<第180通常国会 2012年02月23日 総務委員会 2号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 民主党、自民党、公明党提出の国家公務員給与特例法案について質問をいたします。
 最初に、法案の提出者にお尋ねいたします。
 法案の提出者は、今回この法案を出すに当たりまして、国家公務員労働者を代表する労働組合に対し、この法案についての説明、交渉、合意、このようなことを行われたんでしょうか。

○稲見議員 お答えいたします。
 議員立法であるこの法案にかかわりまして、職員団体から意見聴取をしたことはございません。しかしながら、この法案は、政府から提出をされました臨時特例法案の考え方を踏襲いたしております。
 六月三日の閣議決定に至る過程では、政府と当該の労働組合で真摯な協議、交渉が行われて、そして、当初は一〇%という削減提案でございましたが、若年層については、それは生活の中できつ過ぎるということで五%ということになり、一〇%との間の中間層については八%ということで、全体として削減率が七・八%になった。こういう経過を含めましても、その内容については十分な議論の経過を持っている、こういうふうに考えております。

○塩川委員 法案提出者として、労働組合と交渉どころか意見聴取もしていないということであります。
 政府提出法案を踏まえてという話がありますが、使用者たる政府として労使交渉を行うということはあるわけですけれども、それと離れた国会議員の側がこのような法案を出すことについての憲法上の疑義があるということは言わざるを得ません。
 そういう点でも、少なくとも、最終的に決めるという国会の場において労働組合の意見を聞くということは、最低限の責務であるはずであります。
 昨年の人事院の報告は、政府提出法案、閣法について、その提出の過程で職員団体と交渉をしたが、合意に至ったのは一部の職員団体でしかなく、多数の職員から理解と納得を得るための手続はとられていないと述べ、「労働基本権制約の代償措置が本来の機能を果たしていないこととならないか、強い懸念を持っている。」「国会におかれては、上記の点を含め、審議を尽くしていただきたい。」としております。
 自律的な労使関係制度の先取りなどといった労使交渉を行ったとされる閣法でさえ、合意したのは一部の労働組合であり、このことについて人事院としても問題点を指摘せざるを得なかった。ましてや今回出されたのは議員立法であって、法案提出者は一度も労働組合の意見さえ聞いていない。法案を審議するのであれば、この法案に対する労働組合の意見を聞くのは最低限の責務ではありませんか。
 法案提出者としてどのように考えるのかをお聞かせください。

○稲見議員 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたように、これは閣法が出ておりまして、その後、九月の三十日に人事院勧告が出された、そして自公の法案が議員立法として提出をされた。こういう中で、何としても復興財源を確保するために早期に法案成立をさせたい、こういう中で三党協議を行ってきた経過を持っております。したがって、七・八%の削減につきましては、政府案を踏襲して、その内容については憲法違反の疑いなし、こういう内閣法制局の立場を踏まえて提出をされている、こういうふうなことであります。
 塩川委員の御主張につきましては、本日の理事会でもございました。それに対しては、筆頭間で協議をして、配付資料という形で、当該の労働組合の見解、御意見についてもこの委員会の場でそれをお示しいただく、こういう形で対応をしてきた、こういうことについて御理解をお願いいたしたいと思います。

○塩川委員 今、稲見法案提出者からありましたように、国公労連の「党利党略の談合は憲法を二重三重に蹂躙する暴挙 「賃下げ法案」等に関わる「三党合意」は認められない」という談話や、消費税増税のための公務員賃金引き下げ協議に関しての全労連の意見を資料として配付いたしました。
 こういう中身についてきちんと答えることこそ国会がやるべき仕事ではないのか、法案提出者がやるべき仕事ではないのか、このことを強く言わざるを得ません。早期に法案を成立させたいなどといっても、なぜ国会の場で審議をしない、そういう理由にはならないということを言わざるを得ない。改めて参考人で意見を聴取するなり、意見表明の場を設けるなり、この法案の審議の過程を通じて、少なくとも不利益をこうむる国家公務員、労働組合の意見を聞く、これは最低限の責務じゃないのか。この点を聞いているんですけれども、改めてお答えください。

○稲見議員 お答えいたします。
 塩川委員の御指摘をいただきまして、文書による意見聴取といいますか、見解を、この委員会の中で皆さんにお示しをする、こういう形にいたしました。
 一方で、交渉で労使合意をいたしました連合、公務労協についても、私の方から御連絡をいたしましたけれども、それは、労使合意に従っての閣法、そしてそれを踏襲した議員立法ということであれば、国会審議に委ねる、こういうふうな内容であったということも明らかにしておきたいと思います。

○塩川委員 早期に法案を成立させたいなどと言っても、国会の審議において、例えばこの法案についても、目的は歳出の削減、人件費の削減だと。削減分である今年度分のマイナス人勧部分については六月のボーナスで調整をする。特例部分については四月の一日からです。法案上は、三月に入って通したとしても、仮に通したとしても、これは予定どおりできるという仕組みになっているわけですから。二月末日、三月一日までにと言われるのは、その点でも、まともな審議をしたくない、こういう問題に答えたくないという態度のあらわれでしかない、このことを強く言わざるを得ません。
 不利益をこうむる国家公務員の労働者の意見さえ聞かずに、賃下げを短時間で審議、採決することは許されないと強く申し上げる。
 そもそも、マイナス人勧を超えて労働者にとって不利益となる引き下げを行うことは憲法違反であり、今年度分の人勧を実施したとしても、二〇一四年三月までの七・八%引き下げを決めることは、複数年度にわたって人勧を尊重しないことも意味するものであります。労働基本権制約の代償措置としての人勧制度に基づかない賃金決定は違憲行為であり、民自公の三党の議員立法という形で行うことも前例のない異常なやり方だと言わざるを得ません。
 労働基本権の回復もなしに一方的に賃下げを行うことは憲法違反だ、このことを強く申し上げておくものであります。
 次に、提出者は、法案提出の理由の一つとして、東日本大震災に対処する必要から国家公務員の人件費削減が必要だと言います。
 多くの国家公務員が東日本大震災原発事故において献身的な活動を行いました。その中に自衛隊も含まれております。現状では、自衛隊の派遣命令は解除をされ、被災地から撤収をしております。一方で、一般職の国家公務員は、発災直後から被災者支援、復旧復興業務に従事をしてまいりました。ライフラインの回復、確保、そのための道路や港湾や空港の復旧のために二十四時間体制で取り組んできた、そういう直後からの活動があり、また、被災者支援のためにも、ハローワークでの業務や労働基準監督官などの仕事なども、この間、復旧復興業務にかかわって、労災事故を防止する観点からも一層の重要性が増してきている。
 現在でも多数の職員が被災地において全国からの派遣、移動などによって奮闘しております。派遣されるもとの方は、全体の定員が削減をされる中で、人員不足の中で、あいた穴を埋めた懸命の仕事をしておられます。
 法案提出者にお尋ねしますけれども、国家公務員全体が東日本大震災において被災者支援、復旧復興業務に貢献をしてきたのではありませんか。その点についての認識をお尋ねします。

○石田(真)議員 塩川委員にお答えをさせていただきます。
 先ほど今津委員の御質問にもお答えをさせていただきましたが、本当に、今回の東日本大震災の復旧に当たりましては、自衛隊のみならず、国家公務員では海上保安庁あるいは各省の職員、皆さんが献身的に御尽力をいただいた。また、各地方から警察あるいは消防初め、さまざまな方が献身的に御活動いただいた、そのことは我々も十分認識いたしておりまして、論をまたないところでございます。
 ただ、自衛隊については、先ほども申し上げましたように、やはり二十五万人足らずの全職員の中で十万人を超える、これは現地に十万人、ということは、後方支援等を含めれば、自衛隊全体でこのことにかかわった。一方で、防衛業務という本来業務を抱えながら、これを長い期間にわたって取り組んでいただいたということは、やはり大変なことであったということで、私は、国民的な評価も高い、そういう意味で申し上げて、これに対して対応する措置を行うということについては、国民的理解をいただけるものということで、今回措置させていただいたところでございます。

○塩川委員 自衛隊の十万人は、派遣命令が出されている数であります。ですから、実際に何人が仕事をしたかという数は把握をしていないというのが防衛省の答えでありました。
 同様に、もちろん、後方支援の活動もあります。それは国家公務員も同じなんです。国家公務員ももちろん、被災地の現地で奮闘される国家公務員もおり、全国から被災地に駆けつけて協力をする国家公務員もあり、それぞれ送り出したもとの方は、少ない人員の中で通常の業務を行っている。通常業務に加えて被災者支援、復旧復興業務を行っているという点では、全ての国家公務員が共通しているんじゃありませんか。
 そういうときに、自衛隊も含めて、結局は賃下げを行うということは、こういう復旧復興業務に懸命に活動している国家公務員の士気を下げるだけが、この賃下げなんじゃないのか。こういう士気を下げるような、復旧復興業務の妨げになるような賃下げを行っていいのかということを問うているんですよ。いかがですか。

○石田(真)議員 先ほどもお答えをいたしましたように、さまざまな方々がこの復旧業務にかかわっていただいた、それは我々も十分理解をしておるわけですけれども、全てを挙げてこの問題にかかわっていただいたというのは、私たちは、自衛隊の方が、一方の本来業務をおきながら、大変な状況の中で対処していただいた、そのように考えているわけでございます。
 そして、今回のこの法律の目的が、この厳しい財政状況と同時に震災の復興財源を捻出する、そういうことも考え合わせる中で、今回の措置をさせていただいたということですので、御理解を賜りたいと思います。

○塩川委員 被災地で懸命に頑張る国家公務員は、全国から送り出されています。だから、全国がそういう意味じゃ被災地支援で頑張っているんですよ。そういう点では、全ての国家公務員に共通しているんです。こういうことについての認識を前提に対応を考えなくちゃならぬ、そういう人たちの士気を下げるような賃下げを行うということはおかしいんだ、このことを改めて受けとめていただきたい。
 こういった復興財源のためという話もありますけれども、そもそも人件費というのは生計費ですから無駄や浪費じゃないんです。無駄や浪費じゃないんですよ。削るんだったら、無駄や浪費を削れと。それこそ八ツ場ダムのように、一度は民主党がやめると言ったのを復活するような、こういう無駄遣いこそやめるべきだし、原発政策の転換をということであるのならば、さらにプルトニウムに進むような、核燃料サイクルに進むような、そういった予算について削って被災地の復興のために充てる、こういうことこそ行うべきであって、賃下げを行うのは間違いだ、このことを強く申し上げておくものであります。
 加えて、被災地では、国家公務員の方も被災をしておられます。法案提出者にお尋ねしますが、被災者である国家公務員は、この復興に当たっての賃下げ、対象外になるんでしょうか。

○稲見議員 お答えいたします。
 東日本大震災の被災者ということでいいますと、これは国家公務員、地方公務員、あるいは民間の方、それを区別することなく、さまざまな支援策を今とっているところでございます。そういう意味では、全国の国家公務員に対して、震災復興あるいは今の大変厳しい財政事情のもとで身を切る減額ということをこの法案では求めているわけですから、その中では東北の被災者も別扱いをすることはない、こういうふうに考えております。

○塩川委員 被災者である国家公務員にも賃下げを押しつけると。そもそも被災地の復興というのは、被災者の生活再建なしにはあり得ないんですよ。その被災者の足を引っ張るようなことをやっていいんですか。そのことが問われているんじゃありませんか。被災者でもある国公労働者にも賃下げを押しつけるのでは、復興に逆行するものだと言わざるを得ません。
 そもそも国家公務員の給与は、民間賃金のこの間の大幅な減少も反映して、一九九九年をピークにその後減少に転じて、以降連続的に減少しております。
 人事院総裁にお尋ねをいたします。
 被災地であります東北地方のほとんどは、地域手当の非支給地となっております。そこの国家公務員、人事院の報告にもありますようなモデル例、係長で四十歳、配偶者、子供二人、こういった場合に、この十二年間で賃金はどれだけの割合減少しているんでしょうか。

○江利川政府特別補佐人 平成十一年から給与が減ってきておりますので、その前の平成十年と平成二十二年の給与を比較します。
 四十歳の国家公務員のモデル例で比較しまして、地方機関、地域手当の非支給地勤務の係長で計算しますと、約一九・〇%減少しております。

○塩川委員 つまり、この十二年間でもう一九%引き下げられているんです。実際は二割の人件費削減なんですよ。その上に賃下げをやるんですかということなんですよ。
 実際、この間の民間賃金が下がったというのは、この間の派遣法の改悪とか有期雇用の規制緩和のような労働法制の規制緩和のもとで雇用破壊が進んだ結果です。そのために、非正規が増大するだけではなくて、民間の正規雇用の社員の給与も下がっているんですよ。二十代、三十代、四十代の民間の正規雇用の賃金は下がっているんですよ、この十年で。だから、公務員だって下がるんです、民間準拠で。ですから、民間が下がり公務員が下がり、また公務員が下がることによって民間は下げるということにもなりかねない。このことは後で質問をしますけれども。
 そもそも、被災地において、公務員の皆さんはこの十二年間で二割の賃下げであります。この間、給与構造改革のようなことも行われて、地域手当が導入されたことによって特に地方の方は一層賃下げが行われたというのが、このことを生んでいるわけであります。これまでも二割も下げられて、さらに七・八%の引き下げでは、被災者でもある国家公務員の暮らしが成り立たない。
 私がお尋ねしたいのは、こういった被災者となっている国家公務員の労働者に対し賃下げを押しつけるようなことを行えば、被災者の生活再建支援に逆行するのではないのか、この点についてお答えいただけますか。

○稲見議員 お答えいたします。
 私も、党の震災対策本部の一員として、被災地にあるいは被災者に寄り添ってまいりました。そういう意味では、役所機能の喪失の中で自治体職員も非常に苦労しておられる。そして復旧復興については、東北の出先機関の国家公務員の皆さんが大変御苦労をし、御尽力されている、奮闘されているということを目の当たりに見ております。さらに、農漁業ということでいいますと、土地を失い、あるいは漁場を失い、そして毎日の仕事を失ったというような方がさらにたくさんいらっしゃる、こういうふうな状況でございます。
 そういう中で、復旧復興に御尽力をいただいている国家公務員の皆さん、被災者の皆さんに七・八%、大変苦しい選択でございますが、閣法を踏襲して、ここは、公務員の身を切る努力ということに対する国民の皆さんの非常に大きな声もあるわけですから、このことに応えていくべきだ、こういうふうに考えております。

○塩川委員 被災地の公務員の状況について何らの配慮もないということであります。
 こういった賃下げを行うべきではない。今やるべきなのは、復旧復興業務のもとで非常にふえているサービス残業の問題ですよ。全体の手当の額が決まっている中で、残業、超勤はどんどんふえる、結果としてサービス残業が蔓延するような状況こそ一掃すべきじゃありませんか。
 また、実際これから復旧復興業務が進む中で、事業が拡大する中で何が足りないかといえば人手なんでしょう。技術職を初めとした人手が足りないんですよ。そういうところに国家公務員でも大きな力を発揮してもらう。もちろん自治体の方にもお願いもしている。
 こういったところにこそ力を尽くすべきが国がやるべき仕事であって、公務員の賃下げを行うことじゃない、このことははっきりしている、このことを申し上げておくものであります。
 次に、今回の法案では、課長級以上の職員の賃下げは一〇%ということであります。
 江利川人事院総裁にお尋ねします。
 江利川総裁が新聞のインタビューにおきまして、こういう一〇%のカットは懲戒処分の水準だ、このように述べているわけですけれども、これはどのような意味なんでしょうか。

○江利川政府特別補佐人 新聞のインタビューは産経新聞と毎日新聞とあったわけでありますが、震災対策のための削減の幅についての質問については人事院としては答える立場にはないということを再三申し上げたわけであります。その一連の取材が終わりました後に、でも一〇%って厳しいですよねという記者の話に、一〇%って、よく聞くのは懲戒処分ですよねというような話を答えたんですが、それがあのような記事になったわけでありまして、必ずしも積極的にどうこう答えたという意味ではないんです。
 ただ、事実として、懲戒処分で多いのは一〇%でありまして、かつ、その処分期間も二カ月ないし三カ月ぐらいがせいぜいでございますので、それは、事実として、そういうことはございます。

○塩川委員 総裁のお話にありますように、一〇%というのは懲戒処分の水準、それも実際に二カ月、三カ月ということで、今回の場合は、二カ月、三カ月どころか、二年間なんですよ。
 懲戒処分相当の賃下げを二年間も継続する、こういうあり方では、やる気が失われる。何ら処分の対象にならないような一般の国家公務員の皆さんが懲戒処分相当の一割の賃金カットを二年間も継続される、こういうことでは、納得できないという声が上がるのは当然であります。
 ちなみに、総裁にお尋ねしますが、一〇%カットの減給処分というのはどのような不祥事を行った場合なんでしょうか。

○江利川政府特別補佐人 例えばですが、減給十二カ月、一〇%カットしたケースでございますが、飲酒後、部下に対してタクシー車内でセクハラ行為をしたというようなケースでございます。

○塩川委員 こういういかがわしいような事案に対しての賃下げでしょう。
 法案提出者の皆さんは、こういうセクハラ行為を全部の国家公務員がやっているんだと、同じような措置を、賃下げという形で、一〇%という形で、やっていると言われても仕方がないということであります。これでは士気が低下するのは当たり前だ。
 厚生労働省にお尋ねをいたします。
 労働基準法の九十一条では、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一賃金支払い期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない、つまり、減給という制裁を行う場合には十分の一を超えてはなりませんよ、そういうことを掲げているわけですけれども、その理由は何でしょうか。

○金子政府参考人 お答えいたします。
 ただいまの労働基準法第九十一条についてのお尋ねでございますが、これは民間の労働者の方に適用される法律でございます。その趣旨は、減給の制裁を一定の限度に制限しないと、賃金をよりどころとする働く方々の生活を脅かすことになる、こういうことの趣旨で設けられた規定と承知をしております。

○塩川委員 つまり、生計費である賃金、これを大きく削るということは、生活を脅かすことになるんだ、制裁であったとしても、それには制限があるんだ、それは十分の一だよ、十分の一を超えてはならないよというのが労働基準法九十一条の規定であります。
 もちろん、民間の労働者の規定ですから国家公務員では違うという話もあるかもしれませんけれども、考え方は同じですよ。労働者の生活が賃金で支えられている以上は、減給という制裁に当たっても、労働者の生活が成り立たなくならないようにするという趣旨の法律になっているわけで、それが十分の一という条件になっているわけですから。
 法案提出者にお尋ねしますが、今回の公務員賃下げでは、懲戒処分の制裁でもないのに十分の一に匹敵する賃下げを行い、中には十分の一を超える職員さえいるわけですから、これでは生活が成り立たないんじゃありませんか。この点をお聞きしたい。

○稲見議員 お答えいたします。
 先ほども申し上げましたけれども、大変厳しい削減の法案であることは事実であります。
 ただ、第三次補正で十六兆円余りの財源が復興財源として被災地に届いております。そのうち、全体として国民に負担をしていただく分もありますが、政府としては、七兆円分、何とか努力の中で生み出していきたいというのが今後の課題になっております。
 そして、この削減によって得られる財源というのは年間で二千九百億円、二年間で五千八百億円という非常に大きなボリュームであります。そのことを全体として辛抱しながら、復興に向けて被災地を励ましていこうというのがこの法案の趣旨である、このことを政府としても、全ての公務員の皆さんにしっかり説明をし理解をしていただいて、そして協力をいただくというのが政府の役割であり、我々の役割でもある、こういうふうに思っております。

○塩川委員 労働者の生計費である賃金は、無駄や浪費ではありません。削減する対象ではありません。削るべきところはほかにある、このことを申し上げたところであります。
 こういった大幅な賃下げを許すことは認められないということは強く申し上げ、最後に、この国家公務員の賃金は、多くの労働者の賃金に影響を与えるわけであります。人事院総裁にお尋ねしますが、この人勧の波及というのはどのぐらいの人に及ぶんでしょうか。その人数と、それぞれの内訳もお示しください。

○江利川政府特別補佐人 人事院勧告の直接の対象者、一般職の国家公務員は二十七万人でございますけれども、特別職も含めまして国家公務員六十万人。さらには、地方公務員にも影響します、二百八十万人。公務関係で、合わせまして三百四十万人の影響があります。また、独立行政法人、国立大学法人等に約八十万人ぐらいありまして、この人たちにも影響が及んでおります。そのほか、民間でありましても、公務員準拠で給与を決めているところがございます。学校であるとか病院であるとか、そういうところを合わせますと百六十万人ぐらいございまして、合計しまして、五百八十万人ぐらいの影響があるわけでございます。

○塩川委員 六百万人の労働者に影響を及ぼすということでは、地方に影響も及び、民間にも影響が及ぶ、そのことを言わざるを得ない。
 最後に、提出者と大臣にお尋ねします。こういった国家公務員の賃下げというのは、民間の職場での賃下げに格好の口実を与えるだけだ、国民全体の所得減少の悪循環を招き、内需を冷え込ませ、経済財政の悪化をもたらすものじゃないのか、このことをお答えいただきたい。

○平井議員 確かに、今回、国家公務員の給与を引き下げるのではありますが、先ほどもお話がありましたとおり、東日本大震災に多額の予算を組み、それを執行していくということでありますので、こういう緊急事態への対応のことでありますから、影響はないと私は考えております。

○川端国務大臣 国家公務員の給与削減措置は、我が国の厳しい財政状況、とりわけ東日本大震災の復興財源に資するということで実施いたします。
 そういう意味では、国家公務員の給与の引き下げ分については、国庫から復興のための歳出が行われるということでありますので、その部分においては経済に上向きに復興財源としての支出に資するものでありますので、トータルとして、マクロ的に経済にどういう影響を与えるかは注視をしていかなければなりませんが、大きな意味では、全体的な影響は少ないものと思っております。

○塩川委員 労働者の賃下げがこの間続いている、その賃下げの悪循環をさらに加速するものが結果として内需を冷え込ませ、日本経済を停滞、後退させるということについての認識は全くないという点は極めて重大だ、このことを言い、消費税増税を押しつける、その地ならしとしての賃下げは容認できない、撤回すべきだと申し上げて、質問を終わります。