<第180通常国会 2012年05月29日 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会 10号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 政府広報のパンフ、「明日の安心 社会保障と税の一体改革を考える」、これを初めとしまして、政府広報においては、現役世代が高齢者を支えるという説明として、胴上げ型から騎馬戦型、そして肩車型といった人口構成の変化を踏まえ、消費税増税が必要だとの説明を見かけます。
 そこで、岡田副総理にお尋ねしますが、現役世代が高齢者を支えるというその人口構成の変化が、なぜ負担面において消費税増税の必要性となるのか、この点について御説明いただけますか。

○岡田国務大臣 なぜ消費税という前に、まず全体の負担の問題があると思います。
 年金、医療、介護、それぞれ、もちろん医療などは働く世代も含めて当然給付の対象になるわけですが、しかし、基本的にはやはり高齢者の医療というのはこれからふえていく。それから、年金、介護についても基本的には高齢者ということですから、高齢者の数がふえていく、あるいは割合がふえていくということは、それだけ多くの負担が必要となるということであります。
 したがって、働く世代と高齢者の割合が変わっていく、委員が言われた、我々が言っている言葉なんですが、胴上げ型から騎馬戦型、そして肩車型というふうに構成が変わっていけば、それだけ多くの負担が必要になる。その負担というのは公費であり、保険料ということになりますが、公費の負担もふえる中で、消費税の引き上げということをお願いしているわけでございます。

○塩川委員 高齢者と現役世代の割合が変わっていく、高齢者がふえて現役世代が減っていく、そういう社会だから、現役世代に負担が集中しないようにということで、世代間で負担が公平な消費税ということでよろしいですか。

○岡田国務大臣 基本的にはそういうことだと思います。

○塩川委員 そこでお尋ねしますが、このパンフを見ますと、現役世代が高齢者を支えるという説明ではあるんですけれども、子供が出てこないわけであります。子供はどこに行ったんでしょうか。

○岡田国務大臣 基本的には、税、保険料の負担というのは現役世代が行うということで、その現役世代と高齢者ということを比較しているということであります。

○塩川委員 いや、税の負担に行く前に、いわば子供の世代、子供の養育を含めて教育、その負担というのは誰が見ているのかということが、ここにはすっぽり抜け落ちているんじゃないのかということを言っているわけであります。
 ですから、負担の面で、子供を支える負担は誰がしているのかという問題ですけれども、子供を支えているのは誰でしょうか。

○岡田国務大臣 基本的には現役世代であります。

○塩川委員 ですから、現役世代に支えられているのは高齢者だけではありません。子供も支えられております。
 つまり、現役世代が自分を含めて全人口を支えているということであるわけです。これが正確な実態じゃありませんか。

○岡田国務大臣 委員の御指摘は、従来から共産党の御指摘でもありますが、要するに、子供の世代と高齢者を足し合わせれば、現役世代との比率において余り変わらないじゃないか、こういう御指摘かと思います。
 しかし、それは、たまたま子供の世代が減っていることによってそういう事態が現に起きているわけですけれども、しかし、子供の数が減っているということは、やがて現役世代が減るということですから、それは一時的には言えても、長期的には言えないことだというふうに思います。

○塩川委員 でも、皆さんはその議論で、すぐ消費税に行っちゃうんですよ。そうじゃないでしょう、その前に、負担の関係について、きちんと事実を踏まえたことを見ていく必要があるでしょうということです。
 配付資料で、一枚目のところに二本のグラフが書いてあります。
 左上から右下に流れているグラフというのが、六十五歳以上人口一人当たり二十歳から六十四歳人口の推移、つまり、現役世代が何人で高齢者一人を支えているか。これは政府のあのパンフでも説明をしているもので、一九六五年では現役九・〇七人で高齢者一人を支えているのが、二〇一〇年には二・五六になり、二〇五〇年には一・二三になるという数字です。
 もう一つ、横ばいのグラフがありますけれども、これは、現役世代が自分を含め、つまり、現役世代と総人口、全人口との関係であります。そうなると、大体二前後ですけれども、現役世代が自分を含め二人を支えているというのがここに示されている。これは、国立社会保障・人口問題研究所人口統計資料より取り上げたものであります。これが現実であります。
 実際には、この二十歳から六十四歳の現役世代の方でも、働いていらっしゃらない方もおられます。もちろん、六十五歳以上の高齢者の方でも、働いている方がいらっしゃいます。ですから、いわば労働力人口、実際に働いている方が全人口を支えているわけです。
 そこで、小宮山大臣にお尋ねをいたしますが、この全人口と労働力人口の比率について、つまり、全人口割る労働力人口で計算した場合に、一九六五年と二〇一二年と二〇三〇年がどうなるのか。この点についてお答えいただけますか。
    〔古本委員長代理退席、委員長着席〕

○小宮山国務大臣 全人口を労働力人口で割り返した比率につきましては、一九六五年がおよそ二・〇五、二〇一二年がおよそ一・九六、二〇三〇年がおよそ一・八九になります。
 ただ、先ほどから委員がおっしゃっている、騎馬戦型から肩車型にならないという御批判ですけれども、現在は、社会保障費の九割以上を年金、医療、介護が占めているんですね。高齢者対子供で、社会保障給付費を比べると十九対一ぐらいになっているので、非常に子供の方をこれからふやしていきたいとは考えていますけれども、現状からいたしますと、やはり働く人口で高齢者をどう支えるかということから計算をしていくということは、これは今の社会保障制度を、どう担い手と支えられる側が変わっていくかということにつきましては、今回使っているものは正しい表示だというふうに考えています。

○塩川委員 昔というのは五十五歳定年もありましたから、実際に働き手の数そのものがこういう形で、実際には今も将来にわたっても二前後になるということで、この全人口と労働力人口の比率について、基本的には、過去、現在、将来において変わりがないというのが実態であります。
 今、小宮山大臣にお答えいただきましたように、配付資料の二枚目の方ですけれども、二本あるグラフの下の方が、一枚目の横ばいのグラフと同じものであります。
 お答えいただいた労働力人口一人当たりの総人口の推移というのも、見ていただいたように横ばいで、ここには書いておりませんが、二〇三〇年のところで、今お答えがあった一・八九という数字が入ってくるわけであります。
 ですから、働く人が全人口を支えるという比率、ここに着目すれば、変化がないということは否定できませんよね。

○岡田国務大臣 これ、二〇六〇年以降はどうなるんですか。
 私の感覚では、子供の数が減っていくということは将来的に働く世代の数が減るということですから、二一〇〇年ぐらいまで延ばしてみると、恐らくかなり、安定的ではなくて、割合が変化していくのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○塩川委員 二〇三〇年のところまでについては反論がありませんでしたので、過去、現在、二〇三〇年においては変わりがないということを否定されませんでした。
 二〇六〇年の話がありましたけれども、その先も大体、二ぐらいなんですよ。それは、でも、政府の方が、数字が出せませんというので、出していないんですよ。そういうのをきっちり出した上で議論こそ行うべきじゃありませんか。
 そういう点でも、社会保障の負担の議論をするのであれば、働く人が全人口を支えるという比率が過去、現在、将来も大きな変化はないということを踏まえた説明こそ政府が行って、議論を行う、それこそ前提じゃありませんか。

○小宮山国務大臣 ただ、人口の構成比が全く変わりますので、逆ピラミッド型になっていく中で、高齢者の皆さんへの社会保障費は、もちろん削り込むところはしていきますが、それでも人口比が大きく変わる中で、委員がおっしゃったような形にはならないというふうに思います。

○塩川委員 それは変なんですよ。
 内閣府に置かれております高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会、これがこの三月に報告書をまとめております。
 そこの中で、生産年齢人口は十五歳から六十四歳、老年人口は六十五歳以上と位置づけられることが多い。これは今でいえば現役世代と高齢者ということですけれども、この報告書では、生産年齢人口と老年人口の比率から単純に支える人と支えられる人の関係を示した指標は、現状を必ずしも反映していない、政府の報告書で、現状を反映していないというふうに指摘をしているわけですよ。
 ですから、内閣府の検討会報告書の指摘は、政府の説明を否定しているということになりはしませんか。どう受けとめますか。

○岡田国務大臣 ちょっと、今読まれたものを、私、理解ができなかったんですが、ただ、委員の言われていることは、高齢者一人当たりの年金、医療、介護等の社会保障費と比べると、子供に係る税とか社会保障のその額が同じであれば、委員のような御指摘、比率が変わっていないという議論はできると思いますが、基本的には、それはたまたま割合が同じであったからといって将来の財政について心配ないということにはならないと思います。
 そもそも、現在でも、今の財政の状況は自立不可能な状況にあるわけですから、もうそれだけでも私は消費税の引き上げの十分な理由になっている、さらに高齢化が進めば、さらに厳しいことになるということを申し上げているわけであります。

○塩川委員 高齢世代の社会保障などの負担をどう支えていくかという議論が必要なんですよ。そのときに、前提としての現状認識、事実認識がどうかということを問うているんですよ。
 この検討会の報告書でもあるように、機械的に現役世代と高齢者を切り分けるというのは、現状を反映していないと指摘をしているわけですよね。そういう機械的なやり方じゃまずいんじゃないですかというのを政府の検討会の報告書でも取り上げているわけですから、そういうことにこそ耳を傾けて、しっかりとした議論の前提から始めるべきだ。
 ですから、事実に基づいた議論こそ必要なのに、そうなっていないということで、現役世代が高齢者を支え切れないので消費税増税が必要という政府の理屈は短絡的でしかない、このことを言わざるを得ません。こんなごまかしの説明で消費税増税を合理化するのは認められないと言わざるを得ません。こんなごまかしの説明が社会に悪影響を与えるものとなっています。
 この同じ検討会の報告書では、実際に社会を支える役割を担っている六十五歳以上の人が存在するのにもかかわらず、高齢者を一律に捉えることで、若年者、中年者の負担感や不安感を実態以上に高めていると指摘をしています。
 つまり、内閣府の検討会の報告書でも、若年者、中年者の負担感や不安感を実態以上に高めている、つまりは、今皆さんがしている議論というのが、結果として不安をあおって世代間の対立をあおるものとなっているんじゃないのか。そういう点で極めて重大な議論じゃないかということを言わざるを得ません。

○岡田国務大臣 まず、思い出しました。その内閣府のレポートは、内閣府として出したものではなくて、内閣府の依頼に基づいて研究者が出したもので、政府として正式に見解として出したものではないというふうに私は記憶をしております。もし間違いがあればおっしゃっていただきたいと思います。ですから、政府が出したかのように言われるのは、私は違うというふうに申し上げておきたいと思います。
 その上で、確かに我々も、六十五歳以上でも元気で働いておられる方はたくさんいらっしゃるし、それから、これからも、現役世代と高齢者の割合はそこに書かれたとおりですけれども、例えば、現役世代でも、今働いておられない、あるいは非正規で働いておられる女性がもっとしっかり働けるような社会になれば、その負担感というのは変わってくる、そういうことは前から申し上げているところであります。
 しかし、大局として見れば、そういうものがあったとしても、やはり高齢化が進むことは、それは現役世代と高齢者の負担割合は変わってくるわけで、負担がそれだけ大変になることは間違いない。その大きな流れを、少し例外があるからといって大局を誤らせれば、それはやはり議論を誤ってしまうことになるというふうに考えております。

○塩川委員 いや、大局と言うのであれば、働く人が全人口を支える、その比率について基本的に大きな変わりがないというところから出発をした議論こそ、多くの皆さんが納得をするような負担の議論になっていく、このことを言わざるを得ません。
 結局、消費税増税を正当化するために、こういう基本的な事実関係を踏まえない、いわば事実をゆがめて世代間の対立をあおるような肩車型の社会論というのは、若者などの政治不信を拡大するだけの有害な議論だと言わざるを得ません。(発言する者あり)有害な議論です。こんな説明は直ちにやめるべきです。
 もう一つ指摘をしたいのが、政府広報で、みんなで支えるのが消費税だということを政府は説明してきましたけれども、しかし、この政府広報のパンフには企業負担が出てきません。これはどういうことなんでしょうか。

○小宮山国務大臣 これは、日本の社会保障制度は言うまでもなく共助の考え方が基本ですから、そういう中で、給付に応じた保険料負担を行う社会保険方式を基本としています。
 ですから、企業に対しましても、厚生年金、健康保険などの被用者保険について、雇い主の責任として、一定のルールで被用者の保険料負担をお願いしているわけでございますので、それは今の仕組みの中、共助の中に組み込まれているということでございますので、当然、企業負担も今までと同じように、また、高齢化が進んでくればさらに御負担をいただくということになると思っています。

○塩川委員 いや、ここには出てこないんですよ。
 一方で、去年十二月四日の各紙に載せられた政府広報、野田総理が出ているものですけれども、ここでは「急増する社会保障給付をみんなで支えます (現役世代も、高齢者も、企業も)」とありますから、ここには書いてあるわけですが、みんなで支えますという理屈というのは、皆さん、消費税の話で言っているわけじゃないですか。企業というのは消費税を負担するんでしょうか、財務大臣。

○岡田国務大臣 最終的には転嫁をされて、消費者が負担をするということです。
 ただ、御党も盛んに言っておられるように、中小零細企業は、結局、転嫁ができなくて、みずから負担をせざるを得ないというふうに言っておられるわけですから、それは、取引の状況その他によっては、企業の中にも不本意ながらそういった負担を強いられるところも出てくる可能性がある。そういうことはなるべくないように、しっかり努力をしなければならないというふうに考えております。

○塩川委員 中小企業が価格転嫁できないということを認めたのは極めて重要、重大であります。この点が問われているということと、大企業は消費税を負担しない、肝心の法人税も出てこないじゃありませんか。大企業ほど優遇税制によって法人税の負担割合が低くなっているわけで、担税力のある大企業の負担を抜きにした社会保障財源論はおかしい。
 既に八億円以上の税金を使った、国民をミスリードする宣伝によって消費税増税を押しつけるのは認められないということを申し上げて、質問を終わります。