<第177通常国会 2011年08月11日 総務委員会 27号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 第二次一括法案について質問をいたします。
 今回の第二次一括法案及び既に成立をしました第一次一括法は、自治体策定の計画に係る住民の意見反映、意見聴取等の義務規定を努力義務に変更する改正が多数含まれています。
 最初にこの数をお尋ねしたいんですけれども、第一次一括法及び第二次一括法案、合わせて幾つの改正が行われているのか、お答えください。

○逢坂大臣政務官 お答えいたしますが、その前に、ちょっと一点だけ。
 先ほど私、西先生への答弁の中で、事務に関して委任というふうに発言しましたけれども、事務委託の誤りでございますので、法令用語を訂正させていただきます。
 今の塩川委員の質問でございますが、今回、意見聴取の義務づけを廃止するものは十三条項ございます。

○塩川委員 まとまった数としての改正となっております。
 この改正の理由というのはどういうものなのかについてお答えいただけますか。

○逢坂大臣政務官 そもそも、自治体が計画を策定する際に住民の皆さんの意見を聞くというのは当然のことであろう、当たり前のことであろうという発想がございます。そうした当たり前のことまで国の方で法律で義務づけをしなければ意見を聞かないということではないのではないか、そういう発想が根底にありまして、今回のような改正をさせていただいております。

○塩川委員 多くの法律が、勧告に基づいて、一律に見直しの対象となっているわけであります。見直しの十三本の中には、以前この委員会でも取り上げました、障害者自立支援法における市町村障害福祉計画策定に当たっての住民意見反映を、義務から努力義務にする規定も含まれております。
 住民の意見を聞くのは当たり前だということをおっしゃいますけれども、障害者の方々からすれば、自分たちの意見が行政の計画にどういうふうに反映されるのか、反映されてきていないという思いの中で、こういう意見反映を強く求めてきたという歴史的な経緯があるわけであります。
 そういったときに、法文上の義務規定を努力義務規定に改めるということ自身が後退だと受けとめられるのは当然のことで、障害者団体から批判の上がっていたものであります。
 ですから、大臣にお尋ねしますが、住民にとっては地方行政への参画の機会が後退することになる、このように受けとめられても仕方がないのではありませんか。

○片山国務大臣 これは、後退させるという趣旨では毛頭ありません。これまでは国が法律でもって意見を聞くということを義務づけていた。しかし、国としては、そこはもう義務づけというような強制的な関与はしません。そのかわり、今度は自治体の方が、先ほど逢坂政務官からの答弁もありましたように、当然意見を聞くべきものでありますから、自主的に、自覚的に意見を聞く機会を設けることになるということが想定をされております。

○塩川委員 今回の法改正のもとになっている閣議決定された地域主権戦略大綱では、「政府においては、地域主権改革の更なる進展のため、第三次勧告の実現に向けて引き続き検討を行う。」としています。今取り上げております意見反映、意見聴取の義務規定を外すということについては、課題となっていて、まだ措置がされていないというものがあるわけですね。
 そういった第三次勧告が意見聴取規定を外せと言っている法律の一つに、バリアフリー法があります。バリアフリー法の二十五条六項の「市町村は、基本構想を作成しようとするときは、あらかじめ、住民、生活関連施設を利用する高齢者、障害者等その他利害関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。」という規定について、義務規定を見直すことを求めているわけです。
 そもそもバリアフリー法のこの規定というのは、障害者など当事者の運動によって、バリアフリー法が二〇〇六年に改正されたときに、住民等関係者の意見を反映させる規定として新たに盛り込まれたものであります。それなのに、勧告においては廃止などを求めているわけであります。国民の運動によってかち取ってきた住民参加の仕組みを後退させようというものでしかない。
 改めてお尋ねしますが、地域主権戦略大綱及び一括法案では、国と地方の観点という点での見直しが焦点となっており、本来地方政治の主役である住民の見地というのが欠落しているんじゃないのか、このことが問われていると思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○片山国務大臣 先ほど申しましたように、住民の皆さん、特に立場の弱い方々の権利、とりわけ政治参画の機会を保障するということは重要であります。今までは、それを法律でもって国が担保していた、国会が担保していた。これからは、より住民の皆さんに近い位置にある自治体の議会がそれを担保する、そういう説明責任を果たす、その役割がシフトするということであります。

○塩川委員 住民の皆さんが運動によって法改正を実現してきた、そういう住民参加の規定を後退させることには変わりがないということで、このことについては厳しく指摘をするものであります。
 次に、今回の第二次一括法案及び既に成立しました第一次一括法などにおいて、自治体策定の計画の公表義務を努力義務に変更する改正も多数行われております。
 この改正について、第一次一括法及び第二次一括法案、合わせて幾つの改正が行われているのかを確認させてください。

○逢坂大臣政務官 まず、一昨年閣議決定した地方分権改革推進計画に基づくものが三条項、昨年の地域主権戦略大綱に基づき本法律案で改正するものが八十二条項ございます。

○塩川委員 合わせて八十五本という多数に上るわけであります。
 そこでお尋ねしますが、こういった自治体策定の計画の公表義務を努力義務に変更するということでは、住民にとっては情報公開の後退ととられても仕方がないのではないでしょうか。

○逢坂大臣政務官 この点も先ほどの意見聴取と似たような考え方でありますけれども、法律に義務づけられているから説明、公表しなくていいのだというものではないというふうに我々は理解をしております。その説明の主体を、法に根拠を置くのではなくて、自治体みずからの判断によって住民の皆様にしっかりと説明をする、自主性、自立性を高めていくというのが今回の法の改正の趣旨でありますので、そのような観点で今回法案を提出させていただいております。

○塩川委員 住民の観点から考えたらどうかという問題であります。
 多くの自治体は情報公開条例を定めております。都道府県段階ではすべて情報公開条例を制定しております。
 そこでお聞きしたいのは、計画等の公表を義務づけている、そういう条例を持っているところは都道府県段階で幾つあるのかを確認したいと思います。

○逢坂大臣政務官 御案内のとおり、情報公開条例はすべての都道府県で制定されておりますけれども、このうち、重要な計画などについて公表義務を規定しているのは四団体ございます。

○塩川委員 計画等の公表義務規定を持っているところが群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県。あと、公表の努力規定というのを持っているのが栃木県それから富山県。ですから、努力規定を含めても、四十七都道府県のうち六団体にとどまっているのが現状であります。
 国の情報公開法にのっとって自治体は情報公開条例をこの間制定してきておりますが、国の情報公開法そのものに、計画等の公表義務の規定がありません。ですから、自治体が自主的に条例で定めるということになっていても、現状ではこういった定めがないというのが大半の状況であります。
 ですから、一括法案で計画公表の義務が努力義務になる一方で、都道府県の情報公開条例においては計画の公表義務規定がほとんどない。これは、住民にとっては自治体の情報公開の後退にしかならない、こういうことになりはしませんか。

○片山国務大臣 非常に論理的な整理であると思いますが、そうはならないと思いますし、そうあってはならないと思います。
 私の経験ですと、情報公開条例に明示的に計画の公表を義務づけているところは四県だという答弁が今ありましたけれども、例えば鳥取県などはそういう条項を設けておりませんけれども、当然、情報公開請求があればその種の情報というのは公開をしておりますから、あえて明示的に条項がないから公開しないというものではありません。他県もそうだろうと思います。
 それから、今回の改正法が成立をいたしますと、先ほど来出ております個別の法律の中に規定しておりました公表義務というものが努力義務に変わりますので、自治体においてはそれぞれ、この問題について今後どうするかということの点検、見直しが当然行われなければいけません。
 その際に、特に弱い立場の方々に関する施策については、先ほどの住民の意見を聞くということと公表するということは、自治体の議会において、単に努力じゃなくて、きちっと条例において公表を義務づけることを当然定められるべきだと私は思います。
 権限移譲とか関与の廃止ということは、行政レベルで政府の関与をなくし、判断権を自治体に移すということが一般的に言われておりますけれども、本来は国会が持っている判断権、立法権というものがその分野においては自治体の議会の立法権に移るということでもありますので、今回、国会は義務を外して努力義務にするということ、それを受けて今度は自治体がそれぞれに判断をして、恐らく弱者の皆さんに関することについては、私は、きちっとこれを自治体の議会でもって法制化するということが行われると思いますし、ぜひそういう作業を自治体には行っていただきたいと思っております。

○塩川委員 この間の国の関与を見直すという中での一括法案ですけれども、しかし、国の地方への関与を見直すという際に、そもそも、住民の立場で、住民の要求、運動によって国や地方にさまざまな責務を求めていくということが、情報公開の問題もそうでしたし、施策あるいは行政、地方政治への参画を求める規定として盛り込まれてきているわけですから、そういう点でいっても、今回の一括法案そのものが、国と地方の関係だけに着目をして、住民という観点からどうなっているのか、こういう観点が欠落しているということがやはり改めて問われなければならないと思います。そのことが、一律に見直しを行うという形で行われているところにはっきりとあらわれている、このことを強く指摘したいと思っています。
 この間の一括法の審議で申し上げましたけれども、国が地方を縛る、こういう点について当然見直すべきものがあります。今回の法律の中にもそういった中身が含まれている。しかし、そもそもそういった一律の見直しの過程の中で、住民の権利、住民の政治参加の仕組み、こういったものを住民の見地が欠落することによってあいまいにしてきている、大きく後退をさせている、こういう中身だということ改めて強く指摘をし、質問を終わります。