<第177通常国会 2011年07月14日 総務委員会 23号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 NHK決算に関連して質問いたします。
 最初に、七月二十四日、アナログ放送が終了するに当たりまして、テレビが見られなくなる方を出さない、いわばテレビ難民をつくらないという立場で質問をいたします。
 地上波テレビ放送については、大震災、原発事故の岩手、宮城、福島の東北三県を除き、アナログ放送が七月二十四日に終了し、デジタル放送のみとなります。今、アナログテレビの画面の左下には、アナログ放送終了まであと九日という、アナログ終了を知らせるカウントダウンの字幕が表示されています。この表示を見て、まだアナログのテレビでごらんになっている方は、煩わしい、テレビが見づらい、やめてくれ、こういう声が殺到しております。本当にやめてもらいたい。
 一方、アナログテレビでデジタル放送が視聴できるようにとチューナーを買いに走ったけれども、電気店や家電量販店を五軒回っても、どこも在庫がない、入荷の見通しもないと言われているということであります。そもそも経済的な理由で準備ができないという方も少なくありません。アナログ停波を目前にして、準備が間に合わないという声が広がっています。
 そこで、NHKの松本会長にお尋ねをいたします。
 松本会長は七月七日の記者会見で、地デジ対応については一〇〇%は難しいと述べておられます。そこでお聞きしますが、七月二十四日までに地デジに対応できない世帯数は幾つぐらいで、地デジに対応できないテレビの台数がどのぐらいに上るということを前提に一〇〇%は難しいとおっしゃっておられたんでしょうか。

○松本参考人 お答えいたします。
 地デジ対策には、私たち送信側の設備というものがあります。これはデジタルに切りかえてやっていきますが、これはハードですから、計画的にずっとやっていきますから一〇〇%できます。もう一つ、そちらが変わっても、テレビをごらんになる受信者側の方がその対応の措置を御自分でやっていただかないと、そういうものが対応できない、そういう格好になっているんですね。
 先ほど一〇〇%の話をおっしゃいましたけれども、私が申し上げたのは、私は前任が鉄道事業者ですから、このデジタル移行というのは大ダイヤ改正と一緒だというふうに思うわけですね。ところが、鉄道の場合はダイヤ改正をやりますと、きょうダイヤ改正をするならば、きょうの零時にいろいろなものがばたっと変わるんですね。それは、前段でコンピューター上でも走らせますし、すべてが一〇〇%できるという体制で移行する。
 ところが、そういうことから比べると、このデジタル化というのは先ほどの送信側、受信側の問題があって、性格の問題として、どんなに一生懸命やっても、先ほど表示の問題がありましたけれども、あれで表示がうるさいという方は対応されているんですね、そうじゃない方がどこかにおられるのではないかという意味で、性格の違うものだということで、一〇〇%は受信者側の問題で難しいのではないかという感想を述べた、こういうことですね。
 しかし、そういう中で、受信者対策ということで、デジサポという機関も、それからNHKも支援ということで今一緒にやっております。そういう意味では、先ほどのお電話も、最初は集中しましたけれども、それが日によって半分になる、またその半分になるということでだんだん収束している、こういうふうなこともありますし、いろいろなことが功を奏して、いかに二十四日までにミニマイズできるか、こういう問題だと思います。ミニマイズしてもそういうことが出た場合には、その方々にまた対応していく、それを早くやる、こういうことでデジタル化が完成していくのだろう、こういうふうに思っております。

○塩川委員 会長の方は、つまり、地デジに対応する上では送信側の準備と受信側の準備がありますと。
 送信側の方は一〇〇%できると言いましたけれども、しかし、実際はそうじゃないんですよ。送信側の放送事業者にしてみても、アナログ放送が届く範囲をカバーするのが実際にはできなくて、その範囲について、新たな難視ということで衛星放送で対応する。地上波の放送で対応するというのはできていないんです。そういう点を見過ごしてはいけない。
 何よりも、受信者側、視聴者側の対応ができていないということが今の事態を深刻にしているわけで、テレビ局の都合だけで一〇〇%ができるということにならないのは当然のことであります。そういう点でも、一〇〇%は難しいというのは、受信者側の対応ができないということを述べておられたわけであります。
 そこで、片山大臣にお尋ねをしますが、七月二十四日以降、このように受信者側の準備が整わない、結果としてテレビが見られない世帯が生まれる、そういった場合にどうするお考えなのか、お尋ねします。

○片山国務大臣 そういうことができる限り少なくなるようにということで今関係者が努力しているわけでありまして、先ほど塩川議員が、もうやめてくれ、うるさいとおっしゃったテロップといいますかメッセージの表示も、そういうことを極力なくすためにお伝えしているわけでありまして、ぜひ、残された期間に、まだ対応できていない方々については御連絡をいただきたい。その御連絡をいただくところがコールセンターであったり、それから地デジ臨時相談コーナーを設けたりしておりますので、そういうところにぜひ早目に対応していただきたいということであります。
 その上で、どうしても対応できないということがその当日生まれました場合は、またそこを通じまして、それぞれ、チューナーの支援の助成を継続することでありますとかそういうことをやっておりますので、決められた措置を、できるだけ早く対応していただくとともに、こちら側も対応していきたいと思っております。

○塩川委員 総務省の方ではこういった、実際には準備が間に合わない世帯があるということを前提としておられて、例えば、集合住宅で大家さんの対応が間に合わないという方がいらっしゃるとか、あるいはビル陰などの映りが悪い地域についての対策が間に合わないだとか、あるいはアンテナをかえようと思ってもその準備、工事が間に合わないとか、そういう世帯があるということを前提として、衛星放送で見てもらって構いませんということを言っているんですよ。だけれども、その衛星放送のアンテナは自分で御用意くださいということですから、その準備の工事も間に合わないということであれば、こういった対策を一つ一つ見ても、期限に間に合わなくなるということを意味しているということでもあります。
 実際、準備をしようと思っても、チューナーがないとかという状況が今広がっているわけですから、だとすれば、こういったアンテナ工事が間に合わないとか、チューナーを購入できないという声が多数寄せられている中で、準備が間に合わない世帯が出ることがはっきり見越せるわけですから、このアナログ放送の停止、終了、これを変更して、引き続き延長する、継続をする、こういうことを考えるべきではありませんか。

○片山国務大臣 これはもうさんざん議論をして、経緯を踏まえて現行法が停波の期限というものをつくっているわけでありますから、この法律に従って、我々は、その残された期間内を一生懸命努力するということであります。

○塩川委員 いや、法律よりも視聴者の現状ですよ。テレビ難民が生まれないようにするという立場で、私は一貫してこの法律の改正も求めてまいりました。まあ今の時点で、法改正という準備の時期はあります。であれば、試験放送という形を含めて、今のデジタル放送と同時にアナログ放送も継続をするということであってもそれは十分に可能だ、やりようは幾らでもある、こういう立場で、アナログ放送の停波期限の延長ということこそ行うべきだ。実際にアメリカではアナログの停波を延期しておりますし、韓国、イタリアでも延期をしているわけであります。
 NHKには、放送法に基づいて、あまねく全国に放送を届けるという義務があります。国にはその義務をNHKにしっかりと果たさせる責務があります。そういう点でも、チューナー配付やアンテナ改修などの支援策をさらに拡充していく。NHK受信料免除、生活保護などの世帯についてはアンテナを含めて対応しますけれども、市町村民税非課税世帯についての支援策はチューナーを配るだけなんですよ。アンテナの改修は含まれていません。首都圏のように、VHFのアンテナをUHFにかえるということが必要な世帯は対応できないわけですから、支援策も極めて不十分だ。
 こういう支援策の拡充とともに、アナログ放送の停波を延期する、引き続き継続するという選択肢を持って、テレビ難民を絶対につくらないという立場で臨むことを国とNHKに強く求めるものであります。
 次に質問したいのが、ケーブルテレビへの切りかえによって視聴者の負担が拡大をしているという問題について、三月のNHKの予算案審議でも質問しました長崎県五島市久賀島を例に質問をしたい。
 NHKは、地デジ化に当たって、視聴者がアンテナで地デジテレビを視聴できるように、デジタル用の中継局を全国に設置してまいりました。しかし、放送事業者が地元自治体と協議をして、ケーブルテレビでテレビ放送を受信すると決めた地域では、NHKなど放送事業者は中継局の設置を行っておりません。つまり、アンテナの受信ではなくて、ケーブルテレビ会社と契約をしてテレビを視聴することになります。このような受信方法の変更がきちんと住民の方に説明をされていないという実情があります。
 長崎県の離島であります五島列島、その真ん中から南部分に当たります五島市に、久賀島という島がございます。二百六十四世帯、四百三十三人、高齢化率が五二・四%という島であります。これまでアナログ用の中継局がありましたが、ケーブルテレビ対応となり、NHKはデジタル用の中継局を建設しておりません。これまで五島市久賀島では、一部にアンテナで受信している世帯もありましたが、多くの世帯はケーブルテレビに加入するという経過がありました。
 このケーブルテレビ放送は、お隣の福江島から久賀島に、無線の設備を使って放送を届けています。この無線を経由するということが天候の影響を受けてしまう。台風ですとか、雨、風、霧などの悪天候の場合に、無線の電波が乱れて放送に影響が出ます。アナログ放送のときは、画像が乱れた場合でも辛うじて見ることができたわけですけれども、デジタル電波の場合には、その性格上、電波がきちんと届かないと画面が全く見られないということが生まれているわけであります。
 久賀島の住民の方にアンケートの御協力をいただきました。
 天候のよい日は全く問題ありませんが、風、雨のときは頻繁に全く映らない状況です。テレビは緊急時の情報手段ですので、緊急時のためにどうにかしてもらいたい。こういう声や、私はアンテナで見ていたが、NHKがケーブルに変更してくれないかと言ってきたので変更したところ、アンテナよりも映りが悪い。苦情を言っても何一つ改善できていない。雨、風の日は映らないので、いつも嫌になっています。映りが悪いので、受信料はちゃんと映るようになってから払いたい。こういう声が寄せられているわけであります。
 会長にお尋ねしますけれども、災害時のライフラインと言われるのが地上波テレビ放送なのに、肝心の悪天候のときにテレビが映らない、こういう状況を放置したままでいいのか。この点についてお尋ねします。

○永井参考人 技術の方の関係もありますので、私からお答えさせていただきます。
 御指摘の問題については、先般、六月二十九日付で、当該ケーブルテレビ社から、長崎、地元の地上デジタル放送推進協議会に対して共同調査の依頼がなされました。今月から調査を開始しまして、その原因になっている電波の強さがどういうものなのかという調査を一緒にしようということで、測定を行うことにしております。
 ケーブルテレビでございますので、テレビ放送を再送信する際の品質についても、元来ケーブルテレビ事業者が確保するものと考えておりますが、地デジ化を推進する立場ということがありますので、当該ケーブルテレビ社につきましても、これまでも技術情報の提供等々、いろいろ協力を行ってきました。
 今行っている調査の結果も見て、技術的な相談があればNHKとしてもいろいろ対応していきたいというふうに考えております。

○塩川委員 調査は結構なんですけれども、映りが悪いのは全然変わっていないんですよ。
 品質の保証と言いました。要するに、NHKが視聴者にきちんとした映像を届けること自身がNHKの責任なんでしょう。そのために品質の保証を技術基準でNHK自身が決めているわけですよ。番組について放送をケーブルテレビ会社に委託するんだったら、その委託先の番組の放送がしっかりと品質が保証されるようにする責任をNHKが持っているんですよ。天候が悪いときにテレビの映りが悪い、肝心の悪天候についての気象情報が見られなくなる、こんなことを放置していいのかということが問われているんですよ。会長にお尋ねしますけれども、こういった事態についてNHKが真剣に対応すべきだ。
 あわせて、もう一つ伺いたいのが経済的負担の問題です。
 アンケートでも、わずかな年金の中でNHKの受信料とケーブルテレビ使用料を支払っているのに、もう少しちゃんとした映像を提供してもらいたい。NHKの受信料を納めているのにちゃんと見られないのはおかしい、ちゃんと映るようになってから納めたい。これが視聴者の声ですよ。
 視聴者にしてみれば、NHKの受信料に加えて、ケーブルテレビの月額の利用料金の負担もふえているわけです。こういう世帯にまともに映像が届けられないということをそのままにしていいのか。テレビの映りが悪いのに、NHKは受信料をそのまま取り続けるのか。この点をお伺いしたい。

○松本参考人 お答えいたします。
 先ほどの共同調査がなされるということで、その結果を見て、技術的な相談があればNHKとしても対応していく、こういうことであります。
 また、経済的な面では、ケーブルテレビへの移行については協会として助成を行う一方、利用料金の低廉化については国からも働きかけを行っている、こういうふうに聞いております。
 繰り返しになりますが、電波の強さ等の測定を行う調査結果も見まして、技術的な相談に応じるなど協力を継続してまいりたい、こういうふうに思っております。

○塩川委員 映りが悪いのは、人任せじゃなくてNHKの責任で解消する、国にしっかり協力を求めて。こういうことでぜひ臨んでいただきたい。
 久賀島で、悪天候になるとテレビが映らなくなるという問題があることは、これは絶対放置できない。同じようなことが全国にあるかもしれない、こういう立場で臨むことが必要で、あまねく全国に放送を届ける義務のある、また災害時のライフラインともなっているNHKの地上波放送を提供するという責任が問われているわけであります。
 この五島市の場合では、久賀島からさらに北にある奈留島で、漁業が盛んなところですけれども、今までは中継局から電波が飛んでいましたから、漁船でもテレビが見られたんですね。気象情報を見ていた。それが、ケーブルテレビになるために見られなくなってしまった。貴重な気象情報がテレビから提供されなくなる。こういうことについて、ケーブルテレビ導入の際に国からもNHKからも何の説明もなかった、これが実態であります。現状をどうにかしてくれという陳情書が議会にも出され、採択もされるという状況になっております。
 私は、最後に大臣に伺いますけれども、ケーブルテレビ対応、もちろんケーブルテレビのメリットはあります。多様な放送を提供することもある、通信と複合的にやることもある。しかし放送を届けるという点で、ケーブル対応によって、結果として、NHKの設備投資は軽減されたかもしれませんが、視聴者は受信料に加えてケーブルテレビ利用料も払うことで経済的な負担が拡大をし、また、漁船のように、これまで受けていたサービスが受けられなくなるというサービス後退も招いているわけであります。ケーブル対応によって、結果として、NHKのあまねく全国に放送を届ける義務が後退しているということは極めて重大であります。
 大臣として、NHKにユニバーサルサービス義務を果たさせる立場として、こういう事態にどう対応されるのかを伺って、質問を終わります。

○片山国務大臣 先般来お話のありますこの久賀島のケースというのは、特殊事情もあるようであります。そう伺っております。
 先ほど会長の方からお話がありましたように、NHKと地元のケーブルテレビとの間で共同して調査をするということも行われておりますので、その結果を踏まえて対応していただきたいと思います。
 また、別途、無線以外の伝送手段についても、地元の市も含んでいろいろな協議が行われていると伺っておりまして、これには総務省の地方機関の方も協力をしているところでありますが、現時点でなかなか関係者の合意が得られていないということでありますけれども、関係者の皆さんの合意が得られることによって、視聴者の皆さんに支障がないように、総務省としても引き続きよく目配りをしていきたいと思います。

○塩川委員 ケーブルテレビ加入によるテレビ視聴によっての負担を可能な限り軽減する、解消する、このことを強く求めて、質問を終わります。