<第180通常国会 2012年05月23日 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会 6号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、消費税の価格転嫁問題について質問をいたします。
 中小企業関係団体は、消費税増税に反対の意見、または、安易な税率引き上げは避けるべきだという声を上げています。共通して問題にしておりますのが、消費税を価格に転嫁できないという問題であります。
 最初に総理にお尋ねしますが、そもそも、消費税の仕組みとして、消費税を負担するのはどなたか、そして、その消費税を納税するのは誰なのか、この点についてお答えいただけますか。

○安住国務大臣 納めていただくのは事業者で、消費をしていただく方が、いわば税を負担していただく方であるということでございます。

○塩川委員 最終的に消費税を負担するのは消費者とされておりますが、納税義務者は事業者であります。この分離、分かれていることが矛盾となって価格転嫁問題というのが生まれてまいります。
 そこで、パネルをごらんいただきたいんですが、全国商工会連合会のつくった資料で、消費税の問題点、消費税の価格への転嫁、これをごらんいただきたいと思います。日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会及び全国商店街振興組合連合会が共同で実施をした実態調査であります。
 一番右側の年間売り上げ二億円超でも、現在転嫁できていないという事業者が三二・八%、税率が引き上げられた場合に転嫁できないというのが四六・二%。年間売り上げ三千万円以下では、現在転嫁できていない、四八・九%、税率が引き上げられた場合に転嫁できない、六四・五%。年間売り上げ一千万円以下でも、現在転嫁できていない、六四・九%、税率が引き上げられた場合に転嫁できない、七五・四%。
 総理に認識をお伺いしたいと思うんですけれども、中小企業や小規模事業者にとって消費税の価格転嫁が非常に困難だということを示しているものだと思うんですが、総理はどのように受けとめておられますか。総理。

○安住国務大臣 これは、どういう資料かよくわかりませんが、アンケート調査ですよね。どこがやられたかはちょっとわかりませんが。ただ、懸念が……(塩川委員「中小企業庁も関与しているよ」と呼ぶ)ああ、中小企業庁ですか。要するに、実態としてというよりは、そうした懸念があるということを塩川さんは御指摘になっておられるのではないかと思います。
 そこで、私どもとしても、中小零細企業の転嫁対策に万全を期さなければならないというふうに思っております。
 例えば、前回引き上げ時に比べれば、独禁法改正が強化をされ……(塩川委員「委員長、聞いておりませんから」と呼ぶ)排除勧告制度が廃止され、より迅速に排除措置命令等の行政処分を行えるようになったわけで……(塩川委員「対策の話はこの先聞きますから」と呼ぶ)

○中野委員長 的確な答弁をお願いいたします。

○安住国務大臣 はい。課徴金制度を導入したり、つまり、弱い者が、またいわゆる小規模な皆さんが、こうした転嫁ができないで、いわば泣き寝入りをしないような仕組みというものをいろいろ考えながら対応していきたいというふうに思っております。

○塩川委員 総理にお尋ねしますけれども、うちの佐々木憲昭議員の質問に対しても、弱い立場の方がしわ寄せを食っている傾向があると述べられました。そういう認識だと承知をしておりますが、いかがでしょうか。

○野田内閣総理大臣 実態としてはあるというふうに思います。
 実際に、下請の方が結局自分の責任のもとで負担をせざるを得なくなっている等々の実態はあるというふうに思いますので、今回の消費税を引き上げる際には、適正に転嫁できるようにどうするかということは大事な議論だと思いますので、そこは重要視していきたいと思います。

○塩川委員 実態として価格転嫁が困難だということをお認めになりました。
 そこで、重ねてお聞きしますが、では、なぜ転嫁できないのか。この点はいかがでしょうか。

○安住国務大臣 価格競争やコストダウンによるいわばそれぞれの業界の熾烈な競争の中で、例えば、それは証明をしているわけじゃありませんけれども、優越的な地位を利用した立場の人が、その下に対して、今御指摘のようなことで、消費税の上乗せ分は、例えば、あなたのところで何とかなりませんかとか、そうしたことがよく言われるケースとしてあるのではないかというふうに思っております。

○塩川委員 優越的地位の立場にあるいわば親事業者が、下の立場とおっしゃいましたけれども、いわゆる下請事業者に対して、転嫁をすることを拒むような事例が現にあるということであります。
 この価格転嫁が困難というのは、今の点もそうですけれども、二つの面がある。一つは、やはり小売業者と消費者の問題であって、勤労者の所得の減少や、デフレのもとで消費者に転嫁ができないという声、実態があるということと、もう一つ、今安住大臣がお答えになったような、元請と下請の関係で、弱い立場の下請事業者が親事業者に要求できないということであります。
 それで、一点目の小売業者と消費者との関係についてですけれども、一九九七年、消費税が三%から五%に増税をされたときは、全体として、勤労者の年収も可処分所得も消費支出も上昇傾向にありました。それでも転嫁できないという事業者の声が多数だった。その後、今に至るまで下降線で、勤労者の年収や可処分所得や消費支出は減り続けているわけです。
 そこで、お尋ねしますが、消費税を価格に転嫁したら消費者が逃げてしまうというのが今の小売業者の現状じゃないのか。そうじゃないんですか。

○安住国務大臣 それは、しかし、例えばヒット品目なんかは別に消費税がかかっていても売れるようになったりしたり、売れている本だってあるわけです。
 ですから、全体に、そこだけを見て消費税が悪いという話にはならないのは、もう一方で、では社会保障の財源等はどうするのかということもあるわけでして、いわゆる所得の低い方に対する例えば年金、医療、介護のサービスのためのお金というのは、社会保障の保険料だけでは賄い切れないので、こうした消費税についてしっかりと充てていくと。それは、水平性の税ですから、しわ寄せがあるという意見もあるかもしれませんが、そこは、塩川さん、逆進性対策とかをしっかりやっていくと。
 ですから、できるだけ消費に影響を与えないような形で我々も努力をしながら、この税の浸透を図っていきたいと思っています。

○塩川委員 いや、そんな答弁だったら、もう視聴者は驚いて、笑うだけじゃなくて怒りますよ。
 でも、転嫁が難しいということはやはり否定をできない。国民の所得が減少しているときに消費税転嫁が事業者にとって困難であるということは、まさに明らかであります。
 もう一つの、親事業者と下請事業者の関係についてでありますけれども、下請事業者にとっては、親事業者、いわば大企業への価格転嫁が極めて困難であります。
 価格転嫁の実態はどうなっているか。
 先ほども確認しましたように、最終的に消費税は消費者が負担するとはいえ、納税義務者は生産、流通などの各段階のいずれかにいる事業者であって、消費税の仕組みは、各段階で適正な価格転嫁ができるという前提でつくられています。
 一方で、実際の契約においては、受注者の立場は弱いわけで、発注者からの値引き要求を断り切れない、断れば次回以降の受注がなくなるんではないのか、こういう懸念の中で、発注者と対等な立場で適切な価格転嫁を求めていくことが事実上不可能だということを言わざるを得ません。
 それで、ここにパネルとして、新規発生滞納に占める消費税の割合をお示しいたしました。
 ここでは、消費税導入後、件数でも税額においても、ほかの税金に比べて、消費税の滞納の割合がどんどんどんどん高くなっております。消費税が五%に引き上げられた九七年、九八年の間で大きく、件数でも税額でも新規発生滞納がふえているというところにもそれが見てとれるわけであります。消費税の滞納割合が増加をしているのは、価格への転嫁ができないもとで、受け取ってもいない消費税を払えと言われても払えないという実態を示しているわけであります。
 そこで、お尋ねをしますが、総理にお答えいただきたいんですが、消費税を価格転嫁できていないのに、それでも払えということになれば、そのとき、では、消費税分というのは誰が負担することになるんでしょうか。

○安住国務大臣 最初のその資料では、四九・七%、全体の滞納額の中で消費税がということですが、消費税収に占める割合でいうと、これは三・四%でございます。逆を言えば、九六・六%は滞納することなくきちんと納めていただいております。
 ですから、そういう点では、また、この中からもうちょっと詳しく言うと、滞納者の中でも……(塩川委員「いやいや、聞いていませんから」と呼ぶ)聞いていないですか。滞納者の中でも、この二年間の中で、納税はしていただいている方が比較的多いです。(塩川委員「いやいや、委員長、質問がわかっていないからもう一回」と呼ぶ)それで、塩川先生……

○中野委員長 それでは、もう一度質問してもらいます。質問者、どうぞ。

○塩川委員 総理にお答えいただきたいんですが、消費税の価格転嫁が困難だということをお認めになりました。なぜかといえば、やはり優越的地位の濫用のように、親事業者に対して下請事業者が転嫁が困難だということであったわけであります。
 そういったときに、消費税を払うとなった場合には、その分、転嫁できていない分は、では、誰が払うのかということなんです。

○安住国務大臣 ですから、滞納なさっている方に納めていただくということは、事業者に納めていただくということに理論上はなるんです。つまり、消費者からお預かりをしている、それで最終的に事業者がこれを納めるわけですから、そういう原理でやらせていただいています。

○塩川委員 いや、親事業者に転嫁ができていない現状があるわけですよ。消費者との関係でも、デフレ下で困難だと。
 ですから、全国商工会連合会のこの資料においても、最初、「一、消費税の価格への転嫁」、その下のところに「規模の小さな事業者ほど、立場が弱く、販売価格に消費税を転嫁できないため、消費税率が引き上げられると、転嫁をできない分を自らの利益を削って納税することとなる。」と。みずから自腹を切らなくちゃいけないというのが実態ということじゃありませんか。
 総理、どのように受けとめておられますか。総理。

○安住国務大臣 ですから、私どもとしては、消費税というものをよく理解いただいて、そして、その上で、いわば親事業者が、今塩川さん御指摘のようなことで、下請事業者に不当にしわ寄せをしないかどうかというような監視等はしっかりやっていかなければならないと思っています。与党の中でも、転嫁Gメン等を設置して、体制の強化を図る。
 これは、申し上げておきますけれども、自民党時代からずっとそういうことで、転嫁対策はしっかりやるという話ですから、私も引き続き強化をします。

○塩川委員 いや、だから、転嫁できないという事態がずっと続いているんですよ。事業者が自腹を切って納税することにならざるを得ないというのが実際の事業者の実態を反映した声である。そのことを受けとめられないということ自身に、消費税増税を言うような資格がないということを言わざるを得ません。
 消費税には制度的な欠陥があるということは、民主党におきましても、価格転嫁問題を検討するワーキングチームを立ち上げて作業しておられるわけであります。その中では、いろいろな団体にヒアリングも行っておられます。
 そのヒアリングに答えた団体の一つに、全国建設労働組合総連合、全建総連もございます。その全建総連が民主党のワーキングチームに提出をした資料においては、価格転嫁のどこに問題があるのかを以下のように述べております。
 消費税制度が、価格転嫁ができない場合に、実態上、事業者自身の負担で納税せざるを得ないという問題を包含していることは、この制度が抱える根本的な問題である、支払いを受けることができない経費は消費税に限らない、契約上優位な立場を利用した直接的、間接的な値引き強要の常態化が問題の根底にある、消費税の価格転嫁がとりわけ問題なのは、実態上、受け取っていない消費税を納めなければならない点にある、消費税の滞納がほかの税金に比べて多いこともこのことに起因をする、このように述べておられます。
 今度はぜひ総理にお答えいただきたいんですが、このように、価格転嫁ができない場合に、事業者自身の負担で納税せざるを得ないということに、消費税制度の根本的な欠陥があるということじゃありませんか。

○野田内閣総理大臣 消費税の抱える問題の一つに、適正に価格に転嫁されるかどうかという課題があることはあります。
 その環境については、先ほど委員が御指摘あったとおり、前回、三%から五%に引き上げたときに、独禁法であるとか下請法の強化を行いながら、そういうことにならないような法的な環境整備はできてきました。ただ、実態としては、まだ懸念があるんですね。それはやはり、下請の方が親業者の方に転嫁できない、言いにくいとかはあります。
 そういう問題をどう乗り越えていくかということを党の中のワーキングチームで御議論をいただいております。それは、対消費者との関係であるとか、事業者間の関係とか、整理をしながら、さっき財務大臣もその一端を御披露しましたけれども、Gメンをつくったりとか、そういうあらゆる、党から出てくる御提起であるとかも踏まえながら、スムーズに価格転嫁ができるようにしたいというふうに思います。
 転嫁という課題はありますが、だから、この問題があるから消費税が絶対だめという議論ではないと思います。乗り越える課題ではありますが、しっかりと議論していきたいと思います。

○塩川委員 そもそも、消費者に、このデフレ下で、所得の減っている中で消費税を増税するということが、深刻な、暮らしを圧迫することにもなる。
 加えて、消費税の転嫁ができない事業者にとってみれば、身銭を切って、いわば自腹を切って払わざるを得ないというのが消費税制度の根本的な欠陥だ。こういう中では価格転嫁問題は解消できないわけで、私は、消費税増税をやめることなしに、こういう根本問題、欠陥を取り除くこともそもそもできないということを言わざるを得ません。
 そこで、対策をとるということをおっしゃいました。この間、民主党のワーキングチームの話もありましたし、消費者あるいは親事業者との関係で、しっかりとした対策をとるとか、監視を強化するとか、Gメンとかという話がありますけれども、そもそも、消費税導入時に竹下総理が消費税の七つの懸念とか九つの懸念ということを指摘しておられましたけれども、そのときから、価格転嫁問題というのは課題として挙げられているわけであります。
 それなのに、いまだに価格転嫁問題が大きな課題となっている。二十四年間何をやってきたのか。いかがですか。

○岡田国務大臣 今の委員のお話を聞いておりまして、ちょっと腑に落ちないのは、全建総連の例なんですね。
 全建総連、例えば、家をつくるというときに、一千万の家をつくる。一千万の契約をしますね。それが、例えば五%上がって五十万円ですね、消費税がその分に上乗せされる。それを払わなかったら、それはやはり契約違反ということになるわけで、そこはまさしく、買った人と家をつくった業者の方の問題として十分に裁判でも争える、そういう問題だというふうに思います。
 もし、全建総連ということでおっしゃった、大工さんがいい家をつくって売るときに、実際の契約の価格に消費税が上がって上乗せできないということであれば、私は、そういう問題だというふうに思います。

○塩川委員 全建総連というのは、皆さん、下請事業者として、そこに働く労働者、建設職人の方の組合ですから。わかっていないんですよ。
 ですから、民主党ワーキングチームに行って聞いてほしいんですけれども、支払いを受けることができない経費は消費税に限らない、契約上優位な立場を利用した直接的、間接的な値引き強要の常態化が問題の根底だ。
 ですから、消費税の価格転嫁がとりわけ問題なのは、こういう値引き強要が常態化をしている中で、実態上、転嫁ができないような消費税分まで納めなくてはならないからだというところが問題だということを言っているわけで、事の本質というのをしっかり受けとめて取り組むべきだということです。
 そこで、二十四年間何をやってきたのかということですけれども、そこは先ほどお答えになりましたから、それなりにやってきたという話ですけれども、先ほど言いましたように、二十年以上たってもこの価格転嫁の問題というのは解消されておりません。
 いろいろ対策をやると言うけれども、この間、公正取引委員会が行った調査では、価格転嫁はどうだったのか。実際の中小企業、小規模事業者にしてみれば、価格転嫁できないという声が多数の声となっている。
 そういう実態がある中で、中小企業庁と一緒に公正取引委員会が実施した特別調査、一九八九年の消費税導入直後と一九九七年の五%増税直後に行った調査、そこの調査におきましては、下請事業者の回答はどのような結果だったんでしょうか。

○竹島政府特別補佐人 お答え申し上げます。
 まず、平成元年の消費税導入時におきまして、公正取引委員会が中小企業庁と連携して、資本金一億円以上の親事業者約七千社、それと取引のある下請事業者約六万六千社を対象に、転嫁状況に関する特別調査を実施いたしました。
 その結果でございますが、親に関しましては九八・六%、下請事業者からの回答に関しましては、九四・九%が消費税額分を上乗せして取引が行われていたと。要するに、一〇〇%近い転嫁が行われていたということが平成元年の特別調査でございます。
 平成九年の税率引き上げ時におきましても、これは規模が縮小されておりますが、親事業者約一千社、それと取引のある下請事業者約五千社、これを対象に、転嫁状況に関する特別調査を実施いたしました。
 その結果、親に関しましては九六・八%、下請事業者に関しましては九四・六%が消費税の引き上げ分相当額を上乗せして取引が行われているという結果になっております。
 それで、先ほどの先生のパネルと随分違うじゃないかという御印象を持たれるかもしれませんが、公正取引委員会が管轄しておりますことは、いわゆるBツーB、事業者間の取引に関しまして、優越的地位の濫用であったりカルテルであったりということを取り締まっているわけでございまして、BツーC、小売業者が消費者との間でどのように取引しているかについてはカバーしていないわけでございます。
 それで、私が今申し上げたのはBツーBのデータでございまして、下請事業者といいましても、大方は、本体価格での取引をして、それにプラス税額を乗せて請求し、支払われているというのが実態であると我々は把握しております。
 問題は、小売、BツーCにおいて本当に転嫁できているかどうかという問題ではないのかと。この大きな違いはそこにあるというふうに思っております。

○塩川委員 親事業者と下請事業者ですから、BツーBの話をしているんです。この中にもその実態が反映をしているということを言っているわけであります。
 今答弁があったように、平成元年の消費税導入時、平成九年の五%増税時の調査で、下請事業者が価格転嫁できましたよという回答が九割以上なんですよ。本当かなと誰もが思わざるを得ないような回答の結果であるわけです。中小四団体の実態調査と余りにもかけ離れているということを言わざるを得ません。
 なぜそうなるのか。それは調査方法にあるわけです。中小四団体の実態調査というのは、各団体を通じてアンケートを依頼し、集計をしたものであります。中小企業や小規模事業者のありのままの姿が反映をしているものであります。
 そこで、では公正取引委員会にお尋ねしますが、公正取引委員会の特別調査の調査対象、下請事業者の調査対象はどのように決めておられるんですか。平成元年の場合についてで結構ですから、答えてください。

○竹島政府特別補佐人 平成元年につきましては、先ほど申し上げましたとおり、資本金一億円以上の親事業者、それと取引のある下請事業者、親に調査をかけまして、あなたはどこの下請に出していますかということを調べます。それでわかった取引先である下請事業者が六万六千社、これについて調査をかけたわけでございまして、特別の何か細工をしているわけではございません。

○塩川委員 つまり、親事業者に取引している下請事業者の名前を書き出してくれと言って、それをリストにしているわけですよ。ですから、下請事業者が回答しようと思ったとしても、親事業者は回答している下請事業者のリストを持っているわけですから、そうなったときに、本当に正直に、実態をあるがままに回答することができるのかということを言わざるを得ません。
 親事業者に名前を握られている下請事業者にすれば、転嫁できないということを正直に回答しにくい、こういうふうにならざるを得ないとお考えになりませんか。

○竹島政府特別補佐人 その点の御懸念はごもっともでございまして、私どもは、であるがゆえに、この得られた情報は決して外に出ないように、親にばれないように工夫をしております。
 ばれて報復を受けたという話は、私、もう十年近くになりますが、聞いたことがありませんので、そこは御信頼いただきたいと思います。

○塩川委員 消費税の特別調査は同じ仕組みなんですよ。親事業者が自分の下請事業者を全部リストアップして、その先に聞いているんです。だから、下請にしてみれば、消費税を転嫁したよということを言わざるを得ないというか、実態はそうなっていないということを言えないと。だから、回答数だって、母数からすれば三割、四割にならざるを得ないんですよ。そういうのが今の実態であるわけであります。
 そういう秘密をしっかり厳守しているというお話をされますけれども、この点について、私は、こういう事業者にとって、秘密が厳守されなかったというより漏れてしまった、そのことによって不利益が及んでいるという事例を実際に聞いていますよ。
 私が地元で聞いたお話ですけれども、金属加工の社長さんですが、ある親事業者、大企業との取引があります。そのときに、公正取引委員会から定期書面調査についての要請があって、その定期書面調査に、親事業者の問題のある行為、違法行為を書き込んで回答したわけです。そうしたら、その後どうなったのか。その親事業者、大企業の、大手メーカーですけれども、その大手メーカーの調達担当者から呼び出された。何を言われるのかと思ったら、おたくは公正取引委員会の書面調査に答えたでしょうと。こういうことですよ。
 結局、親事業者にしてみれば、下請事業者の名簿を握っていますから、何らか匿名でやったとしても、公取が親事業者に問い合わせするようなことがあれば、もう特定できるというのが実態なんですよ。そういう中で、結局、この中小企業の社長さんの仕事というのはそのときで切られてしまった、これが実態であります。ですから、仕事を切られて大きな損失をこうむった、これは誰が責任をとるんですか。
 こんなことが現に起こっているというのが公取の調査の実態なんですよ。こういう現状を放置したままで、どうして今回のような消費税の価格転嫁の是正などできるのか。これについて誰か答えてください。

○竹島政府特別補佐人 仮に報復があれば、それも違法行為でございますので、ぜひ、そういう情報は公正取引委員会に提出をしていただきたい。きちっと、厳正に処理します。

○塩川委員 公正取引委員会の書面調査そのものに問題がある、限界があるということを言わざるを得ません。
 何でこんなことになるのか。この点について、下請いじめを本気で公正取引委員会が是正をできない構造的な問題として、公正取引委員会の天下りの問題を取り上げたいと思います。
 総務大臣にお尋ねをいたします。
 公正取引委員会からの天下りが五代以上続いている公益法人はどこか、その天下りのポストは何か、お答えください。

○川端国務大臣 総務省が平成二十一年十二月二十五日に公表いたしました調査によりますと、公正取引委員会からの再就職者が五代以上連続している公益法人は、平成二十一年五月十四日時点で、社団法人首都圏不動産公正取引協議会、社団法人自動車公正取引協議会、社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会の三法人となっておりまして、それぞれの役職は専務理事であるということでございます。

○塩川委員 三つの公益法人に五代連続天下りが行われている。
 このパネルをごらんいただきたいんですが、自動車公正取引協議会の場合には、昨年に、六人目になるような、経済取引局長が専務理事のポストに天下っています。
 民主党というのは、こういう天下りをやめようと言っていたんじゃないですか。公益法人の五代連続、さらには三代連続のこういう天下りをやめさせようと言っていたにもかかわらず、民主党の政権になってから天下っているんですよ。こんなことを放置しているということ自身、民主党政権が天下り問題を棚上げしているということを言わざるを得ません。
 ここで、例えば自動車公正取引協議会ですけれども、これは補助金とかは入っておりません、会員企業の会費で運営をされているわけであります。会長企業はどこかといえば、自動車工業会の会長であります。現在では日産自動車であります。副会長企業はトヨタ自動車。これが実態であります。同様に、全国家庭電気製品公正取引協議会についても、家電メーカーと販売会社で構成をされているわけで、その代表の企業はソニーということが実態であります。首都圏不動産公正取引協議会でいえば、会長そのものは不動産協会ですけれども、その不動産協会の会長企業は三井不動産ということです。
 要するに、この自動車公正取引協議会の会長が自動車工業会の会長、日産自動車であることを見ても、天下りOBは業界団体の会費で仕事をしているわけです。
 公正取引委員会のOBの老後をこれら業界団体に保障してもらっている、その担い手は、トヨタであり日産だ。これでは、親事業者である大手メーカーに肩入れすることにならざるを得ないんじゃないのか。下請事業者の立場で是正ということも言えないんじゃないのか。
 こういう現状について、総理はどのように受けとめておられますか。ぜひお答えください。

○竹島政府特別補佐人 職員の再就職問題、大変厳しくなっているのは御案内のとおりでございます。しかしながら、公正取引委員会のOBにつきましても、政府で決めましたルールに基づいて、きちっとやっているつもりでございます。
 今御指摘の自動車公取協の専務理事の件でございますが、これは公益法人でございます。独立行政法人は大方のところで公募をやっていると承知しておりますが、公益法人に関して、いわゆる天下りをする場合に公募という形をとっているのは極めて少ないはずでございまして、公正取引委員会は率先してその公募に受けているわけでございます。
 この男性は、その公募に受けて、イコールフッティングのもとで、よかろう、能力がいいということでパスしていることでございますので、何か公正取引委員会の職権なり影響力を行使して押し込んでいるということではない。その手続も、公募でございますので、官も民もまさにイコールフッティングのもとでこの者が選ばれたということをぜひ御理解いただきたいと思います。

○塩川委員 いや、そんなことは聞いていないんですよ。
 総理にお答えいただきたいんですが、民主党はかつて天下り禁止の法案まで出しました。政権についてからは天下り容認に転向したというのは、ここにあるとおりであります。天下りの問題というのは、官と民の癒着によって行政がゆがめられるということが一番の問題なんですよ。
 民主党政権下で経済産業省の資源エネルギー庁長官が東京電力に天下った。このことについて、結局、エネルギー政策を取りまとめた資源エネルギー庁長官が電力会社に天下ったということが日本のエネルギー政策をゆがめていたんじゃないのか、このことが厳しく問われたわけで、ここを見ても、監督する立場の役所から監督される業界に天下っている、こういう状況について、こういうのは認めるわけにいかない……

○中野委員長 時間が参りました。恐縮ですが、終わらせてください。

○塩川委員 こういう欠陥を拡大するだけの消費税増税は認められないということを述べて、質問を終わります。