<第177通常国会 2011年05月20日 内閣委員会 11号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 PFI法の改正案について質問いたします。
 最初に内閣府にお尋ねをしますけれども、このPFIの事業におきまして、バリュー・フォー・マネーという指標の持つ意味が大きいというふうに承知しております。このバリュー・フォー・マネーという指標の持つ意味について、簡単で結構なんですが、最初に説明をいただけますか。

○小橋政府参考人 PFIで事業を行うかどうかといったときに、従来型の公共事業と比べてどちらが優位にあるのかといったことを考えるときの一つの指標としてVFMが使われております。
 そういったことで、VFMというのは、一つの指標ではあるんですけれども、PFIを行う上では極めて重要な指標となっております。

○塩川委員 PFI推進室が昨年九月に発表した基本方針におきましても、「VFMが存在することがPFIの核心であることから、VFMの算出方法について、客観的で透明性の高いスキームが共有されなければならない。」としております。VFMとは、いわばPFIを行うかどうかを決める決定的な指標の一つだということになります。
 この間のPFIにおいて、このVFMのトータルは、PFI推進委員会中間的とりまとめにおいて、二十一年末、この間生じたVFMは約六千六百億円に上るとしております。
 そこで、総務省にお尋ねします。
 総務省行政評価局で、二〇〇八年一月に、PFI事業に関する政策評価を行っております。このVFMについて、この政策評価において、どのような問題があったと指摘をしているか、その該当部分について説明をいただけますか。

○田中政府参考人 今御指摘の調査でございますが、平成二十年の一月に勧告をいたしましたPFI事業に関する政策評価でございます。
 この中では、VFMにつきまして、事業選定時や民間事業者の選定時のVFMに関する情報の公表が不十分であることであるとか、コストの削減率やいわゆる割引率の根拠が不明確であることなど幾つかの論点を提示いたしまして、先ほどの御指摘からいきますと、「客観性及び透明性が確保されているとは認め難い」という状況であると評価をいたしております。

○塩川委員 今答弁ありましたように、この評価報告書におきましては、PFI事業において重要となるVFMについて、幾つかの事例を挙げながら、「客観性及び透明性が確保されているとは認め難い状況になっている。」と述べているわけであります。透明性、客観性に問題があったという指摘であります。
 続けてお尋ねしますが、この中でも割引率の問題を今述べておりました。割引率の問題は、VFMが黒字になるのか赤字になるのか、直接大きく左右する重大な内容であります。
 この政策評価書の六十五ページに掲載されております割引率の分布状況、表があります。この表で実際のPFI事業に適用された割引率がどうなっているのかを挙げてありまして、その中の一番右の欄、平均値がそれぞれ、各年どういうふうになっていますかというのを、そこだけちょっと紹介してもらえますか。

○田中政府参考人 ただいまの御指摘は、内閣府の作成いたしましたガイドラインで「リスクフリーレートを用いることが適当である。」という指摘がありまして、その実態につきまして個別の事業を調べまして、今御指摘のように、それぞれの個別事業につきまして、平成十一年から十七年までの間、実際のPFI事業に適用された割引率とその平均値を調べまして、数字を掲載して、おおむね四%程度というふうになっているということでございます。

○塩川委員 今答弁がありましたように、四%程度にずっとなっているんですね。毎年毎年四%に近い数字になっています。
 こうした数値になっている理由は何なのか。この点についても政策評価書で指摘があると思うんですが、四%の割引率が多い理由についてはこの報告書でどのように指摘をしておられますか。

○田中政府参考人 このときの政策評価書におきましては、その多い理由につきまして、国土交通省が平成十六年の二月に策定をされております公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針におきまして「割引率は、全事業において当面四%を適用する。」というふうにされておりまして、このときの評価では、公共施設等の管理者等がこの数字を参考にしたのではないかというふうに指摘をいたしております。

○塩川委員 実際に行われているPFIの事業で割引率が四%中心となっているというのは、その国交省の技術指針を参考に適用しているからだという指摘であります。
 続けて、この評価書におきまして、六十六ページに図表二の10とありますけれども、実際にVFMの計算に割引率四%が適用されている、そういう四つの事業を例示して、これについて、総務省として、このVFMが算出された年の長期国債利回りの平均値を示してVFMを試算しております。
 この試算にVFMが算出された年の長期国債利回りの平均値を用いた理由は何か、確認で御答弁ください。

○田中政府参考人 ただいまの御指摘のくだりは、私どもが調査対象といたしました四事業につきまして、先ほどの御指摘のように、いずれも割引率四%ということで実施をされた事業につきまして、一方で、内閣府が作成されたガイドライン、先ほどもちょっと触れましたが、割引率につきまして「リスクフリーレートを用いることが適当である。」ということで、その中の例示といたしまして、長期国債利回りの過去の平均でやるということが指摘をされておりました。
 そこで、私どもの方で、いわば試算といたしまして、先ほども御指摘がありましたが、VFMが算出された時期の過去十年間の長期国債利回りの平均値で試算をしてみたということでございまして、そういたしますと、一番低いもので一・六九、高いもので二・九〇であったということでございます。

○塩川委員 内閣府のVFMのガイドラインどおりに割引率を試算して当てはめた結果がこの数字に出ているわけですけれども、実際、こういった事業についてリスクフリーレートに基づいて試算をしたわけですけれども、その結果としてVFMはどのようになったのかについて、この表の数字を示していただけますか。

○田中政府参考人 失礼いたしました。
 先ほど御指摘の個別事業につきまして、実際のレートは割引率四・〇でございますが、試算結果では、一番低いものが一・六九%、一番高いもので二・九〇%という結果でございました。(塩川委員「VFMの額について」と呼ぶ)
 VFMの金額をここで計上いたしておりますが、これで、額が一番高いもので、平成十七年にVFMが算定された年の事業で申しますと、四億七千万円違うということでございます。

○塩川委員 そのまま読んでもらえばいいんですけれども。私の方で言いますから。
 つまり、割引率四%ではじいたVFMと、いわゆるリスクフリーレート、つまり内閣府のガイドラインに基づく試算で出したVFMの額で見ますと、四つの事業とも全部下がるわけですね。そのうち二つはマイナスになるということがここに挙げられているわけであります。
 つまり、VFMがマイナスになるということは、PFI事業とするということは不適格、公共でやった方がいいということを示している数字になるわけであります。つまり、割引率の設定がPFIをやるかどうかのまさに適否を左右しているということをここでも改めて示しているものであります。
 そこで、具体的に国交省のPFI事業で検証してみたいんですが、国交省にお尋ねしますが、合同庁舎の八号館がPFIで行われていますから、その八号館のPFI事業におけるVFMと割引率が幾らだったのかについてお示しいただけますか。

○澤木政府参考人 お尋ねのありました中央合同庁舎第八号館のPFI事業におけるVFMと割引率でございますけれども、VFMについては五・五五%、金額にいたしますと十四億一千百万円ということになります。また、割引率につきましては四%を使用してございます。

○塩川委員 つまり、国交省は四%。それは、国交省の技術指針が四%としているということが割引率四%の根拠でもあるわけですけれども、国交省からこの割引率四%を適用してVFMを算出する算出式をいただいて、うちの事務所で計算してみたところ、合同庁舎の八号館を公共事業で行うと三百二十五億円で、PFIで行うと三百五十五億円で、総額はPFIの方が三十億円多くなります。
 しかし、公共事業は最初に多くの支払いを済ませるので、将来に払う金額はPFIよりは少なくなる。割引率四%の場合、将来多く払うPFIの現在価値が少なくなるということでもありますので、この割引率について、うちの事務所で二%を適用して計算してみたところ、PFIの現在価値は四%のときほど小さくならないので、VFMはマイナスの四億五千三百万円となりました。つまり、総務省が行った試算と同じように下がるわけですね。
 つまり、四%か二%か、その割引率で結果が大きく左右される。この間の国債の平均利回りより高い二%でマイナスとなるということは、やはりよく見ておかなくちゃいけない。
 そこで、国交省にお尋ねしますが、この割引率については、内閣府のVFMのガイドラインにおいて「リスクフリーレートを用いることが適当」とされているわけですけれども、長期国債利回りの過去の平均とか長期的な見通し等を用いる方法が例示されているわけですが、この間の長期国債利回りの過去の平均は一%台であります。
 ところが、国交省は、割引率を現在も四%に据え置いたままであります。この点については、過去、有識者会議で検討も行われて、例えば二〇〇三年の有識者会議では割引率を引き下げる議論もあったと聞くけれども、なぜ引き下げずに四%を維持することになったんでしょうか。

○深澤政府参考人 お答えいたします。
 公共事業の評価におけます社会的割引率につきましては、御案内のように、経済の関係それから工学の関係、いろいろな学識経験者の方の御意見も踏まえまして、国債の実質利回り等を勘案しまして、御指摘のあったように、平成十六年に四%ということを定めたわけでございます。
 公共事業は長期間にわたって効果それから便益が発生するということで、この社会的割引率の設定は非常に難しいといいますか、いろいろな御意見があるところでございます。
 平成十六年当時も、今委員御指摘ありましたように、三%とすべきという意見もありました。また一方、これを引き下げることでBバイCが逆に大きくなるので慎重に扱うべきという御意見もありました。また、割引率については、これはかなり長期間にわたる話なので、長期的に考える必要がある、そういう中で四%ということで現在に至っているわけでございます。
 これにつきましては、今申し上げたようにさまざまな御意見がありますが、今後、この社会的割引率も含めまして、事業評価手法については適宜、点検、見直しを行ってまいりたいと考えておりますけれども、四%につきましては、現時点でこれを変更する方向にはまだ至っていないというふうに認識しております。
 以上です。

○塩川委員 最後に大臣にお尋ねしますけれども、金利はどんどん下がっているのに、割引率四%のままというのが国交省なんですね。それは、公共事業についての割引率を下げるとBバイCが大きくなる、公共事業の評価が高くなるということもあって、今の今日的な社会情勢のもとで公共事業の価値が大きくなるようなことをやるのかという議論が有識者会議の中でも行われたところであります。
 ですから、国債の利率が下がっているにもかかわらず割引率を下げないということは、公共事業のBバイCについて厳し目に評価しているということを意味するものですけれども、しかし、この技術指針の割引率をVFMに適用してPFI事業に当てはめると、公共事業より費用が少なく評価をされて、VFMがプラスになってくる。つまり、公共事業に厳し目の割引率を設定することが、PFI事業に甘目に出るということになっているわけであります。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、過去に国交省の技術指針を用いて四%の割引率でVFMを算出した大半のPFI事業というのは、内閣府のガイドラインどおりに割引率を適用すれば、総務省が試算をしたとおりに、PFI事業に不適格なVFMマイナスとなるんじゃないのか。国交省の技術指針に従った四%の割引率の適用というのはPFI事業推進に当たって不適切だったんじゃないのか、このように考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○蓮舫国務大臣 PFI事業を行うに当たりまして、従来の公共事業ではなくてPFIで行った場合に、その事業コストが金額にしてどれだけメリットがあるかというのがまさにバリュー・フォー・マネーですから、非常に大事な指標でございます。
 私どもとしましては、総務省の政策評価の結果を踏まえ、透明性と客観性を確保するためにガイドラインの改定を行って、それぞれの公共施設の管理者等で適切にこれは守っていただきたいと要請をしている立場でございますから、今いろいろ議論を聞かせていただいておりましたが、まずは国交省の中で、今委員御指摘の部分の四%という一律で本当によかったのかどうなのかを考えていただくのが始まりではないのかなと思っております。
 いずれにせよ、我々はPFI事業を今回の法改正をもってさらに推進してまいりたいと思っておりますので、私のもとでは、この客観性あるいは透明性というのは引き続き各公共施設の管理者に守っていただきたいと思っているところでございます。

○塩川委員 実際には内閣府のガイドラインどおり行われていない。だって、国交省は四%でずっとこれからもやると言っているわけですから、まさに乖離が生まれているわけですよ。それが結果として、今の金利が低いもとではPFI推進のいわば推進力にならざるを得ないということにもつながってくるわけですから、実際に多くの自治体や国で行われているこういうPFI事業が四%で当てはめてやっているわけですから、こういった実態についてきちんと検証することこそ先に行うべきだ。
 推進ということじゃなくて、やはり検証してこそ、本当の意味でPFI事業が生きていくのか、こういうことが問われるわけで、実際には、こういったいわば意図的に設定されたような割引率によってPFI事業を加速させる、そういう事態にもなっているという点でも、厳しく事態を見なくちゃいけない。
 こういう点について見直しを強く求め、検証をしっかりするということを改めて求めて、質問を終わります。