<第177通常国会 2011年04月30日 総務委員会 15号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 地方交付税法に関連して質問をいたします。
 今回の大震災に当たりましての被災自治体への支援という点では、応援自治体を含めて、しっかりとした財政措置を行うことが求められております。その点でも、現状の被害自治体あるいは住民の実情がどうなっているのか、この点についてきちんと国として把握をしているのか、また、それに対して法律に基づいた適切な措置が行われているのかが問われるわけであります。
 特に、福島の原発事故は、当事者の方々の御苦労は大変大きなものがある。昨日も、役場機能移転自治体に幾つか足を運ばせていただきまして、首長さんなどのお話も伺ってまいりました。そのことを踏まえて質問をいたします。
 最初に、経済産業省に、原子力災害対策特別措置法に関連して質問をいたします。
 原災法に基づいて、原子力緊急事態宣言が発令され、緊急事態応急対策実施区域が設定され、原子力災害対策本部が設置をされると、総理大臣である原子力災害対策本部長は、当該区域内において私権を制限し、自治体など関係機関に必要な指示を行うことができる強大な権限を持つことになります。だからこそ、法律上の手続をきちんと踏まえているのかどうか、このことが問われてくるわけであります。この点を検証したい。
 最初にお尋ねしたいのは、緊急事態宣言、これは三月十一日の十九時〇三分に行われております。この緊急事態宣言が発令された際には、緊急事態応急対策実施区域、原子力緊急事態の概要及び緊急事態応急対策実施区域内の居住者等に対して周知させるべき事項を公示することになっておりますが、どのような内容を、どのような形で公示したのかについてお答えください。

○黒木政府参考人 お答えいたします。
 三月十一日の事故の後、御指摘のように、十九時〇三分に緊急事態宣言を発令したところでございます。
 この際、官房長官が、これは十九時四十五分でございますが、原子力緊急事態宣言を記者会見でも示しております。
 その中で、福島第一発電所で原災法第十五条第一項第二号の規定に該当する事象が発生し、原子力災害の拡大の防止を図るための対応を実施する必要があると認められるため、原子力緊急事態宣言を発するということを指摘したところでございます。その中で、放射性物質の放出はなく、落ちついて行動するようにとのメッセージを伝える内容でございました。
 あわせて、その後、原子力安全・保安院が、二十時十五分に記者会見を引き続いて行っておりまして、同様の内容を明示しているところでございます。

○塩川委員 十九時〇三分の緊急事態宣言のときに、緊急事態応急対策実施区域を公示することになっているんですけれども、今の中には入っていませんよね。この区域については緊急事態宣言のときに公示されていないということですね。

○黒木政府参考人 お答えいたします。
 官房長官の会見で内容を御報告したところでございますが、官房長官の会見では、落ちついて行動する等のメッセージを発することが中心でございまして、引き続いて行われた原子力安全・保安院、ここで明示すべきところでございました。ここでは、その会見で、その区域は福島県と関係市町村であるというふうに言及しているところでございます。

○塩川委員 関係市町村、でも、緊急事態宣言の公示の中にはその文言はないんですよ。公示をすることになっているにもかかわらず、公示の文書の中に入っていないんですよ。ですから、そういった区域に指定される方々について必要な事項を周知しなくちゃいけないにもかかわらず、その区域そのものを緊急事態宣言を出した十九時〇三分のときに示していないんですよ。それから何時間も後に、保安院が言っているなんていうのは話が通らない。
 これは、総理大臣並びに総理大臣が当たるべき原子力災害対策の本部長がきちっと公示をするということであるわけですけれども、そのことが行われていないというのが、まさに今回の原発事故の冒頭で起こっている。この点でも、この原災法に基づく措置が行われていないということが入り口から行われているという点が極めて重大であります。
 あわせてお尋ねしたいのが、その後、一連の指示が出されておりますけれども、三月十二日十七時三十九分、政府は、東電の第二原発から半径十キロ圏内の住民に避難指示を出しております。その際の、指示を出すその根拠の条文について、官邸のホームページ掲載の指示文書には十五条三項となっております。一方、先日、経済産業省から受け取りました同一日時の指示文書では、その根拠条文が二十条三項に書きかえられています。
 官邸ホームページで出されている、最初に発出された指示の根拠条文は十五条三項であるにもかかわらず、後で経産省が持ってきた指示文書の指示の根拠条文は二十条三項になっています。これはどういうことですか。

○黒木政府参考人 お答えいたします。
 まず、官邸ホームページに掲載されているものは、委員御指摘のように、原災法の第十五条第三項を引用してございます。これは緊急事態宣言があった際の指示でございます。
 それに対しまして、十二日の福島第二の十七時三十九分のものは、その後、半径十キロの避難は緊急事態宣言が終わった後でございますので、原災法の第二十条第三項を本来引用すべきところでございます。
 この発災当時の混乱から、適用条文の引用すべき部分について、必ずしも適当ではない形になっておりましたので、現在、事務的に修正すべく手続を進めているところでございます。

○塩川委員 つまり、官邸のホームページにも載っている指示文書のこの指示の根拠条文を修正せざるを得ない。つまり、この十五条三項が間違いなんですよ。間違った根拠条文に基づいて指示が行われている。これはまだ官邸のホームページに載ったままなんですよ。
 加えて、同じような問題が、同様の根拠条文の間違いは一つではありません。同じ三月十二日の十八時二十五分の指示文書でも同じ間違いを起こしているんじゃありませんか。

○黒木政府参考人 三月十八日の分についてはちょっと確認したいと思います。(塩川委員「三月十二日の十八時二十五分の」と呼ぶ)三月十二日の十八時でございますか。確認したいと思います。

○原口委員長 これ、通告があったわけでしょう。(黒木政府参考人「その部分は」と呼ぶ)通告はない。

○塩川委員 事前のヒアリングの中で、私はこの二つを指摘しているんですよ。同じ日なんですから。同じ日の、十二日の十七時三十九分と十八時二十五分。これは官邸のホームページでは、それぞれ指示の根拠条文を十五条三項にしているんですよ。それなのに、経産省が先日、後から持ってきた指示文書においては、十七時三十九分と十八時二十五分は二十条三項に書きかえているんですよ。まさにこういった、改ざんと言っていいような問題というのが実際にあるわけで、そういう点でも、指示を出す権限の根拠条文が間違っていた、それを間違ったままホームページへ掲載をしている、こういうことが今もまかり通っているということであります。
 三点目で指摘をしたいのが、原災法二十三条に、原子力災害合同対策協議会というのが規定をされています。「原子力緊急事態宣言があったときは、原子力災害現地対策本部並びに当該原子力緊急事態宣言に係る緊急事態応急対策実施区域を管轄する都道府県及び市町村の災害対策本部は、当該原子力緊急事態に関する情報を交換し、それぞれが実施する緊急事態応急対策について相互に協力するため、原子力災害合同対策協議会を組織するものとする。」とあります。
 つまり、この二十三条の規定でいえば、原子力災害の現地対策本部と一緒に、県とその区域を管轄する市町村が構成員となっているんです。構成員となるという規定でありますけれども、経産省に伺いますが、この構成員となっているこれら市町村に原子力災害合同対策協議会への出席を呼びかけているんでしょうか。

○黒木政府参考人 お答えいたします。
 現在の緊急事態応急対策区域を管轄する市町村でございますが、避難の指示に係ります市町村、これは大熊町以下、十二市町村でございます。また、食品の出荷制限等に係る市町村でございますが、福島県内及び関係の県を合わせまして、重複を除いて計百六十八市町村でございます。これらの市町村については、原子力災害合同対策協議会の構成員でございまして、災害対策本部の構成員の対象となってございます。
 現在、これらの市町村におきましては、一堂に会して協議会を開催することというのが物理的に難しい状況であり、かつまた、現実には、私ども現地対策本部及び東京の災害対策本部からしっかり連絡をとって対応を図っているという状況でございます。

○塩川委員 声をかけていないんですよ。法律で決まっていることなのに、その措置をやっていないんですよ。結局、区域指定が広がったから、関係する市町村が多くなったから、大変だからやらないというだけの話なんでしょう。
 そうじゃないでしょう。極めて重大な事故が起こったんだから、そういった区域において、さまざまな指示を内閣総理大臣たる本部長が出すわけですよ。そういったときに、住民の方々にいろいろな不便をかけることにもなるし、該当する自治体にもいろいろな手間をかけることになるから、そういったことについての必要な情報交換を行って、相互に協力するための協議会に構成員として出席をするのは当たり前じゃないですか。それをやらないということを見ても、現場の被害住民の方や、被害地域の自治体の声を国が聞いていないということがはっきりと示されているということじゃありませんか。
 地方行政所管の総務大臣に伺いますけれども、冒頭述べましたように、強大な権限を持つからこそ、被害住民や地元自治体との関係で丁寧な対応が求められるわけです。法律上の手続を踏まえるのは当然のこと、原発事故の被害住民や自治体に対し丁寧な説明や支援が必要なのに、最低限行わなければならない法律上の措置さえ逸脱をしてやらない。結果として、地元自治体不在、被害住民無視の対策となっていることは極めて重大だ。地方行政所管の総務大臣としての御認識をお伺いしたい。

○原口委員長 総務大臣に答えさせる前に、黒木審議官、呼びかけたかどうか事実関係だけ答えて、総務大臣、よろしくお願いします。

○黒木政府参考人 協議会の開催を、実施しているということは御連絡しておりますが、協議会に出席していただきたいという形で呼びかけてはおりません。

○片山国務大臣 この種の問題に限らず、法律に決められたことはきちっと守られるべきだと思います。
 さらに、私も自治体の長を務めていた立場からいいますと、法律以外のいろいろな役割が自治体の長には、こういう場合には伴ってきます。いろいろな協力を住民の皆さんに求める、国との橋渡しをするということがありますので、法律に求められることはもちろんでありますけれども、それ以外のことについても丁寧に、できるだけ情報を共有するという努力を国はする必要があるだろうと思います。

○塩川委員 法律で決められていることさえやっていないんですから、大前提が崩れているんですよ。
 昨日、浪江町や川内村に伺って、お話も伺いました。ある首長さんは、自分の町にかかわることについて、自分が承知していないことがテレビで流れてくる、テレビの記者会見で発表される、自分たちはこれをテレビ辞令だと言っているよという話ですけれども、自分たちがかかわらない、承知をしていないことが勝手にテレビで流れてくると、怒りの声があるわけです。国の職員の方も応援に来てくれて、事務処理などで本当に助かっているということもおっしゃっておられますけれども、では、例えば経産省の職員が連絡要員としてきちっと配置をされていて、地元の要望も聞き、あるいは国の情報をきちっと流しているのかといったら、そういうのはないとおっしゃっておられるんですよ。
 こういう点でも、法律の措置さえやらない、さらに、当然丁寧にやらなければいけない、そういう措置さえ経産省を中心に行ってこなかった。こういうことでは被災地の住民も自治体も救われない。こういったことについて抜本的に改めることを強く求めて、質問を終わります。