<第180通常国会 2012年03月16日 内閣委員会 4号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 法案審議に関連をして、警視庁公安部情報流出問題について質問をいたします。
 一昨年、二〇一〇年十月に、警視庁公安部が作成した疑いのあります文書が大量にインターネット上に掲載されたことが判明をし、警察庁は同年十二月に、「国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案に関する中間的見解等について」を公表しました。
 当時、岡崎国家公安委員長は、テロ情報の掲出問題につきましては、全容解明に向けて全力で警察を挙げて行っていくと記者会見で述べておりましたが、全容の解明が進んでおりません。あわせて、岡崎国家公安委員長は、個人情報が掲出された方の保護ですとか情報の保全に万全を期していきたいと思っておりますと述べておられます。
 そこで、警察庁に確認をいたしますが、この国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案によって、どれだけの市民の情報また警察職員の個人情報がインターネット上に流出をしたのか、また、企業や大学、NPOなどの法人の名前がどれだけインターネット上にさらされたのかについて、お答えください。

○西村政府参考人 お尋ねの、インターネット上に掲出されました警察関係者及びその家族として記載されているものについては、約二百八十人の名前など個人情報の掲出を確認しております。それを除きまして、約一千人の方の個人情報の掲出を確認しております。また、約六百三十の法人、団体の名前の掲出を確認しております。

○塩川委員 市民の方一千名、警察職員の関係者の方二百八十、また、法人、団体などが六百三十ということですから、大変多くの数の個人情報などがテロとのかかわりでインターネット上にさらされました。
 この中間報告は国家公安委員会にも説明をされ、岡崎国家公安委員長は、委員会において、警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれていたという以上、情報保全を徹底するということと関係者の安全確保を図ることが大切であるという意見が出された、このようなことも述べております。
 そこで、国家公安委員長であります大臣にお尋ねをいたします。
 これらの情報が、警察内部からか、あるいは警察の内部に入り込んだ外部の人間によってインターネットに流出させられたかは不明ではありますが、いずれにせよ、警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が流出をしたわけであります。その結果、詳細な個人情報も流出をして、たくさんの市民や関係者、企業や団体に不安、被害を与えております。国家公安委員長として、これら関係者の方に謝罪をすべきではないか、大臣のお答えをお願いします。

○松原国務大臣 お答え申し上げます。
 警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれているデータがインターネット上に掲出されたことにより、不安や迷惑を感じる方が現におられるという事態に立ち至ったことは、極めて遺憾であると認識をいたしております。
 これまでも、警察において、本事案で個人情報が掲出された方約千人、出国していたり居住地が不明な方を除く、連絡することが可能な方に対しては、諸事情を勘案し、個別に面会するなどして、必要な措置を確認するための取り組みを実施してきたところであります。
 今後とも、個人情報が掲出された方に対する支援等について、誠心誠意対応してまいりたい、このように思っております。

○塩川委員 現実に、顔写真ですとか氏名ですとか電話番号など、個人を特定する詳細な情報が流れ出し、本籍地とか信仰とか前科の有無などのセンシティブな情報も流出したわけであります。多くの市民や警察職員、その家族が非常に大きな被害をこうむったことは明らかであります。
 こうした現実の被害に対して、私は、極めて遺憾ということではなくて、その経緯を考えても、警察の関与した情報流出ということは明らかであるわけですから、しっかりとした謝罪ということこそ求められていると思うわけであります。その点について、やはり被害に対してきちんとおわびをするということが必要だと思うんですが、改めて大臣、いかがですか。

○松原国務大臣 個人情報が掲出をされたということに関して、大変に遺憾に思っておりますし、そうしたことは本当に怒りを込めて遺憾であるというふうに思っております。
 そうした中で、とにかく現在もこの真相究明をきちっとやるということを、まずこれも取り組んでいるところでありまして、また、個人情報が掲出された方々に対しての支援は、誠心誠意対応していきたいと思っております。

○塩川委員 結果として不安や迷惑を感じる方が生まれたということについて遺憾と言っているわけで、そもそも、その被害をこうむった方々にきちんとおわびをするということこそ求められているわけであります。
 大臣、国家公安委員長もおっしゃっていたように、そういった方々にきちんと支援を行う、措置を行うという話がありました。個人情報が掲出された方の保護、その他の警察措置ということもこの中間報告で触れてあります。
 そういったときに、一人一人に具体的に対応するということになっているわけですけれども、警察庁に確認しますけれども、こういった市民の皆さんに対して、この情報流出について一人一人の方にきちんとおわびというのはされてあるんですか。

○西村政府参考人 個人個人の個別の方への対応状況につきましては、相手の方の事情に応じまして、本事案の発生について遺憾の意を表明している場合も含めまして、ケース・バイ・ケースで対応しているところでございます。
 今後とも、相手の方の心情、状況に十分配意しつつ、遺憾の意を表明することを含めて、誠心誠意対応してまいりたいと考えております。

○塩川委員 この問題でこういう被害者の方の相談を受けている弁護士の方から聞いたところ、その方が知る限り、数十人の被害者、誰一人として警察から直接、謝罪、おわびを受けた者はいないということを述べています。
 ケース・バイ・ケースじゃないんですよ。実際にそういった被害を訴えておられる方について、おわびという言葉すら、遺憾という言葉すら一つも聞いていない、こういうのが実態なんですが、こういったことについて確認していないんですか。

○西村政府参考人 お名前の出た方によりまして、警察との接触を拒んでおられる方もございまして、いずれにしましても、それぞれの相手の方の事情に応じまして、最も適切と考える措置をとるように努めてきたところであります。
 先ほど申し上げましたように、これまで本事案の発生について警察として遺憾の意を表明していない方に対しましても、今後、相手方の状況を注意深く見守りながら、誠心誠意対応してまいりたいと考えております。

○塩川委員 謝罪もなければおわびの言葉もないというのが実態なんですよ。
 こういった重大な被害の原因となっていながら、こういう警察の関与が疑われるような中で被害者の皆さんに謝罪もおわびもないということでは、言語道断な事態であります。こういう情報流出によって、多くの被害者の方々は精神的な苦痛も受けましたし、経済的な不利益も大きくこうむっているという事態にあるわけで、こういうことについての認識がないということこそ問われるわけです。
 国家公安委員長、こういった一人一人の被害者の方に対しておわびをするということこそ当然だと思うんですけれども、そういうことについてきちんと指導する、そういう考えはありませんか。

○松原国務大臣 警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれるデータがインターネット上に掲出されたことによって、委員御指摘のように、不安や迷惑を感じる方がたくさん現におられるという事態に立ち至ったことは、本当に私は、先ほど申し上げたように、怒りを込めて遺憾であるというふうな認識を持っております。
 そうした中で、警察においてはこれまで捜査及び調査を徹底してきましたが、現時点において、残念ながら、事実の究明には至っておりません。国民から信頼を回復するために、一日でも早く事実究明を図ることが必要であり、警察において総力を挙げて厳正に捜査及び調査を行うように、警察を管理、指導してまいりたいと思っております。
 国家公安委員会においても、この事案が発生したときに、こういったことを含め議論がなされておりますが、とにもかくにも国民からの信頼を回復するために、こういったことを推進してまいりたいと思っております。

○塩川委員 そんな答弁では警察の信頼は回復されないということを述べておきます。
 その上で、こういったプライバシー情報の収集の方法にも重大な問題があると言わざるを得ません。
 流出した文書の中には「イスラムコミュニティー現勢」というものがあり、その中に、留学生という項目があります。
 文科省、城井大臣政務官、おいでいただいております。お答えいただきたいと思うんですが、大学については、留学生数千二百六十六人、把握数三百九十七人、把握率三一%という記述があります。専門・日本語学校では、留学生数五百十一人、把握数四百人、把握率七八%と高くなっています。国際交流会館・寮では、留学生数二百五十九人、把握数二百四十三人、把握率は九四%。留学生支援団体では、留学生数三百七十人、把握数三百十人、把握率八四%。合計で二千四百六人、把握数千三百五十人、把握率五六%とされております。
 警察は留学生をどのように把握しているのか、その方法をうかがわせる流出文書もあります。「北海道洞爺湖サミット警備における国際テロ対策の推進結果を踏まえた総括意見聴取表」という文書であります。
 そこには、「(東京農工大、電気通信大)の管理者から留学生名簿を入手、イスラム諸国人留学生百七十九名を把握。」とあります。つまり、大学の管理者から留学生名簿を提出させて、その名簿からイスラム諸国人留学生を把握しているのではないかと推察されます。また、この文書では、帝京大学に対する管理者対策により、サウジアラビア人留学生十六名が在籍していることが判明したとの記述があります。
 流出文書によれば、警視庁は、大学等の管理者から名簿等を提出させて、どの大学に誰という、イスラム諸国からの留学生を把握していたということがうかがわれるわけであります。
 その点について文科省にお尋ねしますが、大学を初めとする教育研究機関における留学生のプライバシーの重大な侵害がうかがわれる文書であると思いますが、こうした文書がインターネット上に流出していたことを文科省は把握しておりましたか。

○城井大臣政務官 お答え申し上げます。
 インターネット上に流出した文書並びにそれが掲載された書籍について把握をいたしております。

○塩川委員 重ねてお尋ねしますが、こうした文書がネット上に流出していたことについて、警視庁あるいは警察庁から情報提供というのはあったんでしょうか。

○城井大臣政務官 お答え申し上げます。
 ございませんでした。

○塩川委員 今、名前を挙げたような大学、例えば帝京大学には、当然、個人情報保護方針があります。流出文書には、帝京大学に対する管理者対策により、サウジアラビア人留学生十六名が在籍をしていたことが判明したとありますが、管理者対策という表現は、管理者から、大学の個人情報保護方針にのっとらないで個人情報の提供を警察が受けたことを示唆する表現であります。
 文科省に一般論としてお尋ねをいたしますが、大学がみずから決めた個人情報保護方針にのっとらないで警察を含む行政機関に個人情報を提供することは、これは重大な問題ではありませんか。

○城井大臣政務官 お答え申し上げます。
 先ほど御指摘のあった三つの大学についても文書担当を通じて事実を確認しましたが、その事実はないというふうに聞いております。
 その上で、その対応でございますが、法令等に基づき、各大学の判断により適切に対応されるべきものというふうに考えております。

○塩川委員 次に、国立大学法人についてお尋ねします。
 国立大学法人個人情報保護規程に従って、大学ごとに個人情報保護規程を定めています。警察に留学生名簿を提出したと流出文書に書かれている東京農工大学は、個人情報の目的外利用について、警察などの行政機関に提供する際も、「保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。」と規定をしております。
 重ねて文科省に一般論としてお尋ねをしますが、イスラム諸国から誰があなたの大学に留学しているか把握をしたい、そのために留学生名簿を出してくださいと言われてそういう名簿を提出するということは、こうした規定に反する行為となるんじゃありませんか。

○城井大臣政務官 お答え申し上げます。
 今の御質問に関しましては、法令にしっかりと基づいて、各大学の判断によって適切に対応されるべきものと考えます。

○塩川委員 適切に対応されないような事態がうかがわれる状況になっているということであります。
 ここに名前が出ている東京農工大、電気通信大学は、マレーシア政府が政府として派遣した留学生を受け入れてきた大学であります。帝京大学は、サウジアラビア政府が派遣した留学生を受け入れてきた大学であります。そのために、受け入れ支援として文科省が協力をしてきたところであります。そうした留学生の名簿を一律に警察に提出したということであれば極めて重大であるわけで、事実はないとの答弁ではありますけれども、こういったことについて、その他の大学についてどうかということも問われてくるわけであります。
 先ほど紹介をした文書でも、把握率が三一%という話がありました。ですから、つかんでいるところもあれば、つかんでいないところもあるということがうかがわれるような内容となっているわけであります。こういった事態について、留学生を受け入れている各教育研究機関が留学生のプライバシーとか個人情報を適法に取り扱っているかどうか、文科省としてもきちんと把握、調査を行うべきではありませんか。

○城井大臣政務官 お答え申し上げます。
 他大学の状況ということでは文部科学省としては把握をしておらないわけでありますけれども、仮にそうしたものがあった場合でも、法令等に基づいて、各大学の判断によって適切に対応されるべきものというふうに考えております。

○塩川委員 大学の自治も問われてくる大きな問題であります。大学が学生の名簿を警察に一律に提出などということは、およそ考えられない事態であります。しかも、日本での学問を志して留学をしてきた若者たちを一律に犯罪者扱いするかのような、こういう名簿を警察に手渡すようなことがあるということならば、二重にあってはならない事態であります。
 今回、この流出データで明らかになったことは、あなたの国からの留学生は我が国では犯罪予備軍として個人データを警察で管理していますという、誤ったメッセージを発することになります。
 国家公安委員長にお尋ねしますが、こういった警察による留学生名簿の収集などはあってはならないことであるわけで、こういった事態についてしっかりと調査を行い、もしそういう名簿がある場合は直ちに破棄する、こういうことについてきちんと対応を指示すべきではありませんか。

○松原国務大臣 個別のデータについては、警察が作成し、または保管しているものであるか否かを明らかにすることは現在差し控えているところでありますが、一般論として申し上げれば、警察においては、その責務を遂行するため、法令に従い、必要な情報収集等の活動を行っているものと承知をいたしております。
 御質問等も含めてでありますが、今、この事案に関しては、真相解明のために努力をしているところであります。

○塩川委員 一律に名簿を提出するということが法令上そもそも許されるのかということが問われているような事件であるわけで、もしこういったことがまかり通るようなことがあれば、警察みずから世界の国々、人々の反感を招くことになるし、また、日本としてこれらのイスラムの国々との友好関係も損なうことにしかならない。
 こういうことを指摘し、引き続きこの問題を取り上げることを申し上げて、質問を終わります。