<第180通常国会 2012年06月08日 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会 17号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 参考人の皆さん、ありがとうございます。早速質問をさせていただきます。
 最初に、村岡参考人にお尋ねをいたします。
 冒頭の意見陳述でもお話がありましたが、日本経団連として、消費税増税法案の今国会中の確実な成立ということを掲げておられます。
 一方で、昨年十二月の税制調査会に経済産業省が提出した資料を見ますと、中小企業団体、中小関係団体からは消費税増税については大変慎重な意見が続きましたし、反対という団体の声も聞いております。
 経団連としては消費税増税断行。一方で、中小関係団体の方は慎重、反対。こういう違いというのは何なんでしょうか。

○村岡参考人 まず、私ども、消費税を今国会でぜひ成立させていただきたいと申し上げていますのは、もちろん財政の健全化もございます。年金、医療を中心とした担保をすることもございます。
 もう一つは、先週でしたと思いますけれども、国際経営開発研究所、スイスにありますIMDが世界競争力年鑑というのを毎年発表していますけれども、その二〇一二年版で、日本の競争力が世界の中で五十九カ国中二十七位だ。その前年が二十六位だったわけですね。ずっと、九〇年代、世界でナンバーワンだったのがどんどん下がってきている。
 その中で指摘されていますのは、日本で今回大きく落ちていますのは公的債務残高の対GDP比率、これが五十九カ国中五十九位、最下位になっている。ギリシャよりも悪いという報告がされていまして、日本で今求められていますのは、エネルギー、特に東日本大震災以降のエネルギーの改善、それから社会保障と税の一体改革、これが特に求められています。
 したがって、これを今回やらなければもう永久にできなくなるという危惧がございます。したがって、これを何としてもなし遂げないとこの日本の財政制度がおかしくなるということで、速やかな成立を求めてございます。
 それから、中小企業団体が慎重だというふうに今先生がおっしゃられましたけれども、私ども経団連だけでなく、中小企業の集まりであります日本商工会議所も速やかな成立を求めるという談話を出していますので、私どもは、大企業、中小企業という垣根を越えて、今、日本が取り組まなければならない問題だというふうに認識をしてございます。
 以上でございます。

○塩川委員 その他の中小団体から非常に反対、慎重な意見が上がっていますし、日本商工会議所も、必要性は理解できるけれども、引き上げのタイミングや幅や仕組みは慎重な対応が必要だという点では、いわば慎重な声であるのも同様だと思っています。
 その点では、経済産業省の資料が、冒頭で中小企業についての懸念として出ているのが価格転嫁の問題です。やはり、消費者との関係で、デフレのもと、勤労者の所得が落ちている中での転嫁がなかなか困難だというのもありますし、元下関係で、親事業者との関係で下請事業者にとって価格転嫁が困難だという声がある。こういう現実についてはどのように受けとめておられますか。

○村岡参考人 当然、消費税率相当分については価格転嫁ができるだけなされるべきであろうというふうには思います。ただ、今の消費税、今とられています帳簿方式、ですからインボイス方式ではありませんので、それを正確にどこまで転嫁できるというのが難しい。今回、消費税率がアップされれば、公正取引委員会においても適正な指導がなされるというふうに伺っていますので、そういうふうにすれば価格転嫁もされて、中小企業についても価格転嫁が進んでいくんじゃないかと思います。
 ただ、もう一つ問題は、余りにも厳しくやり過ぎると、これは今度は、中小企業は下請という会社が多いようですから、そういった場合に、発注する側が選択をしてきて、かえって中小企業に発注量が減ってくるという問題も出かねない、そういう面も現実としてありますから、そこは慎重に取り扱っていかなきゃいけないんだろうというふうに思ってございます。私どもがするとかということではなくて、そういう可能性もあるから慎重に扱うべきだろうというふうに思っています。

○塩川委員 前提としての、やはり親事業者との関係で転嫁ができないという声がある、現実にそうだというのが、日本商工会議所を含めた四団体の調査でも示されているわけですね。
 そういったときに、やはり転嫁ができないときに、親事業者、大企業の優越的な地位を背景とした、価格転嫁を困難とさせるような交渉ということが今一番の問題で、そういうことについては、現状、そういうふうに受けとめておられるでしょうか。

○村岡参考人 当然、私どももそういう取り組みをしてございます。特に中小企業遅延防止等いろいろな法律がございます。コンプライアンスの問題からも、そういった違法なことをやってはいけない、あるいは中小下請いじめをやってはいけないということで、私どもは率先して、そういったことをやらないような指導をしてございます。

○塩川委員 そういうことをやらざるを得ない現状にあるということが、今そういう下請いじめというのが行われているときに消費税増税というのは、実際に中小団体にとって大きな影響を受けることになりかねないということも示しているわけであります。
 その関係で、五十嵐参考人も冒頭の意見陳述の中で、デフレのもとでの消費税はいかがかという流れの中で、価格転嫁が難しい、それはデフレでもインフレでも同じじゃないか、そういう趣旨だと思うんですけれども、やはり価格転嫁が困難だという下請事業者の現状とか、あるいは消費者を相手にした流通、小売関係の事業者の皆さん、なかなかこの転嫁が困難だという現状についてはどのように受けとめておられますか。

○五十嵐参考人 全くそのとおりだと思います。
 価格転嫁というのは、もちろん消費税は転嫁しないといけないということですから、やると思うんですけれども、大企業が中小企業に対して元値を下げろと、百に対して例えば一〇%消費税が乗っかるところだと値段が百十になるわけですけれども、元値を九十にすれば一〇%乗せたって百のままでいいじゃないか、こういうプレッシャーが当然かかるということだと思います。
 ですから、これは消費税があろうとなかろうとこういうことは起こっているわけですが、消費税を上げることによって、もう一段、この元値を下げさせる圧力が働いてしまうという事実はあろうかと思います。
 したがって、政策も使って何とかこれを防ぐことが必要ではないか。ある程度のカルテル行為を認めるような、そんな話も新聞等で読んだ記憶がありますけれども、何らかの形でやらざるを得ませんが、しかし、完全にこれを排除するというのはやはり難しい。でも、消費税は上げざるを得ない、私はこのように思っております。

○塩川委員 小塩参考人に、その点で、価格転嫁問題というのは、日本では大きな問題として、特に事業者の方が訴えがあるわけですけれども、海外ではどうなんでしょうか。付加価値税などもかなり高いわけですけれども、こういった価格転嫁問題というのがどんな声があるのか、実態なのか、日本との比較で御存じのことがありましたら教えていただけますか。

○小塩参考人 私も十分知識を持っているわけではございませんけれども、まず価格転嫁につきましては、ヨーロッパの国ではインボイス制が非常に整備されているということですので、日本ほど深刻な問題は発生していないのではないかというふうな気がいたします。
 それから、価格転嫁がどの程度行われるかというのは、それは、その取引されている財とかサービスの特徴によって影響を受ける面があるというふうに思うわけです。
 ほかの会社と余り競合はしない、非常にユニークな商品であるという場合は、価格転嫁が非常にしやすい。ところが、競争が激しくて、消費者の力が強いということであれば、需要と供給の関係でなかなか転嫁しにくいというふうな面があると思うんですけれども、後者の点につきましては、私はある程度やむを得ないんじゃないかというふうに思います。
 ただ、制度的に価格転嫁が難しい、しかも、それが企業の規模によってそういうふうな原因が発生しているという点については、それは政策的に改める必要があるというふうに思います。

○塩川委員 小塩参考人に、続けて、逆進性の点についてのお話でお聞きしたいと思っています。
 消費税には逆進性があるというお話で、一方で、ほかの税や保険料、給付で十分吸収できるんじゃないのかというお話でした。
 そこで、今回の法案、このスキームでどうなるのかということがあるわけです。
 特にワーキングプアと言われるような非正規の皆さんにとってみますと、参考人もおっしゃっておられたように、社会保険料の負担が非常に大きいということですし、今回の措置でも、では税とか保険料で何らかの低所得者対策が十分にされているかというと、そういう状況にはないわけです。
 そういう際に今の政府の案で言っているのが、簡素な給付措置や給付つき税額控除であります。ただ、これは財源をどうするのか、規模をどうするのか、何にも示されていないわけであります。
 そういったときに、小塩参考人から見まして、私たちの立場ではありませんが、政府の案としてどういう制度設計が可能なのか、その点についてお考えがありましたら教えていただけますか。

○小塩参考人 正直なところを申し上げますけれども、今回の一体改革では、そういう所得の低い層に対する支援というのは私は十分じゃないというふうに思います。消費税は、何度も議論がありますけれども、逆進的な性格を持っています。それをできるだけ軽減するような政策的措置というのは重要だというふうに思うわけです。
 とりあえず五%ぐらいだから大丈夫じゃないかというふうな議論はあるかもしれませんけれども、極めて所得の低い層にとっては、これは結構重い問題です。そういう人たちは、社会保険料も払えなくて、社会保険の仕組みからもドロップアウトしてしまうという危険性があるわけですね。
 ですから、これから一〇%というふうに段階的に引き上げていくんだろうと思うんですけれども、そういうときに、特に社会保険料の負担もあわせて、なるべく軽減するような形で、低所得者の人たちをセーフティーネットの外に追いやらないような仕組みというのは、私はこれから検討していく必要があるというふうに思います。

○塩川委員 社会保障の増税分から充てるという話にも制度設計上なっておりませんので、そういった際にどうするのか。所得税の控除の見直しとかという話になりますと、それで本当にうまくいくのかなというのも思うところであります。
 小峰参考人にお尋ねいたします。
 消費税増税に関する議論ということで、小峰参考人がおっしゃっているお話として、「「社会的言い訳」を提供している反対論」という話の例示として、増税を提案する前に国会議員や公務員が身を削る姿勢を示すべきだという主張には問題点があるということをおっしゃっておりますが、その点について御紹介いただけますか。

○小峰参考人 私が申し上げたかったことは、例えば公務員の給料、国会議員の給料というのをどういうふうにするのかというのは、長期的な制度設計として考えるべき問題であって、たまたま消費税を上げるから上げないからという観点で行うべきものではないというのが私の趣旨でございます。

○塩川委員 小峰参考人に、続けて、今言った、先ほど皆さんにもお聞きしました価格転嫁問題についての認識と対応策とかございましたらお聞かせください。

○小峰参考人 私は、特に税の専門家ではないので詳しい議論は承知しておりませんが、この問題は大変悩ましい問題だというふうに思います。
 当然、消費税は価格転嫁するという前提で考えるわけですけれども、それが現実には難しい面があるということで、これをいかにして解決していくのかというのは、なかなかうまい解決方法がないと思うんですけれども、恐らく、これは消費税に限らず、例えばガソリンの値段が上がったりしたときに運輸業界が価格転嫁が難しいとか、一般的に価格転嫁が難しい、だからこそデフレになっているということだと思います。
 恐らく、そういったデフレマインドというのを長期的に払拭していかないと、なかなかこの問題はなくならないのではないかというふうに思います。

○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。
 ありがとうございました。