<第180通常国会 2012年02月01日 予算委員会 3号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、最初に被災者支援策について質問をいたします。
 今現在、三十四万人以上の避難者の方がいらっしゃる。長引く避難生活であります。仮設住宅などの寒さの問題、結露の問題、健康悪化が心配をされます。失業、無収入、収入が大幅に減る、こういう状況に置かれているのが被災者、被災地であります。そんなときに、医療、介護などの一部負担金、窓口払い、あるいは保険料といった負担の免除措置が行われてまいりましたが、この二月末で打ち切る計画となっておりました。
 寒さ対策もろくにやらないような仮設住宅をつくっただけではなくて、寒さが最も厳しくて、病気や健康悪化の一番心配な二月末に医療、介護の負担免除措置を打ち切るなどというのはとんでもないことであります。このことについてどうするつもりなのかについて、お答えください。

○小宮山国務大臣 今おっしゃいました中で、一部負担金につきましては、医療保険、介護保険では、福島原発事故による警戒区域等の住民の一部負担金の免除措置への財政支援、これは一年間延長することにしています。また、警戒区域以外の地域でも、無職や高齢者の方が加入する国民健康保険、それから後期高齢者医療制度、また介護保険の一部負担金の免除措置の費用について、これは九月末まで延長することにしています。
 警戒区域等以外の地域につきましては、被用者保険も保険者判断で一部負担金の免除などの延長が可能で、中小企業の多くが加入する全国健康保険協会は九月末まで延長するというふうに承知をしています。
 それからまた、保険料につきましては、所得などの負担能力に応じて負担いただくのが原則ですが、無職や高齢者の方が加入する国民健康保険、そして後期高齢者医療制度、介護保険の保険料につきましては、減免措置への財政支援を警戒区域などは一年間、それ以外の地域については九月分まで延長することにしています。
 被用者保険では、震災により従業員に対する報酬の支払いに著しい支障が生じている事業所について、特措法で平成二十四年二月までの間、保険料の免除を行ってまいりました。被用者保険は、震災等の影響による賃金の変化を適切に反映した保険料を賦課する仕組みとしているので、保険料の免除措置については延長をしないことにしています。
 また、災害により直接に財産に相当な損失を受けたり、保険料の納付が困難な場合には、納付の猶予措置、これを設けている。
 このように、それぞれの仕組みの中で、低所得など困っていらっしゃる方のところ、あるいは警戒区域など地域で非常に負担の大きいところについては、延長する措置をとらせていただいています。

○塩川委員 今述べたような延長の措置は当然であります。その背景には、被災地からの切実な要望があった。岩手、宮城、福島の県議会でも、昨年十月から十二月にかけて、このような医療費一部負担金の免除期間延長、これを求める意見書が採択をされ、免除措置を求める被災者の運動の広がりがありました。
 しかし、それでも免除措置の打ち切りの部分が残されております。例えば、被用者保険の保険料や、入院、入所時の食事療養費等、いわゆるホテルコストの免除は打ち切られます。
 特養に入所されている方のお話もお聞きしました。石巻市の被災者の方で六十代近い男性の方。お母さんが認知症で、被災前には一軒家の自宅で見ていたけれども、被災後には福祉避難所から特養ホームへと移ることになりました。隣のあくびも聞こえるような仮設住宅では介護は無理、今まで声をかけてくれた御近所の人もいない、こういう声を寄せております。
 このホテルコストを含めた月額の負担が約三万円にもなると言われています。免除期間を延長してほしいというのが率直な声であります。このようないわゆるホテルコストについても延長するというのは、被災地、被災者の現状を考えれば当然のことではありませんか。総理としてぜひ決断いただきたい。

○小宮山国務大臣 入院時の食事療養費など、今ホテルコストとおっしゃった部分ですけれども、これについては、避難所にいらっしゃるときにはいろいろ配慮してきたんですが、もう避難所はほとんど閉鎖をされていて、皆さん仮設などに入っていらっしゃる。そことの公平性ということもありまして、二十四年三月以降の延長はしないという形にいたしました。
 そうした中で、今おっしゃったように、いろいろな事情で福祉の関係で援助が必要な場合には、そういった別の観点からまた御相談に乗れるような形がとれればいいというふうに思っています。

○塩川委員 いや、公平性の観点とかという話じゃないんですよ。必要なのは、被災地において、負担能力を失っている被災者の方に新たな負担増を求めるような措置を行っていいのか、このことが問われているわけです。新たな負担を求めるのは、被災者の生活再建、ひいては被災地の復興の妨げとなる、このことを強く求めていくものであります。
 デイサービスの入所の方なども、ショートステイの利用も含めて、いわゆるホテルコストという部分がかかってくる。そういった方々も含めて、今まで負担がなかったものが新たな負担増になるということ、こういう免除措置の打ち切りはやめるよう強く求めておくものであります。
 あわせて、打ち切りという点でいいますと、失業手当の打ち切りの問題があります。
 被災地では、仕事を失い、いまだに職につけない人が多数残されています。ところが、職場の確保の見通しも立たない中で、失業手当が次々打ち切られております。この三月までに七千人を超え、九月末には全員が打ち切られる予定であります。
 総理は代表質問で、被災者が生活再建を進める上で最大の不安は働く場の確保と答弁をしました。まさにそのとおりであります。しかし、厚労省の調査によると、被災者で失業手当が切れた人のうち、半数は就職先が決まっていないとのことであります。一月二十日時点で、失業手当の延長の給付が終了した一千三十九人のうち、就職先が未定の人が五百十七人もいる、これが現状であります。
 総理にお尋ねしますが、これまで従事していた水産加工の仕事をしたくても工場が復旧をしていない、求人といえば復興関連の土木建設関係がほとんど、しかも短期間の非正規ばかり、これでは、就労に踏み出すことにちゅうちょするのは当然であります。職につけないまま失業手当を打ち切られた人を見捨てるのか、このことが問われている。失業手当の延長こそ考えるべきではありませんか。総理、お答えください。

○小宮山国務大臣 先に私の方から。
 先ほどもお答えいたしましたけれども、雇用保険が切れた後、先ほど申し上げたように、今まで百二十日間延長したうち、非常に被災の大きかった沿岸部はさらに九十日延長してまいりました。
 ただ、雇用保険をずっと続けることがいいのかどうかということ。現実に、今ミスマッチがあって、なかなか雇用に結びつかないということはわかっておりますので、そういう意味で、先月、私も行って、実態を見てまいりました。
 ハローワークの方でも担当制を決めていろいろやっているということやら、いろいろ努力をしておりますが、その中で、私が、去年の六月に工場を再建した水産加工の会社に参りました。そうしたら、そこで一つ再開をし、また次、ことしに入って二つ目を再開するのに、皆さん職を探していらっしゃるであろうから、求人をすればすぐに集まると思ったら、雇用保険がある間は働かないとおっしゃる方が多い、現にそういう話も聞いてまいりました。
 全てがそうだとは申しません。でも、これからは仕事の方に力を入れることが一層重要だということで、何度も申し上げている「日本はひとつ」しごとプロジェクトのフェーズ3で、これは産業政策と一体になってやっている。それが効果的に働いているのは、釜石市でも、中小企業のグループ補助金。幾つかの会社が集まってハードをつくる、そこに雇用していただいたら私どもが雇用に対する奨励金をちゃんと出す、このような形が非常に機能しているという例もございます。
 ですから、もちろん、ミスマッチがなくなるようにきめ細かくやる。それから、求職をなるべく今ハローワークに集めるようにしていますし、就職の相談会なども行っています。そして、それでもすぐつけない方、ミスマッチの部分については、職業訓練とか求職者支援制度、そうしたものをしっかりと活用いたしまして、何とかこれからは失業手当ではなくて仕事に結びつける。
 復興の計画がきちんとできて、町の再建ができないと、どうしてもつなぎだということに対する不安を皆様持っていらっしゃるので、当面はつなぎでも、とにかくつないで、将来はきちんとした仕事につけるという、その工程表というかスケジュール感も持って皆様にお話をし、やっていきたい。これからは雇用に結びつける方に全力を挙げてやっていきたい、そのように考えています。

○塩川委員 雇用に結びつける、雇用創出は当然のことであります。しかし、今の生活があるんですよ。今の生活において、自分にふさわしい仕事が見つけられないという人を放置していいのかということが問われているんですよ。余りにも、延長しようという話も出ない、冷たい仕打ちであります。
 きょうの朝日新聞の報道でもありましたけれども、現地の声として、会社員が会社員に、船乗りが船に戻りたいというのが当たり前だ。失業手当が切れれば、震災前と同じ仕事を求めて被災地を離れる人たちがふえてくる。そういうことがどんどん広がっていったら、肝心の被災地の復興のときに、その復興の担い手の人が失われるということじゃありませんか。こういうことにつながるような失業手当の打ち切り、この被災地において自分にふさわしい仕事を見つけて復興にも貢献をしたい、こういう被災者の思いに応えるのは、当面の失業給付の延長でこそ可能となるんじゃありませんか。
 総理、改めて、被災地の復興のためにも失業手当を延長すべきだ、このことに踏み出すべきだ、いかがですか。

○野田内閣総理大臣 被災地の苦労されている被災者の皆さんのための生活再建で一番大事なことは、やはり働く場の確保である、その認識は共有をいたします。そのために、これまで、失業給付、特例で二百十日分延長してきたということでございましたけれども、この時期において、厚生労働大臣も現地に入って、さまざまな現場を見ての判断をされました。
 それは、一つには、やはりハローワーク等で、これから復興で出てくる仕事と、きっちりきめ細やかに、ミスマッチのない、そういうような情報提供をしていくということと、それから、御指摘もありましたけれども、水産加工業であるとか農業であるとかという、その地域の強みを生かしていくような、そういう産業振興としっかりと連動させていくということ、そういう政策をしっかりとりながら対応していきたいというふうに考えております。

○塩川委員 余りにも現地の被災者の状況が見えていない発言。安定した仕事と収入を確保するために全力を挙げるのは当然のことと同時に、当面、少なくとも失業給付の延長を行うべきだ、このことを強く求めるものであります。
 次に、八ツ場ダムの問題について質問をいたします。
 我が党は、八ツ場ダムについて一貫して中止を求め、流域住民と力を合わせて取り組んでまいりました。八ツ場ダム建設に道理なし、このことを訴えてまいりました。
 利水について言えば、首都圏の人口は停滞、減少傾向になっているのに加えて、節水機器の普及によって給水の実績は減少傾向にあり、新規水源の開発の必要はありません。
 治水について言えば、八ツ場ダムの洪水調節機能は限定的であり、ダムをつくったとしても、その後、ダムに砂がたまっていく堆砂によって治水の機能は大きく低下、消失することも明らかであります。今、治水対策として行うべきことは、脆弱な堤防の強化対策や、ゲリラ豪雨による内水氾濫に対する排水機場などの再整備こそ急務。ここにこそ限られた予算を使うのであれば使う、こういうことこそ求められているということであります。
 さらには、地すべりなど災害誘発の危険性もあります。この点について、まともな検証、対策が行われておりません。極めてもろい火山性の地盤に建設される八ツ場ダムは地すべり被害を誘発する危険性がある、このことも指摘をされているところであります。
 このような八ツ場ダム中止を求める世論と運動の広がりに押されて、民主党も、二〇〇九年の総選挙で初めて八ツ場ダム中止を公約に掲げました。二〇〇九年総選挙民主党マニフェストでは、「ムダづかい、不要不急な事業を根絶する。」として、「八ツ場ダムは中止。時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直す。」としておりました。それなのに野田総理は、政権交代直後の八ツ場ダム中止表明を覆し、事業継続との判断を行いました。
 総理、なぜ八ツ場ダム中止の立場を覆したんですか。

○前田国務大臣 八ツ場ダムについては、四代の大臣のもとで、予断を排して、予断を持たずに検証を行ってまいりました。そういうスキームをつくったわけでございます。そして、昨年十二月、この検証の最終的な有識者委員会において、八ツ場継続妥当、そういう結果を得ました。それを前提に、いろいろな角度から、今委員が言われたような観点も含めまして熟慮を重ねた結果、事業継続との判断を持ったわけでございます。
 二、三申し上げますと、首都圏の治水安全度の確保というのは、特にこの首都圏の、利根川流域になるわけですが、非常に洪水に対して脆弱な特性を持っているものですから、ここは何とか安全度を高めたいということで、いろいろな見地から検討を行いました。しかし、八ツ場ダムにまさる即効性のある代替案が見つからなかった、見出せなかったというのも一つの大きな要因でございます。
 そしてまた、昭和二十二年のカスリーン台風のあの決壊で、たしか千数百人亡くなっているわけなんですけれども、首都圏がその後、本当に大きな人口、資産の集積があり、また、高度成長期に随分地下水をくみ上げて、地盤も相当沈下をしております、埼玉県から東京都にかけて。そういうこともあって、治水の安全度というのは必ずしも上がっておりません。
 そしてまた、流域一都五県の、それぞれの都県の安全に責任を持つ都道府県知事さん方が、こぞって八ツ場ダムの継続を御主張されておりました。
 そういったことも含めて、総合的に勘案して結論を出したわけでありまして、あくまでもこれは、官房長官裁定を踏まえて適切に対応する、こういうことになっております。

○塩川委員 八ツ場ダムの推進の理由を述べておりましたけれども、一つだけ言っておけば、例えば治水問題について、国交省が試算をしたカスリーン台風における治水効果はどうか、この問題について、私の国会での質問に対し国土交通省は、カスリーン台風のような雨の降り方のときには八ツ場ダムの治水効果はありませんとはっきりと答弁しているんですよ。こういうでたらめなことを前提にした議論というのは、そもそも成り立たないということであります。
 今、前田大臣の答弁にもありましたように、予断を持たずに検証を行ってきた結果だというけれども、その検証の進め方自身が問題なのではないのか、このことを問いたい。
 予断を持たずに検証を行ってきた成果というのが、八ツ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書であります。国土交通省関東地方整備局がまとめたものであります。
 この八ツ場ダムの検証を進めるに当たり、検討内容の認識を深めることを目的として、検討主体である国土交通省関東地方整備局と関係地方公共団体から成る検討の場が設置をされております。今、前田大臣がおっしゃったように、八ツ場ダムにかかわる一都五県の首長が参加をする検討の場が開かれ、その関係都県のダム担当の部長が出席をする幹事会が十回、この間、開催をされてきているわけであります。
 そこでお尋ねしますが、この報告書でも取り上げております検討の場、その円滑な運営を図るための幹事会、この幹事会が八ツ場ダム検証の実質的な検討の場となっているということは、報告書に見るとおり明らかだと思いますが、その点の確認をお願いします。

○前田国務大臣 お答えいたします。
 検討の場には幹事会というのを置いております、事務局的に。そういったところが、この検討の場の、議論をする場の設定をやっているものというふうに承知をしております。
 それから、一点申し上げますと、先ほど委員は、国交省に八ツ場ダムにカスリーン台風と同じ雨が降ったときにどの程度の治水効果があるかということを問うたところ、余りないという答えだったというふうにおっしゃいました。
 それはあくまでも、あのカスリーン台風という、むしろ利根川の東北の方に降雨が集中的に降った、そのパターンで再現するとそういうことになるということであって、八ツ場ダムというのは、吾妻川流域という非常に大きな流域、七百平方キロに対してきくダムでありますから、降雨パターンがそちらの方に振れた場合には、また効果が全然違ってくる。平均すると、目標流量に対して大体千立米ぐらいの洪水調節効果がある、こう見積もられております。

○塩川委員 いや、八ツ場ダムをつくる理由として、建設省、国交省がずっと言ってきたのがカスリーン台風の話なんですよ。そのカスリーン台風の場合にどうかということについてシミュレーションしたら、治水効果はありませんと言うんですから。こういうでたらめな説明で推進をしてきたという、そのこと自身が問われているんじゃありませんか。
 検討の場の規約におきましても、「検討の場における会議の円滑な運営を図るため幹事会を設置する。」とあります。
 関係する首長が参加をするこの検討の場というのは、実質一回しか開いていないんですよね。それに対して、幹事会は十回議論を重ねてきております。その中では、今後の議論の進め方についてとか、雨量データ及び流量データの点検の進め方とか、基本高水の検証の進め方とか、利水参画継続の意思及び開発量についてなど、幾つもの論点を挙げて議論を行ってきているわけであります。ですから、幹事会が八ツ場ダム検証の実質的な検討の場となっているわけであります。
 そこで、改めて大臣に確認しますが、幹事会を構成するのは一都五県の八ツ場ダムにかかわるような関係部長だと思いますが、いかがですか。

○前田国務大臣 お答え申し上げます。
 構成員は、一都五県の、大体が企画部長、土木部長というようなペアになっております。東京都なんかは、そこに水道局長が入っております。合計十三、そして関東地方整備局の河川部長、十四人で構成されているというふうに承知をしております。

○塩川委員 ダムにかかわる担当部長が出席している実務者の場、実質的な検討の場が幹事会となっているわけであります。
 国は、八ツ場ダムは治水、利水などの地方の要望に応えるものと説明してまいりました。幹事会の議事録を見ていきますと、例えば第一回幹事会の議事録を見ると、群馬県の県土整備部長は、完了が間近な段階になっているんです、そういうダム事業をこれから検証するのはどうもなじまないと述べ、検証そのものが不必要と言わんばかりの発言をしております。
 そこでお尋ねしますが、この幹事会のメンバーである群馬県の県土整備部長というのは、どこの出身の方だか御存じですか。

○前田国務大臣 お答え申し上げます。
 群馬県の県土整備部長は、国土交通省からの出向者であります。

○塩川委員 ですから、検討の場といって、地方の代表が誰かと思ったら、国交省からの出向者なんですよ。
 続けて聞きますけれども、こういった、検証が必要ないと言わんばかりの人物は、国交省からの出向者と確認しました。
 次に、茨城県の土木部長は、同じ第一回の幹事会で、なるべく早く結論を出して、速やかに対策を講じていただきたいと、八ツ場ダム推進の立場で発言をしています。この茨城県の土木部長は、どこの出身の方ですか。

○前田国務大臣 茨城県の土木部長も、国土交通省の出向者でございます。

○塩川委員 茨城県の土木部長も、国交省からの出向者です。地方の代表かと思ったら、そこにも結局は国交省の人間が行っているという話であります。
 加えて、茨城県の企画部長、この人も第一回の幹事会で、中止の方針を持ってこの検証作業に当たるのではなく、予断なく検証される点について確認したい、要するに、中止方針は前提にするなと推進の立場で発言をしています。この茨城県の企画部長は、どこの出身の方ですか。

○前田国務大臣 茨城県の企画部長も、国土交通省の出身であります。
 ただし、これは検討の場の事務局を構成しているわけで、第一回のこの検討の場には、群馬県知事、埼玉県知事、千葉県知事、栃木県知事が出席して、むしろ、この議論を中心に検討を積み重ねてきたというふうに承知をしております。

○塩川委員 検討の場というのは一回しかやっていないんですから、十回重ねている幹事会が実質的な検討の場となっている。この茨城県の企画部長も、国交省からの出向者であります。
 さらに、お尋ねします。
 第三回の幹事会の場で、千葉県の県土整備部長は、検証作業によってダム建設が明らかになった場合には、速やかに本体工事に着手して、早期に完成を図るよう強く申し述べたいと、ダム建設を督促する立場で発言をしております。この千葉県の県土整備部長は、どこの出身の方ですか。

○前田国務大臣 千葉県の県土部長は、国土交通省の出向者でございます。

○中井委員長 前田大臣、その幹事会十四人のうち何人国交省がいるのか言うた方が早いよ。それは塩川さんも質問の順番があるやろうが。国交省、わかるの。調べてください。(塩川委員「委員長」と呼ぶ)はい、どうぞ質問してください。

○塩川委員 千葉県の県土整備部長も、国交省からの出向者であります。
 ちなみに、埼玉県の企画財政部長は、総務省からの出向でもあります。それぞれの担当の都県の課長クラスにも、国交省からの出向者というのがいるんです。
 要するに、幹事会を構成する関係一都五県のうち、三県の部長は国土交通省からの出向であり、総務省からの出向者も含めると、六都県のうち四県の部長が国からの出向者になっているわけであります。人数においても、幹事会全体の約四割が、政府からの、国からの出向者で構成をされています。
 総理、率直にお尋ねしますけれども、八ツ場ダム推進の立場の国交省の関係者ばかりが集まって、どうしてまともな検証につながるんですか。お答えください。

○野田内閣総理大臣 ちょっと国交省の出向者が多いなという感じはありますが、それはそれとして、予断なく検証してほしいというふうに思います。

○塩川委員 それはそれとしてというのはどういうことですか。

○野田内閣総理大臣 四人の大臣のもとでしっかりと予断なく検証してきて、その結果を受けて、前田国土交通大臣が判断をしたというふうに思います。

○塩川委員 予断なくじゃないんですよ。推進という予断のもとにやっているというのが、この幹事会の構成なんじゃないですかと聞いているんですよ。もう一回お答えください。

○前田国務大臣 お答えいたします。
 先ほど、四名の出身について御質問がありました。その四名が国土交通省出身でございまして、全体で十三人ですか、おられますが、そのうちの四人が国土交通省ということでございます。
 それから、申し上げますが、そういうスキームで検証を重ねてきた、その結果について、有識者委員会で最終的にその検討のプロセス等に瑕疵はなかったということだけは確認をさせていただいた上で、あくまでも、最終的には、いろいろな観点から熟慮を重ねた上で、国土交通大臣において判断をさせていただいた、こういうことでございます。

○塩川委員 検証の内容以前に検証の進め方が問題なんじゃないかということを聞いているんですよ。国土交通省の人間ばかりが集まって検証すれば、推進してきたという八ツ場ダム、ゴーサイン出そうという方向になるのは余りにも明らかじゃありませんか。こういう検証の場、検討の場を設定したこと自身が問われているんですよ。それを行ったのが民主党の内閣であります。このことが問われなければなりません。
 八ツ場ダム検証の検討主体が八ツ場ダムを推進してきた国交省であること自体が問題で、加えて、八ツ場ダム関係六都県のダム担当部長の多くが国交省からの出向者となれば、身内の検証ということでしかない、信頼度はゼロであります。ダム事業を担当する少なくない関係都県の部長や課長職が国交省の出向先になっているなど、結局、国交省を中心にしたような、いわゆる河川村みたいなものがダム見直しの障害となっているということが、こういうところにも見てとれるのではありませんか。
 このような関係都県と一体となった国交省中心の八ツ場ダム推進の仕組みに加えて取り上げたいのが、天下りの問題であります。
 国交省に要求した資料によれば、二〇〇四年度から二〇〇八年度までの八ツ場ダム関係の工事及び業務契約は四百七十億円に上ります。八ツ場ダム関係の工事及び業務契約をした企業や団体に、二〇〇四年度以降、国土交通省からの天下りが何人いるのかについてお答えください。

○前田国務大臣 一千万円以上の八ツ場ダム関連の工事または業務について契約を行った百六十七法人のうち、四十六法人に国土交通省から延べ百四名が再就職をしております。

○塩川委員 二〇〇四年以降の八年間で四十六法人、百四人の天下りが行われていたわけであります。この天下りを受け入れた四十六法人の八ツ場ダム関連の契約額も約百五十億円、これは二〇〇四年度から〇八年度にかけてでありますが、約百五十億円に上ります。
 私の調べでは、そのうち、八ツ場ダム検証の検討主体である関東地方整備局から、天下りは十六人に上っているということでありました。ここにもありますように、上から三段目のところにある社団法人関東建設弘済会には、関東地方整備局から七人の天下りがあり、受注額は四億八千万円に上ります。また、上から二番目にありますダム水源地環境整備センターにも、関東地方整備局から二人、受注額は五億一千万円に上っています。
 このダム水源地環境整備センターに天下った者の中には、栃木県の土木部河川課長に出向していた国土交通省の関東地方整備局の幹部も含まれている。こういうところにも、国と関係都県とを行ったり来たりして、結局は同じように八ツ場ダム関連の業務を受注している法人に天下っていくという構図になっているわけであります。ダム水源地環境整備センターには、国交省から全体では九人が天下っているという状況であります。
 ちなみに、関東建設弘済会というのは理事長と専務理事、それからダム水源地環境整備センターについては理事長職が五代続けて国交省からの天下りとなっている典型的な天下り法人であります。
 総理にお尋ねしますが、八ツ場ダムを必要としているのは、国民や県民ではなくて、こういった天下りを受け入れる受注企業や団体、天下りをしているような国交省OBだったんじゃありませんか。お答えください。

○前田国務大臣 今御指摘のことなんでございますが、この弘済会も含めて、河川の八ツ場ダム関連の調査というのは極めて専門的な分野ですから、どうしてもこういう調査関係のところに集中しがちでございます。
 しかし、そういったところを含めて、検討の場でやってきたことについては、要するに、数値計算であったり今までの調査であったり、そういう今までやってきたことが瑕疵がないかということを調べた上で、その計画について、最終的には本省に設けられた有識者委員会において、その検討のプロセスに瑕疵がなかったかどうか、今委員が御懸念のようなところについて瑕疵がなかったかどうかというのをしっかり見ていただきまして、その結果、瑕疵がないというふうな報告を受けているところであります。

○塩川委員 幹事会の構成メンバーが国交省の人間ばかりなんという検証はどこにもありませんよ。そんな議論なんてどこもやっていない。大体、そういう専門性という口実で天下りを容認してきたというのは、自公政権以来同じ理屈でありますよ。そもそも、天下り根絶と言っていたのは民主党だったのではありませんか。
 八ツ場ダムに関連しても、天下り法人の多くは、八ツ場ダム関連の調査業務とか測量業務を請け負っています。八ツ場ダムについては地すべり被害の危険性が指摘をされていますけれども、この事業継続の一つの鍵とも言える十七の地質調査業務のうち十二業務を天下り法人が受注しています。
 地質のほかにも、安全性の評価にかかわる代替地の実施設計とか、ダム本体修正設計といった業務が天下り法人に集中をしている。天下り法人がまとめた調査報告書の結論は、どれも事業や安全性を妥当としたものばかりであります。
 結局、八ツ場ダム推進の国交省からの天下り法人が八ツ場ダム推進のお墨つきを与える。これでまともな結論が出たと言えるのか。
 総理にお尋ねしますけれども、こういう天下りも返上して、幹事会の構成も見直して、しっかりとした検証をやり直す、それなしに八ツ場ダムは推進はしない、このことを言明できませんか。

○中井委員長 岡田行政改革担当大臣。(塩川委員「委員長、総理に聞いているんですから」と呼ぶ)こういうのは改革でしょう。岡田君、答えてください。三十秒しかありません。

○岡田国務大臣 天下りの問題については、政府としても、従来からその根絶に向けて取り組んでいるところでございます。その以前からということはあったかもしれませんが、今後ともしっかりと天下りの根絶に向けて取り組んでいきたいというふうに考えております。

○中井委員長 野田内閣総理大臣。十秒ぐらいしかありませんから。

○野田内閣総理大臣 関係自治体への出向であるとか受注企業への天下り状況等は御指摘のとおりだったんだろうと思いますが、加えて、専門家とか有識者の会議も経ながらの意思決定をしてきているというふうに思いますので、予断なくプロセスをたどってきたというふうに思いますし、国土交通大臣には、官房長官の裁定をしっかり踏まえた対応をしていただきたいというふうに思います。

○塩川委員 天下りの根絶を公約に掲げていた民主党も、結局、自公政権の継承者となった、このことをはっきり示すものでした。
 企業・団体献金の禁止や天下りの根絶でダム利益共同体の解体を求めるとともに、まともな検証なしの八ツ場ダム推進の結論は許されない、八ツ場ダムのような無駄遣いを継続しながらの消費税増税などとんでもないということを述べて、質問を終わります。