<第180通常国会 2012年04月10日 郵政改革に関する特別委員会 3号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。貴重な御意見、本当にありがとうございます。
 最初に、坂本参考人にお尋ねをいたします。
 檜原村における郵便局の役割、お話を聞かせていただきました。例えば総合担務の話なども、当然のことながら郵便屋さんが貯金やあるいは保険の業務も一緒にやってもらえた、そういうことが本当にありがたかった、それが今回の分社化によって大きな支障を生じたということ、そういう点でも、統合の問題というのは積極的なものだということでお話を受けとめました。
 あわせて、やはり金融の窓口業務。窓口において口座をつくったり、貯金ができる、あるいはさまざまな決済の機能を果たすことができる、そういう金融機関というのが檜原村には現在郵便局以外にはJAしかない。そのJAの撤退の御心配もあるということでありまして、そういう意味でも、金融の窓口業務、この点、金融のユニバーサルサービスのかなめでもありますけれども、その重要性について、お感じのところをお聞かせいただきたいのと、あわせて、先ほどのお話でも、民間の金融機関が来ることは一〇〇%あり得ないということもおっしゃっておられましたが、そのようにお考えなのはどういう理由なのかについてもお聞かせいただけないでしょうか。

○坂本参考人 お答えいたします。
 一つ、村の金融機関としての役割については、特に、村の中で税収を集めた窓口がないということ。また、今郵便局は、そこから地元の業者あるいは村民に払い出すための窓口ではないことです。それで郵便局だけになってしまうと、村外の金融機関に頼らざるを得ないということは、一つの自治体として機能していないんじゃないかな、こんな思いがあります。ですから、当然、過疎地特例ということで結構ですけれども、指定金融機関のお願いをしたいなというのが一つの大きな理由でございます。
 先生、もう一つは何でしたか。済みません。(塩川委員「民間の金融機関が来ることは一〇〇%あり得ないというのは」と呼ぶ)私は、なぜ一〇〇%と言い切ったかというと、やはり利益追求ですから、当然、ここの場所に支店を置いてももうからなければ来ないわけです。ですから、先ほどの指定金融機関に戻りますけれども、本当に郵便局を指定金融機関にしてはならない、あるいは一千万の預金限度額を堅持しろというのであれば、全銀協の共同での窓口を檜原村に一つつくっていただければ私はありがたいと思うんです。
 以上です。
    〔委員長退席、佐々木(隆)委員長代理着席〕

○塩川委員 佐藤参考人にお尋ねいたします。
 今のような御提案もあったわけですけれども、先ほど坂本参考人から、郵便局しか金融機関がないところが全国二十五市町村もあると。(発言する者あり)失礼、二十三市町村ある。それで、私が直近のもので調べましたら、二十三市町村にふえていたということもありました。二〇〇三年の四月の時点では十一市町村だったものが、今では二十三にふえている。この間に合併もありましたが、それによって数が減った。逆に言うと、その合併がなければさらに十プラスされて、二〇〇三年時点に置きかえれば三十三の市町村に郵便局しか金融機関がないという状況になっているわけであります。
 そこで、佐藤参考人にお尋ねしますが、このように民間金融機関が過疎地域で店舗を減少させている、それは何でこうなっているのか、このことについてお聞かせいただけないでしょうか。

○佐藤参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思います。
 基本的には、今御議論されておりますように、金融サービスというものが国民生活にとって非常に重要で必要不可欠なインフラであるということにつきましては、私ども民間金融機関も十分認識させていただいているところでございます。そうした認識のもとで、民間金融機関は全国各地に店舗、ATMネットワークを張りめぐらしてまいりまして、今御指摘がありました一部地域以外では、預金や為替といった基本的なサービスは全国をカバーしているということだと思います。
 なぜ店舗が減っていくのかということでございますけれども、やはり、民間金融機関として、その地域あるいはその店舗における店舗網としての効率性というものは考える必要があると思いますけれども、ただ店舗を減らしているということではなくて、我々が店舗展開をする場合には、必ずその近いところの店舗での補完性というものがきちんときいているということを確認して、それを統合あるいはその効率化を進めていくということをやっておりますので、必ずしも、もうからないから全部そこから引き揚げていくということで店舗政策を展開しているわけではございません。
 一言付言させていただきますと、それでは、我々が展開していない、民間金融機関のない一部の地域の金融についてどう考えたらいいのか。
 先ほど村長さんのお話もありましたけれども、これをやはり、その地域あるいは住民の方々の基本的なニーズ、あるいはその中身というものをきちんと踏まえた上で、それに対する一方での社会的負担の大きさというもの等を十分検証した上で、公的な関与の仕方がどういうことがあり得るのかということについては、今後慎重に検討していく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
    〔佐々木(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

○塩川委員 民間金融機関共同で店舗を出してもらえれば望ましいことであろうと思っております。
 そういう点でも、この郵便局ネットワークにおいての金融のユニバーサルサービス、まさに、金融の窓口業務を保障する、この仕組みの重要性ということを今改めて多くの方が受けとめておられるんだと思うんですが、この郵便局ネットワークにおける金融のユニバーサルサービスの意義については、佐藤参考人はどのように受けとめておられるでしょうか。

○佐藤参考人 今私が御説明しましたのと若干重なってしまいますけれども、ユニバーサルサービスそのものの意味、すなわち、全国あまねく各国民全員に基本的なインフラサービスである金融サービスを展開できるようにしなければいけないということの重要性については言をまたない、我々民間金融機関もそういう形で認識してございます。
 したがいまして、このユニバーサルサービスを特に一部の民間金融機関のない地域にどう展開していくのかということが次の問題だと思いますけれども、それを今郵便貯金という形での、郵便局の中でそれを展開していくのが本当にいいことなのかどうか、この点につきましては、地元のニーズと、先ほど申し上げましたけれども、別の形あるいは公的な関与といったものについてどういうことがあり得るのかということについては、もう少し慎重な検討が必要ではないかというふうに感じているところでございます。
 もう一つだけその観点を付言させていただきますと、郵便事業、郵貯事業がその一部の地域のユニバーサルサービスを提供するということになりますと、やはり、その部分における事業の採算性というものはどういうふうに全体として担保されて、会社全体としてきちんとした形で維持、経営されていくのかということとの関係において、その妥当性あるいは必要性について議論が残るところだと思いますので、私が先ほど、今後、公的関与も含めていろいろな形での慎重な検討が必要であると申し上げましたのは、そういった点も含めてのことでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 現行の郵便局のネットワークを生かした金融のユニバーサルサービスそのものについての若干の御意見もあるというお話でございました。
 ただ、一方で、民間金融機関において、やはりもうからなければ来ないという話が当然あるわけですから、そういったことを踏まえても、郵便局ネットワークを活用した金融のユニバーサルサービスの重要性というのは改めて指摘しておくべきことだと考えています。
 その上で、鳥畑参考人にお尋ねいたします。この配付資料の中でも、最後のところに、貯蓄から投資、官から民への資金循環の転換、そういう中で金融的弱者に対する金融排除などが現実化をしたという話が書かれております。そういう点でも金融のユニバーサルサービスの重要性ということが改めて注目されるわけですが、この点についての参考人のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○鳥畑参考人 お答えさせていただきます。
 私が具体的にかかわったのは、多重債務問題、上限金利規制の問題でした。これについても、アメリカのUSTR等は、日本の上限金利規制を取っ払え、金利の自由化が消費者のサービス、利益になるんだという論法でした。
 ところが、やはり、市場原理に基づく、リスクに見合った金利でありますとか、例えばリスクに見合った保険料という考え方でいきますと、社会的弱者、低所得者層に対しては、どうしても高金利を要求するということになるわけです。そうすると、支払い能力の低い層ほど高い金利が要求をされる。それが負担できないのであれば、借りることができないという形で排除をされる。では、どうしても困っているから借りてしまえば、支払い能力を超えた支払いということで、多重債務という形で非常に追い込まれていくという形の問題が起きたわけです。
 そうしますと、私がここで言いたいのは、どうしても社会の現実の中ではマーケットメカニズムが対応できない領域があるんだ。それは、多重債務で問題になった低所得者層の問題であり、今問題になっている日本の社会の中での格差、地域社会の衰退の中で、過疎地で本当に金融機関もないような状態の中で、でも、そこで生活されている方がいて、その人たちに対してもちゃんとした金融サービスをどう提供するんだ、こういう課題があるわけです。ただ、マーケットに任せればいいのかといったときに、やはり同じようにどうしてもそこではコストがかかる。収益性に見合わないということで排除されるか、都市部に比べればもうちょっとサービス料としてはコストを負担してくださいという話になっていくんじゃないかなというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 今回の法案についてなんですけれども、もともと改革法案におきましては、金融のユニバーサルサービスの義務づけを日本郵政にかける。金融二社との関係におきましては、三分の一を超える株式保有と、あわせて定款に基づいて担保するという仕組みでありました。この点でも実際に担保されるのかという懸念もあったわけですが、今回の場合におきましては、三分の一を超えるという規定そのものが、書きぶりそのものはなくなって、全て処分することを目指しということとあわせて、できる限り早期に、処分するという規定になっているわけであります。
 全て処分することも排除されない規定になっているわけですけれども、こういった規定で金融のユニバーサルサービスが担保されるのかという懸念を覚えるわけですが、この点についての参考人のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○鳥畑参考人 お答えします。
 三分の一の議決権というのは、会社の定款で定められた目的の変更に対して拒否権が発動できるということで、三分の一ということだそうです。
 しかし、通常の会社経営の中で、親会社が子会社の経営監督については、そんなに細かいところまで監督ができないわけでして、やはり、三分の一というのはある意味ミニマムの部分ではありますが、本当の意味でユニバーサルサービスを実現させる、その担保となる株保有としては過半数、経営陣の選定まで含めた支配権を持たせる必要があるんじゃないかなというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 臼杵参考人に今の点をあわせてお答えいただきたいんですけれども、今回の民営化法の改正案において、金融のユニバーサルサービスの担保の仕組み、これが本当に担保になるんだろうかという懸念を私は覚えるわけですが、この点についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○臼杵参考人 先生、どうもありがとうございます。
 全てが完全防備されて担保されたかというと、非常にいろいろあるんだろうと思います。ただ、今回の見直しにおいて私どもが一番大事にしてほしいというのは、金融サービスというものが郵便局ネットワークをもって仕事を続けることができないという姿になっていくと、ネットワークそのものが壊れてしまうということがあって、それが一つあります。
 それからもう一つ、金融サービスについて、いわゆるユニバーサルサービスの義務化をきちっと担保してほしいということで、これは持ち株に担保をして、きちっとグリップしようと。そのことによって、三事業がこれからも一体的にサービスを続けることができる、あるいは金融二社のサービスを郵便局の窓口に引きとめておくことができる。そのために三分の一超、先生がおっしゃられるように、議決に対する拒否権を発動するとかという、いわゆるグリップできる形を最低限確保し続けるということが大事なんだろうというふうに思っています。
 いずれにしても、処分に当たっては、ユニバーサルサービスがいずれの郵便局においても全国ネットワークの中で提供し続けることのできることが前提とならなければならないというふうに思っております。
 以上でございます。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。