<第180通常国会 2012年06月19日 総務委員会 12号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 消防法改正案について、同僚委員から質問がございました。消防法改正案については賛成であります。
 私は、関連して、自治体病院について少しお尋ねします。
 小児救急や周産期医療など、地域医療のかなめとなっているのが自治体病院であります。全国自治体病院協議会は、今の政府の消費税増税計画に関して、会員病院を対象に緊急に調査を実施いたしました。そこでは、現在、社会保険診療報酬が非課税とされているため、多額の控除対象外消費税、いわゆる損税が発生しており、平均で年間一億円以上、五百床以上の病院では三億円以上もの負担となって病院経営を圧迫しているということを指摘しております。
 そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、自治体病院においてもこのように消費税が転嫁できないという中で損税が発生をしているという認識はお持ちでしょうか。

○川端国務大臣 社会保険診療というのは、国民に適切な医療を提供するということの公共性があるということで、消費税は非課税、そして、診療報酬というものは、いわゆる公的に決められているという意味では、それまでの過程において、いろいろ病院等々が仕入れ等に発生した消費税は、普通でいえば消費者に転嫁することになりますが、それは転嫁される仕組みではなくて、価格は別途決まっているということでありますので、その分は、かねてから、五%にするときも含めて、診療報酬、医療費は非課税にするという中で、診療報酬を決めるということを含めて、それに見合ったものを手当てするという考え方でやられているということであります。
 こういう、診療報酬で手当てするということが前提になっていますけれども、自治体病院とか医療関係者から、今御指摘のようなことで、特に高額な設備投資を行った場合に、消費税負担について十分に手当てされていないのではないかという御指摘とか、消費税が引き上げられると病院経営が圧迫されるなどの懸念、いろいろな意見をいただいていることは承知をしております。

○塩川委員 そういう懸念の声があることは承知をしておられるということであります。全国自治体病院協議会の会長も、記者会見の中で、現行の消費税率五%でも自治体病院の経営は青息吐息です、このままでの増税では経営への影響が大き過ぎて成り立たない、損税をなくす方法を考えたいとしております。
 今大臣も答弁の中で触れましたように、診療報酬は公定価格で、そういう点では、仕入れに係る消費税分について消費者に転嫁するという仕組みとなっていない、その分については診療報酬で手当てをするということが前提だというふうになっていると思いますが、病院においては、改築を行うような、施設を建て直すようなこと、あるいは高額の設備投資、これに対しての消費税分が実際には診療報酬で補填されていないという声があるわけであります。
 このような実際にかかる改築の費用あるいは設備投資に係る消費税分は全て診療報酬で補填をされている状況ではない、このような受けとめということでよろしいでしょうか。

○川端国務大臣 先ほど申し上げましたように、実態として大変厳しいというふうなことを指摘され、ここはしっかりと議論をし、そういうことのないようにという御要望をいただいていることは私は承知しております。
 私ごとをこういう場で申し上げるのは恐縮ですが、私の実家は薬局でありまして、診療報酬だけではなくて薬価も同じでありまして、薬局のいろいろな設備投資とか調剤の機械とかいうことをやってもやらなくても転嫁できないという部分で、もともと病院も、そういう医療関係は基本的に大変厳しい経営状況にある中で、そういうものが、今回引き上げられるときに、発生した部分が診療報酬やそれからその他の手当ての中で転嫁できなくて圧迫されることのないようにという御要望を各医療関係から強くいただいていることは事実であります。
 今回の税制改正においても、引き続き消費税の取り扱いは非課税とするということとした上で、特に医療機関の行う高額の投資による消費税の負担に関して、一定の基準に該当するものに診療報酬等の医療保険制度で手当てすることを検討するとされておるということで、中医協のもとに、医療関係者、保険者、有識者などによる検証の場を設置して具体的な検討を行う予定としておりますので、総務省としてもその推移を見守っていきたいというふうに思っております。

○塩川委員 医療関係者からそのような要望があるということは承知しているという御答弁で、実際に損税が発生しているということについては直接はお認めになっておらないという点でも、これは認識が極めて重大だと言わざるを得ません。
 対策についても触れておられましたけれども、実際には、消費税の増税だけは先に決めて、手当てについては今後検討するというやり方で本当に対応が可能なのか、持ち出し分を全額見るという保証はどこにもないんじゃないのか、これが実態としての声であります。
 改めて大臣にお尋ねをしますが、今でも大きな負担となっている消費税が増税となれば、病院の改築や高額医療機器の購入に二の足を踏むことにもなりかねない、自治体病院の維持や存続にも支障が出てくる、こういう消費税増税というのは地域医療の後退につながることになるのではないのか、この点についての大臣のお考えをお聞かせください。

○川端国務大臣 いろいろな御懸念が、御要望も含めて指摘されていることは承知していると申し上げました。
 したがいまして、今回の改正は、社会保障・税の一体改革の中で、社会保障制度が安定的に、そして拡充されるために、安定的な財源確保をするというのが趣旨でございます。それに伴って、社会保障制度の中の医療とかが後退することがあってはいけないということの前提で進めてまいりたいというふうに思っております。

○塩川委員 この三党協議、三党合意の中身でいえば、社会保障関連についてはほとんど先送りという中身となっているという点でも、本当に社会保障に消費税増税分が充てられるのかどうかということさえ見通しが立たないような状況になっている。
 そういう意味では、消費税増税しか残らないような、そういう法案審議、法案の中身となっている点が極めて問題であるわけで、地域医療のかなめとなっている自治体病院は、過疎地での医療活動や小児救急医療、周産期医療など、採算がとりにくい地域や分野において重要な役割を果たしております。その自治体病院に重い負担を押しつける消費税増税は、自治体病院の維持を困難にし、地域医療を一層後退させることにしかならない、このことを指摘しておくものであります。
 そもそも消費税の増税というのは地方を疲弊させるものだ。このことは、地方公共交通機関にとっても言えることであります。地方、過疎地の公共交通機関である乗り合いバスにとって経営を困難にする重大な要因となるのが消費税の増税であります。乗り合いバスは、高齢者の方の通院や買い物の足となっており、学生生徒の通学の足となっている必須の公共交通機関であります。
 国土交通省にお尋ねをいたしますが、この乗り合いバス事業者について、消費税導入時及び五%増税時において、消費税が転嫁できたという事業者はそれぞれ幾つあったのか、この点についてお答えをください。

○若林政府参考人 お答え申し上げます。
 乗り合いバス事業におきましては、平成元年の消費税導入時には、全三百七十事業者のうち百八十九事業者が転嫁しております、運賃改定を行っております。また、平成九年の消費税率の改定時には、四百四事業者のうち百二十三事業者が運賃改定を行っているというデータがございます。

○塩川委員 今答弁がありましたように、消費税を転嫁したというのは、消費税導入時は五割なんですよ。それが、五%増税時には三割なんです。つまり、転嫁しようにも転嫁できないような状況にあるというのが乗り合いバス事業者の実態となっているわけであります。
 これが一〇%になったら転嫁できるのか、こういう問題が起こってくるわけで、日本バス協会は、消費税の増税については、公共交通機関であるバス事業にとって利用者に運賃転嫁することが困難と述べております。
 国交省に重ねてお尋ねしますが、一〇%への消費税増税となれば、乗り合いバス事業者にとって運賃値上げによる消費税の転嫁というのは困難ではないのか、このように思いますが、国交省としての考えを聞かせてください。

○若林政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘の、日本バス協会において、なかなか困難であるということを申し上げていることは承知しておりますけれども、消費税の転嫁対策につきましては、今後、私どもといたしましては、政府全体の中で検討されるものと承知しておりまして、国交省といたしましても適切に対応してまいりたい、このように考えている次第でございます。

○塩川委員 デフレのもとで国民の所得が減少しているときに、消費税増税分の転嫁ができないというのが現場の声であります。輸送人員が減少を続ける中で、乗り合いバス事業者が運行する四分の三の系統が赤字系統であり、事業者全体としても四分の三が赤字事業者となっています。赤字系統は増加傾向にあります。
 大臣にお尋ねをしますが、消費税増税というのは、こういう地方バス路線の撤退を加速させることになるんじゃありませんか。

○川端国務大臣 条件不利地域の乗り合いバスが、それに限らず、全国的に乗り合いバス自体が大変厳しい経営環境にあることは御指摘のとおりだというふうに思います。そういう中で、消費税の価格が転嫁できるのかどうかということでの問題も、いろいろ、議論は当然しっかりしていかなければならないし、交通事業者の実態を十分に把握してまいらなければならないと思います。
 そして、転嫁の問題で申し上げれば、消費税の円滑かつ適正な転嫁等のための検討本部というのが設置をされております。私もメンバーの一人でございます。地域の活力という部分を含めての、乗り合いバスが公共的に果たした役割は非常に大きいという意味では、関係機関と緊密な連携をとりながら徹底した対策を講じたいと思いますし、根本的に、そういう地方のバスの構造的に将来どうあるべきかという大きな問題もあるんだというふうに思いますので、一概に、消費税がどういう影響を与えるかということは慎重な議論が必要だと思いますが、住民のサービスの低下にならないようなことに対してはしっかり目配りをしていく必要があるというふうに思っております。

○塩川委員 こういう議論で、前田国土交通大臣が、当時、答弁で答えていたのは、過疎バス、バス路線、どうするのかといった場合には、コンパクトシティーをつくることによって解消するんだという趣旨の話をするわけですよ。それは方向が逆で、要するに、中山間地に住んでいる方は中心市街地に移り住んでくれということを前提とするような、そういう話なんかも答弁でされているというのは、全く逆方向だと。一層地方を切り捨てるという話しか考えていないのかということを言わざるを得ません。
 先ほど国交省の答弁にあったように、消費税導入時に転嫁できたのは五割なんですよ。五%増税時には三割なんです。今度の一〇%では本当に転嫁できるのか。転嫁できなかった場合にどういう状況になるのか。
 現在でも毎年、稚内から鹿児島までの直線距離に相当する約二千キロの路線が完全に廃止をされている状況にあり、路線廃止にとどまらず、乗り合いバス事業者が経営破綻に追い込まれているケースも全国的に生じているときに消費税増税というのは、地方の足を一層切り捨てることにしかならないんじゃないのか、この点について改めて大臣に問いたいと思います。

○川端国務大臣 経済ベースでバス事業が大変厳しい環境にあるというのは、社会的な変化、構造的な変化を含めて、当然そういう状況があると思います。そういう中で、地方の、特に高齢者あるいは学生さんを含めた部分の足をどう確保していくのかということの観点でのいろいろな知恵と工夫を地方公共団体もやっていただいているという部分であります。そういうことの流れの中で、消費税増税がそのことに悪い影響を与えるようなことのない、最大の努力をするというのが我々の責務だというふうに思っております。

○塩川委員 地域社会、地域経済の疲弊をつくるのが消費税増税だと。対策は先延ばしで、消費税増税しか残らないような、こういうやり方は認められない、増税法案は撤回しかないということを申し上げて、質問を終わります。