国会質問

<第183通常国会 2013年03月22日 経済産業委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 安倍内閣は、原子力政策について、できる限り原発依存度を低減させていくと言い、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするとの民主党政権の方針はゼロベースで見直し、責任あるエネルギー政策を構築すると述べております。
 今、福島原発事故を踏まえた原子力政策の抜本的転換こそ求められております。
 そこで、きょうは、安倍内閣の核燃料サイクル政策についてお尋ねをいたします。
 最初に、内閣府の方にお尋ねいたします。
 核燃料サイクルにおいては、使用済み燃料の再処理を行うことによって大量のプルトニウムが生じます。日本における分離プルトニウムの管理状況についてお尋ねします。どこに幾ら、どのような形で保管しているのか、この点についてお答えください。

○中野政府参考人 平成二十三年末時点におきまして国内で保有している分離プルトニウムの量でございますが、まず、再処理施設内に工程中の硝酸溶液及び酸化物の再処理製品として合計約四・三六トン、次に、MOX燃料加工施設内に原料貯蔵、加工工程及び完成燃料体として合計三・三六トン、さらに、原子炉施設等に燃料体として約一・五七トンございます。
 それから、電気事業者が海外に再処理を委託した分としまして、フランスに約十七・〇トン、イギリスに約十七・九トンの分離プルトニウムが保管されております。

○塩川委員 国内では九トンの分離プルトニウム、海外はフランスとイギリスで合計して三十五トン、合わせて四十四トンということで、四十四トンもの大量のプルトニウムがあります。核兵器の保有国を除けば、最も大量のプルトニウムを保有しているのが日本であります。
 重ねて内閣府の方にお尋ねしますが、プルトニウムの利用目的を明確にするため、電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を毎年度公表することになっております。現在、このプルトニウム利用計画はどのようになっておりますか。

○中野政府参考人 原子力委員会では、平成十五年八月五日に、我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について委員会決定を行っておりまして、利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないという原則を示すとともに、プルトニウムを分離する前に電気事業者がプルトニウム利用計画を公表することを求めております。
 直近では、平成二十二年九月十七日に電気事業者がプルトニウム利用計画を公表しておりまして、原子力委員会は、同年十月五日に、同計画を妥当なものと評価する見解を示しております。
 今後としましては、委員会決定にありますとおり、プルトニウムを分離する前に電気事業者がプルトニウム利用計画の公表を行い、その計画を原子力委員会において確認することとなります。

○塩川委員 四十四トンもの分離プルトニウムがありますけれども、この利用計画では、幾ら使うという目安を示しているんでしょうか。

○中野政府参考人 利用計画の中で使い道を示すことになっております。

○塩川委員 今、お示しいただいた、平成二十二年九月に電気事業連合会が集計しましたプルトニウム利用計画がありますけれども、年間の利用目安量が五・五トンから六・五トンとなっています。これは、プルサーマルを十六基から十八基の原発で使用するということが前提でありますけれども、そもそも、プルサーマル導入の十六基から十八基の中には、あの事故を起こしました福島第一原発の三号機なども含まれているわけですね。そもそも現時点で稼働している原発はほとんどありませんから、そういう点でも、大量のプルトニウムが生じている一方で、その利用計画がまともに示せないという状況になっております。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、日本の原子力利用は平和目的に限るという立場から、利用目的のないプルトニウムは持たない、つまり余剰プルトニウムは持たないとの原則をとっております。現状は、この余剰プルトニウムを持たないという原則から逸脱して需給バランスが大きく崩れているという状況ですが、これはどうするお考えですか。

○茂木国務大臣 御指摘のように、原子力委員会におきまして、利用目的のないプルトニウム、いわゆる余剰プルトニウムを持たない、こういったことを原則として示しております。再処理で発生したプルトニウムは、当面、軽水炉で利用することとし、プルトニウム利用計画を電気事業者が公表し、その妥当性を原子力委員会が確認する、こういうプロセスを踏んできております。
 プルサーマルを進めるに当たりましては、原子力発電所の再稼働、これがなければプルサーマル計画も進まないわけであります。
 そして、原発の再稼働につきましては、安全第一の原則のもとで、その安全性につきましては原子力規制委員会の専門的な判断に委ねる、こういったことになっております。
 電気事業者におきましては、今後の原子力発電所の再稼働の見通しを踏まえながら、新たなプルトニウムの回収が開始されるまでに、新たなプルトニウム利用計画を策定するものと考えております。

○塩川委員 余剰プルトニウムを持たないという原則に立った場合に、今の、需給バランスが大きく崩れている状況というのは看過できない実態にあります。
 そういう点でも、プルトニウムの需給見通しについて原子力委員会で示されているのは一九九五年八月の時点だと承知していますけれども、このプルトニウムの需給見通しをしっかり示すことこそ必要なんじゃないですか。

○中野政府参考人 適切にそのような計画を示すということが必要と考えております。

○塩川委員 大臣はどうですか。需給見通しを示すということが必要だと思いますが。

○茂木国務大臣 原子力委員会において適切に対処すべきと思っております。

○塩川委員 需給見通しが立たない中で、余剰プルトニウムが大きく存在するという事態が続くというのは極めて重大な状況であります。
 ですから、大臣にお尋ねしたいのが、こういう余剰プルトニウムをつくり出している現状の日本の核燃料サイクルですけれども、この核燃料サイクル政策の現状及びその問題点というのをどう見ておられるのか。この点について、ぜひ大臣のお考えをお聞かせください。

○茂木国務大臣 これまで、我が国におきましては、ウラン資源の有効利用、そして高レベル放射性廃棄物の減容、また有害度の低減等の観点から、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用することを基本的方針としてきました。
 この中で、六ケ所村の再処理施設については、事業者である日本原燃が本年十月の完成を目指して最終的な試験を実施中と認識いたしております。
 今後は、これまでの経緯等も十分に考慮して、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、使用済み核燃料の適切な処理や、放射性廃棄物の最終処分等の課題の解決を目指して継続して取り組んでまいります。
 その中で、使用済み燃料の再処理と燃料としての再利用、すなわちプルサーマル計画は着実に進めていきたいと考えております。
 ただ、ここで委員にぜひ御理解いただきたいのは、原発の問題、再稼働の問題につきましては、国会におきまして新たな原子力規制委員会というのが立ち上がりました、この規制委員会の判断によって安全性というのは確認される。安全性が確認されなければ、その原発は動きません。そして、安全性が確認された原発については、我々は、その判断を尊重して再稼働を進めていきたいと思っております。それに伴って、プルサーマル計画をどこまで実際に進めることができるかが決まってくるものだと思っております。

○塩川委員 その安全性の確認の話については、例えば、津波だけではなく地震の影響もあるんじゃないのか。国会事故調の調査に対して説明を東電が虚偽で行っていた経緯などもあって、さらに事故原因の究明が求められているという点で、安全な原発というのがあり得るのかという議論、これはこれであります。また日を改めてこの問題はします。
 核燃料サイクル政策について言えば、そもそも計画がどんどんおくれてくる。お話があったような六ケ所の再処理工場、十月に工事完成という話で事業者は考えているということですが、この間、十九回も竣工の予定が変更されてきたという経緯もあります。本当にそうなるのかという懸念もありますし、また、高速増殖炉の「もんじゅ」について言えば、一九九五年のナトリウム漏えい事故以来稼働していないわけで、そういう点でも、核燃料サイクルがサイクルで回っていかない状況というのが、この間ずっと問題となって出てきているわけです。
 福島原発事故を踏まえて今の原子力政策を見直す、ましてや、核燃料サイクル政策について、メスを入れた見直しを行うときなのではないのか。核燃料サイクル政策を抜本的に見直す、私はもうやめたらどうかと思いますけれども、この点については大臣はいかがですか。

○茂木国務大臣 先ほども申し上げましたが、ウラン資源の有効活用、これについてはいろいろな議論があると思います。ただ、高レベル放射性廃棄物を減容していく、また有害度を低減していく、それによって最終的な処分も行っていく、こういう観点からは、核燃料サイクル政策は必要だ、私はこんなふうに考えております。
 それを回さずに、どういうふうにすればこの問題が解決できるか、委員としてもっといい御提案がありましたら、ぜひお聞きをいたしたいと思います。

○塩川委員 実際、福島原発事故を機に、例えばイギリスなどにおいては、MOX燃料の工場については閉鎖するということになっているわけですね。そういう意味でも、国際社会において、核燃料サイクルについて見直しをする、破綻しているという声は現に上がっているではありませんか。そういう点でも、今、日本において、まさに福島原発事故を踏まえた見直しこそ必要だということが問われているわけです。
 使用済み燃料の処理の問題について言えば、直接処分の話を含めて、選択肢としても持たないのか。全量再処理なのかという点などについては、そういう検討もしないということなんですか。

○茂木国務大臣 検討しないと申し上げているわけではありません。その前に、例えばこの核燃料サイクル政策を回さないということになってきますと、既にある使用済み核燃料についてもどうするんですか、こういう具体的な議論がないと、いや、これはやりません、しかしほかのオプションもありません、そういうことでは議論は進まないのではないですかということを先ほども申し上げました。

○塩川委員 再稼働がなければ使用済み燃料はふえないわけですから、そういう立場です。今あるものをさらにふやすことになるから、この問題について課題が出てくるわけですよ。
 関係自治体の理解も得ることが必要だ云々というお話もありましたけれども、私は、今、耳を傾けるのであれば、あの原発事故の起こった福島県の声にこそ耳を傾けるべきだと思います。
 例えば、この間も、福島の県議会の議長さんの発言というのが紹介されております。福島県の斎藤健治議長は、震災前日までは自民党県連幹事長として県議会で、福島第一原発の七、八号機を早く建設しろと知事にけしかけていた、原発は巨大公共事業をやるようなもので、二つつくれば九千億円規模になる、地元から陳情を受け、我々も追認した、しかし震災後は脱原発に転じた、県内の原発十基の廃炉宣言をした、福島のすさまじい現場を見たら、再稼働なんて口にできないはずだと。
 これこそ、事故が起きた、そこの現場の被害者の皆さんの声なんです。再稼働をやめよう、そもそも破綻した核燃料サイクルをやめようという声にこそ耳を傾けるべきだ。この点について、ぜひお聞きしたい。

○茂木国務大臣 これだけの大きな事故が起きた、そういった中で、福島県は、まだ十六万人の皆さんが厳しい避難生活を余儀なくされております。そして、福島第一の廃炉につきましても相当長期の期間を要する。こういった中において、我々がこれまで進めてきた政策、この社会的責任は重く受けとめ、福島の皆さんにはおわびをしなければいけないと思っております。
 そして、同時に、福島におきまして、今御紹介がありましたような声が起こってくる。真摯に耳は傾けたいと思いますし、そういった声が起こるというのは当然のことだと私も思っております。

○塩川委員 真摯に耳を傾けるのであれば、再稼働の中止、そもそも、核燃料サイクルについては、これをやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。
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