<第180通常国会 2012年02月23日 総務委員会 2号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 私は、日本共産党を代表して、民主党、自民党、公明党三党提出による国家公務員の給与改定及び臨時特例法案及び自民党、公明党提出の修正案に対する反対討論を行います。
 討論に先立ち、労働基本権制約の代償措置である人勧制度さえ踏みにじり、公務労働者に重大な不利益を押しつける法案を、わずか半日、極めて短時間のうちに質疑、採決、緊急上程まで押し通すという暴挙に断固抗議するものであります。
 本法案は三党の密室協議の結果であり、そもそも法案の形でその内容が明らかにされたのは昨日の午後であります。にもかかわらず、十分な審議を保障することなしに、初めに出口ありきのやり方で押し通すことは、議会制民主主義をないがしろにするものと言わなければなりません。
 私は、重大な内容を持つ本法案については、徹底審議が必要であり、とりわけ労働組合代表からの参考人質疑は不可欠であると強く主張してきましたが、それすらも行わずに採決を強行することは断じて許されません。
 結局、採決、緊急上程にしがみつくのは、今年度中に人勧を実施したという形をとって消費税増税の地ならしを行う、身を切る改革の実績づくりにほかならないのであります。
 本法案に反対する第一の理由は、本法案が、国家公務員に対する労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度すら無視して、一方的な不利益を国家公務員に押しつける二重の憲法違反となるからであります。
 憲法二十八条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」としており、勤労者に公務員が含まれることは歴代政府も認めているとおりであります。この永久不可侵の権利が長年にわたり不当に制約されている違憲状態に終止符を打って、労働基本権の全面的な回復を図ることこそ国会のやるべきことであります。
 こうした違憲状態が回復されていない、いわば国家公務員の手足を縛った状態のままで、人事院勧告の水準をはるかに超える平均七・八%もの給与を、来年も、また再来年も国家公務員の給与から奪い取ることは認められません。まして、民主、自民、公明の密室協議による議員立法の形で行うなど、前例のない異常なやり方と言わねばなりません。
 復興財源のためというのも理由になりません。本法案は、被災地である東北地方の国家公務員にも例外なく適用されます。被災者の国家公務員から平均七・八%の給与を長期に奪うのでは、暮らしも成り立たないことは明らかであります。
 反対の第二の理由は、このような国家公務員給与の大幅な引き下げが、国民全体の所得減少の悪循環を招き、内需をさらに冷え込ませ、ひいては財政の一層の悪化をもたらすからであります。
 国家公務員給与は、地方公務員や独立行政法人職員、民間保育園や病院の労働者など、約六百万人もの労働者の賃金に影響を与えるものです。民間企業でも国家公務員給与を踏まえた賃金決定の仕組みがつくられており、その影響は極めて甚大です。
 そもそも、地方の国家公務員の給与は、この十年余りで二割も引き下げられています。公務員給与の削減が民間賃金を引き下げ、それがまた公務員給与引き下げを招いてきています。
 政府がまとめた二〇一一年版の労働経済白書は、賃金抑制が消費と国内需要の減少へとつながり、さらなる物価の低下を促すという物価、賃金の相互関連的な低下につながったと述べています。国家公務員の一方的な大幅給与引き下げは、ただでさえこの政府自身の分析に逆行し、ましてや今度の民間労働者給与のさらなる引き下げに絶好の口実を与えることになることは明らかです。
 さらに、自民党、公明党共同提出の修正案については、「地方公務員の給与については、地方公務員法及びこの法律の趣旨を踏まえ、地方公共団体において自主的かつ適切に対応されるものとする。」として、地方自治体に本法案による公務員給与引き下げを押しつけるものとなっており、極めて重大です。地方の人事委員会勧告をも大幅に上回る地方公務員の給与削減が行われるなら、人事委員会勧告制度は形骸化し、地方経済をさらに冷え込ませることになります。
 修正案にも反対であることを述べて、討論とします。