国会質問

<第183通常国会 2013年03月21日 総務委員会 4号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、被災者支援、復興の問題について質問をいたします。
 東日本大震災から二年であります。被災者の生活となりわいの再建なしに復興はあり得ません。被災者の住宅再建なしに生活再建もありません。住民が住み続けるようにするためには、住宅再建が欠かせません。
 安倍総理は、三月七日に行われました東日本大震災の復興推進会議の場で、復興を加速させ、震災後三年目となる次の冬は希望を持って迎えていただかなければならない、被災地の方々が一日も早くもとの生活に戻れるよう全力を尽くしたいと述べております。
 そこで、大臣にお尋ねいたしますが、ここで総理も述べておられるような、被災地の方々が一日も早くもとの生活に戻れるようにするためにも住宅再建は欠かせません。被災者の住宅再建にとって大きな障害となっているのが、個人負担が大きい、この問題だと思いますが、大臣としてのお考えをお聞かせください。

○新藤国務大臣 まさに私も復興担当大臣である、というよりも、今この日本の政権は復興担当の政権だ、こういうことであると思いますし、私も、数を何とかと言うつもりはありませんが、折々で直接、被災地の皆さんとは触れております。また、何度かボランティアを募って一緒に現地に行って、向こうでいろいろな支援もさせていただきました。以来、友達になって、被災地の人たちとのおつき合いも続いております。ですから、あれだけの被害に遭いながら、前を向いて頑張ろう、こういう東北の人たちの思い、同じ日本人として同胞の思いに応えるべきことが政治の務めであり国家の務めだ、このように思っています。
 しかし現状では、未曽有の災害であって、しかも数十年かけてつくられていた町が一瞬にして壊れ、そして流されてしまったわけでありますから、これの復興が並大抵のものでない。そういう中で、むしろ被災直後よりもさらに苦しみが増している場合もあると思います。精神的にはその方が、また別の意味でのつらい思いをされている方もいらっしゃると思うんです。
 ですから、あらゆる手段を見直して、今までの、前政権がやっていただいたことに加えて、さらにそれを加速するための手だてを考えなければいけない。
 特に、今御指摘いただきました住宅再建はかなめであります。自分の住む場所すら確保できないまま生活を立て直すことは、これは極めて至難のわざだというふうに思います。
 ですから、そういうことの支援を私たちもやりたいと思っていますし、特に今回は、今まで対象でありませんでした災害危険区域の区域外における住宅の移転についても制度として支援の対象にさせていただきましたし、それから、これはどなたでもおっしゃることなのでありますが、土地のかさ上げを見ることができなかったわけですね、今までの政府では。ですから、そこを私どもは工夫して、総務省だからできたと思いますが、地方自治体の支援に総務省が支援するという形で、新たな支援スキームもつくらせていただきました。
 ですから、とにかく住民の皆さんに、住宅再建が可能となるように、あわせて、やはり生活再建が必要だと思います。被災地において暮らしていく、もしくは自分の生活をどのように再建していくか、そのことがきちんと立てられるように、我々はいろいろな支援をさらに考えなければいけないのではないか、このように思っています。

○塩川委員 住宅再建に支援が必要、新たな支援策もこの間行ってきているというお話でありました。
 そういう点で、これまでの国の支援策がどうなっているのかについて、ただしていきたいと思っています。
 政府は、東日本大震災の復興推進会議において、復興交付金の運用の柔軟化の方針を決定いたしました。そこで、使い勝手のよい、自由度の高い交付金としての復興交付金、及びその復興交付金の各基幹事業と関連し、復興のためのハード、ソフト事業を実施可能とする、使途の緩やかな資金としての効果促進事業の活用、この点についてお聞きします。
 現在、復興まちづくりの根幹をなす五事業については、幅広い関連事業が存在することから、交付手続を簡素化するために、事業実施主体である市町村に対して、効果促進事業等の予算の一定割合を先渡し、一括配分をしております。
 そこで、谷復興担当副大臣にお尋ねいたしますが、この一括配分した効果促進事業の配分総額及び使途が決まっている額が幾らとなっているのか、この点についてお答えください。

○谷副大臣 お答えいたします。
 今委員御指摘のように、交付金の四十事業のうち、面的な整備の五事業については二〇%の一括配分を行っております。二月末時点において、復興交付金で一括配分された効果促進事業の配分額は約一千百七十億円でございまして、使途が決まっているものは約九十億円でございます。

○塩川委員 一括配分の額が一千百七十億円、使途が決まっているものは九十億円ということで、一割にもならないわけであります。
 効果促進事業の一括配分の額が大きい自治体に直接聞いてまいりました。一括配分額とその使途実績額を確認しますと、例えば、陸前高田市は約九十億円の一括配分に対し使途実績が一億一千六百万円、大槌町は七十四億円に対して五億四千三百万円、山田町は八十三億円に対して一億円、仙台市は百十二億円に対し五千五百万円、石巻市は七十三億円に対し一億七千七百万円、気仙沼市は百八億円に対し七億四千九百万円、百億円前後の配分がされているにもかかわらず、一億円前後しか使われていないというのが実態であります。ほとんど使われておりません。
 もともと効果促進事業は、基幹事業と関連し、復興のためのハード、ソフト事業を実施可能とする使途の緩やかな資金のはずであります。しかも、交付手続を簡素化し、一定割合の先渡しを行って、自治体にとって使いやすいように配慮しているはずなのに、使われておりません。
 一千億円を超える配分がされているのに活用されていない、この現状は極めておかしいんじゃないかと思うんですが、その点についてはいかがですか。

○谷副大臣 一千百七十億円の配分で、現在使途が決まっているのが九十億円、大変低い状況にあるということは仰せのとおりであります。
 しかし、これは事業の進捗もあわせて考えなければならないと思います。例えば一括配分でも、宮城県の石巻、大変、三千名以上の方が亡くなられましたけれども、突出して被害の大きい、また、さまざまな復興事業も山積しておりますけれども、まだ一括配分の額はそんなに多くない、そこまで進んでいない、そういう状況にあるということが一つです。
 それで、この仕組みをもっと被災自治体の自主性を重んじて変えなければならないということで、先般、この一括配分も、より使い勝手がいいように、今まではネガティブリストというのが三つあって、役場の人件費とか市役所の経常的な経費はだめよ、あるいは既に補助制度のあるものについてはだめですよ、三つ目に、専ら法人とか個人の負担軽減とか資産形成に資するものはだめですよと。
 この三つ以外に、こういうものはいいよというポジティブリストというのもありましたけれども、それをなくしました。なくして、自治体の自主性を、ネガティブリスト以外は創意工夫で使える、そういうふうに大きく仕組みを変えましたので、事業の進捗、そして制度の相当思い切った弾力化によって、今後、一括配分した効果促進事業について、被災自治体によるさらなる活用ということが大いに期待できるのではないか、私はそのように考えております。

○塩川委員 効果促進事業について、自治体の自主性を重んじた、そういう改善策を行った。そういう点では、今、ポジティブリストで示していたものを、それに縛られることはないんだよということで、あくまでもそれは例示だということを踏まえた、そういう運用の柔軟性を持たせるという話がありました。
 確かに、公共などへの活用の自由度の向上も必要ですから、そういう取り組みに使えるようなことを求めていくことが必要であります。そもそも現状で十分使えないから、自治体の側からはもっと取り組みが進むように柔軟に対応してもらいたいという要望があったからこその改善策ということだと思います。
 ただ、幾らまちづくりを整備しても、肝心の被災者の方の住まいができなければ復興にはなりません。そういう点でも、被災者の住宅再建に資するような支援にこそ効果促進事業の活用が図られるべきだと考えます。
 ネガティブリストの話もされたんですけれども、私、本気で復興を考えるのであれば、まちづくりの根幹である、人が住み続けるということを整える上でも、住宅再建に踏み込むべきだ、効果促進事業も使えるようにすべきだと考えます。
 例えば、仙台市は丘陵地の造成を行ったところが崩れる。盛り土造成宅地の崩落に対して、こういう被害の復旧支援事業として東日本大震災被災宅地復旧工事助成金制度、こういうものを一昨年もう既につくりました。その際に、こういう市としての独自の事業について効果促進事業が使えないかというふうに要望を出したんですけれども、残念ながら、そのときには国の方からだめだと言われたということであります。
 今回の効果促進事業の見直しによって、仙台市などが計画をしていた造成宅地に対する復旧への支援、こういう事業というのも効果促進事業で行えるようになるんでしょうか。

○谷副大臣 効果促進事業は、使途は広げました、相当広げました。しかし、先ほど御答弁させていただきましたように、ネガティブリストというのは廃止したわけではありません。
 市役所の人件費、経常的な光熱水費に使ってもらったり、あるいは公債費の償還に使ってもらう、これは勘弁してください。また、既にほかの補助制度があるものに使うというのも勘弁してください。それから、今御質問の住宅ということについては、個人とか法人の資産形成のための事業。
 住宅については、今さら私が申すまでもなく、塩川委員十分御存じのように、住宅再建の支援制度というのがございます。平成十年にできて、今アッパー、最大限三百万円です。そういう制度があるということも十分踏まえた対応も必要だと思っておりますので、現在のところ、ネガティブリストに該当し、それへの使途というのはいかがなものかなという考え方でございます。

○塩川委員 ネガティブリストを廃止したわけではないと。専ら個人、法人の資産形成に資するようなものはだめという話ですけれども、専らというのがついているわけです。
 要するに、個人の資産形成に資する、そういうものはだめという話ですけれども、実際には、被災者の皆さんというのは、何もこれによって資産が実際にふえるというよりは、マイナスの生活なんです。それをせめてゼロにしてあげようじゃないか、そういうことに対して公的な支援を行うというのは、これは国民的な合意がある話なんじゃないのか。だから、そういう住宅再建につながるような支援に公費を充てるということに何ら制限を設ける必要がないのではないのか。
 こういうネガティブリスト、特に、専ら個人の資産形成に資するものはだめ、こういったものについて、改めて見直す必要がある。逆に言うと、住宅の再建というのは、まちづくり、復興という観点でいえば公益性があるわけです。公益性、公共性があります。そういう被災地域の維持、再建という公益性の観点で柔軟に効果促進事業の活用を図る、これこそ今必要なんじゃないかと思うんですが、重ねてお尋ねします。

○谷副大臣 先ほど御答弁させていただきましたように、専ら個人、法人の負担軽減や資産形成に資するものはいかがなものかなという基本的な考え方は堅持すべきだと思います。
 それで、専らというのをどう解釈するかということは、それは若干幅があるかもわかりません。しかし、この原則を崩してしまうと被災者生活支援制度は一体何なのかということにも行き着いてまいります。
 もともと、被災者生活支援制度は、国が全額持つ制度ではありません、全国の都道府県と国が一対一で持つ制度でございますので、そういう全国知事会の意向、それから他のいろいろな制度、例えば、災害弔慰金は、世帯主が亡くなった場合五百万円でございますけれども、そういうこととのバランス、将来の国、自治体の財政負担、そういったこともあわせて今後検討していかなければならない、そういうふうに思っております。

○塩川委員 復興交付金も地方の負担というのがあるわけです。ただ、それは、被災地が甚大な被害を受けているという点では、被災自治体の負担をゼロにしようという立場で震災復興特別交付税で手当てをするという、特別な対応をしているというのが現状であります。
 そういう点でいっても、地方が自主的に事業を行う際にそれをしっかりとサポートするといったときに、私は、この復興交付金、そして効果促進事業のスキームを使って、被災自治体が住宅再建あるいは宅地の再建に資するような、そういう支援策を行うというのを大いに背中を押すということこそ本来国がやるべき仕事なんじゃないでしょうか。
 被災者生活再建支援制度の話もありましたけれども、もともと鳥取西部地震の際に、当時の鳥取県が五百万円で住宅再建を支援する制度をつくりました。それというのは、中山間地で被害を受けた、そういう地域で人が住み続けなければ、中山間地そのものを維持することができないじゃないか。だから、そこに住まいを確保することに公的な支援を行うということがまさに公共性、公益性があるという観点でスタートした。そういう流れというのがあるわけであります。
 そういう点でも、私、踏み込んだ取り組みとして、復興交付金または効果促進事業を行うということであったわけですから、やはり人が住まなければ復興まちづくりはあり得ませんから、こういう点でも活用を積極的に図る、これこそ求められている。新藤大臣、いかがですか。

○新藤国務大臣 今の話が、被災地の皆さんの切実な御要望だというふうに思います。それは住宅だけじゃないんですね。商店街も、それから工場も、これは、共同事業ならば制度がありますが、単体で何かをやろうとすると支援措置がなかなか厳しくなっちゃうんですね。商店街といっても、では七つ、八つの商店があった中で、例えば二つ、三つは共同でやるけれども、まだ私たちはそこまでいかないよ、こういう人たちもいるわけで、そこでまた取り扱いが別になってしまうんです。
 それから、委員も御承知だと思いますけれども、今の仮設の商店街はまさに仮設であって、本設商店街に移行しなきゃならないんですね。そのときの支援をどうするかというのは極めて大きな問題なんです。ですから、いろいろな工夫をしていきたいと思っています。
 今の住宅再建の話は、委員がいみじくもおっしゃいましたが、仙台では、仙台市の独自の助成金としてこういったものを出していますね。私はここに着目したわけです。ですから、自治体が独自に支援するものに対しては総務省がお世話できる部分が出てきます。
 ですから、例えば今の、仙台市で、自治体がそういうことをやっているのであれば、既に我々の方で出しておりますけれども、復興基金です。一回出しました。この復興基金は自由にお使いできるんです。ですから、自治体が自分の判断でこの復興基金の活用というものをお考えいただくならば、我々は制度の範疇で支援をできる、こういうこともあるというのは御承知おきいただきたいと思います。

○塩川委員 復興基金について、実際に、二十三年度に交付され、配分されています。執行状況を見ても、多分、総務省としても把握されているのは二十四年度の当初予算までのところだと思うんですよね。それで見れば確かに一部かもしれませんけれども、しかし、その後に活用されている例というのもふえておりますし、さらに言えば、例えば宮城県で三十五の市町村に配分されていますけれども、そのうち十二はもう既に五割超えているんですよ。十六の市町村で四割超えているんです。ですから、活用しているところは大いに活用しているんです。
 ただ、被害が大きいところではどうするかという全体像も検討中ということで、その段取りが進んでいないだけで、復興基金をふやすということをはっきり示すということが、本来の意味で被災地、被災自治体の支援策を具体化する、そういう力につながると思うんですが、その点について、いかがですか。

○新藤国務大臣 これは、思いは同じものがあります。ただ、制度としてどう運用していくかというと、この復興基金は、震災復興の特別交付税をつくる前に、まず千九百六十億円でありますが、積み立てました。それは、地域の実情に応じて、住民生活安定、コミュニティーの再生、それから地域経済の振興、雇用、いわゆるきめ細やかな事業も含めて、どうぞ自治体の実情に応じてお使いください、こういう制度であります。
 しかし、その基金は必要に応じて使われつつあるわけでありますけれども、今もう二年たちまして、今度は、自治体が自由に何でもということもありますけれども、具体的な財政需要というのが明らかになってきております。ですから、我々は、被災団体への財政措置としては、具体的な財政需要に応じた補助制度、それから、今、震災復興特交というのがありますから、そういう措置を充実させていこうという方向で取り組んでおるわけであります。
 ですから、復興基金をまず活用していただく。その上で、今度は、具体的に財政需要が生じた、その実情に応じて、復興特交も含めて、さまざまな要求に対して、我々としても、必要性、また、お手伝いにどういうことができるか検討していきたい、このように考えています。

○塩川委員 最後に、被災者生活再建支援金の増額の問題です。
 今、谷副大臣もお答えになったように、上限三百万円というふうになっているわけですが、実際、この間の支援策を見ると、国や自治体にとってみると、さまざまな線引きになって、被災者の負担軽減策について、市町村でも結構差が出ているような状況があります。私は、全体の底上げの上でも、被災者生活再建支援金の増額こそ必要だと考えています。
 そういう点でも、自民党は、野党時代に、緊急提言という形で、被災者生活再建支援金五百万円の増額というのを提案しているわけです。ですから、本会議でもお聞きしましたけれども、政権についたというのであれば、ぜひこの五百万円の増額というのをやっていただきたい。
 その点では、亀岡内閣府の担当大臣政務官と、あわせて谷副大臣も、この間、野党時代は中心で頑張ってこられたわけですから、一言コメントをいただいて、質問を終わりにします。

○北側委員長 簡潔に御答弁よろしくお願いいたします。

○亀岡大臣政務官 済みません、塩川先生はもう御存じだと思いますけれども、平成十年に議論されて、十一年から被災者生活再建支援法ができまして、百万円ということが決まったわけですけれども、平成十六年に、法改正によりまして、百万円という性質が、被災者の当座の生活資金に充てるための生活経費として支払われたわけですけれども、それプラス住宅再建の初期費用としてローン関係経費など居住関係経費として最大二百万円、合計して三百万円支払うことが決まりました。
 さらに、平成十九年には、年収、年齢要件を撤廃した上で、生活関係経費を基礎支援金として、居住関係経費を加算支援金として、見舞金的な性格を有するものとして申請をさせていただくことになりました。
 確かに、いろいろな議論があるんですけれども……

○北側委員長 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

○亀岡大臣政務官 これは補償するためのものではなくて、見舞金という性質の関係上、どうしても、バランス、国、地方の財政負担などを勘案して慎重に検討させていただかなければいけないということを十分考えておりますので、その辺を検討させていただきたいと思います。
 よろしくお願いします。

○谷副大臣 現行の三百万円が十分だとは思っておりません。ですから、あくまでも、その額なり内容を含めて、今後とも充実するように努力していく、その姿勢は変わりはございません。

○塩川委員 終わります。