<第177通常国会 2011年07月20日 予算委員会 27号>



○塩川委員 おはようございます。日本共産党の塩川鉄也でございます。
 東日本大震災から四カ月がたちました。被災地の多くは漁業、水産業の町でございます。被災地の復旧復興と漁業、水産業の復旧復興は切り離せません。
 そこで、漁業、水産業の復旧について今何が必要か、最初に質問をいたします。
 我が党の二次補正の本会議質問で、宮本議員は、漁業、水産業の再開、復興には、海の瓦れき撤去を優先しながら、ワカメ、昆布、カキ、アキサケなどの生産適期、いわゆるしゅんに合わせた漁船、漁具の確保、養殖施設の復旧、魚市場の再開、冷蔵施設、水産加工場などの一体的な復旧についての支援策が不可欠と提起をいたしました。
 そこで、最初に、海の瓦れきのことをお尋ねしますが、航路の確保とともに、養殖にとっては海の瓦れき撤去が最優先でありますが、これはいつまでに終わらせるおつもりなのか、この点についてお答え願いたい。

○鹿野国務大臣 瓦れきの撤去は、まず航路を確保する、そして定置網等々のためにも急がなきゃならない。あるいはまた養殖を進める上におきましても、当然早急に行っていかなきゃならない、こういうことでありまして、それぞれの漁港におきましても今取り組んでもらっておるところでございますけれども、できるだけ早く復旧していかなきゃならない、瓦れき処理をやっていかなきゃならない、こういうふうな考え方で、水産庁、私どもといたしましても取り組ませていただいているところでございます。

○塩川委員 できるだけ早くというお話ですけれども、しかし、現場にしてみれば、まさに目の前にやるべきことがあるという状況になっております。
 先日訪問いたしました被災地の岩手県山田町のお話をしますと、漁業、水産業で生計を立てている方々が八割に上ります。カキ、ホタテの養殖が盛んで、カキ養殖は全国有数の産地でございます。現状は、岸壁が壊れたままで水揚げもできませんし、いかだなどの養殖施設も壊滅で、海の瓦れきの除去や漁具の購入などが必要なのに、いまだに整っていない。カキの場合ですと、このままでは二年、三年収入がなくなる。そういう長いサイクルで育て上げていく、そういう漁業に従事している方々が長期間無収入のまま置かれることになりかねない。その点で、依然として瓦れき撤去は大きな課題であり、真っ先に解決をする、そのために全力を挙げていただきたい。
 今、現地では、せめて十月のアキサケ、この定置網漁の再開の時期を逃さないようにと全力を挙げておられます。アキサケといえば九月下旬から十月にかけて準備するというように、水産資源には年間を通じて生産の適期、いわばしゅんがあると言われております。農水大臣御自身もこの生産適期、よく御存じだと思うんですが、このことについて、一言御発言いただけますか。

○鹿野国務大臣 今先生から御指摘のあった生産適期、こういうことでございますが、被災を受けた岩手県を初めとするところの三陸地域におきましては、ワカメ養殖あるいはカキ養殖は夏場に種つけをする、こういうふうな必要があるわけでございます。アキサケ漁とかあるいはサンマ漁は十月に盛漁期を迎える、こういうことでございますので、このような漁業やあるいは養殖業の生産適期というふうなものを十分意識しながら今後の復旧に対応していかなきゃならない、このように考えておるところでございます。

○塩川委員 今大臣から御答弁ございましたように、カキ、ワカメは夏場、アキサケ、サンマは十月と言われるように、それぞれの時期を逃したら一年間を棒に振ってしまうということであります。
 さきにも述べたように、アキサケの定置網漁の再開に向けて現場で必要となっていることは何か。現地でお話を伺いますと、以下のような対応が一連の作業として必要だとお話しされました。
 地震、津波で崩壊をし、その上、七十センチ地盤沈下している、こういった岸壁のかさ上げも必要ですし、船の係留場所の確保も必要でございます。魚市場の復旧も必要だ。製氷所の復旧も必要だ。重油スタンドの復旧も必要で、魚市場での買い受け人の方々の待機場所などについても当然設けなければならない。魚の前処理施設、はらわたを取るなどのような、そういう施設についても必要となってくる。また、トラックの重さをはかるはかり、トラックスケール、こういったものも当然備えていかなければならない。冷凍冷蔵庫は欠かせません。
 これらが一体的に機能して初めてアキサケを水揚げできる。どれか一つが欠けても地域産業のサイクルは回らない。この点では大臣も同じ認識でしょうか。

○鹿野国務大臣 まさしく、魚をとるというふうなこと、そして、そのとった魚は水揚げされるわけでありますけれども、当然、製氷なり、あるいは流通加工、そういう形が一体的な形で取り組んでいかなきゃならない、これは先生おっしゃるとおりでございます。

○塩川委員 今御答弁あったように、一連の産業インフラなどの一体的な復旧というのが必要だ、そういう要望というのが現地から出されているわけであります。このような産業インフラの一体的な早期復旧という被災地からの要望に対し、国はこの間どのような支援対策をとってきたんでしょうか。御説明いただけますか。

○鹿野国務大臣 先生からお話ありましたアキサケの件でございますけれども、宮古の魚市場におきましては、既に四月に一部再開をいたしておるわけでございます。
 とにかく、お話のとおりに、このような一体的な取り組みというようなことを考えたときには、一次補正予算におきましては、約二千二億円の今年度の予算を上回る二千百五十三億円を計上いたしまして、漁港等の災害復旧や、あるいは瓦れき、あるいは共同利用の漁船や定置網の再建、そういう問題に取り組んできたところでございますけれども、この二次補正におきましては、特に、御指摘のとおりに、秋の本格的な漁業の再開に向けて、機器等の整備事業について、製氷施設の修繕等も支援の対象といたしまして、百九十三億円を計上いたしたところでございます。
 このように、一次補正、二次補正によりまして、漁業と水産加工・流通業の一体的な再生に向けて取り組んでいかなきゃならない、このように考えておるところでございます。

○塩川委員 確かに、一定の新たな支援策がとられているわけであります。ただし、一体的な早期復旧の事業を行おうと思っても、漁協の負担、個人負担、事業者負担があることが問題となっている。そこが問われている。
 例えば、今大臣も御説明いただいたような、機器等の整備事業というのがございました。水産業共同利用施設復旧支援事業というのがございます。これは、漁協などが所有する水産業の共同利用施設をそのまま復旧する、原形復旧をする、あるいはその機能を復旧する、このために必要不可欠な機器などの整備を支援するものであります。
 要するに、解体して新設をする、こんなんじゃその時期に間に合わないという声が出ているわけで、とにかく修繕して、今あるものを使えるようにしたいという要望として挙げられていた応急的な修繕に対する事業ですけれども、この事業についての事業者負担というのはどのぐらいなんでしょうか。

○鹿野国務大臣 三分の一というふうなことになるわけでございます。

○塩川委員 三分の一、もう一回ちょっと確認して、それでよろしいですか、三分の一で。(鹿野国務大臣「はい」と呼ぶ)失礼。
 事業者の負担が三分の一、国が三分の二を出すということでありますけれども、これは、岩手、宮城、福島、大変被害の大きかった被災県においての措置というふうに承知をしておりますけれども、この三分の一の負担というのは事業者の皆さんにとっても大変重いということを言わざるを得ません。こういった一つ一つの事業者の負担も少なくない。これを全部積み上げていけばどれだけ大きな負担になるのか、膨大な経済的な負担となる、ここが一番問題となっているわけであります。
 産業インフラの一体的な早期復旧のための事業を行おうと思っても、漁協負担、個人負担の大きさが現地において早期復旧の妨げとなっている、これが実態じゃありませんか。大臣の認識を伺いたい。

○鹿野国務大臣 今申し上げますとおりに、国が三分の一、県が三分の一、そして事業者が三分の一、こういうふうなことになるわけでございますけれども、この三分の一におきましては、当然のことながら、地方財政の措置においてできるだけ負担を軽減していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
 また、漁船等々につきましては、残存保険というふうなものは支払いが平均二二%くらい、こういうことでございますので、そういうもので、共同でということになりましたらば、ほとんど事業者の負担というものも少なくなるわけでございまして、また、一時的に漁業組合が、個人の場合は保険料というふうなものを漁業組合の方に提供してもらって、そして一時的にリース方式でもというようなことでございますので、今後、できるだけこの事業者負担というものを少なくするというふうなことの考え方で取り組んでいかなきゃならないと思っているところでございます。

○塩川委員 今紹介をしました水産業共同利用施設復旧支援事業というのは、国の補助率が三分の二、事業者負担が三分の一。この三分の一の負担が非常に重い。それ以外のものも含めて、どんどんどんどん積み上がっていく。ですから、ここに地方自治体の地方財政措置云々の話もありますけれども、地方自治体が肩がわりしたって、その地方自治体が財政が深刻なんですから、そちらにツケ回しをしても問題の解決にはならないということであります。
 この点でも、膨大な地元の負担、これをどうするかということが一番問われている問題で、一体的な早期復旧が必要であるにもかかわらず経費がかさんでいく、これが今の事態であります。だからこそ、漁業関係者は産業インフラの一体的な早期復旧のために国の全面的な財政支援を求めてきたんじゃないでしょうか。
 例えば、今国会、衆議院の復興特別委員会で五月二十五日に参考人質疑がございました。その場に業界団体の方がいらっしゃった。岩手の漁連の会長さん、大井会長さん、宮古の漁協の組合長さんでもございますが、岩手漁連の会長は、漁業、流通加工業の一体的な復旧について訴えられました。「間もなくカツオの水揚げ、そしてその後にはサンマ、アキサケといった三陸の主要な水産物の漁期を迎えますが、目前に迫ったこれらの漁期までに、この一連の産業サイクルすべてを自助努力で立ち上げることは非常に難しい状況であり、国の全面的な財政的支援のもとに、これらの一体的な早期復旧が図られることを強く望んでいる」、このように述べておられました。五月二十五日ですから、もう二カ月も前の話であります。この声にこたえた措置が今回の二次補正などで行われているのか、これが問われているんじゃないでしょうか。
 総理にお尋ねします。漁期に間に合わせるために産業インフラの一体的な早期復旧の対策がとれるように漁業関係者、地方、被災地が訴えておられる。国の全面的な財政支援によって現場がすぐ活用できる資金を用意する、こういう手だてこそ今直ちに行うべきではありませんか。

○野田国務大臣 農水省とよく検討させていただきたいというふうに思います。

○塩川委員 今さら検討なんて時期じゃないんですよ、現場は深刻なんだから。
 総理にお尋ねしますけれども、こういった事業者負担が産業インフラの一体的な復旧となるとどんどん積み上がっていく。その積み上がった負担が余りにも大きいために、手も出なくなってくる、再生がおくれていく。こういう状況のときに、現地が要望している国の全面的な財政支援でその分についてもきちんと国が見ますよ、こういうことこそ今総理が決断すべきことではありませんか。

○鹿野国務大臣 先ほど申し上げましたとおりに、この一次補正、二次補正ということの中で、激甚災害法に基づく補助率のかさ上げや水産業の共同利用施設の機器等の整備について、被害の大きい地域に向けて高い補助率を適用するなど、いろいろ具体的なことをやってきたところでございますけれども、どうしても、今御指摘の、その上でもなお生じる地方自治体の負担等につきましても、今日、私どもといたしましては、地方財政措置の適切なる措置が講ぜられるように、今取り組ませていただいているところでございます。

○塩川委員 総理にお答えいただきたい。
 今、激甚の話もされましたけれども、これ自身だって地元の負担は十分の一とかあるわけでしょう。しかも、激甚災害の一連のスキームというのは、解体して新設をするという事業なんですよ。これでは間尺に合わないから新たな支援事業をつくったんじゃないですか。しかし、その事業においても三分の一の地元負担、事業者負担がある。これが全部積み上がっていくから、どうしても負担が大きくて身動きがとれなくなっているというのが被災地なんじゃないですか。そのときに、国がしっかりとその分も見ますよと言えばいいんですよ。
 総理、その点をはっきりお答えいただきたい。

○菅内閣総理大臣 今、塩川議員の方からの問題提起あるいは問題点の指摘、そのことは私もそのとおりだと思います。つまりは、漁業は、魚をとってくればいいということではなくて、とってきた魚が、ちゃんと氷があり、あるいは加工があり、そして流通に回って初めて仕事として成立する。そういう意味で、そのインフラを一体的に復旧する必要があるということは、私もおっしゃるとおりだと思っております。
 私も、せんだって釜石に行ったときに、特に氷のことを言われまして、これは二次補正の中の、二重ローンにならないようにという仕組みの中に盛り込む形で、一部、製氷等について二次補正に取り入れることに現在なっております。
 今、鹿野大臣の方から、一次補正、二次補正のかさ上げ等の措置についても御説明をいただきましたけれども、さらに、それによっても地方の負担が、どの部分が残るのかをもう一度精査して、基本的に、おっしゃったように、しゅんと言われるその時期までにきちんと間に合うものについては、財政的な面でそれがおくれることがないように措置をいかにすればできるか、農水大臣ともさらに詰めてもらいたいということを要請していきたいと思っております。

○塩川委員 さらに詰めてもらう、そういう時期じゃないんですよ。しゅんに間に合うようにとか言いますけれども、まさに目の前に来ている。今手だてをとらなくてはいけないんですよ。これから相談しますなんて答弁で、どうして地元が納得できますか。
 二次補正は、当面の復旧対策に万全を期すという予算と言われているわけですよね。復旧対策に万全を期すというんだったら、まさにこういった一体的な早期復旧のための措置こそ行うべきだ。
 大体、こういう二次補正で、万全を期す予算と言っているのに、二カ月前から指摘をされている一体的な早期復旧の対策そのものがとられていない、このことが極めて重大だ。だから、何カ月たっても復旧が進まない。現地では、若い人たちが町を出ていく、町の活気が失われていく、このことに本当に心を痛めているときじゃありませんか。
 この点で、被災者の皆さんの声を考えたときに、総理にお尋ねしますが、今回の二次補正予算のその大半は予備費であります。八千億円の予備費です。予備費に充てることになっているこの予算、八千億円を使えばすぐにでもできることじゃありませんか。やれる、すぐやるとお答えください。

○菅内閣総理大臣 地方自治体の負担について、地方財政措置を適切に講じることにより、地方自治体の財政負担の軽減に努めているところであります。
 その中で、今も申し上げましたが、今御指摘の問題を含めて、確かに予備費を復旧復興に充てるという枠の中で積んでありますので、地方財政措置を適切に講じるという考え方の中で、どのような対応がより効果的か、総務大臣や農水大臣にさらなる検討をお願いしておきたいと思います。

○塩川委員 地方財政措置をとるのは当然ですけれども、予備費を事業者の負担軽減のために今すぐ使います、そう一言言ってもらえばいいんですけれども、なぜ言えないんですか。ぜひ言っていただきたい。被災地の声にこたえていただきたい。改めてお答えください。

○菅内閣総理大臣 今申し上げたのは、今御指摘のことを含めて、担当する農水大臣、あるいは地方財政ということで総務大臣に、今委員が指摘をされたことを実現するためにどういうやり方が一番適切なのかを検討させたい、そういう趣旨でありますので、ぜひそうした検討をして、予備費もありますので、必要であればそれできちんと対応することにさせていきたいと思っております。

○塩川委員 直ちに検討して措置をする、一体的な早期復旧となる支援策をしっかりととる、このことを強く求めておくものであります。
 次に、まちづくりの問題についてお尋ねをいたします。これは被災地共通の課題でございます。
 我が党の宮本議員が本会議で指摘をしていますように、被災地の復興は住民が決めるというのが大原則であります。住民が話し合って、その合意を踏まえ決めることが基本だ。
 今、被災自治体の復興計画などの議論を伺いますと、まちづくりで一番大切なことは、二度と津波による犠牲者を出さないことだ、この声であります。これにこたえるような復興計画をつくりたい。
 そういう中で、高台移転についても、その選択肢の一つとして挙げられています。住民の方々が話し合って、合意の中で高台移転といったときに、どういう支援を行っていくのかということが今問われております。作業場は海の近くで、生活の場は高台ですとか、かさ上げ、盛り土をして、そこに家を建てるとか、現地では、皆さん悩みながらこういう御相談をしているわけであります。高台移転を希望している住民、集落の方々に対して国がどうこたえるのか、これが問われております。
 そこで、総理にお尋ねしますが、総理も高台移転ということは早い時期からおっしゃっておられましたが、この高台移転を希望している集落の皆さんに対して、どうおこたえするつもりでしょうか。今の総理のお考えをお聞かせください。

○大畠国務大臣 塩川議員の御質問に、まず国交省としてお答えを申し上げたいと思います。
 今回の東日本大震災の状況、地域の状況の中で、どういう形で町の復興を図るか、被災地の各自治体の中でも協議会等をつくって、今御指摘のように、あのような津波が起こったとしても命を守れる町をつくろうということで、高台移転ということがいろいろと検討をされております。その一つの事業というのが防災集団移転促進事業でございます。
 この防災集団移転促進事業の中身は、災害時等に行われる事業の性格にかんがみて、国庫補助率を四分の三、国が四分の三を負担する、加えて、市町村等の負担分についても、特別交付税等の地方財政措置が講じられることから、実質的には国が九四%の負担を行う、こういうことになっております。
 今回の災害の実態から見れば、被害が広範囲にわたっておりまして、復興に向けて、この防災集団移転促進事業というものが中核となって稼働するものと考えておりますが、国交省としては、御指摘のように、地域の方々が命を守ることができるようなまちづくりに資するよう、今後とも自治体の負担軽減に向けて努力をしてまいりたいと考えているところであります。

○塩川委員 今、高台移転事業としての防災集団移転促進事業の御説明がございました。地方の負担が四分の一、それについて地方財政措置をとるというお話ですけれども、あれもこれも地方財政措置、自治体の負担というのは総額にすれば大変大きなものになっていく、これ自身が事業を始めることをちゅうちょせざるを得ないような状況を生んでいる、この認識が必要だということであります。何よりもやはり、国が責任を持って財政は見る、こういうことを求めている地方の声は強いというのが現状であります。
 その点では、総理、ぜひお答えいただきたいんですが、私がお話を伺った岩手県山田町の沼崎町長さんは、高台移転せざるを得ないとしても、先の見通しがあってまちづくりができるんだ、国がどこまでやるか見えないと町の復興計画も絵にかいたもちになると述べておられました。総理として、絵にかいたもちにならないような、国としてのしっかりとした支援策、財政措置をお答えいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○平野国務大臣 今御指摘のあった山田町を含めまして、各市町村、復興計画をつくっております。市町村によってはかなり進んだ段階まで行きまして、用地交渉まで入っているというような町村もございまして、その計画を含めましてどういう助成制度があるか、それをセットでこれから御説明をして、さまざまな意見交換を行うという作業に今入りつつあります。
 その意見交換の中でさまざまな御要望をいただくと思いますけれども、そういった御要望も踏まえながら、市町村の立てた復興計画、それを確実に実現させるような方策を用意するということは大事なことだと思います。
 ただ、先ほど来委員が御指摘されておりますけれども、市町村のあるいは自治体の地方財政措置、地方財政措置、それがたまると自治体がやっていけなくなるというような御発言がございますが、この内閣は、そういうことにならないように地方財政をしっかりする、そこは責任を持ってやるということについては、私も各大臣も、自治体に行ってそういう御意見をいただいたときには、きちんとお答えをしております。
 少なくとも、今回の被災の中において、市町村、自治体がふえて、その自治体が例えば再建団体になる、ほかの仕事ができなくなる、こういったことは、絶対にならないようにするということでございます。

○塩川委員 地方財政措置を将来にわたってしっかりやるという保証がどこまであるのか。かつて、小泉内閣のときの三位一体改革で地方交付税がばっさりと削られた。その痛みというのを骨身に感じているのが地方自治体なんですよ。
 そういったことが繰り返されないことが将来にわたってないのかというその保証もないから皆さんが悩んでおられるわけで、先ほど言いましたように、国がどこまでやるか見えないと町の復興計画も絵にかいたもちになるという現地の声、この点で出されているのが、津波で被災した土地は震災前の価格で国が買い上げてほしいという要望があります。この点でも国の財政支援の姿勢が見えてまいりません。この点について、お答えいただけますか。

○平野国務大臣 今の防災集団移転事業においても、不要になった土地、使えなくなった土地等々についての買い上げ制度はございます。ただ、今回の場合は、その範囲がかなり広範囲に及ぶ可能性もあります。したがいまして、どういう土地をどういう場合にどういう単価で買うか、こういったこともこれから各自治体とのいろいろなやりとりの中で今後詰めていく制度だと考えております。
 ただ、土地の買い取り制度については、復興会議からさまざまな、ちょっとその買い取りに係る弊害もあるというようなことも指摘されていることにも十分配慮しなければならないというふうに思っております。

○塩川委員 今、平野大臣が御答弁されたように、復興構想会議の提言は非常に消極的なんですよ。土地買い上げについて、復興構想会議の提言がどういうふうに書いているか。
 「必要な公的事業として土地を買収する場合を除き、公的主体が被災地の土地を買い上げることには、公的負担で利用価値の乏しくなった土地を取得するという難点と、被災者が他の地域に移転した場合、地域の再生や復興には直接つながらないという難点がある」、こういった、いわば注文をつける形で、後ろ向きの対応となっている。これでは、高台移転を希望する、そういう中で、津波で被災した土地については震災前の価格で国が買い上げてほしいという要望、これにこたえることができないんじゃないのか。
 復興構想会議の提言を踏まえということを繰り返している以上、そこから前に出られないということになる。この点についても、被災地の希望にこたえて前向きに改善する、しっかりとした措置をとる、この点について総理にお伺いしたい。総理、総理、お答えください。

○平野国務大臣 個別の政策にかかわる話でございますので、私の方から答弁させていただきます。
 先ほど申し上げましたように、さまざまな要望が出てくると思います。要は、土地の買い上げも一つの手段でございます。そういった手段を活用して、どうすれば地域の再生計画が立てやすくなるか、実施しやすくなるか、その観点からしっかり検討してまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 総理が決断すればいいんですから、総理、お答えください。

○菅内閣総理大臣 国土交通大臣そして復興担当大臣から、高台移転を含めて現在の仕組みと、それから復興構想会議からの提言なども含めて基本的な考え方、私は前向きな考え方だと思っておりますが、御説明があったと思います。
 高台移転、つまりは、津波がまた将来やってきたときにも、安全なところに移るといったことを含めて、改めてそれぞれの自治体の中でそのまちづくりをどのようにしていくのか、そういう復興計画に対して国がしっかりとサポートしていく、その姿勢は平野大臣からも御説明したとおりでありまして、それによって自治体の財政が破綻するといったようなことがないように、きちんと手当てをしていきたいと思っております。
 そして、国が買い上げるという問題についても、いろいろなケースが想定されますが、大きな政策的な手段ということで、適切なものについてはその手法を使って対応していきたい、いくべきだと考えております。

○塩川委員 復興計画づくりというのも、その自治体にしてみれば、まさにその時期その時期に必要な手だてというのがあるわけですよね。水産業でのしゅんというのと同じように、今のこの復興計画に当たって、この時期にこの措置をとりたい、そのときに国はどうするのか、このことが問われているわけで、現状は、四カ月たっても何も動きがわからない、見通しが立たない。国が地方をサポートしているんじゃなくて、国が地方を動けなくしているんじゃないのか、こういう声が上がるのは当然だ。この点についての抜本的な対策を強く求めておきます。
 次に、液状化被害対策についてお尋ねをいたします。
 今回の大震災では、東北から関東地方まで、広範囲で地盤災害が起こりました。仙台市などでの造成宅地の崩壊や、福島県須賀川市のため池の崩壊、さらには、首都圏で液状化宅地被害などがあります。特に宅地被害が深刻で、この点での今までにない対策が求められております。
 総理も浦安に行かれたと承知をしております。総理として、宅地の液状化被害の深刻さの現状についての受けとめ、また被災者の方々の苦しみについて、現地に行かれてどのように受けとめられたか、この点についてお答えいただけますか。

○菅内閣総理大臣 御指摘のように、六月の十八日に、浦安を含めて、千葉の液状化の現地を見てまいりました。特に、マンションなどの多い地域でありましたが、一見、マンションそのものは特に被害を受けているように見えないんですけれども、よく見てみると、基盤のところの土地が、液状化によって、大きいところでは一メートル近く下がっている。その結果、いわゆる上下水道を含めたインフラの部分が破断をして、それを応急処置で対応している、こういったところもありました。また、下水道設備そのものが破壊をされたところもありましたし、また海岸部において、海岸の防波堤が動いたり、あるいは突先が崩れたりと、いろいろな場面を見てまいりました。
 こういったものについて、同時に、マンションとは違って戸建ての集団のところについても、これは一戸一戸にどのような対応ができるかということもあって、従来の法律的な解釈だけでは対応がなかなか難しいといったような指摘もありました。
 こういったことを含めて、ある意味、まちづくりといいましょうか、あるいは町の道路の復興などと関連させて、あわせて都市のインフラの補強という形で、そういった住宅の被害に対しても、ある程度、都市インフラの補強という観点から具体的な形の対応をする、こういったことも今検討をいたしているところであります。
 いずれにしましても、従来から液状化ということは、阪神・淡路のときにもありましたけれども、今回のような大規模な液状化被害は初めてではないかと思いますので、法律的な仕組みも含めて、よく何度傾いたという問題もありますけれども、そういったことも含めてしっかり対応できるように、関係各省に取り組みを指示してまいっているところであります。

○塩川委員 今、総理から、マンションなどの大型建築物また公共インフラでも大きな被害が出ているし、戸建て住宅の被害の深刻さ、お話ございました。大規模な液状化被害は初めてではないか、この認識が極めて重要だと受けとめました。
 これは、NHKスペシャルでも液状化被害を取り上げておりまして、今回の液状化被害というのが世界最大だというのがNHKの番組での紹介となっておりました。
 その点で、この間、液状化についてどのような実態把握が行われているのかについてお尋ねをします。
 この液状化、大規模な液状化被害と言われているわけですが、液状化による宅地地盤被害及び盛り土の造成地の崩壊による宅地被害について、その都道府県等、戸数が幾つぐらいになるのかについて、国交大臣、大畠大臣でしょうか、お答えください。

○大畠国務大臣 お答えを申し上げます。
 ただいま、液状化による被害の実態はどのような状況にあるのかという御質問を賜りました。七月十四日の内閣府調査時点では、約一万九千三百棟の被害を確認しているところでございます。
 この状況を私も香取市に行って見てまいりましたが、御指摘のように、これまでの被害とは大きく異なる甚大な状況と認識しているところであります。

○塩川委員 近年埋め立てられた埋立地における液状化被害の件数、一万九千三百。この戸数というのは、例えばNHKなども、関東だけでも二万四千件ぐらいという数字が出ております。ただ、この内閣府の調査も関東地方だけでありまして、東北地方についても液状化の被害があるにもかかわらず、現時点で把握をされていない。ですから、しっかりとした調査が行われれば、さらに拡大するということは明らかであります。
 一方で、盛り土の造成地、丘陵部などを切り開いて切り盛りをすることによって谷を埋めて盛り土にした、そういうところが今回大量に崩れているわけであります。そういったところについての被害の戸数というのは、調査、把握がされていないということであります。
 そういう意味でも、こういう被害の実態について、正確に把握してこそ今後の対策に生かすことができる。こういった実態調査について、しっかりと行う。この液状化の宅地の被害、あわせて盛り土造成地における宅地の被害の戸数がどのぐらいあるのか、こういうことについてしっかりと調査いただきたいと思うんですが、その点についてお答えください。

○大畠国務大臣 ただいまの重ねての御質問でありますが、液状化による被害あるいは盛り土等での今回の大震災による被害の状況を調査すべきじゃないかという御指摘でありますが、私ども国土交通省としてもしっかりと調査したいと思います。

○塩川委員 しっかりとした実態把握というのが対策の出発点だということを重ねて申し上げます。
 大畠大臣、重ねてお尋ねしますが、この液状化被害ということについて、以前から知られたものだったわけでありますが、そもそも国として液状化被害対策が必要だと認識したのは、どのぐらい前にさかのぼるんでしょうか。

○大畠国務大臣 お答えを申し上げます。
 私ども国土交通省として、液状化被害というものを新たに認識した時点は、昭和三十九年の新潟地震で大きな被害が発生した時点でありまして、それ以来、この現象をどのような形で対策すべきかと、河川の堤防あるいは道路構造物、宅地等における液状化対策等について調査研究を進めて、その成果を公共インフラの施工法や設計に関する技術基準等に反映してきたところであります。
 しかしながら、御指摘のように、今回の被災状況を見ますと、さらに大きな被害が広がっておりますので、ことしの五月に新たに液状化対策技術検討会議というものを設置しまして、関係学会の皆さんの御協力をいただきながら、今回の液状化被害の特性やあるいは液状化被害の発生のメカニズムの確認、分析、解析等を行い、各分野に共通する技術的事項について調査分析を現在進めているところでありまして、この調査結果を生かして、今後の公共インフラについてさらに研究、調査を進めて、液状化対策の見直しをしているところであります。

○塩川委員 大臣のお答えにございましたように、液状化被害については、一九六〇年代の新潟地震から国として対策が必要だと認識をしておられた。その後、公共インフラについての調査研究も行い、技術基準にも反映をし、さらには今回の大震災を受けて、五月に技術検討会議を立ち上げて調査分析を行い、今後の公共インフラについて生かしていきたいというお話でありますが、今お話があったのは公共インフラについての対策です。個人の宅地の液状化対策についてお触れになりませんでした。
 地盤工学の学会であります地盤工学会が、東日本大震災の教訓と提言の案をこの六月で出し、今専門家の方々で練り上げる作業をしていると承知をしております。
 この地盤工学会の提言の中では、公共機関による社会インフラに対しては四十年前から技術基準などが順次整備をされてきた、また大型民間建築物でも担当技術者は地盤液状化を考慮してきた、今回これらの効果が発揮をされた、このように述べて、まさに大畠大臣がお答えになったとおりであります。
 この提言では、社会インフラと大型建築物は技術の進歩と社会的要求の進展を反映した対策がとられてきたが、私有財産である戸建て住宅ではこのような最新の基準の技術の適用がおくれてきたと指摘をし、国はインフラの液状化被害については一定程度対応してきたけれども、戸建て住宅については対応がおくれているということを取り上げております。
 大畠大臣、この国の宅地液状化対策のおくれというのが今回の重大な被害の拡大につながったんじゃありませんか。お答えください。

○大畠国務大臣 お答えを申し上げます。
 確かに、個別の住宅に対する液状化対策というのがおくれたのではないかという御指摘でありますが、私も香取市に参りましてその状況をつぶさに見て、実態というものを把握させていただきました。市長さんの話によりますと、液状化対策をやった団地といいますか宅地では被害が少なく、液状化対策が未対策のところで大きな被害があったという話を伺いました。
 そういうことを考えますと、御指摘のように、個別の住宅に対する液状化対策に対する情報の提供あるいは対策というものがおくれたということは率直に私も認めたいと思います。

○塩川委員 今お話ございましたように、液状化対策の手段はあるんですよ。だから、しっかりやれば被害がなかった、あるいは軽微で済んだ、こういうことだったわけですけれども、しかし実態は、そういったことについての国の制度がないために、今回の広範な液状化の宅地被害につながっている、この点をどうするのかということが問われているわけであります。
 この液状化被害につきましては、今回、内閣府として被害認定の基準を改めました。傾きについても、一定程度であればこれを全壊にしますよ、大規模半壊にしますよということがありました。
 なぜそういうふうにしたのかというと、傾きというのは健康被害をもたらすということがある。つまり、一定程度の傾きによって、被災者の方々がその家に住み続けることができない。私がいわき市で伺った液状化被害のお宅の方は、御主人がおっしゃっておられたのは、奥さんが一カ月間入院をしたという話がございました。こういう被害というのが大きかったからこそ、住み続けるためにも、しっかりとした液状化の宅地被害の対策が必要だ、このことが言われているわけであります。
 また、負担が非常に大きいということも重大であります。液状化宅地被害については、ジャッキアップなどの対策、傾きを直すのにも五百万かかるとか言われていますし、地下の配管についても一連のものを直せば一千万とか言われている。いろいろな工法でその負担を軽くするということは当然考えなければいけませんけれども、こういう大きな負担について、しっかりとした公的な支援策こそ必要だ。
 最後に、総理に伺いますが、総理は、都市インフラの観点からも、復興の観点からも、宅地についても具体的な対応を検討中ということをお話しされましたけれども、公共インフラの復興の延長線上で宅地の液状化被害対策というのではなくて、宅地の液状化被害に対して直接の公的な支援制度をしっかりと設けるべきだ、このことこそ行うべきだということを強く求めたい。
 この点についての総理のお考え、御決断を聞かせてください。

○中井委員長 菅直人内閣総理大臣。時間が来ていますので、手短にお願いします。

○菅内閣総理大臣 将来の震災などを考えますと、この液状化は、予防的な措置が重要だとも思っております。その中で、今御指摘がありました個人の住宅についての被害に対して今の制度の中で対応するには、先ほど申し上げたような都市インフラの補強といった形の延長上で対応することが比較的迅速に対応できるということで申し上げましたが、本質的に、個人の家の対応については新たな制度を含めて検討が必要だ、そう考えております。

○塩川委員 二重ローン対策とあわせて新たな公的支援策を求めて、質問を終わります。