<第177通常国会 2011年08月23日 災害対策特別委員会 14号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 本日は、東日本大震災における宅地の地盤被害対策について質問をいたします。
 液状化被害とともに、盛り土の造成を行った団地で盛り土部分が崩壊して宅地被害が起こったり、あるいは人工擁壁が崩れたりする宅地地盤被害が多数生じております。
 私はこの間、仙台市の青葉区折立団地や泉区北中山地区、また、福島県いわき市の常磐西郷町、茨城県東海村の南台団地、栃木県那須烏山市の鴻の台ニュータウンなど、このような各地の宅地地盤被害の現場に足を運び、市長さんを初めとして自治体担当者の方のお話をお聞きし、何よりも被災者の切実な要望を伺ってまいりました。これを踏まえて質問するものであります。
 最初に、国土交通省にお尋ねをいたします。
 東日本大震災における宅地被害状況についてですけれども、この間集計した数字をお聞きしたいんですが、液状化による宅地被害件数が何件となっているのか、また液状化被害以外の盛り土造成地崩壊や擁壁崩壊などの宅地被害件数は何件に上るか、また、その場合、被害のあった都道府県は幾つに上るのか、この点についてお答えください。

○加藤政府参考人 お答え申し上げます。
 今般の大震災におきます宅地被害の状況についてのお尋ねでございますが、去る七月二十二日より、国土交通省といたしまして、盛り土等の宅地の被害状況及び液状化による宅地の被害状況について、関係都県に対して調査を実施いたしました。
 その調査結果によりますと、八月二十二日現在で、液状化被害以外の宅地の被害件数、今御指摘いただきましたように、具体的には、擁壁の崩壊ですとか、地すべりですとか、盛り土造成地の崩落といったような事象による被害でございますが、これが五千四百六十七件、液状化による被害件数は二万二千九百五十二件となってございます。
 また、宅地被害のあった都道府県数についてのお尋ねでございますが、液状化以外の宅地被害は十二県、液状化による被害が九都県にわたっているところでございます。

○塩川委員 今お答えいただきましたように、液状化の宅地被害は約二万三千件。これは、NHKスペシャルでも紹介された、世界最大規模と言われるものとなっております。
 同時に、きょうこれから取り上げます盛り土崩壊などによる宅地地盤被害も、五千件を超えるという大きな被害であります。
 県別で見ますと、多い順で言いますと、宮城県で二千七百六十一件、茨城県で九百六十三件、福島県で九百七件というのが現在の数字でありまして、二千戸以上の被害が出ている仙台市の事例などはよく紹介もされておりますけれども、そこにとどまらず、十二県にも及ぶものとなっています。広域で大規模な被害となっております。
 国交省に確認でお尋ねしますが、このような宅地地盤被害というのはかつてない規模の災害だと思いますが、その点いかがでしょうか。

○加藤政府参考人 お答え申し上げます。
 これまでも、震災で、例えば大規模盛り土の造成地が崩落するといったようなこと、あるいは液状化被害についても一部あったことは事実でございますが、今お尋ねのように、今回の大震災のように広範に、広域にわたって多数被害が生じているのは初めてのことではないかと考えております。

○塩川委員 初めてのことというより、最大規模の被害状況となっております。かつてない規模で宅地地盤被害の被災者が生じているわけです。
 平野大臣にお尋ねしますけれども、被災者の方は、宅地が崩れて、いつまた崩壊するかもわからないような不安の中で長期の避難生活を送っておられる方もいらっしゃいます。復旧費用を考えると、とても将来の見通しが見えない不安の中にあるわけで、このような宅地地盤被害の被災者の置かれている状況について、どのように受けとめておられるのか、その点についてまずお聞かせください。

○平野国務大臣 今委員から御指摘ありましたように、今回の大震災におきましては、広範な地域で、これまでにない規模での宅地被害が発生をしております。
 こうした宅地被害につきましては、従来から、大規模盛土造成地滑動崩落防止事業、災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業等、これはいずれも国交省所管の事業でございますけれども、こういった事業によっての支援が行われております。
 今、仙台市を初めとした、あるいは液状化の被害の発生した自治体を初めとして、この地域の復旧に対してできるだけの支援をお願いしたい、そういう強い要望を受けております。そういった要望も踏まえまして、今、この制度をどのようにするかということもあわせて国土交通省の中において鋭意検討されているものというふうに理解をしております。

○塩川委員 これまでにない規模での被害という御答弁でありました。
 一人一人の被災者の方に寄り添って考えたときに、やはり先の見えない不安の中にあるということを我々はしっかり受けとめなければならないと思っております。
 宅地の地盤被害、もとに戻すのにも一千万かかるとかと言われているわけですし、被災者の資力だけでは解決できない状況があり、発災から五カ月を超えても、ほとんどの世帯が改修にも手をつけることができない状況にある。
 先日、栃木の那須烏山市に伺いました。栃木県内で唯一仮設住宅を建設している、そういう意味でも宅地被害が多数出ている自治体でありますけれども、一戸建てで地盤被害を改修するのに二百万から六百万円かかる、その上物の家屋の改修というのはさらにお金がかかるということになりますと、とても負担できないという声が上がっているわけであります。
 ですから、手がつけられないという点で、被災者にとってみれば、いわば時がとまったような状況にあるというのが現状だということが言えると思います。
 ですから、平野大臣に重ねて伺いますけれども、こういった被災者の気持ちを受けとめるならば、過去最大規模の災害に見合った、従来の枠を超えた宅地地盤被害に対する支援策が必要じゃないのか、このことが求められていると思いますが、大臣としてのお考えをお聞かせください。

○平野国務大臣 いわゆる民有地の被災に対しての支援をどこまでやるかということについては、これはさまざまな御議論があるということについては委員も十分御承知のとおりかと思います。
 その一方で、先ほど来議論されておりますように、今回の被害は非常に広域でありまして、滑落の規模あるいは液状化の規模もこれまでになかった規模で起こっております。そういう中で、災害復旧に当たっての公的な支援をどこまでやるべきか、これについては、やはり時間をかけず早急に結論を出すということが必要だというふうに思っております。

○塩川委員 国交省の市村政務官にお尋ねしますが、大畠大臣も繰り返し、液状化被害対策とあわせて盛り土崩壊などの地盤被害についての支援策が必要だということを述べておられます。そういう点で、国交省としてはどうするつもりなのか。過去にない規模での宅地地盤被害に対して、過去にないような支援策が求められているわけですが、国交省として今の段階で考えていること、具体化しようと思っていることについて、お答えください。

○市村大臣政務官 委員御指摘のように、これは未曾有の被害でありましたし、前例のない災害だということでありますから、前例なく取り組むべきだという考え方は基本だと思います。
 ただ、いろいろな制度の中でこれを行うとなりますと、今いろいろ調査をしながら行っていくということでありまして、もちろん、気持ちとしては、国交省としては一刻も早く復旧復興に結びつけたいということもありますし、技術的にもいろいろ研究もしておりますから、それもやりたいという国交省の皆さんの気持ちはあります。
 しかしながら、これは議論としては、やはりだれがこの費用を負担するのかというところになると私は思いますので、これにつきましては、また、この国会も含めていろいろ議論をしていただいて、何に対して、だれが何をどう負担していくのかということにつきまして、いろいろと御指導賜れば幸いだと存じております。

○塩川委員 費用負担の問題というのは、そもそも、面的に被害を受けているわけですから、その地域全体の公共性を担保する上でも、宅地地盤被害に対して支援するということは公共性がある、二次災害を防止する、そういう観点も含めてしっかりとした公的支援を行うというのは、上物だけではなくて、宅地も含めて住環境をきちんと整えることこそ今政治が行うべき仕事だ、このことを強く求めておくものであります。
 今、市村政務官がおっしゃったように、前例のない、こういう被害でありますから、今までにない災害だからこそ今までにない踏み込んだ支援策が必要だということを強く求めておくものであります。
 あわせて、市村政務官も一刻も早く復旧復興に結びつけたいとおっしゃっておられたわけですけれども、そうであるならば、今何をやっているのかということが問われてくるわけで、これまでこういった宅地地盤被害についてとってきた対策というのは直ちに行う必要がある。
 那須烏山市でも、市長さんもおっしゃっておられましたが、被災宅地をこのまま放置すると、余震ですとか雨などによる、さらなるがけ崩れや擁壁、住宅の倒壊など、二次災害の危険性が高くなる、一刻も早く対策をとりたいということで、市としての独自の助成策をつくったわけであります。最大三百万円の助成策という点でのそういう積極的な取り組みを行っているわけですけれども、では、国は何をやっているのか。
 この点では、二次災害防止のためにも、やれることは今すぐ行う必要があるという点で、中越地震のときには、大臣も先ほど触れておられましたような災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業とか、災害関連地域防災がけ崩れ対策事業について、人工斜面も対象にし、がけの高さも三メートル以上にするなどの要件緩和を行う特例措置を実施して被災者の支援に活用をいたしました。これは既に過去に行った実例があるわけですよね。
 それなのに、今回いまだに、この特例措置をやるとは言っていない、これはどういうことなんでしょうか。大臣なり国交省なり、お答えいただけますか。

○平野国務大臣 そういった過去の例もございます。そして、先ほど申しましたように、繰り返しで恐縮ですけれども、今回の災害の規摸、前例のない規模であるということでありまして、いわゆる民有地に対する支援、その範囲ということについて、どこまでやるかということを中心に今議論をされているというふうに承知しております。
 いずれ、これは、被災者の立場に立て、立つことが必要ではないかという議員の御指摘が先ほどございましたけれども、被災者の立場に立てば、一日も早い復旧復興の姿が見えてくる。
 その前提として、制度がどういう状況になっているか、これがまだ確定していないということでありますと、被災者にとっては将来も見通せないということになりますので、先ほど申しましたように、検討すべきことについては早急に検討して結論を出して、それを地域に示して、そこから復旧計画をつくっていただくということを急がせることを私の立場で関係省庁に強く働きかけていきたいというふうに思っております。

○塩川委員 過去最大規摸の災害に対応するかつてない支援策を行うということを強く求めるのと同時に、これまで実施したことがある、実績のある特例措置、これだってすぐできるはずじゃありませんか。なぜやっていないんですか。直ちにやるということがなぜ言えないんですか。その点について、国交省、いかがですか。

○市村大臣政務官 今、平野復興大臣の方から、前向きにといいますか、そういう前例のないものに対しては前例なくやっていくということでありますから、今その大臣のお言葉をしっかりと受けとめて、また国交省として、直ちにという表現ではなくて、一刻も早く復旧復興に資するような対策を打ち出してまいりたいと思っております。

○塩川委員 これまでにない支援策をとる上で必要な検討、具体化を行うということは求められているわけですけれども、過去やったことがあるような特例措置は今すぐできるはずで、それすらやっていないということが被災地の被災者の皆さんの復旧復興をおくらせる問題につながっているんじゃないのか。その政府の姿勢が問われているんだということを強く申し上げておくものであります。
 述べましたように、かつてない規模の災害、二次災害の危険もある、被災者だけでは負担が大きくて前に進めない、従来の枠を超えた支援策が必要で、宅地被害者の生活再建のために、今までにない踏み込んだ支援策を行うことを強く求めて、質問を終わります。