<第180通常国会 2012年08月07日 総務委員会 15号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 地方自治法の改正案について質問をいたします。
 最初に、首長等の議場への出席義務の解除の件についてお尋ねをいたします。
 今回の法改正によって、首長が出席すべき日時に出席できないことについて正当な理由がある場合において、その旨を議長に届け出たときは、議会への出席義務が免除されるという規定が盛り込まれることになっています。
 正当な理由については、先日の答弁でも、災害による交通の途絶や現地対応、その団体にとって重要な影響のある公務出張、あるいは重い疾病や傷害、出産といった事情を想定しているとしております。
 首長等の議会への出席義務の解除の規定は、通年議会の場合だけではなくて、従来どおりの定例会や臨時会を開催する場合の審議についても適用されるとしております。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、この改正によって、現行の定例会、臨時会を行っているような議会において、首長の出席が今よりも後退することになりはしないか、こういう懸念がありますが、この点についてはいかがでしょうか。

○川端国務大臣 長等の判断によって議会審議が軽視されるようなことがあってはならない、御指摘の、御懸念されていることは起こってはいけない、これが基本的な立場でございます。
 通年会期にした場合に、いつでも議会を開会できるということから、執行機関側の負担が過重になってはいけないという御懸念が出てまいりました。ということで、長等の円滑な行政執行に配慮すべき旨の意見が全国市長会等から寄せられました。
 そういう意味で、地方制度調査会において、そのような意見も踏まえて、三議長会の代表の参画も得て議論が行われた結果、長の円滑な職務執行に配慮し、一定の手続を経た場合にも長等の出席義務を免除することができるようにすべきであるという意見が取りまとめられましたことを踏まえて、このような改正に盛り込ませていただきました。
 現行の制度の運用においては、議長による出席要求に対し、急遽出席できない場合に、議長宛てに欠席届を提出することとしている例も見られますけれども、このような届け出は事実上の行為であって、法的に出席義務が解除されるものではございません。このため、今回の改正において、正当な理由がある場合に限定して、出席義務を解除する手続に関する規定を置くことにいたしました。
 この正当な理由は、今言っていただいた例示も申し上げましたが、客観的に正当な理由であることが必要でありまして、議会審議が軽視されることにはつながらないというふうに思っております。

○塩川委員 現行の定例会、臨時会で首長の出席が後退することにならないのか。起こってはいけないということですけれども、実際に後退させないという担保はあるんでしょうか。

○川端国務大臣 通年議会にするときにという背景からこういう懸念が出てきて、免除されるという規定を設けましたが、今、これを適用しない議会においては、何もしないということで現行どおりとしますと、逆に、法的に正当な理由があっても拒否できる、制度的に何もないんですから、拒否できるということになる、休むことは認めないということにもなりかねないということで、制度的には議会に対して同じ条件を付すという意味で、今までの議会にもこういう免除規定を、出席義務を免除する規定を設けましたが、趣旨は先ほど申し上げたこと、正当な理由においては、円滑に執行機関の職務を遂行する等々のことにおいては、議会はそのことにおいて配慮するという部分は担保する制度でありますので、軽視するということにはつながらない制度であるというふうに思っております。

○塩川委員 具体的に、後退させないという担保のお話はありませんでした。
 これまで首長が議会に出席できない正当な理由というのは、議会の方の議会運営委員会などで、その議論を通じて、議会の側での判断を行ってきたわけであります。今回の法改正ですと、そういう正当な理由について、首長側が判断するということへ変更される、議会側の判断から首長側の判断に変更されるということになるんじゃありませんか。

○川端国務大臣 そういう意味で、今までは、そういう議会の判断というのも、法的には何の担保も制度的な規定もございません。それは運用としてそれぞれがやっておられたことでありますので、逆に、こういう正当な理由があるときにおいては免除されるということを法定したということでございます。

○塩川委員 通年議会の話があるから現行の規定でも盛り込むということ自身が、実態として何か具体の問題があるというよりも、結局は法制度上の整備の関係でそうなっている。それが、結果として現行の定例会、臨時会において首長の出席義務を後退させることになりはしないのか、こういう懸念というのを拭うことができない。議会出席を回避したいがために公務出張などという口実で出席義務の解除を図るといった、議会審議を形骸化させることにもなりかねない。議会の権限を現行制度より後退させるような改定というのは私は認められないと申し上げておくものであります。
 次に、国等による違法確認訴訟制度の創設の件についてお尋ねをいたします。
 地方分権一括法以前の国の関与規定を踏まえた自治体の対応についてですけれども、現行の自治事務に関しては、国の是正要求に対し、自治体は必要な措置を講じなければならないとされております。このような規定というのは一括法以前はどのようになっていたのか、この点についてお答えをください。

○久元政府参考人 今御指摘がありました是正の要求の規定は、地方分権一括法によって盛り込まれたものでございます。
 分権一括法の改正前の旧自治法には二百四十六条の二の規定がありまして、内閣総理大臣は、普通地方公共団体の事務処理またはその長の事務の管理及び執行が法令の規定に違反していると認めるとき、一定の要件がある場合に、当該普通地方公共団体またはその長に対し、その事務の処理または管理及び執行について違反の是正または改善のため必要な措置を講ずることを求めることができる、こういう規定がございました。

○塩川委員 ですから、現行の法では国の是正の要求に対して自治体側が必要な措置を講じなければならないという規定があるわけですけれども、一括法以前はそれがなかったということであります。一括法以前は、自治体の自治事務に対して是正義務を課す規定は設けられていなかったということであるわけです。
 ところが、分権一括法の是正の要求では、地方自治体に是正を義務づける規定を明記しております。これによって、国は、法定受託事務だけではなく、地方自治体の全ての事務に対して、強制的な是正を含む介入、干渉の権限を持つことになりました。地方分権一括法によって、自治体に対する国の関与が強まったわけであります。
 今回の国等による違法確認訴訟制度の創設というのは、この分権一括法によって強められた国の是正の要求をさらに実効あるものにするための措置だと言わなければなりません。
 そこでお尋ねをしますが、国等の違法確認訴訟制度の創設という今回の法改正を行う契機となったのは何なんでしょうか。

○川端国務大臣 国等による違法確認訴訟制度は、国等が是正の要求等を行った場合において、地方自治体がこれに応じた措置を講じず、かつ、国地方係争処理委員会への審査の申し出もしないときに、国等は違法確認訴訟を提起することができることとするものであります。
 現行制度上、国等の側から審査の申し出や訴えの提起を行うことができないことになっておりますので、地方自治体側に不服があり、是正の要求、指示に応じた措置を講じず、かつ、審査の申し出、訴えの提起も行われないときには、問題が解決しない状態が継続することになります。
 このような事態は、地方分権一括法による制度導入時から懸念されていたところでございますが、具体の例でというお問いでございますが、住基ネットに関して東京都国立市及び福島県矢祭町に対する是正の要求を行った際に現実のものとなったところであります。こうしたことから、裁判所の判決により違法を確認する本訴訟制度を創設することといたしました。
 この両件に関しては、例えば、国立市は住民基本台帳ネットワークシステムに不接続状態、違法状態になりまして、東京都知事より是正の勧告を二度出しました。矢祭町は、住民基本台帳ネットワークシステムに不接続状態で、違法状態、福島県知事より是正の勧告を二度実施。そしてその後、最高裁によって合憲の判決が出まして、そういう意味で、国立市に対して是正要求を行うよう、総務大臣より東京都知事に対し指示を行い、国立市に是正の要求がなされました。矢祭町に対して是正の要求を行うよう、総務大臣より福島県知事に対して指示を行い、矢祭町に是正の要求がなされました。
 そういう段階で、いずれも、国立市長、矢祭町長とも何の行動も起こさないという事態で、違法が続いていることの状態を踏まえての措置でございます。

○塩川委員 お答えがありましたように、住基ネットの不接続の問題で是正の要求を出された。現行で該当するのは矢祭町ということになると思いますが、地方分権一括法の際の参議院における附帯決議ではこのように書いてあります。
 「自治事務に対する是正の要求については、地方公共団体の自主性及び自立性に極力配慮し、当該事務の」「公益を侵害しており、かつ、地方公共団体が自らこれを是正せず、その結果、当該地方公共団体の運営が混乱・停滞し、著しい支障が生じている場合など、限定的・抑制的にこれを発動すること。」と政府に課しております。
 住基ネットの不接続に関して、矢祭町の自治体運営が混乱、停滞し、著しい支障が生じている事態なんでしょうか。この点について、いかがですか。

○川端国務大臣 お問いの趣旨は個別の町の状況についてのことでありますが、この法律の趣旨は、そういう事態があるというときに、制度上、そういうことに対して何らかの国としての行動ができるという仕組みを持たなければいけないという観点からのことでありますので、この矢祭町に対して、個別にこれをするためにつくるわけではありません。そのことは御理解をいただきたいと思います。
 国、地方の関係というのは、義務づけ・枠づけなどの事前規制を縮減して、例外的な事象が生じた場合の手続としてやっていることでありますので、この部分に関して、今、矢祭町の住基ネットが法で決められた部分、最高裁の判決も出たのに接続されていない状況にあるという違法状態にあることはお認めいただけると思いますが、それがトータルとしてどういう状況になっているか、支障が生じているというのは、住基ネット、全国ネットに、途切れているという状況でありますが、どういう判断をするかという、今言われたことに個々にお答えすることは差し控えさせていただきます。

○塩川委員 矢祭町が住基ネット接続問題では違法状態というお話をされましたけれども、この参議院の附帯決議というのは、それだけにとどまらず、その結果において、当該自治体の運営が混乱、停滞、著しい支障が生じている場合、こういう場合に限って、限定的、抑制的に是正の要求を発動すべきだという趣旨を述べているわけで、こういった自治事務に対して国が物申すことについて抑制的であるべきだ、こういう参議院の附帯決議を踏まえた対応を考えたときにも、今回の措置というのは、やはり踏み越えるような中身となっているということを言わざるを得ません。
 矢祭の自治体運営が停滞、混乱し、著しい支障が生じているという事実はありません。昨年四月の町長選挙でも住基ネットの接続が争点となりましたが、現職が再選となりました。町民は、個人情報の保護が十分ではない、国が地方自治に介入するのは地方分権に逆行する、住民に全く利便性がなく経費の無駄遣いだと訴えた候補者を選んだものであります。住民は改めて住基ネットへの不参加を継続する意思を示したわけで、この民意こそ尊重されるべきであります。
 是正の要求において当該自治体がその措置をとらないということをもって今回の違法確認訴訟制度の創設となっているということを見ても、こういう矢祭の住民の意思に対して、それに反するようなことを国が行おうとしている。住民の頭越しに民意を否定するようなこういう国のやり方は認められないと言わざるを得ませんが、その点について、大臣のお考えはいかがですか。

○川端国務大臣 この制度を当該自治体にどう適用するかということは、参議院の附帯決議とかいうふうな趣旨は、当然の一つの意思として示されていることは我々も承知をしておりますし、そういう個別の判断をどうするかということは差し控えさせていただきますが、現に住基ネットを接続していないということにおいて、例えば、年金受給者現況届の省略とか行政手続における住民票の写しの省略等が不可能になっている、あるいは、住基カードが交付されていないから、国税の電子申告・納税システム、e―Taxを利用できないでいる、転入通知等々の部分に不都合が起こっている等々が行政執行上はやはりネットに接続されていないことで生じていることは事実であります。その部分を踏まえて、我々としてはトータルとして判断をさせていただきたいと思います。
 接続していないけれども何の問題もなく済んでいるという状況でないことは御承知おきいただきたいと思います。

○塩川委員 町長選挙の選択を踏まえての、住民の意思として接続しないという選択をしているというのが矢祭の現状ですから、この参議院の附帯決議というのも、違法状態ということだけではなくて、当該自治体の運営というのが混乱、停滞している、こういうことをもって抑制的に是正の要求を行うべきだということを確認しているわけで、今回の矢祭等に対する是正の要求というのは、まさにそういう参議院の附帯決議を踏まえないものとなっている、こちらの方こそ問題だということを言わざるを得ません。
 仮に自治体に違法な事務処理があるとすれば、監査委員制度や議会による監視機能の発揮、住民監査請求とか住民訴訟とか、そして選挙などを通じて住民によって自律的に解決されるべきものであって、国が口を出すというのは地方自治の趣旨に反するということを重ねて言わなければなりません。
 次に、修正案の提出者に百条調査の件についてお尋ねをいたします。
 この百条調査の件については、関係人の出頭、証言及び記録提出の請求をする場合には、特に必要があると認めるときに限るとしております。
 そこでお尋ねしますが、特に必要があると認めるときというのは何を意味するのか、この点についてお答えください。

○橘(慶)委員 お答えいたします。
 一般的に、百条調査権の発動、あるいは出頭、証言を要請する場合には、調査により得られる公益と、出頭、証言を要請される方がこうむる影響を比較考量した上で、公益が上回る場合に行われるべきものであると考えます。もし出頭等を要請する必要性が乏しい場合にまで関係人の方に対して出頭等を要請できるということになりますと、関係人の方に不当な負担を強いるおそれがあることから、関係人の出頭等の要請につきましては、その必要があると認めるときに限り行われるべきものであると考えるわけであります。
 しかしながら、現行の地方自治法の規定においては、こういった必要があると認めるとき等の文言はございません。したがいまして、こういった趣旨が規定上明確ではない、このように考えます。特に必要があると認めるときという文言を追加することによりまして、今申し上げたような比較考量、あるいは本当に必要がある場合、こういうことで運用していただいたらどうかということで、趣旨を明確にするものであります。
 なお、当然、それぞれのケースについてはそれぞれの御判断ということになります。したがいまして、個々具体のケースにおいて、特に必要があると認めるときということに当たるか否かについてはそれぞれの地方議会の判断に委ねる、こういう趣旨での改正を提案しておるわけでございます。よろしくお願いします。

○塩川委員 百条調査に係る関係人の出頭等というのは、その百条委員会において必要があると認めるからこそ、つまり公益性、公益が上回るからこそ要請をするのであって、特に必要があると認めるときと限定をする理由というのは見つかりません。こういう規定が入ることが、逆に、地方自治法に定められた議会調査権を制限するものになりはしないのか、そういう懸念が出てくるわけであります。
 そこでお尋ねしますが、こういう百条調査の件について、このような法改正を今行う、今見直しを行う、そういう具体的な問題というのは何かあるんでしょうか。

○石田(真)委員 塩川先生にお答えをさせていただきたいと思います。
 今回の地方自治法改正案というのは、地方公共団体の議会による適切な権限の行使を確保するために議会制度の見直しを行うということで提出されているわけでありまして、そういう中で実は党内で議論をいたしました。そういう議論の形として、今回の修正案という形で出させていただいたわけでありますけれども、その一つが百条委員会についてでございました。
 先日、坂本議員の質疑がございました。また、先ほど笠原議員の質疑があったわけですけれども、やはり現行法における問題点というのも指摘されているわけであります。
 そして、先日の坂本議員の質問に対しまして、川端大臣がこのように答弁されております。「運用において適正であるのか濫用で行き過ぎているのかということを、今ダイレクトにチェックしたり、そこに物申したりということの仕組みは制度的にはございません。」中略ですが、「制度的にどういうふうにすればそれが円滑に運営できる、本来の使命を果たすことの節度を持って、濫用に当たらないかという仕組みに関しては、今のところ、我々の法律の改正案を含めては手当てをしておりませんが、いろいろな議論の中で、御指摘がある、検討すべき大きな課題の一つであることは、実態を踏まえての議論があることは私も認識をしているところでございます。」このように答弁をされているわけでありまして、私どもは、政府としても、今後より深い議論がなされていくものと理解をいたしております。
 こういう状況の中で、当面の対応として、出頭や証言を要請する場合の要件を明確化することにより、議会による適切な権限の行使を確保しよう、そういうのが今回の修正案の趣旨でございます。
 以上でございます。

○塩川委員 今回のような法改正を行うに当たって、今見直すべき具体的な問題があるのかということについての直接のお答えはありませんでした。
 同時に、先日の坂本議員の質問で、現行法についての問題点の指摘があったというお話がありました。坂本委員の質問の中におきましては、長崎県議会の例が紹介をされておりました。
 そこでお尋ねしますが、長崎県議会において、こういった事例をもってこのような修正を行うというのは、余りにも一方の当事者に肩入れするようなものではないのかということを言わざるを得ません。
 資料を配付いたしました。これは、長崎県議会における、諫早湾干拓事業における入植者選定に関する調査特別委員会の設置についての提案理由説明と、反対討論及び賛成討論の一部の抜粋を載せてあります。
 そこで、参考までに読み上げますけれども、一枚目の左側。
 諫早湾干拓事業における入植者選定に関する調査特別委員会の設置を求めることについて、提案理由を申し述べます。
 諫早湾干拓農地の入植者選定手続の適否については、これまで県議会・県政改革特別委員会において、関係書類の提示や長崎県農業振興公社の当時の事務局長等を参考人として出席を求めながら、五回にわたって集中審議をしてまいりました。
 この問題は、かつて国会の論戦でも取り上げられたことから、同特別委員会において政策決定手続や事業決定手続の透明性、合理性等を検証する過程において、個別審査事項として取り上げ、審査を行ってきたものであります。
 特に審査対象になったのは、当時の本県知事であった金子原二郎氏と農林水産政務官であった谷川弥一衆議院議員の子供さんたちが設立した農業生産法人T・G・Fの入植に関し、その選考及び措置が客観的に公平公正に行われたか否かという点であります。
 諫早湾干拓事業は、全体事業費二千五百三十億円が投じられたほか、国から農地を払い下げてもらうことに関し、県から県農業振興公社に二十五億四千四百万円が貸し付けられる予定であることなど、多額の血税が投入され、また、されるだけに、事業の推進に大きくかかわってきた両責任者の親族が、それまで農業にはほとんど無縁であったにもかかわらず、他の入植希望者に優先して入植をかち得たことについては、当時から、これをいぶかしがる多くの県民の声が聞かれたのは事実であり、そうした声に応えるためにも、また、税金の適正な執行を確保するためにも本件の真相を解明することは、県民の負託を受けた議会として当然果たすべき職責でありますとしております。
 あわせて、二枚目の賛成討論、左側の下から七行目から読み上げます。
 御高承のように、平成二十年四月から営農開始した諫早湾干拓農地の総面積は六百七十二ヘクタール、その五%に当たる三十二ヘクタールは、何と東京ドーム七個分の広さと言われており、この広さの農地の中に時の長崎県知事及び主管庁の時の農林水産大臣政務官、それぞれ職務権限を持つ二人の政治家の親族企業が入植しているのであります。
 入植者選定については、六十二の経営体が応募し、入植決定件数は現在四十二経営体と、約一・五倍の高い競争率を、わずか一年前に設立した新規参入の親族企業が選ばれ、しかも、獲得した小江干拓地は、国道の脇に位置し、海面より高く浸水のおそれのない好条件の一等地と言われており、その親族企業は、その三分の一、約十万坪を手に入れたとも言われているのであります。
 県民の声や入植した、あるいは応募された関係者からは、長年の営農経験があれば問題はないが、入植するために急遽つくった会社なら、選定作業の透明性などについて世間の批判を浴びても仕方がない。さらに、この干拓の事業費は二千五百三十三億円、我が長崎県も五百五十二億円に上る血税の事業費を拠出するところであり、一ヘクタールの事業費は三億七千七百万円、親族企業の三十二ヘクタールを事業費で換算すると、実に驚くなかれ百二十億六千七百万円になると言われているのであり、それだけ莫大な公金支出の恩恵を、この親族企業が真っ先に受けるということは、率直に理解しがたく、県民の皆さんの怒りもけだし当然のことだと考えるのであります、このように述べています。
 一枚目の右側に反対討論もありますけれども、この百条委員会の設置には反対としながらも、現行の特別委員会での審議が不十分で拙速だということが反対の理由となっているわけで、問題がある、解明しなくちゃならぬという点では議会としての共通の認識だということであります。
 現行、このように長崎県議会において行われている事態というのは、そもそも百条調査そのものが県民要求に応えたものだ、県民は真相解明を求めているわけで、関係人は出席して堂々と語ればいい、このように率直に思いますが、提出者としてのお考えをお聞かせください。

○石田(真)委員 塩川議員にお答えをさせていただきたいと思います。
 先日の坂本議員の御質問は、長崎県だけを言われたのではありません。熊本県のお話もされました。そして、先ほどの笠原議員のお話では、岐阜県のお話がなされたわけであります。
 そしてまた、市町村を見てみますと、これは市町村数がずっと減ってきていますので、一千団体という単位で見てみますと、昭和六十二年、昭和六十三年、これは十三。そして、その後もずっと、例えば平成十九年から平成二十年、十一というように、ほとんど毎年十台の市町村でこの百条の調査が行われているわけであります。
 我々といたしましても、百条委員会の権限について今ここで修正どうこうするということではなしに、先ほども御指摘ありましたけれども、やはり人権の問題とかそういうことに配慮してやるということが今の段階、当面の課題として必要ではないかということでありまして、特定の個別の団体を念頭に置いて今回の修正案を出させていただいたものではありません。

○塩川委員 しかし、今回の流れを見ても、長崎の事例というのは人権云々のお話もあったということの御紹介もありました。しかし、実際長崎県議会で行われている百条委員会というのはこういう議論となっているわけで、私は、真相解明こそ県民の要求だ、それに応える百条調査委員会に関係人は堂々と出て説明をすればいいと思う。ましてや国会議員であるならば、当然のことながら、国民、県民の前に説明をする責任があるんじゃないでしょうか。
 民主党の県会議員もこの百条調査委員会の設置に賛成をし、議論をしているところであります。その民主党も含めてこういう修正案の提出者となっているということについて、甚だ疑問の思いもせざるを得ないということが率直なところであります。長崎県の関係者の衆議院議員もこの委員会におられるわけで、私、そういう点でも、こういうあり方というのは本来あってはならないということを言わざるを得ません。
 大臣にお尋ねしますけれども、そもそも百条調査については県議会が自律的、自主的に対応していく、そのことを通じてこそ県民の信頼を得ることができるというふうに思いますが、この点についての大臣のお考えをお聞かせください。

○川端国務大臣 百条委員会の趣旨、目的というのは、やはり適正な県政運営ができるようにということの中でいろいろな調査権限を持つ、かなり重い権限を持つということであります。趣旨はそういうことだと思います。
 それは、それぞれの自治体議会において適切に運営されるべきものであると思っております。

○塩川委員 百条の委員会を濫用するようなことがあるとしたら、それはそもそも県民の理解が得られないということであるわけで、議会そのものが批判を受けるわけであります。今回の法改正というのは、事件の真相解明を求める住民要求に逆行するものだと言わざるを得ない。こういう修正案は撤回をすべきだと強く申し上げておくものであります。
 最後に、残りの時間で、百九条の二項で、「常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、議案、請願等を審査する。」とありますが、今回、陳情という文言が削除されております。これはなぜなのか、お答えください。

○川端国務大臣 現行法上、委員会の審査の対象になる「議案、陳情等」については、請願が「議案」のうちに含まれているということで請願と書かずに、「等」が陳情類似の要望、意見書のようなものを指すということで、今まで法律として書いてまいりました。
 ただし、陳情と規定する用例は地方自治法以外に一例しかなく、一方、請願は憲法や地方自治法等に根拠がある規定であることから、今回の改正にあわせ、国会法に倣い、「議案、請願等」と文言を改めることにさせていただきました。これは、文言の使用例の整理という観点でございます。
 文言を改めることになっても、その意味するところは変わるものではないため、陳情については、「議案、請願等」の「等」に含まれるものと解されます。したがって、今後、標準議会会議規則に関し、総務省から陳情の取り扱いを変更させるような働きかけを行う予定はございません。

○塩川委員 文言の使用例の整理ということで、意味するところは変わらない、「請願等」の「等」に陳情が含まれるというお答えもありました。
 憲法十六条は、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」と定めております。憲法上は、陳情も本条に言う請願に含まれると解されております。いわば、議員の紹介があるのが請願で、ないのが陳情というだけであり、請願権を保障する重要な手段の一つが陳情ということであります。
 地方議会では、請願を審査するだけではなくて、陳情も審査をしている場合が少なくありません。全国の市議会においても、こういった陳情を審査する処理状況というのが大変多いというのが現状ですが、この点について、確認で御答弁いただけますか。

○久元政府参考人 御指摘の、全国市議会議長会が行った実態調査でありますが、平成二十二年の一年間で、各市議会の委員会において、審査した陳情の処理件数は八千百五十五件というふうになっております。また、陳情書のコピーの配付や陳情書の一覧表の配付等の処理で、審査しなかった陳情の処理状況は六千八百八十三件というふうになっております。

○塩川委員 つまり、陳情を審査している例が多数あるというのが地方議会の現状でありまして、そういう点では、今回の、陳情という文言が落ちることによって、この扱いというのは変更することになりはしないのかという現実の問題が生まれてまいります。
 そもそも、変更しないというのであれば条文を変える必要がないわけで、国民の請願権を後退させることになりかねないような文言変更こそやめるべきだ、このことを申し上げて、質問を終わります。