<第177通常国会 2011年05月26日 総務委員会 19号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 一昨日の質問の際にお聞きした、携帯電話利用料金など避難に伴う通信費増加に関連して、最初、何点か質問いたします。
 その際、私は、避難生活を送る福島県浪江町の方の携帯電話使用料が、一月分、二月分と比較をして、三月分が三倍以上になるということを示して負担軽減策の実施を求めました。大臣は、通信費の増加は原発災害に起因する損害の範疇に恐らく入るだろう、東京電力に追加費用について請求することが想定されると答弁をされました。しかしながら、原子力損害賠償紛争審査会一次指針には、通信費という言葉は明示をされておりません。
 そこで、原賠法を所管する文部科学省に確認をいたします。
 原発事故による避難に伴う通信費の増加については、避難費用や生活費の増加分として賠償の対象となると考えますが、その点についてお答えいただけますか。

○田中(敏)政府参考人 原子力損害賠償紛争審査会が策定をいたします原子力損害の範囲の判定ということでございます。
 本件につきましては、被害者を可能な限り早期に救済をしていくというような考えから、相当因果関係が明らかなものから順次指針を策定していくということで、四月二十八日に一次指針を公表したところでございます。この一次指針では、政府による避難等の指示があった区域における避難費用については、避難対象者が避難等によって生活費が増加した部分があれば、その増加費用は損害として認められるというふうにしてございます。
 御指摘の通信費ということでございますけれども、生活手段としての通信費というようなことは、この生活費の増加というようなことに一般的には当たるというような考えもございますけれども、その具体的な算定方法等につきましては現在検討中でございまして、次の段階の指針に反映されるよう、今取り組んでいるところでございます。
 文部科学省としては、いずれにせよ、被害者の方々が迅速かつ適切に損害賠償が受けられるよう、今後とも努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 大臣にお尋ねします。
 五月十六日の原子力損害賠償紛争審査会において、各分野の被害、損害を詳細に調査するため、専門委員を任命するということが議論されました。そこにおきましては関係各省の協力が不可欠だともされております。各分野の中には、地方公共団体もありますし情報通信もございます。ですから、情報通信について、通信事業者だけではなく、まさにその利用者の方の状況についてもしっかりと総務省として実態調査を行ってもらいたい。それを踏まえて、賠償の対象になるように、関係機関への働きかけを総務省としてもぜひしっかりとやっていただきたい。この点についてお答えいただけますでしょうか。

○片山国務大臣 先般もお話し申し上げましたけれども、また、先ほど文部科学省の方からも説明がありましたけれども、今回の原発災害に起因して避難をされて、その過程、その避難後において携帯電話の使用料が随分上がったというのは、これは恐らく因果関係がありということになると私は思います。それは、どういう算定方法にするかというのは細部の問題はあるにしても、大筋としてはそうなると思います。それらは当然、しかるべき手順を踏んで賠償の対象にされるべきでありまして、その点については、通信を所管しております総務省としてもきちっと関係のところに申し上げたいと考えております。

○塩川委員 ぜひ、申し上げる上でも調査をやっていただきたいと思っておるわけですが、その点はどうですか。

○片山国務大臣 それは総務省として調査をするというよりは、その賠償の手順のプロセスにおいてしかるべく実態が判明するものと思います。

○塩川委員 やはり具体的に見ればサンプルでもはっきりと見えてくるわけですから、そういう指標として示すということは、この審査会における専門委員の任命に当たっても関係各省の協力が不可欠と述べているわけですから、ぜひそういう立場で当たっていただきたい。
 この携帯電話使用料の増加は原発事故の被害者だけではありません。避難生活を強いられているすべての被災者に共通する課題でもあります。高い収益を上げている通信事業者が災害時の電話利用料の軽減措置をとることを改めて求めるものであります。
 そこで、アナログ停波の延期の問題の法案について質問をいたします。
 地震、津波、原発事故によって受信者側の準備が整わないもとで、東北三県のアナログ放送停止を延期するのは当然の措置であります。同時に、全国的にも地デジ準備が整わない視聴者が残されていることを放置してはなりません。
 そこで、総務省にお尋ねしますが、総務省の浸透度調査において、全体の世帯の普及率及び年収二百万円未満の世帯の普及率は何%になっており、また、推計される残された世帯数はそれぞれどのぐらいになるのかについてお答えいただけますでしょうか。

○平岡副大臣 お答えいたします。
 受信機の普及率につきましては、これまで定期的に、アンケート調査方式でやりましたサンプル調査によって把握してきているところでございますけれども、平成二十二年十二月末時点のものとして三月に発表した調査結果では、地デジ対応受信機の世帯普及率は全国で九四・九%、世帯年収二百万円未満の世帯では八七・七%ということになっております。この世帯年収二百万円未満であるかどうかについては、そのアンケート調査の中にこういうことを書き込むところがありまして、それから出した数字ということでございます。
 これらの普及率を前提に、昨年末時点のデジタル受信機未対応の世帯数を推計いたしますと、全体では約二百六十五万世帯、このうち、世帯年収二百万円未満の世帯は約百二十四万世帯というふうになると考えております。

○塩川委員 八十歳以上の世帯が調査対象外となっている、極めて不十分な総務省の浸透度調査でも、いまだに多くの世帯が地デジに未対応ということがわかります。地域的に見ても大きな差があるということは、沖縄県の調査が八八・九%、石垣島は八〇・九%であります。おくれは明らかです。
 そもそも、送信者、放送事業者側は、二〇一一年七月までの地デジ一〇〇%実施を既に放棄しているということを指摘しておきたい。
 十年前の法案審議のときに、政府は、テレビのデジタル化に当たって、二〇一一年には地上波アナログ放送がカバーしているエリアについては地上波デジタル放送を一〇〇%カバーすると約束をしておりました。二〇〇一年四月の衆院総務委員会において、当時の小坂副大臣は、アナログ波の受信可能な地域のカバー率を一〇〇%にするという目標を譲ることはできないと答弁をしております。
 しかし、現実はどうか。政府と放送事業者は二〇〇六年に、二〇一一年の地デジ化一〇〇%実施をあきらめました。二〇一一年七月までに地上波放送が間に合わない地域では、セーフティーネットとして暫定的な衛星対策を実施することを決め、二〇一五年三月までに地上波放送で対応することとしました。衛星放送で対応する地区は十四万世帯以上残されております。衛星放送で提供される番組は東京キー局の番組になり、ローカル放送は視聴ができない。これでは災害時のライフライン、ユニバーサルサービスを保障することにはなりません。
 十年前、送信者側は二〇一一年までに一〇〇%カバーすることとしていたのに、いつの間にか、一〇〇%達成のゴールを二〇一五年三月まで延ばしてしまいました。送信者側がゴールを延ばしたわけですから、受信者側のゴールも延ばせばいいわけで、大臣にお尋ねしますが、テレビ難民をつくらないためにも、今回東北三県を延期したように、地域の準備状況を勘案して段階的にアナログ放送の停止を行う、こういう措置をとるべきではないかと考えますが、お答えをお願いします。

○片山国務大臣 今日までいろいろな取り組み、努力をしてまいりまして、私どもとしてはおおむね順調に推移してきていると思います。もちろん、今おっしゃったように、地域によっての差が若干ありますけれども、全体としてはおおむね順調に推移していると思います。
 例えば、お触れになった低所得の方のための対策でありますとか、難視聴の地域に対する支援でありますとか、いろいろなことを今までもやってきておりますし、これからの最後の追い込みの期間にもそれらを最大限活用していただきたいということで、被災三県以外については既定の方針どおりやらせていただきたいと考えております。

○塩川委員 私は、東北三県で実施したように、全国一律ではなく、地域の実情に合わせた段階的なアナログ停波を行うべきだと改めて申し上げます。
 低所得者世帯への支援策についても、今お触れになりましたけれども、極めて不十分と言わざるを得ません。総務省の浸透度調査においても、年収二百万円未満の世帯での地デジ未対応が推計で百二十四万という御答弁がありました。
 総務省に確認しますが、政府の支援策にあります市町村民税非課税世帯へのチューナー支援ですが、申込数及び支援終了数が何件か、お答えいただけますか。

○平岡副大臣 ただいま委員が、低所得者世帯、二百万円以下の世帯の数字として百二十四万世帯ということで、私が答弁したことを引用されました。
 それに対応するものとしては、政府として行っているのは、市町村民税非課税世帯に加えて、NHK放送受信料全額免除世帯、例えば生活保護受給世帯などが含まれているわけでありますけれども、こういう人たちがおられるわけでございます。そういう意味で、それらを双方含めてお答えいたしますと、本年四月末の累計で百十六万のお申し込みをいただきまして、そのうち、約百万の方々については支援を完了させていただいているということでございます。
 ただ、委員が市町村民税非課税世帯ということで限定して答弁を求めておられるとするならば、これは制度を発足させたのが最近でございましたので、申込数としては約四万、支援完了数としては約三万三千というような状況になっているということでございます。

○塩川委員 NHK受信料全額免除世帯についての支援策というのは、アンテナの設置や配線も含めて、全部地デジ対応にしますということであります。
 それに対して、市町村民税非課税世帯への支援はチューナーを配るということですから、それだけでは地デジが映らないわけですよね。そういう点での支援策の不十分さというのが大前提にあって利用が進まないということであるわけで、もしやるのであればNHK受信料全額免除世帯と同じような、地デジが映りますよという環境整備まで整える支援策にこそ拡充をすべきだ。少なくとも、NHK受信料全額免除世帯と同等の支援を低所得者世帯に行う、こういう対策こそ今行って、低所得者の方の地デジ対応を進めていくことが必要だと思いますが、大臣、その立場での取り組みをお願いしたいと思っております。

○片山国務大臣 四月以降、市町村民税非課税世帯に対する支援などについて、申し込みが非常に増加をしていると承知しております。これからさらに追い込みの期間にかけて、いろいろな施策を用意しておりますけれども、申し込みがふえると期待しておりますし、多分ふえるだろうと思います。この取り組みをさらに徹底してまいりたいと思います。
 さらに今後の支援を強化すべきではないかという御指摘でありますけれども、それはやはり、時系列で見た場合の国民の皆さんの間の公平性ということも考えておく必要があるだろうと思います。

○塩川委員 全国的には地デジの電波発出そのものが大きくおくれているところがあるわけですから、送信側のおくれの中で受信者側のおくれも伴っているという点でも、公平性という観点でいっても、地方におけるような未対応の部分についての支援策というのは、まさに公平の観点からも必要だ。そういう点での支援策の拡充を改めて求めて、質問を終わります。