<第177通常国会 2011年08月02日 総務委員会 25号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 原発事故災害対処関連の二法案について質問をいたします。
 最初に、原発事故避難者の実態把握による支援策の拡充を求める立場から何点かお尋ねをいたします。
 総務省が把握しておられます原発事故に伴う避難者についてでありますけれども、原発事故による避難者数が何人か、そのうち福島県外への避難者が何人か、及び全国にわたる避難先の市町村数が幾つになるのか、この点についてまずお答えください。

○久元政府参考人 法案が想定しております対象区域からの避難者数につきまして、福島県からの情報に基づいてお答えをさせていただきますと、双葉郡八町村、南相馬市、飯舘村、川俣町から全国に避難した避難者数は約十万六千人と見込んでおります。このうち約半数の約四万九千人が県外に避難をしておりまして、避難先の市町村数は九百七十三団体というふうに承知しております。

○塩川委員 今御答弁ありましたように、警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域に係る十二市町村のうち田村市は確認をされておられないということですので、それ以外の十一市町村で避難されている方が十万人を超える。その半数の約五万人の方が県外に避難をしておられます。
 避難先の市町村も、全国一千七百の市町村に対し九百七十三と大変大きな数に上っているわけであります。また、以前私がこの委員会でも確認しました、経済産業省が把握をしているこの三つの区域内の避難者数というのが十一万三千人という数字もございました。いずれにせよ、十万人を超える規模での避難者となっているわけであります。
 一方で、七月二十九日、東日本大震災復興対策本部が決定をしました東日本大震災からの復興の基本方針、ここに書いてあります避難者等の数は約九万二千人となっております。
 今御答弁いただきましたように、福島県の十一市町村だけでも十万人を超える原発事故避難者がいるのに、岩手、宮城など他の被災地も含むはずの復興の基本方針で掲げている避難者数が十万人に届かないというのは、実態とかけ離れているわけであります。
 大臣にお尋ねしますが、この政府の復興の基本方針には多数に上る原発事故の避難者が視野に入っていないんじゃないのか、こう疑わざるを得ないんですが、この点についてはどのように受けとめておられますか。

○片山国務大臣 これは私も前々から気になっているんですけれども、どちらも推計なんですが、どちらからアプローチした推計にするかという違いがありまして、先ほど行政局長が申しましたのは、避難元の、今回の場合でいいますと福島県の市町村で把握をしたり、それから、一定の推計もあると思いますけれども、市町村の方でこれだけの方が域外に避難されているという、それを福島県が集計したものであります。避難元の情報をもとに集計したものです。
 一方、御指摘の、基本方針の方で触れております九万何がしという数字は、全国の受け入れ先の方で、今回の東日本大震災が原因で避難をされて受け入れている方が旅館に何人、公営住宅に何人、親戚、知人で把握しているのは何人というものを積み上げたもので、これをずっと三月以来やってきているわけで、それの一定時点のものをここに掲げているものであります。
 ですから、避難元で推計をするのか、受け入れ先の方で把握している方々を集計するのかで実はある程度の誤差があるわけでありまして、ここがまだなかなか一致を見ないということであります。
 最終的には、私は、避難元の方で、今、全国避難者情報システムを通じて現時点でもまだ情報が寄せられておりますので、これを突合してダブりをなくしてということで、精査をした暁にはかなり確度の高い避難者の数が把握できるのではないかと思っております。

○塩川委員 大臣にお答えいただきましたように、避難元自治体が正確に把握をしている。ですから、本来、復興の基本方針も、避難元自治体の把握を踏まえた避難者数が載せられるべきだということだと思います。
 この復興の基本方針の九万二千人というのは、内閣府の避難者等の数に基づいています。これは調査室の資料にもついていますけれども、要するに、被災三県で公営住宅、公的住宅や仮設住宅や民間賃貸住宅の借り上げに入っている方は世帯数でしか把握していなくて、人数で把握していないからカウントされていないんですよ。被災三県で住宅に入っている方が六万八千二百二十三戸という把握はあるんだけれども、人数でつかんでいないんです。ですから、その人数の把握をもって初めて避難者数の全体が出てくる。
 六万八千ですから、平均してお二人がお住まいということを考えても、数とすれば十四万人とかいう数になってくるわけであります。ですから、九万二千と足し合わせても、二十万人を超える避難者というのが実際です。
 これまでの避難者というのは、一次避難所、ホテル、旅館などの二次避難所の範囲での避難者だったものが、今回は津波、地震、同時に原発事故の避難者の方は長期に及ぶだろう避難生活ということでいえば、仮設だろうが民間賃貸だろうが公的住宅だろうが、避難生活が継続するということは同じですから、それをくくって避難者として受けとめて把握しようという取り組み自身は前向きの方向だと思っております。そういう点でも、世帯単位ではなくて、実際の世帯の入居の状況をしっかり把握するということがなければ適切な対策を講じることにはつながらないということを言いたいわけであります。
 そういうことで、こういった避難所以外の避難世帯、公的住宅や民間賃貸住宅借り上げや、あるいは応急仮設住宅、これらに避難をしておられる世帯のうち、ひとり暮らしの方ですとか高齢者だけの世帯というのはどのぐらいあるのか、こういうことは政府として把握をしておられるのでしょうか。

○久元政府参考人 まず、住民基本台帳におきましては世帯ごとに編製されることになりますので、世帯の状況は避難元でわかるわけでありますが、避難先におきまして世帯の状況がどうなっているのかを把握することは、同じ世帯でも異なる場所に避難しているようなケースもありますので、これは困難であろうというふうに思います。
 今回の法案におきましても、世帯単位ではなくて、個々の避難住民の避難場所を確認して、避難住民個人に対する事務を避難先団体において処理することができるというふうにしているところでありまして、避難先における把握というものは個人単位という現状にとどまっております。

○塩川委員 そういう点でもひとり暮らし世帯とかの把握がなかなか困難だというお話で、そうはいっても、長期の避難生活が強いられ、やはり孤独死などの懸念というのは、だれもがなさる懸念になってまいります。
 内閣府が、被災者の孤立死を防止するための有識者会議というのを開催しまして、そういう中で、これまでの事例を集めて、こういう孤立死、孤独死をなくそうという、実践例を被災地に紹介しようという活動をやっておられます。そこでの孤立死を防ぐためのポイントとして前提となっているのが、ひとり暮らし高齢者、高齢者のみの家庭、障害者等の把握と必要な支援内容の確認ということで、実態把握というのが何よりも大前提だということを言っているわけであります。
 そういう意味でも、この取り組みを行うのであれば、ぜひとも、全国に散在する民間賃貸住宅の入居者の方とか公的住宅に避難している方、こういう被災者の実態を把握して孤立死防止対策を進めるということも極めて重要になってくると思うんですが、この点について大臣のお考えをお聞かせください。

○片山国務大臣 それはそうだと思います。
 実は、孤立化防止策を内閣府で打ち出しましたのは、私も加わっております被災地支援連絡会議の中でこのことを提案したんですけれども、実はこれは仮設住宅に入居した後が非常に心配だということで、専らそこに焦点を置いたものであります。
 これは、相馬の市長さん、もともとお医者さんなんですけれども、その方が非常にこのことに関心を持っておられたのを私も直接伺いましたり、それから弁護士の堀田力さんがこの問題について造詣が深いということで、この方からも直接話を伺いまして、そんなことから会議をつくりまして、仙台の方で実際にシンポジウムなんかをやったりしたんです。阪神・淡路のときもそうなんですけれども、仮設に入って非常に孤立感を深めるというケースが多いものですから、なるべく見回りをしたり食事をともにする機会をふやしたりということで、そこから始めました。
 県外とかに避難されている方で孤立化されているというケースは多いんですけれども、多くは親戚とかそういうところがあるものですから、そこはある程度のケアはあると思います。
 ただ、おっしゃるように、公営住宅でありますとか公的住宅なんかにぽつんと入られている方もいないわけではないと思いますので、そこはよく避難元の自治体が実情を把握して、避難先と連携をとって孤立化を防ぐような手だてを講じる必要があると今改めて私も思いましたので、その点も一つの課題として被災地支援連絡会議の中で問題提起をして、解決できるようにしたいと思います。

○塩川委員 避難者の入居先として仮設住宅が多いように思われるんですけれども、確認しましたら、応急仮設住宅の入居者は三万二百八十四、これは七月二十九日現在です。一方、民間賃貸住宅の借り上げが七月二十九日現在で四万七千四百八十五、それから公的住宅は七月二十七日現在で一万四千三百四十なんです。
 ですから、仮設住宅の入居の方も多いんですけれども、それ以上に、住まいがばらばらとなっている民間賃貸借り上げや公的住宅の入居者が多いんですね。こういった避難の実態を把握することで被災者の孤独死防止などの支援策をしっかりと行っていただきたい、このことを重ねてお願い申し上げるものであります。
 次に、地方税減免措置についてですけれども、原発事故に伴う警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域等における固定資産税などの課税免除措置は、当然の措置であります。しかしながら、新たに設定された特定避難勧奨地点は対象となっておりません。
 今回の法案における三つの区域等の地方税減免措置と同様に、特定避難勧奨地点も地方税減免措置の対象にすべきではないかについてお尋ねをします。

○片山国務大臣 結果として、自主的に避難された場合には、課税免除をされる区域の方々と同じように税負担が軽減されるということは必要だろうと私は思います。
 ただ、特定避難勧奨地点といいますのは、必ずしも一律に避難ということでもありませんので、法律でもって一律に税負担を規定するよりは、実情に応じて該当の市町村において判断をされるのが適当だろうということで、こういう法体系にしております。
 もちろんそれに対して、恐らく減免されることになると思いますけれども、減免された場合の財政措置、財政支援についても怠りないようにすることにしたいと思っております。

○塩川委員 特定避難勧奨地点というのは、六月十六日、原子力災害対策本部で、計画的避難区域とするほどの地域的な広がりが見られない一部の地域で、事故発生後一年間の積算線量が二十ミリシーベルトを超えると推定される空間線量率が続いている地点が存在しており、生活形態によっては二十ミリシーベルトを超える可能性も否定できないので、その場所を特定避難勧奨地点とし、そこに居住する住民に対して、注意を喚起し、避難を支援、促進する必要があると。
 ですから、つまり計画的避難区域も特定避難勧奨地点も、二十ミリシーベルトという点では同じなんですよ。特定避難勧奨地点も、政府として地点を特定し、住民に対する避難支援の必要性をうたっております。
 そういう点で、原災本部の出先であります現地対策本部が具体的な特定避難勧奨地点の設定も行っているわけですから、今回の法案において、この三つの区域における地方税減免措置と同様に国の関与は明らかでありますし、放射線量についても同等の水準であるならば同じ扱いとするのが妥当だと考えますが、改めていかがでしょうか。

○片山国務大臣 先ほど申しましたように、結果として同等な扱いになるということが私もふさわしいだろうと思いますが、一つは制度が警戒区域などとは違いますし、それからどの地点が指定されたかということは第一義的にはわからないことになっておりますので、法律でもって、一律の基準でもって税負担について規定をするということは税制度としてはなじまないだろうと私は思います。
 ただ、指定をされて、それで避難を余儀なくされた方が警戒区域の皆さんと同じような税負担の軽減措置を受けられるべきだとは思いますので、それは、既にあります地方税法の減免の規定を適用して、市町村において減免措置を施していただきたいと思います。その旨は総務省からも、もう既に実は私の口からもお伝えはしておりますけれども、改めてしかるべき時期に助言を申し上げたいと思います。

○塩川委員 ぜひ、自主避難者も含めた同様の減免措置を求めたいと思いますし、自治体が個別減免しやすいような、減収額を埋めるための地方財政措置についてもしっかり対応していただきたい、このことを申し上げて、質問を終わります。