<第180通常国会 2012年04月12日 総務委員会 9号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、原発事故による自治体の損害、追加費用負担に対する賠償問題について質問をいたします。
 原発事故による賠償問題については、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針が示されております。この中間指針に対しては、厳しい批判の声が寄せられておりました。
 例えば、福島県知事を会長とする福島県原子力損害対策協議会は、原子力損害賠償の完全実施に関する要求書を東電宛てに提出しています。その中では、「我々が第一に望むことは、三月十一日の事故以前の生活に戻ることであり、本件事故によって福島県民が被った様々な損害は、すべて賠償されることが大原則である。」「東京電力は、」「原子力災害の原因者であることを忘れず、「中間指針」に明記されていない損害についても幅広く賠償の対象とすべきである。」と要求しています。被害住民の暮らしを丸ごと回復する賠償の実現が求められております。
 そこで大臣にお尋ねしますが、原発事故被害を受けた自治体にとっても、原発事故に伴う損害は全て加害責任のある東京電力が賠償すべきであり、線引きや足切りをしないで全面的に賠償するということが基本だと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○川端国務大臣 原子力の損害賠償が迅速かつ適切に行われることは大変重要であるというのは、基本的にそのとおりだというふうに思っております。
 その中で、総務大臣の立場で申し上げますと、地方公共団体の損害についても、原発事故に起因して、さまざまな形で財政負担等が生じていることは明らかでございますから、適切に損害賠償がなされることは望ましいことだと思っております。
 原発周辺の地方公共団体が東京電力に対して損害賠償請求を行うかどうかについては、それぞれの団体の判断であり、今も三つの市町がやっておられるというふうに思いますが、今後、各団体と東京電力の間で損害賠償に関して協議が行われることとなりますけれども、総務省としてはその協議の行方を見届けてまいりたいと思います。
 当面の財政運営に支障が生じることがないように、地方税法の改正等による地方税の減収分や復旧復興事業に係る地方負担額については、その全額を震災復興特別交付税で措置することとして、遺漏なきように対応してまいりたいと思っております。

○塩川委員 原発事故に伴う自治体の財政負担については適切に賠償を行われることが望ましいという御答弁であります。自治体が受けた損害についても東電が全面的に賠償するのが必要だ、私はこのように考えております。
 そこで、中間指針では、自治体の損害に係る賠償問題について、第十の二の地方公共団体等の財産的損害等という項目と、第六のその他の政府指示等に係る損害についての部分で賠償の対象を具体的に指摘していると承知しておりますが、この点、文部科学省から、この中間指針で、自治体の損害に係る賠償問題について、どのように内容を示しているのかについて御説明いただけますか。

○大竹政府参考人 先生お尋ねの原子力損害賠償紛争審査会の中間指針でございますが、今先生御指摘のとおり、既に明記されております政府による避難指示や農林水産物の出荷制限のほかに、今御指摘のありました、その他の政府指示等に係る損害ということが明記されております。
 中間指針を策定した時点におきまして、その他の政府指示等として、具体的には次のものがございます。
 まず、水に係ります摂取制限の指導がございます。これは、飲食物摂取制限に関する指標を超過した場合の水道水について、厚生労働省から都道府県に対して、水道事業者等に、飲用を控えるように広報等を求めたものです。
 次に、水に係る放射性物質検査の指導がございます。これは、水道水中の放射性物質のモニタリング方針について、厚生労働省から都道府県に対し、水道事業者等への周知、指導を依頼したものでございます。
 また、放射性物質が検出された上下水処理等の副次産物の取り扱いに関する指導がございます。これは、原子力災害対策本部が当面の取り扱い方針を取りまとめたことを踏まえて、関係省庁から関係都道府県、事業者に対して、当該指針の周知及び適切な対応を依頼したものでございます。
 さらに、学校等の校舎、校庭等の利用判断に関する指導がございます。これは、原子力災害対策本部が福島県内の学校等の校舎、校庭等の利用判断における暫定的考え方について示したことを踏まえまして、関係省庁、具体的には文部科学省及び厚生労働省でございますが、こちらから関係地方公共団体に対して、学校等への周知及び必要な指導、支援を依頼したものでございます。
 これらのほか、一般廃棄物の焼却施設における焼却灰の測定及び当面の取り扱いがございます。これは、都道府県に対して、調査の実施、報告等を依頼するものでございます。
 これらが、具体的にその他の事項ということでこれまであったところでございます。

○塩川委員 以上、答弁いただきましたように、中間指針で具体的に賠償請求の対象なども示されております。もちろん、因果関係があれば、これに限られるものではないということも当然のことであります。
 そこで、東京電力は、下水道事業に対する賠償基準を二月十日に示しています。下水処理に関連する放射能測定器の購入費用や放射能検査費用、汚染された汚泥等の処分、運搬、保管費用などが損害賠償対象項目として挙げられております。
 そこで経済産業省・資源エネルギー庁にお尋ねしますが、東電はこれ以外のその他の分野の賠償基準についてどのように対応しようとしているのか、この点についてお答えいただけますか。

○糟谷政府参考人 まず、下水道事業につきましては、二月にまとめた賠償基準に基づきまして、三月末から支払いを始めております。実際問題、まだ始まったばかりでありまして、四つの市町に対して約七千万弱のお支払いでございます。
 それから、上水道、工業用水につきましてでありますが、二月一日から請求の受け付けを開始いたしまして、厚生労働省等関係省庁からの指導助言を受けながら、今月中には検査費用等に係る賠償基準を先行してまとめる方向と聞いております。
 それから、それに続きまして、一般廃棄物の焼却灰等につきましても賠償基準をまとめて速やかに賠償に入りたい、そういう考えであるというふうに承知をしております。

○塩川委員 続けて、環境省にお尋ねします。
 一般廃棄物の焼却灰に関する賠償基準というのはどのようになるのか、この点についてお答えください。

○伊藤政府参考人 平成二十三年八月五日にまとめられました中間指針におきましては、本件事故と相当因果関係のある損害が損害賠償の対象となる、こういうことが示されているわけでございます。
 したがいまして、焼却灰につきましても、例えば八千ベクレル以下の焼却灰の処理でありましても、原発事故が原因で追加的にかかった費用については、相当因果関係が認められる場合、損害賠償の対象となり得る、そういうふうに考えております。

○塩川委員 続けて、除染関係ですけれども、汚染土壌の保管などの費用負担なども大きいわけであります。例えば、柏市などは八千ベクレルを超えるような汚染土壌が出ているということについて、環境省の方の特措法に基づいて、八千ベクレルを超えるような汚泥だとか焼却灰と一緒に国の方で処理してくれと言ったら、いや、それは対象外ですと言われて、それは困るという話もあるわけです。
 こういった自治体の追加負担などについても、当然のことながら賠償の対象となると考えますが、この点についてどうでしょうか。

○糟谷政府参考人 特定避難勧奨地点、いわゆるホットスポットの区域内において行われる検査費用等については賠償の対象となり得るということが中間指針で明記をされておるわけでありますが、それ以外の、特定避難勧奨地点以外の地域におきましても、一定以上の線量が見込まれるなど、検査について相当因果関係が認められる地域においては賠償の対象に含まれるものと考えております。
 まずは、どのような被害が生じているかを親身にお伺いをし、被害の実態を踏まえて適切な賠償がなされるように東京電力に対して指導してまいりたいと考えております。

○塩川委員 汚染土壌の保管の費用とかについての考え方なんですけれども、今、測定の関係のお話だったと思うんですが。

○糟谷政府参考人 汚染土壌の保管費用につきましても、相当因果関係が認められる場合については、全く同様と考えております。

○塩川委員 少し前後しましたけれども、このように、自治体が支出した除染費用について、現行の特措法では線引きがあるわけですよね。それは国がお金を出すという仕切りになっているものですから、環境省と自治体の間で、どこまで負担するのかしないのか、除染実施計画にどこまで書くのか書かないのか、除染実施計画に載ったものは国が負担をして処理をしますよということになっていますけれども、実際に、自治体は住民の皆さんの安全、安心、そういう要望に応えて、より積極的な除染作業も行っているわけであります。そういう経費というのはかかっている。
 こういった追加の費用負担分については、当然のことながら、このような事態を引き起こした原因者である東電の賠償対象となるということが基本だと考えております。この点、どうでしょうか。

○糟谷政府参考人 中間指針の対象とされなかったものでありましても、個別具体的な事情に応じて、相当因果関係のある損害については賠償の対象というふうに考えております。したがって、キログラム当たり八千ベクレル以下のものに係る廃棄物の処理費用、保管費用などにつきましても、相当因果関係が認められれば、賠償の対象となることは当然であると考えております。
 地方自治体と協議の場を設けるなど、具体的な被害を親身にお伺いをして、被害の実態を踏まえた賠償がされるように働きかけてまいりたいと思っております。

○塩川委員 先ほどもちょっとありましたけれども、福島だけではなくて、北関東の多くの自治体でもホットスポットなどがありまして、まずは測定をする、住民の皆さんにお知らせをするということが安心の第一歩として行われているわけであります。その点でも、放射能の測定器を購入したり、放射線量の委託の費用を計上したりという経費というのが一定程度かかってきているわけであります。
 そういった点でも、放射能測定器の購入とともに、測定委託を含めた、こういった計測に係る経費というのは、当然のことながら賠償の対象とされると思いますけれども、この点についても改めてお答えください。

○糟谷政府参考人 放射能の測定、検査のための費用につきましても、相当因果関係が認められる限りにおいては賠償の対象になるということは、先ほど申し上げたとおり、当然のことだと思っております。

○塩川委員 総務省にお尋ねします。
 除染や風評被害対策等の原発事故関係の自治体支出に対する交付税措置というのはどのようになっておるでしょうか。

○椎川政府参考人 お答えいたします。
 先ほど来議論がありますように、相当因果関係のある損害については東電から賠償されるという前提でございますけれども、その請求とか、あるいは当事者間における交渉、場合によっては訴訟になるものも出てくるかと思っておりまして、結論が出るまでに相当時間がかかるということも想定されます。
 しかも、自治体においては多額の財政負担が現在生じておりますので、そういうものについて、私ども、相当因果関係がある損害であるかどうかということは別に、原発事故に関連して生じたやむを得ない財政需要というふうに考えまして、これらについて、震災復興特交あるいは特別交付税の対象にしているところでございます。

○塩川委員 相当因果関係があるかどうかは別にして、多額の費用負担が既に発生をしているという特別な財政需要に着目しての特別交付税措置、復興特別交付税の措置を行われているということなんですが、この震災復興特別交付税で、例えば三月の交付で四十七億円とかとあるんですが、この中身がどんなものかというのを参考までに教えていただけないでしょうか。
 それから、特別交付税でいわゆる特定被災地方公共団体以外について措置されているというんですけれども、これがどのようなものなのかについても、簡単で結構なんですが、お示しいただけないでしょうか。

○椎川政府参考人 まず、財政需要の中身でございますけれども、除染対策につきましては、国庫補助の対象にならないようなものを幅広く捉えておりまして、機器の購入から事前調査、それから、補助対象にならない除染の実施の経費。風評被害につきましては、これもかなり幅広く捉えておりまして、観光でありますとか農林水産業の振興、農作物の安全性のPRに要する経費、あるいは全体としてイメージダウンを抑えるような施策、そういうものを幅広く捉えてございます。
 それから、被災団体以外ということでございますけれども、これは多分に時系列的なものがございまして、御承知のとおり、震災復興特交制度というのは三次補正でできた制度でございまして、十二月の特別交付税の算定作業の段階ではまだ制度ができておりませんでしたので、その段階における財政需要につきましては通常の特別交付税で算定を十二月分でいたしております。
 そして三月の段階では、震災復興特別交付税の算定ルールというものがきちんと決まってまいりましたので、その時点で振り分けを行いまして、被災団体につきましては震災復興特別交付税で、その他の団体につきましては特別交付税でというような考え方で整理をさせていただいております。

○塩川委員 今御答弁いただきましたように、現に特別な財政需要が発生をしている地方団体に対して、除染関係あるいは風評被害対策ということで、震災復興特別交付税、特別交付税の措置が行われております。
 最後に、大臣にお尋ねいたしますが、こういった自治体の特別な財政需要に着目して特交措置を行うことは重要であります。その上で、ただ、原発事故関連の自治体の持ち出しというのはそもそも何によって生まれたかといえば、原発事故によって発生をした点でいっても、本来、原因者の東電が負担をすべきもの、賠償すべきものだ。
 そういう点でも、こういった特交で措置した分について、本来、東電が賠償すべきものの、形の上では立てかえ払いのような形になっているわけですから、国として、この辺をどのように考えていかれるのか。その点について、お考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○川端国務大臣 先ほど来、御議論あります中で中間指針の話が出ておりますが、その中間指針と第二次追補の中で、「除染等の必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。」あるいは、「住民の放射線被曝の不安や恐怖を緩和するために地方公共団体や教育機関が行う必要かつ合理的な検査等に係る費用は、賠償すべき損害と認められる。」等とされております。
 これは紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針という形でありますので、これに基づいて、それぞれの地方自治体が賠償をどう考えるかということはお取り組みになられるということでありますので、その後、東京電力と協議されるということになるというふうに思います。
 その意味では、それはそちらでおやりになる話なんですが、先ほど局長からも答弁申し上げましたように、これには相当長い期間がかかるという意味で、応急的に必要な部分は、そこの財政運営に支障を来さないようにということで、特別交付税を含めてしっかり対応するというのが政府の基本方針でありますので、このことと、場合によっては裁判もあるのかもしれませんが、協議がどう進んでいくかということが一義的にリンクするようなことで今考えていることではございません。

○塩川委員 ぜひその辺を整理していただいて、地方共有の財源であります交付税でありますから、本来東電が払うものを立てかえ払いしているということであれば、そのお金をどうするのかということについては、今後の問題として、ぜひ具体的に御検討、対応方をお願いしたいと思っております。
 以上で質問を終わります。