<第177通常国会 2011年05月24日 総務委員会 18号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 法案に関連して質問いたします。
 最初に、災害時のライフラインとしての公衆電話について質問をいたします。
 今回の災害では、通信手段としての携帯電話のもろさが指摘をされました。「被災地 無力な携帯」、こんな新聞の見出しも躍ったわけであります。その一方で、公衆電話の役割が見直されたということでありました。
 最初に、大臣に、災害時における公衆電話の役割、値打ちをどのように受けとめておられるのか、この点についてお聞きしたいと思います。

○片山国務大臣 「無力な携帯」という表現がありましたけれども、今回の災害で通信施設が被災をした、そのことによって通信が不能になったということでありますと、固定電話も携帯電話もそれぞれございました。
 そういうことではなくて、一時的なふくそうにより通信を制限したという面がありまして、その点では携帯電話が非常にかかりにくいということだったと思いますが、これは、あのときのような非常時においては一定の制限を課しているわけで、課している割合が高い携帯、それに対して制約を課していない分野との間に差が出たという、これはあると思います。
 公衆電話については制約を課さないということになっております。その点で固定電話が非常に有効であったということで、別に携帯電話が悪いということでは決してないわけでありまして、一般の方には災害のときの非常時においては制限を課させていただいている、こういうことであります。

○塩川委員 これは、平成二十年の情報通信審議会の「ユニバーサルサービス制度の在り方について」という答申で、災害時における公衆電話の意義、役割について述べております。
 災害時等における優先電話としての指定が一部にとどまっている携帯電話と比較すると、公衆電話は全数が災害時等における優先電話として扱われており、また、公衆電話は、携帯電話のような個別の加入契約が必要なく、基本料が不要であるため、必要の際には国民全てが利用可能であること等を考慮すると、依然として、社会生活上の安全及び戸外における最低限の通信手段としての公衆電話の意義は失われてはいない。
このように述べております。
 公衆電話は、災害時に無料で優先的に通話が可能となる。今回の東日本大震災に当たっても大きな役割を果たしました。携帯電話が通じない期間が続く中で、公衆電話で家族や知人の安否を確認できたという事例もたくさんあります。首都圏でも、帰宅困難者の方が家族と連絡をとるために公衆電話の前に長蛇の列をなした、こういうことも大きく紹介はされているところであります。
 しかしながら、こういう重要な役割を果たす災害時のライフラインとしての公衆電話について、政府の緊急災害対策本部の百ページ以上に及ぶ資料の中で、ライフライン、通信の項目もありますけれども、公衆電話がどれだけ壊れて、どれだけ復旧したか、こういうことが一行も書かれていないんです。優先電話としての第一種公衆電話の復旧状況がどうなっているのかということについても、緊急災害対策本部のにはどこにも出てこない。この前まとめた「当面の取組方針」の中にも、もちろん公衆電話についての記述はありません。
 これは、総務省自身がこういった公衆電話の役割を低めることになっているんじゃないのかと率直に思うんですが、いかがですか。

○片山国務大臣 いや、決してそんなことはありません。被災をしたインフラ、通信も含めたインフラについて調査して情報を提供する場合に、それだけの区分をしていなかったということでありまして、それは一つの視点でありますので、これからよく気をつけたいと思います。

○塩川委員 復旧状況についても改めて調べないとわからない。理事の皆さんと一緒に、委員派遣で、岩手県の盛岡市で通信事業者の方のお話を聞いた際にも、NTTの関係者に公衆電話はどうなっていますかと言っても、その場での回答、わからなかったわけですよね。それがやはり通信事業者としての公衆電話の位置づけなのかなということも感じた次第であります。
 それで、こういった公衆電話についても、この間、ユニバーサルサービスとされている第一種公衆電話は増設をされずに、第二種公衆電話は次々減らされて、公共施設からの撤去も相次いでおります。
 私は、改めてこの公衆電話の増設を図るべきだ。特に、少なくとも災害時の避難所となるような施設には公衆電話を設置する、このことこそしっかりとやるべきだ。事業者に義務づけることを初めとして、避難所となるような施設に公衆電話を設置する、こういうことをしっかりと前進させるということが今回の震災の教訓ではないか、このように考えますが、いかがでしょうか。

○片山国務大臣 一つの大事な視点だと思います。
 今回の災害などを見ていますと、やはり避難所における通信手段の確保というのは非常に重要でありまして、その際、避難所に公衆電話があらかじめ設置してあれば非常に有効であると思います。
 一方で、公衆電話というのは、御承知のとおり、採算面でいいますと不採算のところが多いということで、それについての赤字分は利用者全体で負担をしているということになりますので、その面からのバランスということも考えなければいけないと思います。ですから、避難所などに想定されている施設で、そこそこ利用者が見込まれる、そういうことがあれば最適だろうと思います。
 そのことも含めて、これからの公衆電話のあり方についての一つの検討課題だろうと思います。

○塩川委員 避難所における公衆電話の設置についてしっかりと進めていくこと、現在、第二種公衆電話がどんどんどんどん減らされているという状況もありますから、こういうのを単純に採算ベースの話ではなくて、やはり地域における最低限の通信の手段を確保する、こういう立場で事業者に対応を求めていくということも今は必要なことだ、このことを申し上げておくものであります。
 次に、被災者の方の携帯電話料金が非常に高額になっているという訴えを聞きました。
 資料を配付いたしましたけれども、福島県の浪江町の住民の方のお話を伺いました。二本松市に避難をしました福島県の浪江町に行きまして、その場で町長さん、議長さんから、携帯電話料金が本当に高いんだ、これを何とかしてくれという訴えがありました。だったら、具体的にどういう状況になっているのか教えていただきたいということで提供いただいたのがこの資料であります。
 役場の職員の方に御協力いただいて、それぞれの方の一月分、二月分、三月分の携帯電話料金、使用料金について書き出したものであります。ごらんいただいてわかりますように、どなたも一月分、二月分の使用料金は大体同じぐらいの金額なんです。それは平均を見ても、一月分が七千七百十八円、二月分が七千九百七十一円ということにもあらわれております。しかしながら、三月十一日の発災を挟む三月分の使用料金は二万四千四百四十六円と、一気に三倍以上に膨らんでおります。中には、ナンバー2の方などは四千円台だったのが四万五千円。
 それぞれの個々の事情はあるでしょう。しかし、身内の方、知人の方、そういう方と連絡をとろう、こういう中でやはり通信がかさむということであります。避難生活の被災者はだれにも共通している。これは福島・浪江町の方だけではないというのも、また皆さんもお聞きになっていることではないでしょうか。
 被災者の方に聞くと、大体、一番連絡がとりたかった直後の一週間に携帯電話は通じなかった、肝心のときには携帯が通じなかったのに、こんな高い料金を払うことになるのは納得いかないという怒りの声が上がっているわけであります。
 大臣に率直に伺いますが、こういった被災者にとって、携帯電話料金が余りにも負担が大き過ぎるんじゃないのか、その点についての率直な受けとめと、こういう実態についてぜひ調査をしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○片山国務大臣 私も、先般、浪江町の町議会の議員の皆さん方が来られたときに、議員の方からお伺いをいたしました。
 それは、そういう実態は恐らくあるだろうと思います。今まで固定電話を使っていたのが、浪江町の役場の職員の皆さんでいいますと固定電話は使えなくて、避難所で、避難した先で通信をしようと思うと勢い携帯電話になる、そういう点もありますし、それから、こういう事態になりましたので、日常よりは数段、携帯電話を使う頻度も時間もふえているだろうと思います。その点についての実情などを直接私も伺ったところであります。

○塩川委員 改めて、こういう実情について総務省として調査するお考えはありませんか。

○片山国務大臣 福島県の双葉郡のケースでいいますと、明らかに、これは東京電力の福島第一原子力発電所の災害に関連して惹起された事態であります。原発災害に起因する損害の範疇に恐らく入るんだろうと思います。相当因果関係というのは恐らくあるだろうと思いますから、それぞれ、東京電力に対してその追加費用について請求をする、こういうことが想定されるんだろうと思います。

○塩川委員 東電の賠償金の対象になるのかどうかという話ですが、原子力損害賠償紛争審査会が一次指針を出しました。その中を見ても、賠償対象として通信費というのは入っていないんですよ。検討対象にもないんです。ですから、この原発事故による被害者にはやはり通信費を賠償するよう定めるということが必要だ。大臣がおっしゃるとおり、しっかりとこういう対応が必要であります。
 同時に、原発事故にとどまらない、津波、地震による被災者の方々はたくさんいらっしゃるわけですから、そういった方々の通信費が大幅にふえているという問題について、何らかの軽減策を考えることが今必要だということを申し上げたい。こういった携帯電話料金についての引き下げの仕組みというのも創設することが求められていると思います。
 この間、事業者がやっていることを聞いても、不通だった期間の基本料金は無料にしますだとか、三カ月間徴収するのは先送りにしますと。そんなことを言ったって、基本料金なんかわずかな額ですし、さらには、三カ月間といっても口座引き落としの人はとまらないんですよね。ですから、実際には払わされているという状況なんかもあって、こういう点でも極めて不十分であるということは明らかです。
 そういう中で、私がお聞きした被災者の方のお話で、その方が通常で月に一万円の携帯電話料金だったのが、三月分が二万三千円にはね上がった、だから携帯事業者にかけ合って話をしたところ、この二万三千円が一万円に減額をされたという話をお聞きしました。
 こういう事例があるのであれば、ぜひこういうものをやっていただきたいと思うんですけれども、こういう通信費を軽減する仕組みがあるというのは、大臣は御存じですか。

○片山国務大臣 私も浪江町の議会の方から、携帯電話の通信料がはね上がった、何とかしてもらいたいという要請も受けまして、ちょっと聞いてみましたけれども、今おっしゃったような減額とか減免というのは、制度的にあるということは承知しておりません。具体的に何かどこかであったというお話だと思いますけれども、これが通信事業者の制度として一般的にあるということは承知をしておりません。

○塩川委員 いや、こういうものが現にあるのであれば、きちんと周知をすることが必要だと思うんですけれども、そういう点についても事業者にきちんと働きかけするというお考えはありませんか。

○片山国務大臣 もし事業者がそういう制度を、事業者として顧客に対してルールをつくっているのであれば、それは当然周知をされるべきだろうと思います。それがルールでなくて行われたということでありますと、公正さの観点からどうかという問題もあります。
 いずれにしても、ルールとしてあるかどうか、私が伺ったところでは、そういうのはルールにないというふうに伺っておりますので、少し問い合わせてみたいと思います。

○塩川委員 今、通信事業者は高い収益を上げております。二〇一一年三月期連結決算において、通信大手三社とも営業利益、純利益が増加をしております。収益規模に比べれば、震災の影響は限定的だと言っています。
 NTTドコモの山田社長は四月二十八日の記者会見で、経済が大震災で少し落ちているというのは事実だと考えている。リーマン・ショックのときも同じような状況だったが、通信業界やドコモのお客様はほとんどが個人のお客様であり、携帯電話は生活必需品となっているため、落ち込みは少ないのではないか。ありがたいことだが、だからこそ、震災のようなときには頑張らなきゃいけないと思っていると述べていたわけです。ぜひ頑張っていただきたい。
 政府としても、被災者の電話料金の負担軽減を行うよう通信事業者に要請することを強く求めて、質問を終わります。