<第177通常国会 2011年08月09日 総務委員会 26号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 第二次一括法案について質問いたします。
 今回、百八十八の法律の改正を行う第二次一括法案の中に、住生活基本法の改正も含まれております。これに関連して質問いたします。
 最初に、国土交通省、市村政務官においでいただいておりまして、お答えいただきたいのが、住生活基本法の基本理念の一つを掲げております第六条、居住の安定の確保、この内容と趣旨は何か、この点についてお答えください。

○市村大臣政務官 委員のお尋ねについては、恐らく憲法との関係の話だと思いますが、それでよろしいでしょうか。
 憲法第二十五条一項に、委員御存じのように、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定されておりますが、住生活基本法第六条におきましても、「住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤である」とした上で、低額所得者、被災者、高齢者、子供を育成する御家庭、その他住宅の安定確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保について規定しておりまして、憲法第二十五条の趣旨を踏まえたものであるというふうに考えておるところでございます。

○塩川委員 今お答えいただきましたように、この第六条におきましては、憲法の二十五条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、この趣旨を踏まえたものであり、住宅は国民生活の基盤、低額所得者や被災者、高齢者、子供を育成する家庭等のいわゆる住宅困窮者に対する居住の安定の確保を図ることは住宅政策の重要な使命の一つということを掲げています。この中に被災者が例示されているということは、今回の大災害を受けた住宅政策を考える点で重要であります。
 この間、私は、被災者の住宅確保を求める立場から、仮設住宅、あるいは民間賃貸住宅の借り上げ、そして公的住宅における住環境の改善、特に、暑い夏、きょうも大変蒸し暑いですけれども、熱中症なども懸念される中で、エアコンの設置について取り上げてまいりました。
 今現在、応急仮設住宅は八月五日現在で三万二千九百十七戸、民間賃貸住宅の自治体借り上げは同じく八月五日時点で四万八千九百八十二戸になっております。これらはエアコン設置が標準装備でありますので、避難者がみずから借りている民間アパートについても、自治体借り上げとしてエアコン設置などを促進することが必要です。
 今、エアコン設置に関して対応が求められているのが公的な住宅であります。避難者が入居している公的住宅を仮設住宅扱いにするとともに、避難者の居住環境改善のため、仮設扱い待ちにならず、公的住宅を所有、管理する国や自治体、公的機関が直ちにエアコン設置を行うべきであります。
 そこでお尋ねしますが、国家公務員宿舎、雇用促進住宅、UR賃貸住宅、公営住宅など公的住宅への避難者の入居は、今はおよそ一万五千戸に上ります。エアコン設置状況について確認をいたします。
 最初に、財務省にお尋ねをいたします。
 国家公務員宿舎への避難者の入居数、仮設扱いの戸数及びエアコン設置戸数がどうなっているか、エアコン未設置の場合にどのように対応するのか、この点についてお尋ねいたします。

○飯塚政府参考人 国家公務員宿舎についてお答えを申し上げます。
 直近時点で、自治体を通じて被災者の皆様に提供しております国家公務員宿舎の戸数でございますが、千二百七戸でございます。そのうち受け入れ自治体が応急仮設住宅としているものが九百八十六戸でございます。また、エアコン設置戸数についてでございますが、提供済み戸数の中には、被災者の入居が一たん決まりながら実際には入居がなされなかったというものでございますとかエアコンが不要な地域のものもあること等から、自治体がエアコンを設置することとしたものは八百四戸でございます。
 私どもの対応でございますが、国家公務員宿舎を提供する場合には国から自治体を通じて被災者に無償で提供する仕組みとなってございまして、当該宿舎は、厚生労働省とも協議した結果、災害救助法に基づく応急仮設住宅に該当するというふうにされておるところでございます。
 被災者に提供いたしました国家公務員宿舎に実際にエアコンを設置するかどうかという点につきましては受け入れ自治体の判断となるわけでございますけれども、私ども財務省といたしましては、被災者のための住居として宿舎を提供した場合には災害救助法上の応急仮設住宅として取り扱いが可能であり、エアコン設置等に係る費用が国庫負担の対象となる旨、財務局、財務事務所を通じて都道府県に対して周知を図らせていただいているところでございます。

○塩川委員 次に、厚生労働省にお尋ねします。
 雇用促進住宅への避難者の入居戸数、仮設扱い戸数及びエアコン設置戸数がどうなっているか、厚労省として雇用促進住宅へのエアコン設置についてどのように対応したのか、お尋ねします。

○中沖政府参考人 お答えを申し上げます。
 雇用促進住宅におけますエアコン設置でございますが、都道府県等が雇用促進住宅の借り上げを行った場合、災害救助法に基づき設置費用が国庫補助の対象となる旨、七月十五日付で各都道府県に通知したところでございます。
 また、エアコンの設置は、当然、先生御指摘のとおり、大変喫緊の課題でございまして、早急に対応する必要があるということ、また都道府県からも迅速な対応を要望されておりましたので、災害救助法の手続を待たずに、住居、住宅の所有者でございます独立行政法人雇用・能力開発機構みずからが設置するように七月二十五日付でさらに通知をいたしました。
 お尋ねの数字でございますが、被災されました方の受け入れにつきましては、八月四日現在でございますが、入居決定戸数が六千八十五戸、そのうち、災害救助法に基づく応急仮設住宅として借り上げた戸数はゼロでございますが、エアコンの設置につきましては、八月五日時点で約二千戸について発注を行ったところでございます。

○塩川委員 財務省の方は、国家公務員宿舎は仮設扱いという方向での対応ということで努力されてきているわけですが、引き続き課題も残っている。雇用促進住宅については、厚労省として所有者である機構に対し、みずから設置してもらいたいという要請をされておられる、そういう中での迅速な対応を求めてこられているわけであります。避難者第一の対応として重要だと考えます。
 そこで、国交省にお尋ねしますが、UR賃貸住宅と、あわせて公営住宅について、それぞれ入居戸数、仮設扱い戸数、エアコン設置戸数、未設置の場合にどう対応するのかについてお答えいただけますでしょうか。

○市村大臣政務官 まずUR賃貸住宅でございますけれども、今現在のUR賃貸住宅への被災者の入居戸数は約八百四十戸でございます。このうち応急仮設住宅として借り上げていただいている戸数は二十戸でございます。そして、その中で地方公共団体がエアコンを設置している戸数は十一戸、これは八月八日時点、きのう時点でございます。
 次に公営住宅でございますが、公営住宅等への入居戸数は約六千七百戸、これも昨日、八月八日時点でございます。このうち応急仮設住宅扱いの戸数は東京都管理の約千二百戸というふうに把握をさせていただいております。
 このエアコンの設置についてでありますが、国交省としましても、災害救助法の枠組みの中で対応すべきでありまして、今現在、関係都道府県に対しまして、UR賃貸住宅及び公営住宅等を応急仮設住宅として借り上げていただけるよう、改めて協力を依頼したところでございます。
 引き続き、厚生労働省と連携を図りつつ、国土交通省としましても、災害救助法の枠組みの中で適切に対応してまいりたいと存じております。

○塩川委員 UR賃貸についてはエアコンの設置の数が極めて少ないという点では、私は、厚労省が雇用促進住宅に対応したと同じように、やはりURに対して、所有者としてきちっとつけてもらいたい、こういう要請こそ国として行うべきだ、このことを改めて申し上げておくものであります。
 公営住宅についても、仮設扱いは東京都ぐらいで、あとの状況は、現状は検討中という話だというふうに承知をしておりますが、改めて協力を要請したということであります。
 大臣にこの点では一つお取り組みをお願いしたいのが、やはりこういった避難者の暮らしを第一に考えても、公営住宅におけるエアコン設置について、それぞれの自治体に対し、しっかりと対応した取り組み、エアコン設置についてもぜひ取り組んでいただきたい、こういうことについて総務大臣として働きかけをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○片山国務大臣 総務大臣としてというよりは、私も被災地支援連絡会議のメンバーになっておりますので、毎週、定例的にそこで懸案事項の提起とそれの処理について協議しておりますので、その場で今の問題を取り上げて、各地方公共団体に必要な情報提供でありますとか要請が届くようにしたいと思います。

○塩川委員 公営住宅法そのものが、二十五条の立場で健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備する、それを住宅困窮者に提供するというものであります。そういう点でも、住生活基本法で掲げている、被災者を初めとした住宅困窮者に対してのしっかりとした安定した居住の確保、こういうことこそ今求められているわけであります。
 実際に、住宅に困窮する低額所得者も増加をし、貧困層は、年収二百万円以下が一千万人に上るとか、年収二百万円未満の世帯のうち、公営住宅の入居が九十七万世帯に対し、民間住宅が三百四十万世帯になる。都営住宅への入居を希望する方の倍率というのが、二〇〇九年度でも三十・五倍に上るという状況であります。この間の公営住宅の新規建設ですとか供給がとめられたということが大きな原因ともなっているという状況であります。
 ですから、住生活基本法に基づき住生活基本計画、全国計画を策定したわけですけれども、これはことしの三月に改定をされました。この中でも、「住宅困窮者が多様化する中で、住生活の分野において憲法第二十五条の趣旨が具体化されるよう、公平かつ的確な住宅セーフティネットの確保を図っていくことが求められている。」としています。貧困層が増加をし、また多数の被災者が生まれた大震災直後に閣議決定されているのが今回の計画であります。こういった被災者を初めとした住宅困窮者の意見が計画に反映される必要があったわけであります。
 そこで、国土交通省、市村大臣政務官にお尋ねしますが、東日本大震災、原発事故という未曾有の大災害が起こったわけですが、今回の全国計画には、この大災害を踏まえた内容というのが盛り込まれているんでしょうか。被災者の声が反映されているのか、この点をお尋ねします。

○市村大臣政務官 今のお尋ねでございますが、被災者のことも入っておるということであります。

○塩川委員 今回の大震災、原発事故を踏まえた内容が入っているかどうかをお尋ねしたんですが、いかがでしょうか。

○市村大臣政務官 先ほど申し上げましたように、法律の第六条に、先ほど委員も御指摘いただきましたように、被災者という言葉が入っています。ただ、今お尋ねの、今回の東日本大震災ということに対して、特に具体的に入れているということはまだありません。

○塩川委員 これだけ未曾有の大災害、加えて原発事故。この計画を見ても、この全国計画には、目標四、「特に配慮を要する者の居住の安定の確保」に、被災者は入っていますけれども、津波という言葉もないわけですよ。ですから、具体的に今回の大震災を踏まえた中身になっていない。ましてや、原発事故では、約十五万人の方に避難の指示を呼びかけて、実際に今でも十万人以上の方が避難をして、その居住の安定の確保こそ求められているのに、発災直後に計画を閣議決定しておきながら、これについて何ら盛り込まれていない。
 これは三月十五日の閣議決定なわけですけれども、本来であれば、こういう全国計画をつくって、これに基づいて都道府県の計画をつくる、そういうときに、全国計画、三月十五日閣議決定は少し延ばしたっていいじゃないか。今回の大震災や原発事故を踏まえた住宅の確保について、被災者の声も踏まえた対策こそ行うべきであったんだということが問われているわけであります。そういう点では、この計画には被災者を初めとした住宅困窮者の声が盛り込まれていないという実情になっております。
 その上に、今回の二次一括法案では、この住生活基本計画の都道府県計画について、住民の意見を反映させるための仕組みが変更されております。都道府県計画案の作成に当たって、全国計画と同様、住民の意見を反映させながら案を作成していくパブリックインボルブメント方式を義務づけていたわけですが、都道府県計画については、これを努力義務に変更するものであります。これでは住民の声が反映されないんじゃないのか。
 この点について、国土交通省としてのお考えと、提出されている大臣の見解をお聞かせください。

○市村大臣政務官 まず、最初の御指摘の中で、いわゆる三月十五日の閣議決定のときになぜ反映されなかったかということでありますが、審議会の決定が二月二十四日でございました。閣議決定が三月十五日でありましたが、私としても、配慮が足りなかったのかもしれないなということを、今御指摘いただいて感じているところでございます。
 ただ、住生活基本計画というのは大きな全体的な取り組みであろうかと思いますから、今回の被災ということにつきましては、また改めてといいますか、別個に起こすということも重要かというふうに思います。(発言する者あり)はい、やらせていただきます。
 それから、今の後半のお尋ねでございますが、今回は、御指摘のように、義務づけ・枠づけの見直しということになりまして、努力規定になるということでございます。ただ、これは、この住生活基本法ができた平成十八年の段階では盛り込まれておりましたけれども、その後、平成二十一年十月七日に地方分権改革推進委員会が第三次勧告を出しておりまして、「自治立法権の拡大による「地方政府」の実現へ」というのがありまして、その中の第一章の三項の五というところに大方針を示されております。
 ある意味でいえば、都道府県が住民の意見を聞いて住生活を進めるというのは当たり前のことでありまして、当たり前でありますから、これはこの住生活基本法だけに当たり前じゃなくて、今後の地方分権という観点では当たり前ということでありますので、努力義務ということでも十分に都道府県は住民の意見を聞かれるのではないかということを想定しているところでございます。

○片山国務大臣 今いみじくも当たり前という表現がありましたが、本当にそうだと思います。そもそも、住生活に関する政策の体系といいますのは住民の皆さんのためでありますから、その住民の皆さんの意見を基本となる計画に反映させるというのは、まさに当たり前のことであります。
 その当たり前のことを国がわざわざ義務づけして、国に対して説明責任を果たさせるというのが今までの仕組みでありますけれども、地方分権改革、地域主権改革の理念のもとに、そういうことは住民の皆さんが最終的には判断をすることでありますから、自治体において議会がまずはその当たり前のことが実施されているかどうかをチェックする、それを包括的に住民の皆さんがみずからの問題として第二次的にチェックをする、そういうことを実現しようというのがこの大ぐくりにした法案であります。一見何か義務を弱めたような印象を与えるということで塩川議員御質問になったんだと思いますけれども、そうではなくて、説明責任を果たす相手はだれか、だれが主体的に物事を決めていくのかという、一つのパラダイム転換の法案の中の一項目だというふうに御理解いただければと思います。

○塩川委員 住生活基本計画について、震災対応が入っていないというのは配慮が足りなかったと。配慮が足りなかったということじゃなくて、政府の姿勢が問われているんじゃないですか。こういう重大な問題が起こったときに、この計画について閣議決定を少し延ばしてでもきちんと反映させようということこそ行うべきだ。だって、十万世帯の方が今仮設等々に避難をしておられるんですから、これだけの住宅についてどうしていくのかということこそ政治の大方針として示されるべきだったんだ。
 災害について計画を改めて立てる必要があるかもというんですけれども、具体的には計画があるわけじゃない。見直すことについて決めているという状況じゃないでしょう。そういう点でも、私は、この問題についての政府の姿勢は、被災者の声を聞いていないということがはっきりあらわれている、そういう中での今回の住民の意見反映について、義務を努力義務にするという流れ自身が一層被災者の声を遠ざけるものにしかならない、このことを言わざるを得ません。
 住民の声を聞くのは当たり前だというのであれば、義務というのは国が地方を縛るという話ではなくて、住民の立場から、国や地方に対し、しっかりとやってもらう、このことを求めることを規定しているという立場こそ必要だ、こういう立場で今こそ対応すべきで、今回の改正では都道府県計画の公表義務を努力義務にするということも上げられているという点では、地方行政の住民参画及び住民への情報公開を後退させるものだと言わざるを得ないということは指摘をして、質問を終わります。