<第180通常国会 2012年07月20日 内閣委員会 10号>
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
暴力団対策法の改正案について質問をいたします。
今回の暴力団対策法の改正の大きな柱の一つは、暴力団の対立抗争によって市民に危害が及ぶことの防止と、暴力団からの不当要求を拒否した市民に対する危害の防止であります。暴力団の対立抗争では、市民を不安に陥れるだけでなく、市民が暴力団関係者と誤認されて射殺されるような重大な事件も発生をしております。
そこでお尋ねしますけれども、九州の二つの暴力団の抗争事件の経緯と現状について御説明いただけますか。
○栗生政府参考人 お答えいたします。
対立抗争の契機でありますが、平成十八年に、福岡県久留米市に本拠を置く道仁会におきまして、三代目の組長の継承をめぐる争いから、福岡県大牟田市に本拠を置く九州誠道会が分裂いたしました。その後、翌年、十九年の八月には福岡県内において道仁会会長が射殺されるなど、両組織の対立が激化いたしました。また、同年十一月には、佐賀県内の病院において、先ほど大臣が申し上げた、入院中の男性が誤って射殺されるという事案も発生いたしました。
その後、一時的に抗争が鎮静化いたしましたが、二十三年に入りまして抗争が再燃いたしまして、本年六月末までに四十二件の抗争事件が発生し、死者数は一般市民一名を含む十二名、負傷者も十三名に上っております。
○塩川委員 この間、二十三年に入って以降、四十二件の抗争事件が発生をしているということでありますが、これら抗争事件の検挙状況はどうなっているのかについてお答えください。
○栗生政府参考人 お答えいたします。
十八年五月以降、本年六月末までに四十二件の抗争事件が発生しておりますが、検挙はこのうちの十二件でございます。
○塩川委員 重大事件であるにもかかわらず、検挙は約三割にとどまっているものであります。
次に、不当要求に伴う市民に対する危害についてお尋ねをいたします。
やはり福岡県などで、建設会社の役員が狙われる事件が続いております。拳銃や手りゅう弾などが使われ、命が奪われている重大な事態であります。
そこでお尋ねしますが、このような事業者に対する危険な暴力行為の現状がどうなっているのか、そういう中で九州における発生件数などがどうなっているのか、この点についてお答えをいただけますか。
○栗生政府参考人 暴力団等によると見られる事業者襲撃などの事件は、平成十九年から本年六月末までの間に全国で百五件発生しております。警察庁が把握しているものでございますが、この百五件のうち七十件、約三分の二が九州で発生しておる次第であります。
○塩川委員 こういう暴力行為の現状について、十九年以降で百五件、そのうち三分の二の七十件が九州ということですけれども、これら事業者に対する襲撃事件の検挙状況はどのようになっておりますか。
○栗生政府参考人 お答えいたします。
平成十九年から本年六月末までの間に発生した事業者襲撃事件の百五件のうち、検挙に至ったものは二十八件でございます。
申しわけございませんが、九州における内数というのはちょっと今手元にございません。
○塩川委員 直近の、二十三年以降における検挙の件数というのはどのぐらいになりますか。
○栗生政府参考人 失礼いたしました。
二十三年以降でありますが、九州におきまして二十七件発生しておりまして、検挙は二件でございます。
○塩川委員 事前に聞いた数字とちょっと違うんですけれども、それでよろしいですか。ことしに入ってからの数字も含めてですけれども。今のは九州の数字ですか、全国の数字ですか。
○栗生政府参考人 ちょっと説明が上手にできなかったかもしれません。
九州の数字でございますが、二十三年に二十五件、うち二件検挙。平成二十四年の六月までに九州で二件発生、ゼロ件検挙。合計で二十七件。九州で、二十三年以降、二十四年の六月までで二十七件発生して、二件の検挙でございます。
○塩川委員 わかりました。二十三年以降、直近で見ますと、二十七件、九州で発生をし、うち検挙が二件ということであります。
まさに市民を襲うようなこういう暴力団関係者による事件が起こっている中で、検挙がほとんど行われていないという状況について、市民の中での不安の声というのも少なくないというふうに思います。
そこで、大臣にお尋ねします。
まず、検挙が少ないというその辺の評価を聞く前の話として一点お尋ねしたいんですが、こういった市民に対する暴力団の報復行為など重大な事態に対して、今回の暴対法の改正というのが市民を守るという点でどういう効力を発揮することになるのか、その点について、どのような効果を想定しているのかについてお尋ねをいたします。
○松原国務大臣 今回の法改正は、対立抗争や事業者に対する襲撃事件が発生するなど緊迫した状況のもとで、今委員御指摘の、市民への危害が生ずるおそれがある暴力団員の行為を直罰の対象にするということによって規制の強化を図るものであり、暴力団の危険な活動の抑止に相当の効果を期待しております。
もとより、暴力団の危険な活動を抑止するためには対立抗争や襲撃事件の捜査を徹底することが重要であり、そのための捜査手法の検討が行われているところでありますが、今後、こうした事件の捜査、保護対策といった各種施策と相まって取り組んでいきたいと思っております。
今、検挙のことをおっしゃいましたが、これに関しては、やはりまだ検挙件数、国民の期待を考えると、これは本当に不十分であるという認識を持っておりまして、このことに関して、担当大臣としては重く受けとめているところであります。
○塩川委員 不当要求を直罰することで不当要求自体を抑える、そういう抑止効果として、市民への危害を防止するということでありました。
市民の生命が脅かされており、抗争の抑止や市民への危害未然防止を目的とする今回の法改正には賛成であります。こういう抑止効果を最大限働かせるべきであります。
その一方で、市民の生命を脅かしている抗争事件や市民への傷害、殺人、暴力団員によるそれら犯罪行為に対する検挙が進んでおりません。今、大臣からお話がありましたように、検挙件数の現状については不十分であるという認識のお話もありました。これらは、暴力団対策法以前に、犯罪そのものでありますから、今回の暴対法での新しい規制の抑止効果や未然防止効果の運用だけではなくて、犯人の検挙自体にも全力を尽くしていただきたい。この点についての、大臣としての決意を伺わせていただきたい。
○松原国務大臣 もう申し上げましたように、対立抗争や事業者襲撃などの事案の多くが未検挙であることは、犯人検挙に対する国民の期待を考えると、担当大臣として重く受けとめているところであります。
特に、これらの犯行は銃器や手りゅう弾等が用いられるなど、地域社会に対する大きな脅威となっております。早期検挙とともに、警戒活動、保護対策等を徹底し、地域住民の不安感を解消する必要があります。
現在、全国警察の支援のもと、福岡県警察を中心にこれらの事件の捜査を強力に推進し、被疑者の検挙に努めているところでありますが、捜査の高度化についてもしっかりと議論を進めるとともに、一日も早い事件の検挙、対立抗争の終結を実現させるよう、警察を督励してまいります。
○塩川委員 徹底的な捜査を尽くして、犯人逮捕に全力を挙げていただきたい。
次に、事業者の責務に関する規定についてお尋ねをいたします。
今回の法改正で、新たに事業者の責務規定が設けられます。三十二条の二で、「事業者は、不当要求による被害を防止するために必要な第十四条第一項に規定する措置」、これは、不当要求防止責任者の選任や、不当要求に応対する使用人等の対応方法についての指導その他の措置、これらを「講ずるよう努めるほか、その事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めなければならない。」ということであります。
そこで、「事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めなければならない。」とある「不当な利益」とは何なのか。この点について御説明いただけますか。
○松原国務大臣 暴対法三十二条の二に、「暴力団員に不当な利益を得させることがないよう努めなければならない。」という、今委員御指摘の「不当な利益を得させる」とは、正当な理由のない利益を得させること、すなわち、相手方が暴力団員であることを理由として、通常の一般人を相手方とする場合には行わないような金品等の贈与を行うことをいい、具体的には、暴力団員による不当要求に安易に応じてみかじめ料を支払ったり、通常を上回る価格で物品等を購入したりすること、何らかの見返りを期待するなどして暴力団員に対して進んでみかじめ料を支払ったり、通常を上回る価格で物品等を購入したりすることがこれに当たると考えます。
なお、本規定はあくまでも事業者の方々に自主的に取り組んでいただく努力義務を定めたものであり、何が暴力団員に不当な利益を得させる行為なのかについては、各事業者において社会通念に従って適切に判断されるべきものと考えております。
○塩川委員 不当な利益、みかじめ料の話などがございました。同時に、事業者において社会通念に従って適切に判断されるものという場合についても、やはり事業者側にしてみると、なかなか判断に迷うようなところがあるわけであります。
そういう点でも、いわば、これは正当な理由によるもの、これは不当な利益、正当な理由のない利益に当たるもの、そういう整理というのを事業者にとってみて見えるような形で行うということも必要なわけですから、不当な利益でないというのはどういうものか、その辺についての具体的な事例についてお話しいただけませんか。
○松原国務大臣 具体的事例は栗生部長から御説明をさせますが、今委員御指摘の点は、事業者が自発的に行う暴力団排除活動の促進を図るために、必要に応じて警察側が情報の提供等を行って支援をする、その中に、そういったことに関する具体的な説明、解釈等があるというふうに思料しておりますが、ちょっと具体的なことは栗生さんの方がいいと思います。
○栗生政府参考人 お答えいたします。
本規定は、あくまでも事業者の方々が自主的に取り組んでいただくことを後押しするためにも資するということの努力義務でございます。
そのバランスを考えてこの規定の運用を見守らなければいけないなと思っておりまして、一つは、余り、こうだこうだ、具体的にこうですということを官の側が示し過ぎてしまいますと、やはり普通に取引をされる方々に非常に面倒をかける、手間がかかるというふうなこともあろうかと思います。
そういった意味で、社会通念というふうに大臣も申し上げましたけれども、事業者の方々で御判断いただく、そういったものをやはり尊重するべきではないかなというふうにも思っているところであります。
最後に、やはり事業者の方々の団体もあられます。その方々の暴力団排除につきまして警察と協議する場面もございますので、そういった連絡の場などを生かしながら、その悩みも伺いながら、サポートしてまいりたいと思っております。
○塩川委員 事業者団体などの実情も踏まえた対応ということでお願いするものです。
最後に、暴力団の暴力行為は、この間、まさに市民の生命と生活が脅かされており、こうした事態から市民の生命や生活を守るための対策が不可欠です。その一方で、暴対法の枠組みは警察に次々と新たな権限を付与してきたことも事実であり、その権限が一般の市民に濫用されるようなことがあってはならない、厳格な運用も不可欠であるということを強く指摘して、質問を終わります。