<第177通常国会 2011年07月11日 東日本大震災復興特別委員会 10号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 東日本大震災の発災、そして原発事故から四カ月となりました。この暑い夏で、体育館などの一次避難所だけでも、内閣府の避難者数のまとめで、二万四千人を超える方々がいらっしゃる。仮設住宅などに入居をしても、光熱水費や食費といった経済的負担が生じることに心配の声などがあります。そもそも、避難者がこの四カ月にどのような苦労を強いられてきたのかに心を寄せることが何よりも基本であります。
 私、昨日、福島県いわき市に伺いまして、広野町の避難者の方、仮設住宅に伺ってお話をお聞きしました。避難が呼びかけられて、まずは東京に逃げて、それから埼玉、いわきと移ってきた。やっと仮設住宅に入れるようになったけれども、その間、父が透析を受けていた、入院暮らしだったものが、東京の避難先での病院で亡くなるということもあった。孫が中学生で、今まで元気にしていたけれども、引きこもるようになってしまった。こういう家族のさまざまな苦難もあった中での避難生活の四カ月だった、こういうことにしっかりと思いをいたすことが必要であります。
 避難者のこれ以上の苦しみを軽減できるような、被災者のニーズにかみ合った支援が必要であります。その点で、避難者の実情に合った住環境の改善も求められております。
 そこで、きょうお尋ねしたいのが、被災者向け家賃無料の住宅、そういう中でも特に民間賃貸住宅の借り上げの問題についてお尋ねをしたい。
 そこで、最初に質問をしたいのが、被災者向け家賃無料の住宅への入居状況の確認です。少し丸めて平野大臣にお答えいただければ結構なんですが、一つは、公務員宿舎やUR賃貸や雇用促進や公営住宅等といった公的住宅への避難者、被災者の入居戸数が幾つなのかというのが一点。それと、プレハブ建設の応急仮設住宅、ここへの入居戸数が幾つか、これが二点目。三点目に、いわゆるみなし仮設と言われています民間賃貸住宅の借り上げへの入居戸数、これは幾つか。この三点についてまずお答えいただけますか。

○清水政府参考人 応急仮設住宅などへの入居状況について、実務的に御説明を申し上げます。
 仮設住宅は、国土交通省に御尽力賜って県において建設が進んでおるところでございますが、七月八日時点で私ども把握しておりますところ、完成戸数三万七千四十六戸に対し、入居戸数二万二千九百二十一戸。それから、民間賃貸住宅につきましては、被災三県を中心に全国で合計四万四百二十九戸御入居いただいているということでございます。その他、公営住宅など六千戸強、国家公務員宿舎など二千戸、地方公務員宿舎百戸弱、雇用促進住宅五千戸強ということで、七月八日時点でまとめますと、合計七万七千ということになるというふうに聞いてございます。

○塩川委員 三つの点になっていないんですけれども、要するに、建設の応急仮設住宅が二万三千ぐらいで、公的住宅が一万三千ぐらいということ、それと民間賃貸住宅の借り上げ、いわゆる民賃と言われているものが四万戸を超えているわけであります。
 そこで、平野大臣にお尋ねしますが、このように民間賃貸住宅の借り上げの利用が進んでいる現状というのをどのように受けとめておられますか。

○平野国務大臣 震災がございまして被災された方々、家がなくなった方々は、避難所に移られる、あるいは知人宅に移られるということがまず最初だったというふうに思います。
 その後、避難所生活、やはり共同生活でもございますし、プライバシー等々の確保等、非常に難しい問題もあります。自力で、自分でアパートに移りたいという方々は、いろいろなつてを頼って、あるいは御自身で民間のアパートに移られた方もたくさんおられます。特に、民間賃貸住宅についてもきちんとした助成対象になっていますよということについて、これは厚生労働省が通達を出しまして周知徹底して以降、その動きはさらに加速されたのではないかというふうに思います。
 しかし、一方で、仙台のようなところなら別でありますけれども、例えば岩手県の三陸地域は大体大きく被災しておりまして、そもそも民間の賃貸住宅自体が非常に少なくなっているという中で、やはり仮設住宅というのはどうしても必要でございまして、だからこそ仮設住宅の建設も急いだということであります。
 ただ、仮設住宅の難点は何かといいますと、やはり建設するまでに時間がかかってしまうという中で、さまざまな事情、その間待てないんだということで、子供の教育もあろうかと思いますが、民間の賃貸住宅の方に移られた方が多かったのではないかというふうに推察いたします。

○塩川委員 実際に、それぞれの個々の家庭の事情によって、自力で民間のアパートに入る方もいらっしゃった。仮設は時間がかかって、それが待てないということで、子供の学校の学区との関係もあって民間賃貸を利用することになっている、そういう事情というのはまさにそうだと思っております。実際、民間物件の多い仙台市などの都市部で利用が進んでいるわけですし、また、原発事故による避難という特殊事情で首都圏などへの避難者も多い中で、民賃のニーズが非常に高いということでもあります。
 ただ、仮設は立地が不便だったり、公的住宅の空き住宅も不便な場所だったり、エレベーターのない建物の五階が空き住宅になっているような公的住宅も多いわけですから、そういう点でも、避難者、被災者の実情に合った住宅の確保という点で、民間賃貸住宅の借り上げというのは選択の幅が広く、利用度が高い、積極的に活用が図られるべきだと考えます。同時に、制度の改善も求められます。
 そこで、厚生労働省細川大臣にお尋ねしますが、四月の三十日に、被災三県あての厚生労働省の通知、「東日本大震災に係る応急仮設住宅としての民間賃貸住宅の借上げの取扱について」が出されておりますけれども、この通知の趣旨について、ポイントを御説明いただけますか。

○細川国務大臣 この四月三十日の通知につきましては、これは今委員も御指摘がありましたように、被災者の皆さん方が避難所生活を解消して安心して生活をしていただくために、応急の仮設住宅の建設を急ぐとともに、あわせて民間賃貸住宅の借り上げを促進して、そして被災者の皆さん方に安心して居住の場所を提供する、こういうことを目的として、民間の賃貸住宅の借り上げについての通知を発したところでございます。

○塩川委員 通知の中身の確認をしますけれども、この通知では、現に救助を要する被災者がみずから民間賃貸住宅に入居している事例も少なくなく、民間賃貸住宅借り上げの活用が求められているとして、発災以降に被災者名義で契約したものであっても、その契約時以降、県名義の契約に置きかえた場合に、災害救助法の適用となって同法の国庫負担が行われる、この取り扱いは県外への避難者についても同様とするとなっている。
 つまり、被災者がみずから契約をし、家賃を払っていた場合でも、さかのぼって県が家賃を負担するということを周知するものであります。そういうことでよろしいですか、確認で。

○細川国務大臣 今委員が言われたとおりでございます。

○塩川委員 この通知の趣旨が実際に実行されているかどうか、周知されているかどうか、この点検、確認をすることが必要であります。
 実態はどうか。例えば、宮城県の五月十六日付の通知、「民間賃貸住宅借り上げによる応急仮設住宅について」では、「平成二十三年三月十一日から平成二十三年四月三十日までの期間に契約したものについては、平成二十三年五月一日付けで県の契約に切り替え、その後二年間を契約期間とする」としています。つまり、国の通知では三月十一日近くまでさかのぼって対応可能とされていたものを、宮城県は三月分、四月分はさかのぼりませんとしているわけですね。ですから、現地で我が党の県議団などもこの是正を求めてきたわけであります。
 こういう働きかけの中で、その結果、七月七日付で被災三県に厚労省が通知を出したことは承知をしております。その通知では、「被災者が賃貸人に対して家賃等を支払い済みであれば、賃貸人は被災者が支払い済みの家賃等相当額を返還すべきであるが、県、賃貸人、被災者の三者間の承諾が得られれば、賃貸人が被災者に対し、県から当該家賃等相当額を受領する権限を委任することも可能である。」として、つまり、県が被災者に対し家賃の立てかえ分を直接支払うことができるようにする仕組みをつくるということがこの通知の趣旨だと思います。
 しかしながら、そもそも、このような通知を改めて出さなければいけないように、厚労省の通知の趣旨が徹底をされていない。結果として避難者に負担を押しつけるような事態になっているのはなぜなのか、これで改善されるのか、このことをお尋ねしたい。

○細川国務大臣 御指摘の点につきましては、これは厚生労働省といたしましては、最初の被災者が契約をしたときにさかのぼって県と契約をすれば、それについては最終的に国が支払う、こういうことにしたわけでありますけれども、これが周知徹底が不十分であったということもあるかと思いますが、宮城県の方では、住宅のあっせんをされる協会の方なんかとのところでうまく運ばないところがあったようでございまして、その点につきましては、厚生労働省が中に入りまして、今、塩川委員から指摘がありましたような形で、県の方から被災者が支払った分について被災者の皆さんの方に支払う、こういうことを決めまして、そこで、今後はそういうことがないように、きちっといくように私どもの方としても指導もしてまいりたい、このように考えております。
 委員が御指摘になったような、そういう周知徹底の点で足らざるところがあったことについては、これは厚生労働省としても、今回、三者で話し合いもいたしまして、そのような形での通知を出させていただいたところでございます。

○塩川委員 なぜこんな、避難者に負担を押しつけるという仕組みのままでずっと来ているのか、七月までそういうのを引っ張ってきている、なぜなのかというお答えはありませんでした。
 この点について最後にお聞きしますけれども、要するに、この間、宮城県とも話をして、今言ったような整理で、被災者が発災から直後に借りたようなことであれば、さかのぼって県が直接被災者に支払うような仕組みということで、宮城県の方でも同意をされたということだと思います。
 その点で、これは宮城県だけの話じゃないんです。首都圏の各都県も同じような状況なんですよ。例えば埼玉県でも、既に個人で契約をし民間賃貸住宅に入居している世帯について、県名義に置きかえ可能な制度をつくるとしております。今週中にその要綱を出そうという話もされているわけですけれども、中身を聞きましたら、その際には入居時にさかのぼっての置きかえではないとなっているんです。入居時にさかのぼっての置きかえではない、つまり、七月の一定の、これから要綱を発表する時点で切って、それ以前にはさかのぼりませんよというのが埼玉県の制度の中身なんですよ。これが、私聞きましたら、東京都もそうでした。神奈川県もそうでした。千葉県も同じです。みんな遡及しないんですよ。
 だから、厚労省の方は遡及できますよというので、宮城県が三月、四月、遡及しなかったという問題について、ここで是正しましたという話をしておりましたけれども、でも、受け入れ県の首都圏の埼玉も千葉も神奈川も東京も、遡及しないという制度にしているんですよ。
 こういう事態が起こっているということを御存じですか。こういう事態は直ちに是正すべきだと思いますが、その点いかがですか。

○細川国務大臣 厚生労働省といたしましては、そもそもこの問題が発生をいたしましたのは、いろいろな公的な関係の住宅などを提供するということでやっておりましたけれども、しかし、それだけでは足りない、民間からの賃貸住宅を借り上げて、それを仮の住宅として被災者の皆さんに提供する、こういうことが委員も御指摘のように被災者の皆さんにとっていいことだ、こういうことで始めたわけでありました。
 しかし、そのことを決める以前から、既に被災者の皆さんが民間の住宅を借りて住んでおられた県がございました。そこで、そういう方についても、家賃とかあるいは敷金、権利金について、当然これは最終的に国が支払うべきだろうという判断のもとで、厚生労働省としては、こういう場合の契約について、県が契約をするということに切りかえていただいて、そしてさかのぼって適用をしていく、こういうことに決めたわけでございます。
 したがって、その点については、そういうような形の通知などもしたわけでありますけれども、それが徹底していなかったということであれば、それはしっかり先ほどの宮城のような形での対応をとらせていただく、こういうことであります。

○塩川委員 ですから、厚労大臣として実情を承知されていなかったということであるわけで、答弁にありましたように、これについてきちんと、被災三県だけではなくて、受け入れの都道府県、四十四都道府県に対してもしっかりと周知を行う、被災者支援をおくらせるようであれば災害救助制度の仕組みの見直しも必要だということを強調しておくものであります。
 そこで、問題点の二つ目として、民間賃貸住宅の借り上げに当たって、家賃の限度額というのが設定されているわけなんです。例えば埼玉県の場合に、四人家族までなら月六万円となっているんですよね。
 細川大臣、県南で草加、越谷をお考えになっても、例えば四人家族で、では草加で月六万円以内の物件が探せるか。これは実際どうお思いになるか、借りられると思いますか。

○細川国務大臣 家賃というのは、都会と地方の場合、これはまたいろいろ違うだろうと思いますし、あるいは、駅から近いかどうかによって、いろいろと家賃については違うんです。事情が違うということをまず御理解いただきたいと思います。
 そこで、被災三県のところには、前の岩手・宮城内陸地震のときの借り上げの家賃というのが大体六万というようなことから、一応目安については六万というようなことで、そういうことを通知の中には書いたのでありますけれども、しかし、その中に、いろいろな事情によって、地域によって事情は違う、しかも世帯によっては人数だって違うわけでありますから、当然、世帯人数が多ければ、部屋の数だって多くなれば、それは家賃も高くなるわけでありますから、そういうことはすべて柔軟に対応をしてほしい、こういう内容も当然私どもの方としては出させていただいております。
 したがって、しゃくし定規にそのような、六万とかあるいは七万とかいうような具体的な形の設定というのではなくて、柔軟な対応にしていただく、こういうことで私どもは対応をさせていただいているところでございます。

○塩川委員 柔軟に対応してほしいということをおっしゃっておられるのは、通知の趣旨にもありますし、また大臣の答弁でも承知をしております。ただ、実際にはしゃくし定規になっているんですよ。
 そこで、お聞きしますけれども、大臣も引用されました、「岩手・宮城内陸地震の際には一戸当たり月額六万円としたことを参考とされたい。」とありますよね。この参考値の六万円の算出方法はどういうものかというのは御存じですか。

○細川国務大臣 それは、私は詳しくはわかりませんけれども、その当時のいろいろな家賃の情報をもとにしてそういう設定にされたのではないかと思います。

○塩川委員 これは厚労省に確認しましたけれども、岩手・宮城内陸地震において民間借り上げの実績というのは二十三戸なんですよ。これは宮城県の栗原市での事例なんです。この二十三戸の平均額が六万円なんですよ。この月額六万円というのは平均額なんですね。だけれども、埼玉県はこれを限度額、上限額にしているんですよ。
 大臣もおっしゃるように、家賃については、それぞれの地域の実勢の相場もありますし、また家族構成によって家賃の額が当然違ってくる、そういうことへの配慮が必要だ、柔軟に対応してほしいと言っているんだけれども、実際に受け入れの県で見ると、この事例にあるように、平均で出している六万円が限度額になってしまう。家賃の相場も高いであろう埼玉県などで限度額が六万円になってしまうということ自身は、これは不適当ですよね。
 こういう点はしっかりと改めてもらうように、被災者、避難者第一の是正というのをぜひとっていただきたいんですが、いかがですか。

○細川国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、そういう固定的な家賃というのではなくて、柔軟に対応をしていただくように、それは自治体の方にもこちらから申し上げてそのような対応をしていただくように、事務方にも話しておきたいというふうに思います。

○塩川委員 ぜひそういう点で、被災者、避難者第一の施策として生かしていただきたい。
 この厚労省の四月三十日付の通知に引きずられて、家賃相場の高い埼玉県で六万円が設定をされ、しかも参考値、平均額ではなく、限度額となっている。ほかの首都圏の都県も大体同じような話なんですよ。結果として、家族構成を考慮して物件を探しても、限度額を超えると利用が認められない仕組みにもなっているという点も重大なんです。
 さらに、遡及借り上げについても、限度額を超えた物件を避難者が借りた場合にはそもそも対象とならない。六万円を超えたような物件を借りていると、そもそも遡及もしませんよというのが各都県の通知、要綱の中身なんですよ。
 だから、大臣としてそういうことも知らないわけだから、こういう実態をしっかりつかんで、是正をする必要があるんですよ。私は、直接話も聞いて、ヒアリングもした中で言っているわけですから、知らない話をしているわけじゃなくて事実に基づいて言っているわけだから、こういうことをしっかりとやってもらいたいということであります。
 その上で、何でこういう自治体の対応が後手後手というか、どうしても、限度額を定めたり遡及しないとかという話になると、やはり金目の話になってくるんです。災害救助法のスキームの問題点がそこにある。
 そもそも救助法というのが被災県の要請を受けてという仕組みですから、どうしても受け入れ県にしてみると後手後手の対応にならざるを得ない。金目の話についても、被災県と相談しなくちゃいけないという仕組みですよね。同じように、受け入れ県の方としても予算措置が必要ですから、大体、都県、首都圏で見ると、みんな六月の補正予算待ちなんですよ。補正予算でお金を組んで、そこからスタートですから、この七月、八月とかに実際制度を始めるというのが首都圏の都県の実情だということもしっかり見ていただきたい。
 この点については福島県などが要望も出しているわけですけれども、そもそも、県として、全国的な広域応援や被災者受け入れが全国に広がっている状況を踏まえ、災害救助費用については、応援自治体が被災自治体に求償するのではなくて、応援自治体が直接国に請求する仕組みをつくってくれと。これは知事会などもそういう趣旨の要望が出ているということがあるわけですから、こういった見直しをぜひやっていただきたい。
 この点について厚生労働大臣と復興担当大臣で一言ずついただいて、終わりにします。

○黄川田委員長 塩川委員の質疑時間が終えていますので、簡潔明瞭にお願いします。

○細川国務大臣 今委員が御指摘の点を踏まえまして私どもが考えましたのは、被災県への求償手続、これは大変な膨大な事務量になるだろう、こういうことも考えまして、応援をした都府県からの請求につきましては、まず厚生労働省の方に請求をしていただく、厚生労働省がその求償の代行をして、そこで書類などの整理もきちっとして被災県の方に請求をしていく、こういう手続をするということを決定させていただいたところでございます。
 したがって、今、塩川委員が言われました点については、代行をするということで、その方に近づくものだというふうに思っております。

○平野国務大臣 厚労大臣が答えたとおりだと思います。

○塩川委員 細川大臣の答弁というのは、事務手続を厚労省が代行するだけなんですよ。金の話は被災県を通してですから、そこはやはり大もとから改めるということを改めて要求しまして、終わります。