○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
NHK予算案にかかわって、NHK及び総務大臣に質問をいたします。
私、この間、地上アナログ放送から地上デジタル放送への切りかえについて、これは国策として行うものだ、視聴者の皆さんに手間暇かけるようなことがあってはならない、こういう立場で一貫して質問してまいりました。
地上デジタル放送に切りかわりましたけれども、いまだに全国で十万世帯の方々が地元でデジタル放送が見られない。東京のキー局からの電波を地方の方が見ている、そういう世帯が十万世帯もある。ですから、台風が迫ってくるとうちの方はどうなるのか、テレビをつけてみても、テレビのニュースというのはキー局のニュースですから、東京の天気予報が流れる。こういうことではいけないという点でも、この地上デジタル放送への切りかえに当たって、一刻も早くしっかりとした対策を放送事業者と国の責任でしっかりと行え、こういうことを強く求めてきたわけであります。
その点で、このアナログ放送からデジタル放送への切りかえに加えて、首都圏の皆さんは、東京タワーからスカイツリーへとデジタル放送が切りかわります。そのことで負担が生じることになる。いわば、二度手間になっているような状況というのが生まれているわけです。
そのことに関連して質問をいたします。
まず最初にお尋ねします。そもそも、視聴者の都合ではなくて、放送事業者の都合で東京タワーからスカイツリーへと送信所が移転をします。その際、このような東京スカイツリーへの移転に伴って視聴者に受信障害などの不利益が生じた場合には、一体誰が責任をとるのか、この基本についてお尋ねします。
○新藤国務大臣 御質問の、東京タワーから東京スカイツリーへの送信場所の移転、これは、一層安定した受信環境の確保を図るという意味から、放送事業者により実施されます。
一方で、総務省は、受信者保護の観点から、アンテナの方向調整などの受信対策が必要な場合は、その対策を適切に実施するように放送事業者に条件をつけているということでございます。
したがって、スカイツリーの移転による受信障害の不利益が発生した場合は、その受信対策は放送事業者の責任と負担で行っていただく、このように承知をしております。
○塩川委員 スカイツリーへの移転に伴い生じる視聴者の受信障害は、放送事業者の責任と負担のもとで行われるということであります。ですから視聴者は対策工事の費用を負担する必要はない、これは当然のことであります。
そこで、対策がまだまだこれからということも当然あるわけですよね。そういったときに、受信障害世帯が全て解消されるということをもってスカイツリーへの移転を許可する、変更許可を行う、これが総務省の立場だと考えますが、この点を確認させてください。
○新藤国務大臣 移転による受信障害は、各施設の受信アンテナの方向それから受信設備の設定等、さまざまな要素が影響するということでありまして、試験電波の発射をやっておりますけれども、そういった中で視聴者の方々に実際の受信状況を確認していただく、こういうことが必要であります。
そして、放送事業者は、こうしたために試験電波の発射回数をふやす、そして、移転前に受信障害が発生する施設をできる限り見つけて対策しておく、このことが重要であります。その取り組みの加速を我々もお願いしております。
そして、受信対策が必要な施設を移転日時点までに大量に残したままでは移転を行うことは認められない、このように考えております。
○塩川委員 NHK会長にお尋ねします。
NHKも、当然のことながら、受信障害世帯、これが全て解消されたことをもってスカイツリーへの移転を行うという立場でよろしいですね。
○松本参考人 デジタル化のときも同じような感じを持ったんですけれども、今、スカイツリー移転での受信障害は、試験放送を含む周知を拡大していまして、その周知を拡大することによって事前の手当てができるということを進めている、こういうことでございます。これはNHKだけじゃなくて民放も含めてやっていく、こういうことで、今急速にそれが実効的に進んでおります。
これはちょっと余談になって申しわけないんですけれども、私は鉄道でダイヤ改正というのを何回もやりましたけれども、ダイヤ改正というのは、完璧に一日の、零時の瞬間をもって、ぱっと全く違うものに切りかえられるんですね。これはそういう性質のものなんです。
しかし、デジタル化にしてもこの問題にしても、障害のある方がみんなおっしゃっていただければそれで済むんですけれども、おっしゃられない方がおみえになるというのを探すというのは物すごく大変なんですね。したがって、それをいかにミニマイズするかという作業をきちっとやるという必要があると思うんです。そのことを今やっておりまして、そして、それが最小限になるように、可能な限り事前の対策を行っていくということで今考えております。
○塩川委員 そもそも、アナログ放送からデジタル放送への切りかえについても、視聴者が地デジのテレビに切りかえるというサイクルでやればそんなに差しさわりがないんですが、実際には、多くの方々が、アナログのテレビをアナログ放送の打ち切りの時期に合わせて地デジのテレビに切りかえざるを得ない、新たに購入せざるを得ない、あるいは、アンテナを直すとかという工事をやらざるを得なかった。そういうのが一定程度負担になったわけであります。それ自身がおかしいということを私は言ってまいりました。
今回の場合は、東京タワーからスカイツリーへの移転というのは、まさに放送事業者の都合だけなんですよ。私は、そもそも、地デジへの切りかえを行うのをスカイツリーへの送信所の移転を行ってからやる、そうすれば二度手間にならないじゃないかということを言ってきたわけですが、残念ながら、地デジへの切りかえが先にあって、さらに東京スカイツリーへの送信所の移転ということになってしまった。
二度手間になるということが結果として起こったわけですから、こんな二度手間を起こすようなことに対して、視聴者が結果としてテレビが映らなかった、受信が悪かった、こんなことが残らないことをするのは放送事業者としての当然の仕事じゃないですか。NHK会長として、もう一度お答えください。
○松本参考人 アナログをデジタルに切りかえるということは、全ての仕組みを変えるわけですね。したがって、今のお話のようにスカイツリーにまずアナログを移して、それからそのアナログをもう一回切りかえるということは、工事的には大変難しいことじゃないかなというふうに想像いたします。そういう中でスケジュールが定められたというふうに思います。
そういう中で、やはり障害のある、どれぐらいあるかというのはやってみないとわからないというところがありまして、実際にお宅に伺ったときにブースターのチャンネルをちょっと調整したらそれで全部いいとか、もうさまざまなんですね。したがって、そういうさまざまな形のものが出るということがわかりましたので、どういうふうに出るのかというのを、最初は朝の早いときとか夜の遅いときにやっていたんですが、今は昼間のいいチャンネルに、民放さんも本当はコマーシャル料とかそういうことに影響があって大変なんですけれども、みんなでやろうということで、その気持ちで今進んでいる。
それで、どんどんどんどん障害があるということがわかった方がお話しいただいていますから、それで最小限にしていくという努力をやっている、こういうことであります。これは、そういうふうになっていくというふうに思っております。
○塩川委員 いや、基本の放送事業者の責任と負担で行うというところをゆるがせにしちゃいかぬよということを重ねて強調しているわけであります。ですから、周知すること自身も、実際に映りが悪いんだと視聴者が気がつくようにすることも放送事業者の責任であって、それがまさに変更許可を行う総務省が課している条件となっているということです。
重ねて新藤大臣にお尋ねしますが、民放も当然同じような責任と負担を負っているわけですよね。
三月十四日付の読売新聞の夕刊の記事を見ますと、ある民放幹部はある程度未対策世帯が残っても電波の切りかえを行わないとタイミングを逸してしまう、切りかえて映らなければその時点で対応すればいいと見ている、こんなふうに言っていると報道されております。つまり、受信障害の未対策世帯が残っても構わないという趣旨の発言を行っているというような報道ですから、こんなことは許されない。
大臣も先ほど、大量に残されるようなことがあってはならないという言い方をしていましたけれども、そんな量の話じゃないんですよ。ゼロにするために全力を挙げる、放送事業者がそのために責任と負担を負うという立場で監督官庁の総務省がしっかりと、ゼロにするために頑張るということを民放にも求めるということだと思うんですが、その点について、ぜひお答えください。
○新藤国務大臣 これは、移転に係る無線局免許の変更許可における条件であります。ですから、私はそういう趣旨で先ほど申し上げたわけでありまして、これはもう最大の努力を尽くして、きちんとした形で対策を打つということであります。
この移転日時点でそうした大量の受信対策が必要な施設を残したままで移転を行うということは認められないし、これは民放、NHKを問わず同じように我々は求めておりますし、それが条件であります。
○塩川委員 大量というのが率直に気にかかるわけです。
要するに、視聴者は何の責任もないんですよ、瑕疵がないんですよ。ですから、気がつかないような場合があるというのに対してどこまで徹底してやるのかということが求められているわけです。
NHK初め在京六社はこのスカイツリーへの送信所の移転の時期についてことしの五月ごろと言っているわけですけれども、NHK会長にお尋ねします。この移転の時期の五月ごろというのはもうそんなに遠くない時期でありますけれども、いまだに相談件数もふえているような状況で、視聴者の対応が間に合わないということであれば、当然この五月ごろの移転の時期も先送りをするということになりますよね。
○松本参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたように、障害世帯が最小限になるように、民放、NHKを含めて、可能な限り事前の対策を協力してやってまいりたいというふうに思います。
○塩川委員 ですから、視聴者が映らないという状況がある。準備が整わない場合は五月ごろという移転の時期を延ばすということも当然ありますよねという問いですが、改めてお答えください。
○松本参考人 スケジュールに向かって、最小限となるように努力をしたいというふうに思います。
○塩川委員 五月が来たら支援を打ち切るようなことがあってはならないということを重ねて申し上げます。
それで、実際の障害がどの程度出ているかという問題ですけれども、東京スカイツリーへの移転によってどれだけの受信障害の世帯、事業所が生じると推定をしているのか。報道では、受信障害が十六万件とか対策費が百億円と報じられておりますけれども、その点、事実かどうかを含めて、お答えください。
○久保田参考人 移転に伴う障害の発生の規模でございますけれども、現在、サンプル調査、あるいは電話による聞き取り、それから、受信確認テストの電波を受信して御連絡をいただいた方、対策が必要な世帯、そういったものの状況等を総合的に考えて対策規模を推定しているところでございます。
報道された十六万件というのがございましたけれども、そこまではいかないというふうに現在思っております。
○塩川委員 現時点で受信障害があると判明した件数が幾つか教えていただきたい。
もう一つ、受信障害の対策です。その工事内容がどんな割合になっているのかについて、重ねてお尋ねします。
○久保田参考人 これまでに明らかになっております障害の件数は、きのうの時点でございますけれども、約四万五千件でございます。
それで、どういう対策をしているかという御質問でございますけれども、原因は、大きく分けて二つございます。スカイツリーに移転することによって、例えば、これまでビル陰になっていたところがビル陰ではなくなって電波が強くなり過ぎるという原因、それから、逆にアンテナの向きが変わるということに起因いたしまして電波が弱くなってしまうという二つの原因がございまして、その割合と申しますか、電波が強くなる方が約八割、それから電波が弱くなる方が約二割ということで、それぞれに適した対策を今進めているということでございます。
○塩川委員 今、三月二十日、昨日までで四万五千件の受信障害があると判明した件数をおっしゃっておられましたが、その二日前の三月十八日の時点では四万件でしたから、どんどんふえているわけですよね。そういう点でも、周知の取り組みと一体に受信障害が発生していると判明した件数というのも伸びているわけですから、これが今後どうなるのかということが今問われてくるわけです。
そういう点でも、対策について言えば、電波が強くなることによってブースターの調整が必要ですね、方向がずれることによって電波が弱くなるという場合にはアンテナの調整も必要ですね、そういうことについてしっかりと視聴者の皆さんにわかるような御支援ということが何よりも求められています。
そこで、障害があると判明した四万五千件ですけれども、これは、地理的な、場所としての特徴はどんなふうになっているんでしょうか。
○久保田参考人 四万五千件のうち、約五割が東京都でございます。それで、さらに細かく見ますと、スカイツリーの東北の地域、ですから、東京の東の方あるいは千葉の東京寄りのところが比較的多いということになっております。
○塩川委員 そういった地理的な特徴がある、東京タワー側から見ればスカイツリーの裏側といいますか、そういった点で障害が多いと。それ以外にもかなり広がりがあると思いますけれども。
私は、その点でも、今テレビを通じた試験電波の発射などでの周知もありますし、あるいはポストインの取り組みなんかも、各戸世帯に対しても行っているというふうには聞いております。その際に、地理的な障害が多く出るとわかるような地域には、そういう障害が出るよという地図も入れたようなそういうチラシを配布する。これは、以前、デジタル放送への切りかえの際に地域地域でそういったポストインなどもやったわけです。
この地域ではこの路線に沿ったところで障害がいろいろ出ますよ、こういう取り組みなんかは必要だと思うんですが、それはやらないんですか。
○久保田参考人 チラシにつきましては一都三県全戸配布ということをやらせていただきましたけれども、その時点ではまだ、先ほど申し上げましたようなスカイツリーの東北サイドということはそれほどはっきりとした傾向として出ておりませんでしたので、そのチラシにそういう地図を入れるということはやっておりません。
ただ、NHK独自の取り組みといたしまして、電話でいろいろとお知らせする、これも各戸に一軒ずつ電話をするという取り組みをやっております。これは何しろ数が大変多くございますけれども、それにつきましては、まず、先ほど申し上げましたその地域から電話をかけ始めるという取り組みはやっております。
○塩川委員 地デジ移行のときには、デジサポという組織をつくって、かなり組織立って行ったわけであります。
それと同等のことがこの首都圏では必要だよということを改めて強調したいと思いますし、電話についても大いに結構だと思いますけれども、目に見えるものとして、やはりいろいろな視聴者の方がいらっしゃるわけですから、スカイツリーの東北方面で障害がある、そういう世帯が多いということが明らかになってきた現段階、そういった地域に、この地域で障害が多く出ますよというチラシを新たに配布するということについてぜひお考えいただけないですか。会長はどうですか。
○松本参考人 今各種の事前の対応を進めておりますけれども、その中で、効果のあることとか、あるいは、実際に障害のある場合で気がつかない方に気がつかれるような方法でできることがあれば、検討はしていきたいと思います。
○塩川委員 今、私、一つ提案しましたから、ぜひやっていただきたいと思います。
それから、今東京タワーから地上デジタル放送が出ていますけれども、放送大学も東京タワーから地上デジタル波を発射しております。ただ、放送大学は東京スカイツリーに移らないんですよね。そうなると、この間行っているような、電波が来る方角が違うというようなことで障害が出るような世帯が生まれた場合に、東京タワーからの電波を今度はスカイツリーから受けるというふうにした場合に、東京タワーに残る放送大学が映らなくなるようじゃ困るわけですから、この点、実際にはどういうふうになるのか。その点、説明いただけますか。
○久保田参考人 スカイツリーからの試験電波による受信確認テストによって放送大学の受信に障害が発生した場合、これも当然のことでございますけれども、NHKと在京民放五社で対策を実施しております。スカイツリーからの電波も見えるように、同時に、東京タワーから出ている放送大学の電波も受けるようにという対策をしております。
それと、今申し上げましたのは現在事前の対策として行っていることでございますけれども、スカイツリーへの移転後でありましても、現在東京タワーを受信している世帯で障害が発生した場合には、個別に受信の対策を実施するということでございます。
○塩川委員 事後の対策についての費用負担は放送事業者の責任で行うということでいいですか。
○久保田参考人 事後の対策につきましても、現在東京タワーを受信している世帯で障害が発生した場合は、NHKと在京民放五社のコスト負担で持つということでございます。
○塩川委員 ですから、電波が強くなる弱くなるとあるわけですけれども、いずれにせよ、要するに、東京タワーからの電波も映るし、スカイツリーからの電波も映る、そういう両方を兼ね備えた受信障害対策を行うということでよろしいんですね。
○久保田参考人 そういうことで結構でございます。
○塩川委員 スカイツリーへの移転だけをとっても、このようにいろいろな形での障害をめぐる問題があります。ですから、冒頭聞きましたように、そもそも放送事業者の都合による送信所の移転ですから、こういう点でも、放送事業者の責任と負担で行うということを強く重ねて申し上げると同時に、そもそも、こういうデジタルへの移行で衛星放送で見ざるを得ない、地元の地上波が見られないという方がいまだに十万世帯も残っている。
そういう方と同時に、対策をとったという方の中でも、ケーブルテレビに移ったという方がいらっしゃるんですよね。ケーブルテレビに移った方というのは、ケーブルテレビの月額料金というのが発生するんです。これは総務省としても、価格を下げましょう、下げましょうという働きかけ、要請、助言を行っているわけですけれども、いまだに月額二千五百円を超えるような、そういった事業者も残されています。ですから、地上デジタルの番組を見たいというだけの方が、ケーブルテレビに入らざるを得なくて、月額二千五百円以上もの負担を強いられるというのは余りにも酷な話だ。
そういう点でも、これは最後に要請だけしておきますけれども、私は、そういった視聴者の負担を軽減するための対策を総務省としても大いにやるべきだし、NHKも受信料を下げるぐらいのことをして、ケーブルテレビで地デジ対応せざるを得ない、そういう世帯への負担軽減策を行うべきだ、このことを求めて、質問を終わります。