政省令を書いてしまったのでは何も意味がなくなってしまうと思います。
 ですから、これから、政令、省令の書き方によりますけれども、本当に必要最小限、最低限、本当に守らなきゃいけないものだけしか書くべきではないと思っておりますので、今御指摘になりました、義務づけ・枠づけの見直しの中で従うべき基準とか参酌すべき基準という分類がなされておりますけれども、それとはちょっと概念が違って、本当に必要最小限のことしか書かないというふうに担当大臣としては考えております。

○塩川委員 できないということはおっしゃいませんでした。
 例えば、児童福祉法に基づく保育所の人員配置基準ですとか居室面積基準は省令で従うべき基準と定められていますけれども、今回導入される仕組みを使えば一層の規制緩和が可能となるという点では、保育の分野における子供の安心、安全を保障する、そういった仕組みを制度的に壊すことにもつながりかねないという懸念を強く申し上げて、質問を終わります。