<第177通常国会 2011年05月17日 総務委員会 16号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 この間取り上げてまいりました液状化被害対策について質問いたします。
 五月二日、液状化に係る被害認定の見直しが行われました。対象範囲の拡大は重要であります。特に、健康被害に着目をした被害認定などは今後に生かされるべきものと考えております。その上で、液状化被害対策に関する不十分点や問題点を指摘したい。
 最初に、被災者生活再建支援法の適用要件の見直しを求めたいということです。
 埼玉県久喜市の南栗橋地区で広範囲の液状化被害が発生をいたしました。今回の被害認定の見直しによって大規模半壊となる認定件数が数十世帯に上るとされますが、全壊ということでは、現状ではそれが発生しないのではないのかと言われております。現行の支援法は、一定数の全壊世帯に基づき適用されることになっております。ですから、久喜市の場合には適用対象とならないという問題が出てくる。
 久喜市としても要望を出されておりまして、被災者生活再建支援法については、全壊家屋のみの判断だけではなく、大規模半壊または半壊二世帯を全壊一世帯として扱うなど弾力的な適用を図るとともに、支援金の支給対象の拡充及び充実を図ることとあります。
 こういう久喜市の要望もあるわけですけれども、内閣府として、この支援法の適用要件の見直しをぜひとも図っていただきたい。この点についてお答えをお願いします。

○東副大臣 塩川委員がこの液状化対策について鋭く種々の問題提起をしてくださっていることに、心から敬意を表したいというふうに思います。
 その上で、もう御案内のとおり、被災者生活再建支援制度というのは、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して、被災世帯に対し支援金を支給し、国が支援金の二分の一を補助する、そういう仕組みになっている。この制度の趣旨というのは、被災市町村のみでは対応が困難な一定規模以上の災害が発生した場合には、全都道府県の相互扶助及び国の補助による支援によって対応しようとするものであります。
 したがって、今委員から御指摘ありましたとおり、具体的には、十世帯以上の全壊被害が発生した市町村に適用する等の要件のもとで都道府県が適用を判断しているものであって、御指摘の埼玉県久喜市については現行の要件に合わないのではないか、こういうふうに考えているわけであります。

○塩川委員 もともと全壊のみが支援対象だった、それが支援法のスタートだったわけですけれども、二〇〇四年の法改正によって、半壊の中でも全壊に近いものがあるじゃないか、そういうものは支援する必要があるのではないかということで大規模半壊というのを設けて、この大規模半壊についても支援金を支給するということを盛り込んだわけであります。
 ですから、この被災者生活再建支援法の制度そのものが大規模半壊も対象にしているわけですから、全壊の件数にかかわらず、大規模半壊が出るのであれば支援の対象とすべきことは当然であって、この大規模半壊を入れたときに、大規模半壊だけでも適用できるようにすることこそ必要だったのに、それを行わなかったという点での制度上の穴を埋めるというのが今回やるべきことであって、このことは直ちに行う必要がある。この点について改めて伺いたいと思います。

○東副大臣 委員の見解は見解として、それは受けとめさせていただきたいというふうに思います。

○塩川委員 これは地元自治体の要望でもありますし、もともと制度が改正をされているわけですから、そういった制度改正に合わせて適用条件も変えるというのは当たり前のことであって、この点についての検討、そして具体的に措置をするということについて強く求めておくものであります。
 液状化被害に対しては、支援法の適用要件の緩和及び支援金額の増額、支援対象の範囲拡大を求めていきたいと思います。また、住宅ローン対策も重要であります。これは、東北三県を含めて、全国的な課題として具体化が求められている。さらに液状化被害ということでは、液状化の地盤対策が求められている。
 そこで、国土交通省小泉大臣政務官においでいただきましたので、お尋ねしたいと思います。
 今回の大震災に伴う液状化被害は広範囲に及んでおりまして、千葉、神奈川、茨城、埼玉など広いわけですし、もともと、津波の被害で覆い隠されておりますけれども、東北三県も含めて、液状化被害は広範囲に起こっていたわけであります。茨城県では、地盤液状化による住家被害発生の市町村というのが、県下四十四市町村中三十二に及んでいるということであります。東京湾岸でも、百平方キロの埋立地のうち四十二平方キロ、半分近くが液状化をしたとかということも言われております。小泉大臣政務官の地元の、茨城県の稲敷市の旧東村の西代地区、私も行きましたけれども、あそこでも液状化の被害も起こっておりました。
 かつてない深刻な被害ですが、液状化被害そのものは以前から知られていたわけであります。こういう地盤の液状化被害について広く認識されたというのはいつごろか、この点についてどのように受けとめておられますか。

○小泉大臣政務官 塩川委員におかれましては、私の地元であります稲敷市も御視察いただき、まことにありがとうございます。私も千葉県と茨城県の液状化被害を視察してまいったところであります。
 今お尋ねの点でありますけれども、昭和三十九年の新潟地震で大きな液状化被害が発生して以来、この液状化現象というのを認識し、調査研究を進めてきたところであります。

○塩川委員 昭和三十九年ですから、四十年以上前から、五十年近く前から液状化被害というのは広く知られておったわけで、研究も行ってきたということの御答弁でありました。
 このような過去の液状化地盤被害を踏まえて、国としてはどのような対策をとってきたんでしょうか。

○小泉大臣政務官 今お話をさせていただきましたような調査研究を踏まえて、公共施設であります道路、下水道、そしてまた宅地等に関しまして、各市町村にその対策の情報提供をしてきたところであります。

○塩川委員 これは具体的に、法令上の定めはどうなっているのか、情報提供してきたという、その情報提供の中身はどういうものかについてお答えいただけますか。

○小泉大臣政務官 具体的な、法令上明示的に国の基準というのは、まだ定めるところまでいっておりません。
 なお、宅地等に関しましては、平成十年に宅地防災マニュアルを改定しまして、標準的な液状化地盤の判定方法や、適切な対策工法を選定する際の留意点等を地方公共団体等に情報提供させていただいているところであります。

○塩川委員 四十年以上前から知られ、研究もしてきたけれども、国として行ってきたことは、平成十年の宅地防災マニュアルにおいて、要するに、自治体に対していわゆる技術的助言、事業者に対してのアドバイス、ここにとどまっていたということであるわけで、重大な被害が起こるということがわかっていたにもかかわらず、こういった対応策にとどまっていたという点は極めて重大だと言わざるを得ません。
 国の対応策として挙げられている宅地防災マニュアルですけれども、この宅地防災マニュアルに地盤の液状化の項目が加えられたのはいつで、どのような災害を契機として行われたものでしょうか。

○小泉大臣政務官 先ほどもお答えをさせていただきましたように、宅地防災マニュアルを改定させていただいたのは平成十年度でございます。

○塩川委員 これは平成十年ですから、平成七年の阪神・淡路大震災を契機として、平成十年、一九九八年に地盤の液状化の項目を加える改定をした、そういうことでよろしいですか。

○小泉大臣政務官 委員おっしゃるとおりでございます。

○塩川委員 旧建設省が、液状化の可能性をはかる、液状化マップ作成マニュアルを平成三年につくって、これも阪神・淡路大震災を機に見直して、平成十一年に旧国土庁が液状化地域ゾーニングマニュアルとしてまとめてもいます。
 この宅地防災マニュアルですけれども、阪神・淡路大震災では、ポートアイランドなど人工地盤での液状化が大きな問題となりました。その際の教訓を生かした液状化対策も行われてきたわけで、例えば、広範囲の液状化被害をこうむった浦安市、私も伺って市長のお話も伺いましたが、ここでも、市南東部のURの集合住宅の被害は非常に小さかったということを市の担当者からも伺いました。それは、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた液状化被害対策をとったからだという説明で、この宅地防災マニュアルの解説の中にも「宅地造成(臨海部)における地盤改良工法」の参考事例として紹介されているのが、浦安市のURの事例でもあったわけであります。
 要するに、液状化対策もやればできるということを示しているわけで、重ねてお尋ねしますが、国としてしっかりとした対策をとっていれば今回のような大きな液状化被害を防ぐことはできたんじゃないのか、この点が問われていると思うんですが、お答えください。

○小泉大臣政務官 委員御指摘のように、私も千葉県の香取市を見てまいりまして、地盤改良をかなりしっかりやったところはほとんど被害がなく、その点で不備な住宅が、三千五百戸近い非常に大きな被害を受けていたというのを現実に見てまいりました。
 その観点から、ただ、今回の地震の特徴は、非常に大きいだけではなくて、時間が長く揺れていたということで、今までの規模と比べてもかなり大きな液状化が出ておりまして、今般こういった状況をもとに、まず徹底的に、再度被害状況の調査分析を進め、技術的知見をしっかりと深めていくことが一番大切であると思っております。そして、その上で宅地開発等に係る液状化対策の基準の策定も、その可能性について検討を進めているところであります。

○塩川委員 基準の策定の検討を進めているという話でありました。
 今回の大震災による液状化被害を受けた土地というのは、もともと海だったところを埋め立てたところがあります。また旧河川、河道跡につくったというところもあります。あるいは、昔、池や沼だった、こういうところを埋め立てて宅地にしている。
 ですから、単純な自然地形ということではなくて、過去、海や川や池沼があったような場所を人為的に造成して宅地にした、こういうところで発生をしているということですから、私は、やはり人の手によってつくられた造成地ですから、人の手によってこういった液状化被害を防止するということも当然行われなければならないということであるわけで、この点でも液状化対策の基準をしっかりと示すことが求められておりますし、あわせて、既存の造成宅地における今後の災害を防ぐ、あるいは軽くしていく減災、あるいは再発防止のための公的支援制度というのをこの機会にしっかりと創設することも国として求められていると考えますが、この点についてのお答えをお願いします。

○小泉大臣政務官 今委員御指摘をいただきましたように、大変広範な、大きな被害が出ておりまして、住宅を新築したばかりの方でありながら、住宅ローンが残ったまま、全くこれを使用することができないというような事態にもなっているわけであります。
 今般の非常に広範な液状化現象に対して、今回、関係研究機関、関係省庁、そして関係学会に御協力いただきながら、液状化対策技術検討会議というものを五月十一日に立ち上げさせていただきました。そこで、まず現状をしっかりと認識する。特に、同じ埋め立てでありながら被害が出たところと出ていないところがあるわけでありますから、そういったものもしっかりと研究調査をすることによって、こういったことが起きないように、そういった技術的知見を深め、これを基準も含めてしっかりと検討していく所存であります。

○塩川委員 規制に係るような基準をしっかりとつくるということと同時に、現在の被災者の方々の支援にもつながるような再発防止対策のための支援のスキームをしっかりとつくる。余震で傾きが大きくなっているという被災者の声も当然御存じだと思いますから、この点での支援策を早急に具体化すべきだということを申し上げます。
 この点では、宅地を造成した事業者の責任も問われるということで、片山大臣が鳥取県知事の時代に液状化被害についての支援策をつくったということをお聞きしております。その点でも片山知事は、当時、住宅を分譲、販売した県住宅供給公社も液状化対策をとらなかった、その責任から支援策を検討するんだとおっしゃっているということを報道で承知しております。
 千葉県も、浦安市などの埋立地を県の企業局が進めたということも支援策を行う背景にあるということをお聞きしておりますし、久喜市の液状化被害も、旧栗橋町による宅地造成だったということも指摘しておかなければなりません。
 そういった宅地を造成した事業者の責任も問われなければならないという点について、過去、そういった支援策をつくった片山大臣としてお考えのところをぜひお聞かせください。

○片山国務大臣 地震が鳥取県で起きましたのは二〇〇〇年の十月でありましたが、当時は、住宅再建支援は、本体も含めて制度は何もありませんでした。百万円の生活再建支援金だけが国の制度としてありまして、その際に、住宅再建というのが被災地の一番の眼目だということがわかりましたので、三百万円を上限とする住宅再建支援制度を県独自に、市町村と協力をしながらやったわけであります。
 その際に、液状化もあったものですから、確かに全壊、半壊はしていないんですけれども、行ってみるととてもこれは住めないということが実感できましたので、これは何とかしなければいけないということで、放棄するよりは、ある程度の液状化対策を講ずるということで支援をした方がトータルのコストは安いということもありますし、それから被災者の皆さんの気持ちにも合致するだろうということで、百五十万円を限度に県と市町村とで支援をすることにしました、私の記憶によりますと。
 その際に、ただ、液状化が起きたところと起きないところがありまして、やはり造成、分譲をした業者の液状化対策の責任というものもあるだろうということで、それは実情に応じまして、ディベロッパーといいますか事業者からも、正確には記憶しておりませんけれども、幾ばくかの負担金のようなものを徴収した記憶がございます。

○塩川委員 ぜひ、そういう点でも、被災者の暮らしをしっかりと立て直すという観点での取り組みをお願いしたい。現地は被害認定の見直しでかなり人手もかかりますから、ぜひ全国的な応援体制なども、地元から要望があれば積極的にこたえていただきたい。このことも求めて、質問を終わります。