国会質問

<第183通常国会 2013年02月28日 予算委員会 7号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 日米首脳会談でのTPPの問題について安倍総理に伺います。
 パネルを用意いたしましたけれども、このパネルに、日米の共同声明が左側に書かれております。
 第一段落、第一パラグラフにおいて、日米両政府は、日本がTPP交渉に参加する場合には、「全ての物品が交渉の対象とされること」を確認するとあります。
 そこでお尋ねいたしますが、この「全ての物品が交渉の対象とされること」とは、日本の九千余りの関税品目、その全てが交渉の対象とされるのか、この点について、まず確認させてください。

○岸田国務大臣 日米首脳会談で一致しました日米の共同声明、この第一パラグラフにあります、全ての物品が交渉の対象とされているということ、これは御指摘のとおり全ての物品が交渉の対象になるということですが、これは、この文書においてはそれ以上でもそれ以下でもありません。全ての物品が対象になる、それをそのままここに記載させていただいております。

○塩川委員 日本にとっては、日本の九千余りの関税品目全てが交渉の対象ということでよろしいんですね。

○岸田国務大臣 この共同声明の文書においては、確認したのは先ほど申し上げたとおりであります。
 我が国のタリフラインが約九千であるということも、これは事実であります。

○塩川委員 九千余りのタリフラインについて、いわば全ての物品が交渉の対象とされるということですから、日本側においては、その九千余りの関税品目が対象となるということであります。
 次に、共同声明では、その後に、日本が「「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになる」としております。
 そこでお尋ねしますが、これの右側の方に引用してありますけれども、このTPPの輪郭では、TPPの重要な特徴の一つとして「関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する。」とあります。
 これはこのとおりだと思うんですが、その点だけ確認させてください。

○岸田国務大臣 御質問の趣旨は、この二〇一一年のTPPの輪郭において関税を撤廃すると書いてあるということを確認しろということですか。(塩川委員「はい」と呼ぶ)このように記載をされております。関税等を撤廃するという記述はございます。
 ただ、全ての関税を撤廃するかどうか、これについてさまざまな認識があり、今日までさまざまな情報収集に努めてきた、これが我が国の立場であります。
 最終的に、即時撤廃がどの程度なのか、段階的にどの程度撤廃されるのか、あるいは例外がどの程度認められるのか、これについて、さまざまな議論があり、情報があり、我々は今日までその情報収集に努めてきた、こうしたことでありました。
 そして今回、日米首脳会談で、この共同声明を発して、文書でこの点を確認した、これが経緯でございます。

○塩川委員 要するに、関税撤廃が原則となっているという点はそのとおりですね。

○岸田国務大臣 この二〇一一年のTPPの輪郭の文書、これはここにお示しいただいたとおりでございます。

○塩川委員 次に、こちらのパネルの方ですけれども、これは内閣官房の資料で、日本のEPA、経済連携協定と、アメリカ、EU等のFTA、自由貿易協定の自由化率の比較の資料であります。
 左上のダイダイの部分をごらんいただきたいのですが、ここに、ちょっと字が小さくて恐縮なんですけれども、既存のEPAにおいて、経済連携協定において関税撤廃をしたことがない、そういう品目が約九百四十品目あると書かれております。
 その右側を見ますと、二つ目の欄ですけれども、それぞれ品目、名称が書かれておりますけれども、米や麦や牛肉や乳製品、砂糖などを初めとした農林水産品では、一番上に四百品目、次に三百二十品目、三つ目の枠のところには約百三十品目とありますから、合計すると、約八百五十品目は関税撤廃をしたことがないということであります。
 そこで、総理にお尋ねいたしますけれども、これまで関税撤廃したことのない、このような約八百五十品目の農林水産品もTPP交渉の対象となるということでよろしいでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 いわば、全ての品目についてテーブルにはのせるわけでありまして、それを交渉によっておろせないということではないというふうに認識をしております。

○塩川委員 全ての品目がテーブルにのる。ここで挙げてあるような農林水産品の重要品目、この合計では八百五十品目についても交渉のテーブルにのる。これまで関税撤廃をしたことのない品目も交渉の対象となることがここではっきりとしております。
 要するに、今確認してきた点というのは、共同声明では、包括的で高い水準の協定を達成するとして、重要品目を含む全ての物品が交渉の対象とされて、これまで関税撤廃をしたことのない品目についても関税撤廃交渉の対象とすることを米国政府と確認したということになります。この点が極めて重大だと思います。
 そこで、岸田外務大臣にお尋ねいたしますが、日本の締結したEPA、経済連携協定の品目ベースでの自由化率、品目ベースでの自由化率というのは十年以内に関税撤廃を行う品目が全品目に占める割合のことですけれども、この品目ベースの自由化率は何%台で、あわせて、アメリカのFTAにおいては、ここにも書いてありますが、九六%以上、一〇〇%近い自由化率を実現している。これが、それぞれ日本とアメリカの締結をしているEPA、FTAの現状だということでよろしいですね。

○岸田国務大臣 我が国が締結したEPAの自由化率、品目ベースでおおむね八〇%台後半です。貿易ベースでおおむね九〇%以上というのが日本の締結したEPAの自由化率です。
 一方、米国が韓国等と締結してきたFTAの品目ベースの自由化率は、御指摘のように一〇〇%近いと承知しております。

○塩川委員 共同声明では、日米両政府は、日本が他の交渉参加国とともに、「「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。」とあります。
 そこで、総理にお尋ねいたしますが、TPPのベースとなっているP4協定は、原則として全ての品目について即時または十年以内に関税撤廃することを規定しております。そうなると、共同声明で言う包括的で高い水準の協定というのは、このアメリカが結んでいるような自由貿易協定にもあるように、一〇〇%近い自由化率となるような関税の撤廃ということにつながるのではありませんか。

○安倍内閣総理大臣 そのことは、今委員がおっしゃったことは、ここには明示的には書いていないわけでありまして、しかし、当然、交渉の中においてそういうものを求めていきたい、こう考えているかもしれない。
 しかし、参加国はそれぞれのセンシティビティーを抱えているわけでありまして、多くの国々が参加をしているわけでありまして、このマルチの中において物事は決まっていくわけでありますから、当然、日本は、日本の国益を守るために、もし参加ということになれば、日本の立場を主張していくのは当然のことであると思います。

○塩川委員 米国政府と確認をしました、この包括的で高い水準というのは何なんですか。

○岸田国務大臣 この包括的で高い水準ですが、二〇一一年のTPPのアウトラインにおきまして、TPPの重要な特徴の一つとして、包括的な市場アクセスを挙げ、「関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する。」との目標をこのアウトラインで掲げています。
 さらには、このアウトラインの中で、「物品貿易に関する条文案では、協定参加国がWTO協定上負っている義務を上回る重要な約束を含む参加国間の関税撤廃、及び貿易障壁となりうる非関税措置の撤廃も扱われている。」こういった文言がございます。
 共同声明にあります包括的で高い水準の協定というのは、このTPPのアウトラインの内容全体を指していると認識をしています。

○塩川委員 いや、それだけじゃわかりませんよ、アウトラインの中身はまさにアウトラインであるわけで。
 アメリカ側の方は交渉に参加をしているわけですから、全体の状況が見えているわけですよね。日本側はこれから入るかどうかという話をされておられるときですから、内容もわからないのに包括的で高い水準ということを認めるということになると、それは、アメリカ側の考える高い水準、まさに一〇〇%近い、そういう水準ということを確認、約束したということになるんじゃありませんか。

○岸田国務大臣 まず、包括的で高い水準の協定という認識については、今日まで日米間で協議をし、そして、他の関係国とも二国間協議あるいは情報収集に努めてきました。そうしたさまざまな積み上げのもとに、包括的で高い水準の協定、先ほど我々が認識している、この認識に至ったわけであります。これは、そうした認識で我々は正しいと考えております。

○塩川委員 答えになっていません。
 この資料にあります「日本のEPAと米・EU等のFTAの自由化率比較」、この資料が出たのが二〇一〇年のときですけれども、民主党政権のもとであります。
 二〇一〇年の十月の民主党政権における新成長戦略実現会議で、当時の玄葉担当大臣は、このパネルの説明として、近年の主要貿易国のFTA、EPAの自由化率は九五%を超えるものがほとんどでございます、アメリカとの経済連携を検討する場合には、このような高いレベルの自由化が求められているということを前提に考えなければなりませんと述べているように、これまでのような日本の経済連携協定での八〇%台どころか、九五%を超える、アメリカにとってみれば一〇〇%近い自由化率となることを当時の民主党政権も指摘してきたわけであります。
 総理にお尋ねしますけれども、アメリカと共同声明を交わした以上、包括的で高い水準の協定となれば、アメリカが求めるような一〇〇%近い自由化率となり、関税撤廃を除外されてきた農林水産品も明け渡すことになるのではないのか。そういう点でも、重要品目を除外対象とする、入り口で除外するような、そういう担保というのは一体どこにあるんですか。

○安倍内閣総理大臣 入り口で除外するという担保は、これは共同声明の中にはないわけでありますが、しかし、それを、聖域がないんだ、つまり、交渉に参加をして、交渉において、残念ながら守るべき聖域を全く守ることができないんだということではないということを確認したわけであります。
 つまり、我々自由民主党の公約というのは、聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上、交渉には参加しないということを我々は公約で約束をした、これが自由民主党の公約でありました。この公約に反しているかどうかということについて我々は確認をしたということでございます。

○塩川委員 いや、これまでも、アメリカの要求による農産物の関税撤廃によって日本農業は大きな打撃を受けて、食料自給率は後退してきました。今回のTPP参加となれば、さらに食料自給率が後退し、地域経済や地域社会、ふるさとと国土を守ることもできません。もちろん、棚田も守れません。
 TPPは、医療や労働、食品の安全などのルールの規制緩和や撤廃を目指すものであり、国民の暮らしと安全を脅かすTPP交渉の参加はやめるべきだということを強く申し上げて、質問を終わります。