<第180通常国会 2012年07月25日 内閣委員会 11号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 先週、暴力団対策法の改正案の審議が行われました。この点におきましても、九州地域における暴力団の事業者へのさまざまな妨害、脅威を与えるような行為が行われる、暴力団相互の抗争の重大化、こういう中での必要な未然防止策、抑止策についての措置をとる法改正の議論を行ったわけですけれども、先週金曜日の質疑の翌日、問題となっている九州地域で福岡県警の警部補が捜査情報を暴力団に漏えいしていた疑いについて、一斉に各紙が報道しております。事実とすれば、命がけで暴力団排除運動に立ち上がっている市民への裏切り行為でしかありません。
 松原国家公安委員長にお尋ねしますが、この捜査情報の暴力団への漏えいですとか金銭の授受など警察と暴力団の癒着の問題がどうだったのか、この点についてまず最初にお答えいただきたい。

○松原国務大臣 御答弁申し上げます。
 お尋ねの報道については承知をしております。
 本件については、福岡県警察において、現在、調査、捜査中であり、事実関係について確定的なことを申し上げることのできる段階ではないということでありますが、警察においては、被疑事案が発生した場合には徹底した調査、捜査を行い、事案の厳正な処理を行っております。本件についても、福岡県警察において事実関係について徹底した調査、捜査を行い、明らかとなった事実に即して厳正に対処されるものと承知をいたしております。
 なお、同県内において事業者襲撃等の事件の発生が集中しており、福岡県警察のみならず全国警察の支援のもと、捜査の徹底を図るとともに、保護対策、警戒活動等を強化して市民の安全確保に万全を期している中でこのような状況を招いたことは、私としても遺憾とするところであります。再発防止措置については、調査、捜査の結果を待って考えることとするところであります。
 いずれにしても、暴力団対策については、しっかりとした業務管理を確保の上、暴力団の弱体化、壊滅に向け、これを強力に進めてまいるよう警察庁を督励してまいります。

○塩川委員 私は、この前の委員会で、暴力団による市民への傷害などの犯罪行為に対する検挙が進んでいないという事実を指摘して、この暴対法での新しい規制の抑止効果の発揮だけではなくて、犯人の検挙自体にも全力を尽くすべきだという指摘を行ったわけですが、いわばその前提を掘り崩すような事態だということが今問われているわけであります。
 松原大臣は、「対立抗争や事業者襲撃などの事案の多くが未検挙であることは、犯人検挙に対する国民の期待を考えると、担当大臣として重く受けとめているところ」と答弁をされたわけであります。
 生命、生活を脅かす暴力団の犯罪の捜査、検挙にまさに全力で取りかからなければならないときに、警察と暴力団の癒着によってそれが妨げられるようなことがあってはならない。事実を徹底的に解明し、こうしたことが二度と起きないようにあらゆる手だてをとるべきだと考えますが、改めてお答えください。

○松原国務大臣 申し上げましたように、報道されている捜査員が暴力団関係者と癒着していたかどうかについて、現在、福岡県警で調査、捜査中であります。
 九州において昨年から本年六月末までに二十七件の事業者襲撃事件が発生しており、検挙に至ったものは二件であります。暴力団犯罪の捜査については、捜査手法や関係者からの協力確保等、さまざまな面での困難もありますが、犯人検挙への国民の強い期待を重く受けとめ、この結果を担当大臣として重く受けとめているところであります。
 特に、福岡県では事業者襲撃の事件の発生が集中しており、全国警察の支援を受けながら市民の安全確保に万全を期している中でこのような状況を招いたことは、繰り返しますが、私としても極めて遺憾であります。
 一層厳しい緊張感を持って業務管理を徹底しながら暴力団対策を強化していくよう、警察庁から指導してもらうように督励をいたしてまいります。

○塩川委員 検挙されないのは警察から情報が流れているからじゃないか、こういう市民の疑問、怒りの声が上がっているわけですから、それにしっかりと応えることこそ今求められているわけです。
 委員長、ぜひ、当委員会でも、今回の事案に関して必要な報告を聴取するなど、しかるべく対応をお願いしたいと思います。

○荒井委員長 はい。

○塩川委員 次に、秘密保全法制に関連をして、特別管理秘密について質問をいたします。
 政府は、二〇〇六年にカウンターインテリジェンス推進会議を設置し、二〇〇七年八月、カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針を決定しました。
 その基本方針によれば、国の行政機関が保有する国の安全、外交上の秘密その他の国の重大な利益に関する事項であって、公になっていないもののうち、特に秘匿することが必要なものとして当該機関の長が指定したものを特別管理秘密として特別な管理を行うとしており、この特別管理秘密に係る基準は二〇〇九年四月から施行されております。
 内閣官房では、この施行に伴い、内部規程を二〇〇九年の三月二十七日に決定をしております。内閣官房特別管理秘密管理規程、この第八条では、特別管理秘密の指定及び解除を規定しております。この八条四項では、「特別管理秘密が指定されたときは、速やかに、当該事項の内容、所管部署、指定日、秘密指定期間その他必要な事項を特別管理秘密指定管理簿に登録するとともに、その旨を関係者に通知する。」とされています。
 そこで、こうした秘密の管理について、まず防衛省に確認をいたしますが、防衛省では、いわゆる省秘、防衛秘密、特別防衛秘密を管理しています。例えば防衛秘密については、指定された防衛秘密について防衛政策局長が記録簿を管理することになっております。
 防衛省に確認をしますが、この省秘、防衛秘密、特別防衛秘密の指定件数は幾つでしょうか。

○石塚政府参考人 防衛省における秘密の件数についての御質問かと思われますけれども、防衛省において取り扱う秘密は、今議員がおっしゃられましたように、日米相互防衛援助協定等に基づき米国から供与された装備品等に関する事項を内容とする特別防衛秘密、また、自衛隊の運用や防衛力整備等に関する一定の事項のうち、我が国の防衛上特に秘匿することが必要であるとして防衛大臣が指定する防衛秘密、これ以外の防衛省の業務に関する秘密であるいわゆる省秘の三種類が存在しております。
 平成二十二年末時点におきまして、特別防衛秘密は約一万件、防衛秘密は約一万三千件、省秘につきましては約八万七千件の指定等がなされております。

○塩川委員 今お答えがありましたように、それぞれの秘密に関しての指定件数が述べられました。
 そこで、官房長官にお尋ねをいたしますが、内閣官房特別管理秘密管理規程にもありますように、この特別管理秘密の指定について定めがあるわけですけれども、内閣官房に関する特別管理秘密は何件あるのか、この点についてお教えいただけますか。

○藤村国務大臣 内閣官房において内閣官房特別管理秘密管理規程を定めています。先ほどおっしゃったように、八条において、この内閣官房の規程においても、内閣官房に関する事項のうち、国の安全、外交上の秘密その他の国の重大な利益に関する事項であって、公になっていないもののうち、特に秘匿することが必要であるものを内閣総理大臣が特別管理秘密として指定することとしており、現在四十九事項を指定しているところであります。

○塩川委員 四十九事項で、実際の文書とするとどのぐらいか、こういうことについてはわかりますか。

○藤村国務大臣 特別管理秘密を記録した文書等は、内閣官房の部局内において複数の担当官によって管理されているほか、同一内容の文書等が複数存在しているわけです。その重複について精査することも必要であるので、今直ちに件数で何件ということをお答えするのは困難であります。

○塩川委員 改めてその点について確認をさせていただきたいと思っております。
 この特別管理秘密の特別な管理を行うために、基本方針は、秘密取扱者適格性確認制度を導入することとし、二〇〇九年四月から実施されております。
 秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議、この第三回会議において、事務局が、秘密の管理に関する考え方、事務局案、論点を提案しておりますが、その中で、現在の秘密取扱者適格性確認制度についての課題を指摘しております。その上で、その課題を解決する適格性確認制度についての提案を行っております。これは、方法、手続では、まず対象職員の同意という手続から始まって、実施権者から説明があり、対象職員から書面による同意があって次のステップに進むことになっております。
 そこで、内閣官房の方にお尋ねしますが、なぜこの事務局案では、手続を進める上で対象職員の同意を必要としているんでしょうか。

○兼原政府参考人 お答え申し上げます。
 有識者会議の提出した報告書でございますけれども、その報告書によれば、適性評価では実施権者が対象者の個人情報を調査し、把握する必要があるが、対象者のプライバシーに深くかかわる調査となることから、調査については、対象者の同意を得て進めることが肝要であると記載されております。

○塩川委員 プライバシーに深くかかわることなので対象者の同意が必要だということであります。
 ここに消費者庁の、消費者庁長官名で決定をしました秘密取扱者適格性確認制度実施規程があります。消費者庁にお尋ねをいたしますけれども、この第七条「調査の方法及び手続」では、秘密取扱者適格性確認制度の実施に関するガイドラインの人事管理情報等による調査は、調査対象職員に係る人事記録、勤務評定記録書その他次長が定める種類の資料を参照することとなっておりますが、ここで言う、その他次長が定める種類の資料、これはどのようなものなんでしょうか。

○松田政府参考人 お尋ねの件につきましては、秘密取扱適格性確認制度の具体的運用にかかわることでありますことから、情報保全に支障を及ぼすおそれがあるということから、お答えを差し控えたいと存じます。

○塩川委員 実際に消費者庁においては、特別管理秘密の指定の件数は幾つなのか、この点についてはお答えいただけますか。

○松田政府参考人 消費者庁はございません。

○塩川委員 特別管理秘密の指定がないということです。
 重ねて、適格性確認者、これについては何人とかわかりますか。

○松田政府参考人 お答え申し上げます。
 五人となっております。

○塩川委員 そうしますと、適格性確認者は適格性についての確認の作業を行っているわけですけれども、消費者庁の実施規程には、対象職員の調査において対象職員からの同意を得る規定というのが触れてありませんけれども、同意なしに調査を行うということが想定されているんですか。

○松田政府参考人 規程にないといいますか、同意を前提として全て調査をするということになっていないと承知しております。

○塩川委員 同意を前提に調査するというふうになっていないというお答えでありました。
 重ねてお尋ねしますけれども、消費者庁の実施規程の第七条のところで、今の一項の記述の続きですけれども、ガイドラインのただし書きの照会を行うことにより行うものとありますけれども、この照会については、何をどこに照会するのか、この点についてはいかがですか。

○松田政府参考人 お答え申し上げます。
 お尋ねの件につきましても、秘密取扱適格性確認制度の具体的な運用にかかわることでありまして、情報保全に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

○塩川委員 こういう調査対象者に対して調査を行う上で必要な照会を行うということですけれども、この照会を行えるというその法的な根拠というのはどのようになっていますか。

○松田政府参考人 現行制度における適格性の確認は、各行政機関において、職員の任用に関しまして任命権者の権限の範囲内で実施しているということと承知しております。

○塩川委員 いや、ですから、照会を行うような場合に、第三者に問い合わせをするというようなときについて、きちんとした法的根拠がないということですね。

○松田政府参考人 あくまで、任用につきましては任命権者の権限の範囲内で可能であると承知しております。

○塩川委員 その点が見えてこないわけです。
 内閣官房にお尋ねします。
 この消費者庁の秘密取扱者適格性確認制度実施規程でも取り上げております秘密取扱者適格性確認制度の実施に関するガイドライン、二〇〇八年九月二日、カウンターインテリジェンス推進会議で了承されたこのガイドラインにおいては、調査対象者への調査というのは、対象者からの同意を得て行うという規定になっているんですか。

○兼原政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のガイドライン等の現行の適格性確認制度の関係規定におきましては、適格性の確認を行うことについて、調査対象者の同意を得ることが必要である旨は規定してございません。

○塩川委員 そのガイドラインを明らかにしていただけますか。

○兼原政府参考人 秘密取扱者適格性確認制度の実施に関するガイドラインと思いますが、このガイドラインにつきましては、これを明らかにすることによる業務の支障の有無を確認、検討した上で、可能な範囲でこれを提出いたしたいと思います。

○塩川委員 四月十日付の閣議決定の政府答弁書において、「適格性の確認は、各行政機関において、職員の任用に関して任命権者の権限の範囲内で実施しているものであり、必ずしも本人の同意を得て行っているものではない。」とありますけれども、これはどういう意味なんでしょうか。

○兼原政府参考人 先ほど別の政府委員からもお答え申し上げましたけれども、現行制度における適格性の確認は、各行政機関におきまして、職員の任用に関する任命権者の権限の範囲内で実施をしております。調査対象者の同意を得なくても適格性の確認は可能であると認識をしておる次第でございます。

○塩川委員 そのガイドラインでは、対象職員に対する調査事項について、どういう事項を調査することとしているのか、それについての定めはどのようになっていますか。

○兼原政府参考人 委員お尋ねの点につきましては、秘密取扱者適格性確認制度の具体的運用にかかわる事項でございます。情報保全に支障を及ぼすおそれがございますので、お答えを差し控えたいと思います。

○荒井委員長 塩川鉄也君、時間が終了しておるので。

○塩川委員 はい。
 最後に官房長官に。
 今やりとりしましたように、調査事項についての明示がない、照会についての法的根拠も明らかにされていない、調査対象者の同意についても私は不明確だ、こう言わざるを得ません。
 やはり、こういったガイドラインの問題についてもきちんと公表することを求めると同時に、権力によるプライバシー調査にかかわるような問題であり、本人同意のないものは違法ということにもなりますので、こういった適格性確認制度そのものは直ちに中止をすべきだ、そのことを申し上げて、一言いただいて終わります。

○藤村国務大臣 短く申し上げます。
 まず、調査対象者の同意を得なくても現時点で適格性の確認は可能である、こういう認識でありますが、先ほども事務方から答えましたように、ガイドラインについては、これを明らかにすることによる支障の有無を検討した上で、可能な範囲でこれを提出させることとしたいと思います。

○塩川委員 終わります。