<第181臨時国会 2012年11月07日 内閣委員会 2号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、最初に、秘密保全法制についてお尋ねをいたします。
 藤村官房長官をトップとします政府における情報保全に関する検討委員会では、昨年十月七日に第四回の委員会を開いて、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議が昨年八月八日に取りまとめた報告書の内容を十分に尊重の上、次期通常国会への提出に向けて秘密保全法制の整備のための法案化作業を進めることを決定しております。
 この法案化に向けて、内容を十分に尊重するとされた報告書をまとめました有識者会議については、この間、私もこの委員会で、配付資料が公表されていないなどの問題を明らかにしてきました。ほかにも、そもそも議事録が作成されていない、メモも廃棄処分されていることなど、国民に説明責任を果たす上で全く不十分なものであるとの指摘が寄せられてきたところです。
 そこで、きょうは、この秘密保全法制の検討がなぜ必要になったのか、その経緯についてお尋ねしたいんです。
 秘密保全法制の検討の開始が宣言されたのは、二〇一〇年の十二月の第一回政府における情報保全に関する検討委員会、このとき、仙谷官房長官でありました。当時、仙谷官房長官は、この会議の記録としての議事概要がありますが、その議事概要の中で、尖閣沖漁船衝突事件のビデオがインターネット上に流出する事案等が発生し、政府の情報保全体制に対する信頼が揺らいでいることはまことに遺憾である、こうした事態に対し、総理から、政府における情報保全に関して、早急に検討するように指示がありと、秘密保全法制の検討が始まったことを示しております。
 そこで、藤村官房長官にお尋ねしますが、ここで仙谷官房長官も触れておりますように、尖閣沖漁船衝突事件のビデオがインターネット上に流出したこの事案というのが秘密保全法制検討の理由となっているのかどうか、その点についてお答えいただけますか。

○藤村国務大臣 仙谷当時官房長官の冒頭発言ということがそれを示していると思いますが、平成二十二年、尖閣沖漁船衝突事件のビデオがインターネット上に流出する事案等、政府の情報保全体制に対する信頼が揺らぐような事態が発生し、こうした事態に対し、当時菅総理大臣から、政府における情報保全に関し、早急に検討を進め結論を得るよう指示があったということで、秘密保全法制の検討が始められた、このように私も聞いております。

○塩川委員 第一回検討委員会の議事概要を見ても、なぜこの時点で秘密保全法制の検討が必要になったのかがよくわかりません。
 政府の情報保全体制に対する信頼を揺るがした、今も藤村長官がおっしゃいましたけれども、その際に具体的に指摘をされている事例というのが尖閣沖の漁船衝突事件であります。
 国家公務員について、職務上知ることができた秘密を漏らすことは、国家公務員法上、禁止をされております。
 そこで、お尋ねしますが、尖閣沖の漁船衝突事件のビデオをインターネット上に流出させた国家公務員は、国家公務員法の百条違反に問われたんでしょうか。事実関係の確認で、お答えいただけますか。

○能化政府参考人 お尋ねの件につきましては、国家公務員法違反、起訴猶予処分、停職十二カ月となったというふうに承知しております。

○塩川委員 懲戒処分はありましたけれども、告発をしたけれども不起訴になったというのが経過であります。そもそも、このビデオが流出する事案というのは、国家公務員法にも問われなかったということでありまして、秘匿すべき秘密に該当しないということであります。
 昨年八月の有識者会議の報告書では、秘密保全法制の必要性、目的について、「我が国の利益を守り、国民の安全を確保するためには、政府が保有する重要な情報の漏えいを防止する制度を整備する必要がある。 また、政府の政策判断が適切に行われるためには、政府部内や外国との間での相互信頼に基づく情報共有の促進が不可欠であり、そのためには、秘密保全に関する制度を法的基盤に基づく確固たるものとすることが重要である。」と述べております。
 いわば秘密保全法制の意義について議論したのが第一回の有識者会議ですけれども、この報告書の今の記述との関係でも、有識者会議における第一回の会議に事務局が「秘密保全法制の意義について」という資料を出しております。
 これがお手元に配付をいたしました資料の一枚目ですけれども、秘密保全法制の意義について、ここでは、下の四角の枠ですけれども、白丸にありますように三点挙げています。一番目に、「我が国の国益を保護し、国及び国民の安全を確保するため、秘匿の必要性が高い秘密について、外国情報機関等の情報収集活動による漏えいやネットワーク上への流出を防止すること」、二つ目に、「我が国の秘密保全に対する外国の信頼を高め、外国からの円滑な情報提供を促進すること」、三つ目に、「秘密保全に関する行政機関相互の信頼を高め、政府部内における情報の共有を促進すること」となっております。この三点が基本的に昨年八月の有識者会議の報告書の必要性、目的にもなっております。
 第一回の有識者会議について配付資料があるわけですけれども、ネット上で公表されている資料と公表されていない資料がありました。それを合わせて見てみると、意義の三つあるうちの一番目の漏えい事案との関係では第一回の有識者会議に説明資料はありますが、二番目と三番目の意義については説明資料が見当たりません。
 この点、事務局にお尋ねしますが、一番目については漏えい事案についての説明資料がついているわけですけれども、二番目、三番目の意義については有識者会議の場でどのような説明をされたのか、この点について確認をさせてもらえますか。

○能化政府参考人 ちょっとただいま手元に資料がございませんけれども、御指摘の、「我が国の秘密保全に対する外国の信頼を高め、外国からの円滑な情報提供を促進すること」、それから「秘密保全に関する行政機関相互の信頼を高め、政府部内における情報の共有を促進すること」という点について議論を促す形で事務局として準備させていただきました。

○塩川委員 お手元の配付資料は、事前に事務方の方にお渡しをして、御質問することを確認しているんですが、今のお話でも、具体的に二番目、三番目の意義について説明資料があったということについてのお答えはありませんでした。
 有識者会議を行っているわけですけれども、これとは別に、官房長官のもとに置かれている情報保全に関する検討委員会のもとには、内閣官房の内閣審議官を座長とする法制検討部会というのが置かれております。
 資料の二枚目をごらんいただきたいんですが、内閣官房からこの法制検討部会の資料をいただいたものの一つが二枚目の資料にあります。その第一回の法制検討部会の配付資料で、「法制の検討スケジュール(案)」というのがあります。これは、左上のところに第一回検討委員会、これは官房長官のもとで行われるものですけれども、そこから右に線が出て、十二月十五日付ということで法制検討部会というのが挙げられています。ここでは、有識者会議、左側の枠にあるように、有識者会議の第一回から第六回の会議の段取りについて、右側にあります法制検討部会がいわば事務局として段取りをするという仕組みになっているわけです。
 この有識者会議に示す論点資料の原案作成では、右側に「有識者会議の準備作業」と書いてありますけれども、その枠の中にゴシックのところで、「有識者会議に示す「論点資料」の原案作成」とあります。そこの中に黒ポツで、基本的な考え方(案)とか意見書(案)などを踏まえて作成とあって、その下の矢印、その下にやはりゴシックがありますが、論点資料の関係省庁協議があって、さらに矢印の下で法制検討部会を経るという手続が示されています。
 この論点資料の関係省庁の協議、そして法制検討部会を経るという手順のところを見た際に、ここで挙げられている、黒ポツで示した基本的な考え方(案)、それから、その下の黒ポツの意見書(案)、これはどのようなものかについて説明をいただけますか。

○能化政府参考人 御指摘いただきました基本的な考え方と意見書のそれぞれ案でございますけれども、基本的な考え方につきましては、本件法制にかかわるさまざまな問題点について検討を担当していた事務方の方で論点をまとめたものでございます。それから、意見書(案)の方につきましては、有識者会議の方でさまざま御議論された結果を取りまとめたものというふうに承知しております。

○塩川委員 具体的な名称として確認したいんですけれども、どういうものですか。

○能化政府参考人 検討チームの報告書案につきましては、表題に始まり、「はじめに」という章立てから、論点ごとに問題点をまとめ、その後に参考資料を添付したという形になっております。

○塩川委員 文書名で確認したいんですけれども、ここで言っている基本的な考え方(案)というのは、この平成二十一年四月二十一日、秘密保全法制の在り方に関する検討チームが取りまとめた秘密保全法制の在り方に関する基本的な考え方について(案)、これでいいのかということが一つと、もう一つの意見書案については、この情報保全の在り方に関する有識者会議において、秘密保全のための法制の在り方について(意見書)(案)、この文書でいいのか、その点、確認させてください。

○能化政府参考人 御指摘のとおり、検討チームの文書につきましては、秘密保全法制の在り方に関する基本的な考え方について(案)、もう一方の文書につきましては、秘密保全のための法制の在り方について(意見書)(案)という名称でございます。

○塩川委員 この二つの文書を見た際に、例えば、基本的な考え方(案)をつくった検討チームというのは、これは民主党政権ではなくて、前の自公政権の福田内閣のもとで、内閣官房副長官をトップとして、二〇〇八年四月に発足をして、取りまとめたものとなっています。
 この検討チームがまとめた「秘密保全法制の在り方に関する基本的な考え方について」、この中では、秘密保全法制の必要性についてどのように述べているのか、この点について示していただけますか。

○能化政府参考人 秘密保全法制の在り方に関する検討チームにおきましては、秘密保全法制の実現により、「外国情報機関等による情報収集活動に対し、実効力のある秘密保全制度を確立すること。」「政府における情報機能の強化に不可欠な政府部内における情報共有の促進を図るため、秘密保全に関する法的基盤を整備すること。」「安全保障・危機管理に係る国際協調を推進し、外国からの円滑な情報提供の促進を図るため、秘密保全に関する法的基盤を整備すること。」といった課題に応えることを目指すものであったということでございます。

○塩川委員 今読み上げていただきましたが、これは資料の三枚目にあります、基本的な考え方について(案)の文章の「はじめに」の部分、その真ん中あたりに、1、2、3とあります。この部分を読み上げていただいたわけです。
 この基本的な考え方について(案)の報告書の「はじめに」を読むと、今紹介いただいた三つの意義が述べられているわけですけれども、これは、昨年、民主党政権のもとでつくられた有識者会議の報告書で取り上げております秘密保全法制の意義と基本的に重なっております。当然のことながら、この事務局の提案資料というのが、自公政権時代のこの基本的な考え方の報告書を踏まえて作成しているということは、先ほどの配付資料の二枚目でもごらんいただいたとおりであります。
 資料の三枚目をごらんいただきますと、1、2、3の部分に、後ろに括弧して、別紙1参照、別紙2参照、別紙3参照とあるわけです。この2のところで別紙2とあるんですけれども、これについてはどのような文献を掲げているのか、この点について教えていただけますか。

○能化政府参考人 例えば、政府部内における情報共有の促進を図るための秘密保全法制による法的基盤整備の必要性について事実関係をまとめた資料を配付しております。

○塩川委員 具体的な参考の文献を紹介してほしいと言ったんですが、そこまで述べられなかったので確認しますけれども、今読み上げていただきましたペーパーのところに例示をされている参考文献としては、「対外情報機能の強化に向けて」という、平成十七年九月、対外情報機能強化に関する懇談会、及び「国家の情報機能強化に関する提言」、これは平成十八年六月、自由民主党政務調査会の国家の情報機能強化に関する検討チーム、この二つが例示されていると思いますが、確認で、よろしいですか。

○能化政府参考人 御指摘のとおり、「対外情報機能の強化に向けて」、それから「国家の情報機能強化に関する提言」等の文書が含まれております。

○塩川委員 この2の別紙2に対応するというのが、自公政権時代の町村外務大臣のもとに置かれました対外情報機能強化に関する懇談会の提言を例示し、また自由民主党の政務調査会の国家の情報機能強化に関する検討チームの提言を紹介している、これを踏まえたものになっているということであります。
 続けて3についても別紙の3が参照となっています。この別紙の3に該当するところでやはり取り上げられている参考文献は、どのようなものがあるでしょうか。

○能化政府参考人 「対外情報機能の強化に向けて」ということで、平成十七年九月、対外情報機能強化に関する懇談会の文書、それから「「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書」、これは平成十六年十月、安全保障と防衛力に関する懇談会のものでございますけれども、こういった文献が挙げられております。

○塩川委員 やはり町村外務大臣のもとの懇談会の提言を紹介し、さらに小泉総理のもとに置かれた安全保障と防衛力に関する懇談会の報告書がベースとなっております。
 ここにありますように、1については、別紙1で紹介しているのはここでは取り上げませんけれども、情報漏えい等についてという資料で、これは民主党政権の報告書にもつながる第一回有識者会議に事務局が提出している資料とほぼ同じ中身であります。
 ところが、2と3の意義に対応する参考文献については、自公政権の報告書との関係では参考文献の例示がありますけれども、民主党政権の報告書では、その参考資料がありません。
 ですから、この秘密保全法制の必要性のきっかけとして、尖閣の問題を、ビデオ流出の話を挙げたわけですけれども、それ自身が国公法違反に問われなかった事案であったということを考えると、2、3の問題については、本来は、要は民主党政権になってから考えたということではなくて、要するに、自公政権の報告書を踏まえてやっていたにもかかわらず、そういう意図が読み取れないように、参考文献を有識者会議の場に出さなかったんじゃないのかという点が疑念として浮かぶんですが、その点についてはいかがですか。

○能化政府参考人 今御指摘がございましたとおり、かつての秘密保全法制検討チームにおける秘密保全法制の意義と、それから、現在検討している秘密法制の意義につきましては、共通した点といたしまして、外国情報機関等の情報収集活動による漏えいを防止すること、それから、外国からの円滑な情報提供を促進すること、政府部内における情報の共有を促進することといった共通の目的があるところでございます。
 現在、法案化作業を進めております秘密保全法制につきましても、従来の検討と問題意識は共通でございますけれども、高度情報通信ネットワーク社会の進展に伴いまして情報漏えいの危険性が増大しているなどの状況が変化する中、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議が提出した報告書を十分尊重の上、検討を行っているところでございます。

○塩川委員 ですから、秘密保全法制の検討というのは、民主党政権で一から始めたわけではなくて、自公政権時代のたたき台を踏まえて行われているということがこの資料の経緯を見ても浮き彫りとなってまいります。
 そういうことについてしっかりと検証もしていくということが必要であるにもかかわらず、自公政権時代の基本的考え方についての案ですとか、あるいは意見書の案について資料要求をしても、この「はじめに」の部分を除くとほとんどが墨塗りなんですよね。この墨塗りでは国民の前でそういった検証も行えないということがはっきりしているわけで、藤村官房長官、こういう墨塗りについてもきちっと公表するということが国民への説明責任としても求められると思いますが、公表するお考えはありませんか。

○藤村国務大臣 今御指摘の報告書というのが、二十一年四月の部分ですね、それが今、情報公開の中で墨塗りが多い、そういうお話でありました。
 これは、情報公開法において、同法第五条五号により、行政機関内部における検討に関する情報であって、公にすることによって意思決定の中立性等が不当に損なわれる可能性もある、そしてそれは不開示とすることが規定されています。
 当該報告書の内容は、現在の検討において必要に応じて参考にはしますが、この内容を含めた政府部内の、それは未成熟な検討内容でありますので、それを公にすると行政機関内部における意思決定の中立性等が不当に損なわれるおそれ等があることから同法第五条五号に該当し、法案化作業を進めている現時点においては不開示とすることが適当である、そういう判断であります。

○塩川委員 秘密保全法制については、知る権利や報道の自由の侵害などについて人権侵害の問題も問われるものであるからこそ、この検討過程についても透明化を図ることが国民への最低限の説明責任だと言わなければなりません。
 実際、今、政府としては特別管理秘密というのを定めておるわけです。この特別管理秘密では、経産省が核物質防護に関する事項を特別管理秘密としたり、原子力規制委員会でも二つの事項を特別管理秘密としていることが、昨日出されました私の質問書への答弁書で明らかになっています。
 この特別管理秘密は、秘密保全法となれば、有識者会議報告書の特別秘密に重なる、対応するものとなっているわけで、これらの秘密をマスコミなどが取材する場合には、社会通念上是認できない行為で行う場合は報告書は処罰の対象としているわけです。これは極めて曖昧な定義でもあり、原発関係へのマスコミの取材で、その取材が特別秘密に及んで当局が社会通念上是認できない行為とした場合には処罰の対象とされる、こうした法制というのが国民の知る権利の重大な侵害となりかねないということが指摘をされているわけです。
 自公政権下でつくられた現行の秘密保全法制に、自公政権下で準備された法制化で罰則などを追加して国民の知る権利をじゅうりんする、秘密保全法制の策動そのものを撤回すべきだということを申し上げておきます。
 残りの時間で、地域主権改革についてお尋ねします。
 官房長官、ありがとうございました。
 第二次一括法で、環境基本法の改定が行われました。公害の著しい地域における公害防止計画の策定は、環境基本法に基づいて環境大臣が防止計画の策定を指示し、都道府県知事が計画を作成し、大臣の同意を得なければならないとされてきたわけですが、この二次一括法においてこの策定の指示が廃止をされ、都道府県知事が任意に公害防止計画を作成することができるとされたわけであります。
 この点について環境省にお尋ねをしますが、平成二十二年の時点で三十の公害防止計画があったと思うんですが、その後、この計画はどのようになったでしょうか。それはどういう理由なのか、この点についてお答えください。

○中島大臣政務官 塩川先生にお答え申し上げます。
 公害防止計画の作成地域数は、同計画の実施を初めとする各種公害対策の推進によって、昭和五十一年の四十八地域をピークに年々減少してきております。
 また、平成二十二年六月に閣議決定された地域主権戦略大綱や中央環境審議会での議論を踏まえて、平成二十三年に公害防止計画制度の改正が行われました。この改正により、公害防止計画に係る国の策定指示はなくなり、公害防止計画の作成は都道府県知事の自主判断となりました。
 これらを背景として、二十三年度以降の公害防止計画作成地域数は二十一地域となっているものであります。

○塩川委員 知事の自主判断になったということで、三十が二十一に減少したということです。自治体の自主的な判断によって計画数が大幅に減少しています。
 重ねてお尋ねしますけれども、法改正前は公害防止計画の策定に当たって環境省はどのような調査を行ってきたのか、この点について示していただけますか。

○中島大臣政務官 法改正以前におきましては、環境大臣から関係都道府県知事に対する公害防止計画の策定指示を行うに当たって、国として、地域の環境の状況を把握するため、関係都道府県への調査依頼や現地への職員派遣によって調査を行ってきたところであります。その結果を精査して、策定指示を行うべき地域に該当するか否かの判断を行ってきたところであります。
 なお、法改正後におきましては、公害防止計画の作成は都道府県知事の自主判断になっており、環境省において現在そのような調査などは行っておりません。

○塩川委員 いわばこの法改正によって、環境省として、国として地域の環境状況の把握が行われなくなったということであります。自治体の自主的な判断で計画が策定されなくなると、国としての環境の実態把握も大きく後退することになるということがここにも言えることであります。
 具体例で少しお聞きしたいんですが、三重県が四日市地域公害防止計画を終了しました。現地では、大気汚染はいまだに深刻だ、それなのに、三重県においては四日市地域公害防止計画の策定を終了したことについて公害認定患者の方にも説明もないし、環境審議会にも報告もないし、県議会や四日市の市議会にも報告がなかったと。これが地域主権なのか、何も知らないところで終了されていた、こういうことでいいのかということが問われるんですが、この点についていかがですか。

○白石政府参考人 御指摘のように、四日市の地域におきましては、平成二十三年度以降の公害防止計画策定はございません。
 これは、三重県におきまして、当該県におきまして、公害防止のための計画でいろいろな施設整備等々を行っているわけでございますけれども、それが終了したことによって、公害防止のための各種施策の実施、そういう具体的な施策については終了したというふうに判断したものでございまして、その判断を私どもの方は尊重すべきものと考えております。

○塩川委員 住民や議会にも説明なしで計画策定だけを取りやめる、こんなことがあっていいのか、これが地域主権なのかということが問われるんじゃないでしょうか。
 現地では、我が党の三重県委員会が公開質問状で県にもただして、厳しく批判をしております。そういう中では、四日市公害裁判の勝利判決から四十周年だ、この判決中で、工場の立地選定の過失を認め、大企業の利益第一主義、人命軽視を厳しく断罪するとともに、国、県、市の無責任きわまる地域開発政策そのものを厳しくこの裁判は裁きました。それだけに、初期の四日市公害防止計画には、汚染物質の総量での規制とともに、住居地と工場地との混在の解消、そのための工場立地の規制強化や工場立地の許可制などが導入されてきたとあります。
 現状もこの住居地と工場地域の混在は解消されておりません。公害防止計画の必要性は失われていない、このように思うんですが、こういうことについては、環境省としてはどのように把握されておられるんですか。

○白石政府参考人 そのような御指摘があるということもまた一方で踏まえつつも、都道府県の方で定められた計画を実施し、その完成をもって計画の終了というふうな形をとったことについては尊重すべきものと考えております。

○塩川委員 公害防止行政が後退しているんじゃないか、こういうことでは尊重などできないというのが県民、住民の声であります。
 こういう具体的な実情を見ますと、環境省、お尋ねしますが、この公害防止に当たって、国が計画策定を指示する、こういう仕組みそのものをなくしたことが間違っていたんじゃないのか、この点については、環境省としてのお考えはいかがですか。

○白石政府参考人 お尋ねでございますが、地域主権との考え方でいえば、この公害防止、逆に国としての一生懸命やるという部分もございましたけれども、その歴史をひもとけば、各地方公共団体の方が自主的に動くことによっていろいろな公害行政が進んでいったという面もございます。
 そういう長い歴史的経過の中で、いろいろな能力あるいは知見というものについて、都道府県の方にも備わってきたというふうな判断もございまして、今般、地域主権の中で、国が指示をするというふうなことはなく、自主的な都道府県等の判断によって行われるべきものと判断したわけでございます。
 もちろん、そうはいっても、いろいろな事象があるということもありますので、例えば財政上の何らかの上乗せ措置をしなければならないような場合については、国の同意というふうな手続があるものもありますし、また、先ほど御指摘のありました環境基本法等々の中でも、国と地方と相携えて公害対策に尽力しなければならない趣旨の規定もございます。
 そういう規定もあることを考えれば、場合によっては、任意の同意を前提でございますけれども、技術的助言ということはこれまた地方分権の中でもあり得る話ではございますけれども、個別の事案に照らしていえば、我々は、都道府県知事の判断がまず一義的に尊重されるものというふうに考えております。

○塩川委員 住民の健康被害を解消し、そして防止する、そういう観点で、自治体から大きな公害行政が進んだ、それが結果として国を動かしたというのが、公害国会を前後した取り組みだったわけであります。
 そもそも、この間、国が工業地帯の建設を推進してきた、これが大きな要因となって深刻な公害も発生したわけですから、国が公害を発生するような原因をつくってきたんだからこそ、こういう公害について国が強力な関与、支援のもとに総合的、計画的な公害対策を講じるための公害対策基本法をつくり、公害防止計画制度がつくられたはずであります。
 そういう点でいえば、国が地域開発政策を進めていく限り、国として公害防止計画策定の契機をつくる法的権限の必要性は失われていないと考えます。
 最後に、樽床地域主権改革担当大臣、お尋ねしますが、こういうように、地域主権改革の議論の過程の中では、環境省からも、首都圏などの大都市圏においては広域的な環境問題が生じており、その解決のために、広域的な観点から、隣接する地域の計画間の連携を確保することが重要であり、そのために必要な仕組みを設けていると、必要性なども回答がされていたわけであります。
 ですから、国が地域開発政策を進める、あるいは広域の連携、県をまたがるような際に、国として必要な関与を行って計画の策定の指示を行えるような権限こそ必要であったわけで、それをなくすというのは、国の公害対策に対する責務を後退させるものとなったということははっきりしているんじゃないでしょうか。

○樽床国務大臣 さまざまな御指摘をいただいておりますが、御存じのように、これは必ずしなければならないというものを、必要を感じる、認める場合にはつくってよろしい、実際的には、必要なところはどんどんつくってください、しかし全てのところに義務づけるものではない、こういう趣旨でありますから、当然、先ほどお話がありましたように、公害対策がそれぞれの地域の住民の方の声がずっと広がっていって国を動かしたという経緯も御説明になられたように、それぞれの地域の方が一番よく御存じでありまして、私は、そういった方々の声をそれぞれの自治体がしっかりと受けとめていく、そういったことが地域主権の中でそれぞれの地域の自治体の責任として行われるというものと確信をいたしておりますので、後退であるという認識はとっておりません。

○塩川委員 地域主権改革というのが、実態とすると、住民生活を守る上でのさまざまな規制措置の規制緩和になっている。私は、こういう地域主権改革の名による公害行政の規制緩和政策はきっぱりとやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。